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UM☆アルティメットメイジ 第4話


UM☆アルティメットメイジ 第四話 【さらばアルティメットメイジ】



「・・・やれやれ それにしたって夜勤ってのは退屈ですね 隊長」
「お仕事だよ お仕事! 無駄口叩いてないでしっかり見張れ!」
「へーい」

アルビオン大陸-ニューカッスル城。
かつて、アルビオン王家が一時的な滅亡を迎える事となった古城で、ゲルマニア兵達の暢気な声が響く。

旧主を滅ぼし、この城の主となった神聖アルビオン共和国皇帝 オリヴァー・クロムウェルも、既にこの世の者ではない。
トリステイン・ゲルマニア両国の侵攻と、大国ガリアの突然の軍事介入により、彼等の母体であった【レコン・キスタ】は、瞬く間に壊滅、
アルビオン大陸は列国に分轄統治される事となり、現在では、この城はゲルマニアの治めるところとなっていた。

近年のガリアの怪しげな策動により、ハルケギニアの国家間には微妙な溝が出来つつあったが、
この古城は、そんなキナ臭さとは無縁の状態にあった。
現在のアルビオンには列国で結ばれた協定があり、トリステイン・ガリア・ゲルマニア3国の軍隊が駐屯しているのである。
仮に1国が軍事行動を起こした所で、残る2国に袋叩きに遭うのは自明の理であり、
若さを持て余す新兵が、見張りに不熱心なのも仕方がない事と言えた。

「・・・ねえ 隊長」
「何だ?」
「俺 ここでの任務が終わったら 故郷の馴染みと式を挙げようと思うんですよ それで―」

新兵の言葉をそこで遮りながら、隊長と呼ばれてた初老の男は、何かに気づいたように、頭上の双月をじっと睨みつけた。

「どうかしましたか?」
「今 一瞬 月明かりが何かに遮られたような・・・」
「そんな まさか・・・?」

その時であった。
突如、轟音と振動が周囲に広がり、巨大な怪物が、城を取り囲むように、次々と落下してきた。
闇世の中で、巨人達の両眼が炎のように瞬き、古城のあちこちでパニックが巻き起こる。

「ゴ ゴ ゴーレムゥ!?」
「いや!? コイツは・・・!!」

二人が会話出来たのはそこまでだった。怪物の拳が居城の外壁を砕き、飛び散る瓦礫が二人に容赦なく浴びせられた。

朦朧とした意識の中、男は見た。月明かりに照らし出される巨大な戦艦、そして、二本の杖を模した国旗―。

「ガリアだと・・・? バカな 無能王は世界を敵に回す気か・・・?」
男の意識はそこで途絶えた。



その夜、ガリアはアルビオンの主要都市に向け同時に進行を開始―。
電撃的な作戦により、空を彷徨う大陸は、瞬く間にガリア軍の手に落ちた・・・。


ガリア軍、アルビオンを占拠―。
伝令からもたらされた急報に対処すべく、都市国家ロマリアでは、
現教皇ヴィットーリオと、トリステイン女王アンリエッタの間で緊急の対談が行われていた。

もともと、ロマリア陣営の狙いは、戦略の鍵を握る【虚無】を餌として、ガリア王ジョゼフの陰謀を釣り上げる事にあり、
アンリエッタのロマリア巡幸はその前段階であった。
ゆえに、今回のガリアのアルビオン侵攻は、敵に完全に肩透かしを喰らった形であった。

アンリエッタもまた、驚きを隠すことが出来ずにいた。
今度の戦いは謀略劇に終始するであろうと推測していた彼女にとって、
ガリアの電撃的な軍事行動は、正に晴天の霹靂であり、自己の見通しの甘さを悔やまずにはいられない事態だった。

だが、それぞれの思惑はどうあれ、情勢はロマリア陣営に有利に運んでいた。
ガリアの背信行為は、情勢を静観するゲルマニアを味方に引き入れる余地をもたらすであろう。
更に、ガリア軍の主力はいまや自領を離れ、遠くアルビオンの地にある。
無能王の政策に不満を持つ、当地の軍閥を吸収しつつ攻め上ったならば、一気にジョゼフを廃位に追い詰める事も可能と思われた。

だが、それゆえに一抹の不気味さも拭えなかった。
逆に考えるならば、ジョゼフはガリア一国を失う危険を冒す価値を、アルビオンに見出していた事になる。
事ここに至って、無能王は白の国に何を求めたというのか・・・?

会議室に第二報が飛び込んできたのは、両国が詰めの協議に入ろうとしていた時だった。

「密偵より報告! アルビオンが・・・ アルビオンが・・・ッ!!」
「どうした? 落ち着いて報告せよ」
「ハッ・・・失礼! ア アルビオンが・・・ 移動しております・・・!!」

「・・・何?」

「み、密偵からの報告によれば この時期 かの大陸が本来あるはずの座標を大きく外れ
 緩やかに南下を開始していると・・・ このままの軌道と速度で進めば
 明日の明朝には トリステイン王国・タルブ地方の上空に到達する見込み・・・!」

「そ そのような事が・・・!」
「バカな! 何かの間違いではないのか!?」

太陽が西から昇るかのような突拍子の無い報告に、会議室が困惑をきたす。
だが、時の経過と共に各方面から次々と飛び込んでくる情報が、報告の確かさを裏付け始める。

「・・・にわかには信じがたい事ではあるが それならば全ての事情がつながる
 虚無の魔法なのか 何らかのマジックアイテムの力によるものなのかは分からぬが
 とにかくジョゼフは アルビオンの理を司る精霊に干渉する術を知ったのでしょう
 こうなると 今のガリア軍は 戦場を自由に移動できる 巨大な要塞を得たに等しい・・・」

『違うッ! これは そんな生易しい作戦ではないッ!!』

教皇の推測を遮り、ハリのある声が響き渡る。
室内に静寂が満ち、その場に居合わせた者全てが一点に視線を向ける。
発言の主は、アンリエッタ付きの女官、ルイズ・フランソワーズが使い魔・・・。

「・・・どうしたの? UFOマン」

『私はかつて 何億光年もの星の海を渡り歩き 様々な生命の営みを そして戦争の形を見てきた・・・
 それゆえに 顔も見た事も無いガリアの王が企てる おぞましい作戦の全容が分かってしまうのだ・・・』

「おぞましい・・・ 作戦?」

『・・・ 【アルビオン落とし】 だ・・・

 敵は アルビオンがハルケギニア大陸の真上に差し掛かったところで 精霊の働きを遮断し
 浮遊する大陸を 丸ごと地表にぶつける気なのだ・・・』

「 !? 」

アルビオン落とし。
その響きの禍々しさに、そして、神をも恐れぬ悪魔の所業に一同が絶句する。

「そんな・・・ あんな物が激突したら タルブは・・・」

『質量が違いすぎる タルブどころかトリステイン全土・・・
 そして 隣国ゲルマニアにまで壊滅的な打撃を与えて なお釣りがくる』

「・・・そして 舞い上がる粉塵は太陽の恵みを遮断し 大陸に生きる数多の生命に深刻な影響を与える
 アルビオンの鎖を失った精霊たちの暴走も考えれば 本当にハルケギニア全土が滅びかねない・・・」

UFOマンの言葉を引き継ぎ、ヴィットーリオの使い魔・ジュリオが推測を述べる。その額に大粒の汗が滲む。

「でも・・・ そんな ありえませんわ! そんな事をしたら ガリアだってッ!!」
「いや・・・」
取り乱すアンリエッタの声を遮り、明晰なる教皇が、異性人の推測を現実に照らし合わせていく。

「ジョゼフの狙いはあくまで虚無・・・
 世界の混乱を助長させることは それだけ彼奴の暗躍する余地が増える事を意味する
 仮にハルケギニア全土を滅亡寸前まで追い込んだとて それと引き換えに 
 虚無の力を 全て己が物にできたなら それは悪くない取引・・・
 そう考えていたとしても なんら おかしくの無い男です」

「そ そんな・・・!」
「姫様!?」

突如、母国トリステイン襲った危機の巨大さに、危うく意識を失いかけたアンリエッタであったが
国家元首として義務感のみを最後の支えに、かろうじて踏みとどまった。
近寄ろうとしたルイズを片手で制すと、頭をひとつ振るい、ゆっくりとヴィットーリオの方へ向き直った。

「聖下 この場はこれにてお暇させていただきます
 私は国許にガリアの思惑を伝え
 その野心を断つべく 発布を下さねばなりませぬ」

少女の瞳に宿る強靭な意志を確認し、教皇も静かにうなずく。

「ウム・・・ 誇り高きトリステインの聖女に 始祖ブリミルの導きがあらん事を」

アンリエッタは軽く一礼すると、側近たちに指令を下しながら、早足で議場を後にした。
ヴィットーリオも又、重臣たちを集めるよう、ジュリオへと指示を出す。
場を支配していた重い空気が、あわただしく動き出す。

―そして室内には、若き教皇とアンリエッタの女官、そして彼女の使い魔だけが残った・・・。

「ミス・ヴァリエール? いかがなされました?
 女王陛下の腹心たる あなたが動かなければ・・・」

「聖下に 折り入って頼みがございます」

「・・・・・・」

「聖下の虚無で 私をかの地へ タルブの地へとお運びください」

眼前の少女の真意を推し量るように、暫く目を細めていた教皇だったが、やがて、落ち着いた口ぶりでいった。

「・・・やはり 近年 ハルケギニア各地に現れた【イーヴァルディの女神】
 アルティメットメイジの正体は あなただったのですね」

「・・・・・・」

「けれども あなたの奇跡をもってしても あれだけの質量が止められますかどうか・・・
 アルティメットメイジは その力を限られた時間しか 行使する事が出来ないのでしょう?」

「・・・確かに私では 力不足かもしれません
 けれども今の私には 今日 この日のために彼の力を・・・ 
 この使い魔を授かったように思えてならないのです
 ここで私が勇気を出さねば 私の力が通じぬようなら おそらく他に アルビオンを止める手立ては・・・」

「私たちの力が通じぬようなら でしょ? ルイズ」

突然の馴染みある声に、反射的にルイズが振り返る。
そこにいたのは、幾度と無く窮地を共に乗り越えてきた、ふたりの少女。

「いまさら一人でデートの準備なんて それはないんじゃない? ヴァリエール」
クセの強い赤毛をかき上げながら、褐色の肌の少女が嘯く。

「薄情者・・・」
あくまで淡々と、青髪の少女が呟く。

「キュルケ・・・ タバサ・・・
 気持ちは嬉しいけど これは UFOマンを呼び出した私の使命・・・
 これ以上 アンタ達を危険に付き合わせる事わにぃぃぃぃっ!」

深刻な面持ちで2人を説き伏せようとするルイズだったが、キュルケに思い切りほほを引っ張り上げられ、話にならない。

「アンタ ちゃんと話きいてたの~?
 アルビオンが落ちれば ゲルマニアもガリアも終わりだって言ってたでしょ
 今更よそよそしくするもんじゃないわよ」

「一蓮托生」

「わひゃっひゃっ! ふれふぇふっ!! ふれへくわよぉぉぉ~!
 まっひゃふ あひょれないひゃっへ ひららいはひょ~!!」

まるで、ハイキングに行くかのような気軽さで世界の危機と向き合う3人。
その余りの前向きさに、教皇も思わず笑みを漏らす。

「ミス・ヴァリエール 貴殿の願い 確かに承った
 知恵比べで無能王に惨敗した 今の私に出来ることは 
 残されたチップの全てを 3人の女神に張る事だけのようだ」

こんな事でも無ければ一生涯聞くことの出来ぬであろう、現教皇・聖エイジス32世の諧謔に、少女達がニヤリと笑う。

「ハルケギニアを頼む アルティメットメイジよ・・・

 地上で最も困難なる試練に臨むイーヴァルディの女神に 始祖ブリミルの加護のあらん事を!」


トリステイン王国・タルブ地方

国内で最大の規模を持つ広大な平原地帯を、薄闇のヴェールが包み上げる。
夜明け前、天地の狭間が静寂で満ちる時間。
肌に触れるひんやりとした空気が、群青色の空と、光を失いつつある星たちが
3人の少女の胸に、どこか言いようの無い寂寥感をもたらす。

「アルビオン・・・ 姫様の密命を受けて渡ったときも アンタらと一緒だったっけ?」
「まさかこんな形で もう一度かの地を訪れ・・・ いえ かの地が私たちを訪れるとわね」
「・・・おしゃべりはそこまで 見えたわ・・・」

タバサが示した杖の先には、僅かに輝き始めた地平の彼方に浮かぶ、小さな黒点が見えた。
世界最後の日の始まりを告げる光景に、自然、肌があわ立つ。

『さて まずは誰が あれに挑むんだい?』

UFOマンの問いに、少しの間、互いを見渡した3人だったが、
やがて、誰からと言うことも無く頷きあった。

「ここまで来て いちいちお色直しをしてる余裕はないわよ」
ルイズが右手を伸ばす。

「珍しく意見があったわね ヴァリエール」
キュルケが右手を伸ばす。

「みっつの心が ひとつになれば・・・」
タバサが左手を伸ばす。

『3人同時!? こんなの アニメじゃない・・・!』

「出来るわよ! これから世界を救おうってのに 
 この程度の奇跡もおきないようじゃ話にもならないわ!」

『うおおお! 俺は今 モーレツに感動している!!』
「さあ いくわよッ! 二人とも」

「「「変身ッ!! アルティメットメイジ!」」」
『 イ ッ キ ま ー す ! ! 』

高らかとUFOマンを掲げた3人の姿が、白色のエナジーに包まれる。
眩い光の中、衣服が塵のように消え去り、少女達が一つになっていく。
光の拡大と共に肉体が膨らみ続け、全てが終わった時、
そこには通常の倍、100メイルはあろうかという白色の乙女が誕生していた・・・。



「やはり現れたね アルティメットメイジ!
 いつぞやの借り 返して貰うよッ!!」

巨神の出現を確認したシェフィールドの合図を皮切りに
アルビオンの前方を固めていた艦隊が、一斉に突撃を開始する。
いずれの艦も、因縁深い、件の騎士人形を抱えている。

「ヨルムンガント・・・ なんて数なの!!」
「ルイズ アンタの虚無は温存よ! アイツらの相手は・・・」
「私にまかせて ただし・・・」

タバサの声に合わせ、乙女の巨体がやや縮み、髪の毛が青みを帯び始める。
動きを止めた乙女に対し、好機と踏んだか、騎士人形の一体が急降下に入る。
突っ込んでくるヨルムンガントの軌道に合わせ、乙女が指を差し出す。

パッチィイイイン

という、乾いた音が空気を切り裂き、ヨルムンガントの巨体が、乙女の眼前で自動ドアのようにふたつに分かたれる。
分断された鉄塊が乙女の両脇を通過し、轟音と共にタルブの大地を揺るがした。

「ただし 真っ二つ よ・・・」


戦闘開始からおよそ10分弱―。

力の試しあいは終わり、戦闘は『量』の勝負へと移っていた。
すなわち、タバサの魔力が底を尽きるのが先か、騎士人形の大軍が全滅するのが先か、である。

日の出と共に、初めは小さな点だったアルビオンが、徐々に大きな影となって迫りつつある。
そのプレッシャーも又、タバサの精神力を揺るがせる要因であった。

「タバサ 左右から来るわ!」
「・・・ッ!」

タバサの足が止まったのを確認し、計10体のヨルムンガントが取り囲み
戦いの決着を付けるべく、一斉に突進を開始する。

タバサにも余力はない。短く詠唱を唱えると、右手に5本、左手に5本の氷槍を作る。
身を低くして極限まで引き付け、一息に周囲に撃ち出す。
一撃必殺の槍が同時に炸裂し、鋼鉄の巨体が次々に大地を揺るがす。

「いけないッ!? 上よ!」
「もらったよォッ! アルティメットメイジ!!」

シェフィールドの叫びと共に、一際大きな騎士人形が、タバサの頭上目掛け落下してくる。
神の頭脳の狙いは、敵を殲滅した乙女が、気を緩める一瞬であった。
渾身の力を出し尽くした直後のタバサには、頭上からの一撃を避ける余力は無いように見えた。

ズンッ

という蛮刀の唐竹割りが、タバサを頭上から足元まで縦一文字に切り裂き、大地を砕いた。

「な・・・!?」
だが、驚きの声を上げたのは、斬ったシェフィールドの方だった。
手ごたえが全く無かったのだ。
一陣のつむじ風が乙女の残像を消し去り、気づいた時、タバサはヨルムンガントの背後にいた。

「偏在・・・か?」

背後から流れてくる湿り気を帯びた空気で、彼女は全てのトリックを理解した。
タバサは自身の周囲に水蒸気の壁を作り出し、光を屈折させる事で姿を消し去っていたのだ。
この時、偏在を1体のみ作り出したのも、絶大な効果を発揮した。
不完全な迷彩であったにも関わらず、明晰なる神の頭脳は、タバサが姿を消した事にすら気付かなかったのだ。

「ジーザス・・・」
ミョズニトニルンの呻きと同時にスナップ音が響き、巨体が真空の渦で微塵切りとなる。
崩れ落ちる鉄クズに飲み込まれながら、シェフィールドの狂声が響く。

「・・・クッ ククッ ハッハッ ハァアァアア!! 全ては・・・ あのお方の計算どおりさッ!!
 この戦いの決着なんざァ! 何の意味も持たないんだよ!!
 私は・・・ 私は所詮ッ 捨てゴマに過ぎないんだからねッ!!」

―直後、轟音と衝撃が大気を震わせ、アルビオンが火柱を噴き上げる。
 巻き上がる黒煙と、ゆっくりと均整を失っていく大陸が、敵に決定的な一手を打たれた事を即座に理解させる。

「全ては終わりだよォォ! デッカイのォ!!
 絶望の悲鳴をあげなアアァァァ!!」

狂ったような笑い声を響かせながら、神の頭脳が瓦礫の中へと消えた・・・。


「それ以上は無理よ 交代して タバサ!」

悲劇的結末を回避すべく、アルティメットメイジが大地を駆ける。
その背が徐々に伸び、髪の色、肌の色が変化を始める。
降下を始めた大陸の真正面に立ちはだかった時には、その姿は、真紅の乙女へと変貌していた。

「何をする気? キュルケ」
「加速がついてからでは間に合わない!
 私の魔法で押し返して 何とか海上に着水させる!」

圧倒的なサイズ差を誇る対手を前に、キュルケは大きく深呼吸すると、左手をかざし、静かに瞳を閉じた。
眼前に迫る絶望的な状況が、少女の集中力をかつてない境地へと踏み込ませる。
波ひとつ無い静かなる精神が、その魔力を金色のオーラへと変えていく・・・。

「見せてやるッ! キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが最終奥義ィ!! 」

―驚ッ!!

力強く突き出された右腕から、金色のオーラが一直線に飛び出していく。
キュルケの魔力が、生命が、魂が巨大な掌底となって、アルビオンを真正面から受け止める。
大陸の持つ質量と、一個のプライドが釣り合い、落下が止まる。

「でやあああアアアァァァッ!!」
18年の人生全てを右腕に込め、更なるオーラをキュルケが放つ。

「大陸を押し返してる・・・! スゴイ これなら!!」

「・・・ダメ 消耗が大きすぎる・・・」

タバサが絶望的な呻きを漏らす。
彼女の言うとおりだった。
巨大な大陸の質量は一定であり、一人のメイジの魔力には限界がある・・・。

しばらくの間、均衡を保っていた両者であったが、やがて、ゆっくりと大陸が反撃を始めた・・・。


「限界よ あたしと交代して! キュルケ!」
「アンタは・・・ すっこんでなさい ヴァリエール・・・」
「強がってる場合じゃないでしょ!? このままじゃ!」

『ルイズ・・・ ここは彼女に任せるんだ』
「UFOマン!? アンタ 何を・・・」

『分からないのか? 何故 敵が近場のラ・ロシェールでは無く
 タルブの地を目標にしたのか・・・?』

「・・・?」

それっきり、押し黙ってしまったUFOマンに代わり、タバサが言葉を繋ぐ。

「ラ・ロシェールは交通の要所 対して タルブは集落の少ない平原地帯・・・
 周囲に人の目が無い状況では M.O.Eは発動しない」

「・・・!」

「ルイズ ・・・あなたの虚無は ここでは その真価を発揮出来ないのよ」

絶望的な事実を突きつけられ、ルイズが言葉を失う。
ズズズッ、と地響きを上げながら、キュルケの体が、徐々に押し返されていく。

「・・・それが それが 何だっていうのよ!」

「・・・」

「私達の力で アレをなんとかするんでしょ?
 一蓮托生だと言ったのは アンタ達じゃないの!?

 大切な仲間の危機に 指を咥えて見ている私だと思ってんの!!」

『・・・ルイズ』

「アンタじゃ役者不足よ とっとと代わりなさいッ! ツェルプストー!!
 世界を救うのは この ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの仕事よッ!」

「・・・フン」
ルイズの威勢の良い啖呵を耳にして、キュルケがニヤリと笑う。
直後、金色のオーラが途切れ、真紅の乙女がガックリと膝を突く。

「まったく・・・ ムカつくわね・・・ 一番おいしいところを・・・ヴァリエール・・・に」

キュルケの言葉はそこで途切れ、乙女の巨体が縮み始める。
スーツが鮮やかな紅から淡いピンクへと代わり、クセの強い赤毛が、桃色がかったブロンドへと変化する。

鳶色の瞳をカッと見開くと、新たな力が宿った巨神が立ち上がった。


巨大な大陸は、既に目と鼻の先まで迫っていた。

「・・・これから どうするの?」
タバサが問う。だが、答えは聞くまでも無い。

案の定、予想通りの声がふたつ、返ってきた。

『たかが石っコロひとつ!』「そうッ! 私の虚無で押し出してやるッ!!」

ルイズの気合が、その身に宿した虚無の力を、新たな形へと変える。
体から発した魔力が虹色に瞬き、蝶の羽の如く姿をなして、少女の体を中空へと躍らせる。

「たりゃあああああああああッ!!」

全身でアルビオンへと抱きつき、白の国を押し返しにかかるルイズ。
主の感情に合わせ、虚無もまた形を変え始める。
大陸を包むように虹色の羽が、金色の糸へと変わっていく。

「これは・・・繭?」
「これがルイズの虚無・・・ 金色の繭の中で アルビオンを再生しようと言うの?」

始祖ブリミルが残した、物質の大元に作用する力、伝説の系統・虚無。
あと少し、ルイズに力が、あるいは時間があったならば、目の前の悲劇を回避できたハズである・・・

―が、

    ズ ズズズ ズズズズズ・・・

「ダメッ! ルイズ 加速がついたアルビオンは止まらない!」
「逃げるのよ! このままじゃ地面とサンドイッチよ!」
「だ だれが・・・」

ルイズにはもはや、言い返す余裕も無い。
強大な圧力になすすべも無く、やがて、ゆっくりと大地へと押し返され始める。

同時に絶望的な点滅音が鳴り響き、全身を覆うスーツに、虫食いのような穴が広がりだす。

『すまない・・・ どうやら私の方が 先に限界が来てしまった・・・』

「UFOマン・・・ くっ こんな こんなものおおおお!!」

ルイズの裂帛の気合も、それ以上の奇跡を呼ぶ事は出来ない。
その背にピタリと大地を負い、既に、脱出も不可能となっていた。

(ここまで・・・ なの? ゴメン・・キュルケ・・タバサ・・・
 これ以上は もう・・・)



ドンッ!


「・・・えっ?」

突如、至近距離で炸裂した砲撃に、ルイズが呆けたような声を上げる。
反射的に見上げた先には、勇ましく黒煙を吹き上げる戦艦の姿があった。


「見ろ コルベール君! やはりイーヴァルディマン・Pが戦っておるぞ!
 イーヴァルディマン・Pは 世界の危機に必ず現れると思い
 ネオ・オストラント号の開発を急ピッチで進めておいて正解じゃった!」

「スゴイ! まるで立派な教育者みたいです 学院長!
 よし 砲弾を釣瓶打ちにしろ! アルビオンの質量を少しでも削ぎ落とすんだ!」

「せ 先生・・・ キャッ!」

援軍は戦艦だけでは無かった。
突如、後方から烈風が巻き起こり、それがルイズ達への神風となる。
大陸の圧力が一瞬、僅かにゆるんだ隙を突いて、ルイズは体勢を立て直すことに成功した。

「新生魔法衛士隊・到着!」
「風術の壁を作れ! 大陸を押し上げるのだ」

「この風・・・ まさかお母さ・・・いえ 烈風のカリン!」
「トリステインは我等が大地! イーヴァルディの女神よ 及ばずながら加勢致します!」

彼らだけではない。故国の危機を救うため、トリステイン軍が続々とタルブの地へと集結しだす・・・。

「負けないで! アルティメットメイジ あなた達の後ろには 私達トリステインの民がついています!」

「女王陛下!? どうやってここに!」

驚くルイズの眼前を、シルフィードに乗った青年が飛んでいく。

「戦場に総大将がいないんじゃ話にもならないだろ? 聖下の慈愛に感謝してくれよ」
「ジュリオ! そう 聖下が・・・」

アンリエッタの号令の下、トリステイン全軍が行動を開始する。

「今こそ突撃を! イーヴァルディの女神を支えるのです!」

「あれこそは トリステインの窮地に現れるという伝説の乙女! 皆 恐れず戦うのだ!」
「銃士隊 前へ! くれぐれも乙女には当てるな」
「ヴァリエールやグラモンだけが貴族では無い! モット一族の底力を見せるのだ!!」
「大公国の軍事力は世界一イイイイイイイ!! クルデンホルフ空中装甲騎士団 ただ今到着!!」

―そして最後に、居並ぶ諸侯を掻き分けながら、トリステイン最年少の騎士団が前線に到着した。

「道を開けてくれッ! この場はわれら 水精霊氣志團が仕切らせてもらう」
「やってくれ! マリコルヌ 男をあげるチャンスだッ!!」
「オオッ!」

勢い良く上着を投げ捨てると、10人がかりで運んできた丸太に飛びつくマリコルヌ
絶叫を上げながら、ぽっちゃりとした丹田に気合を込める。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

やがて、魔法でも道具でもなく、純然たるド根性で、ゆっくりと丸太が持ち上がり始める。
その先端に取り付けられたバケモノ国旗が、烈風でタルブの大地にしかとはためく。

「よし! いくぞ!! 水精霊氣志團名物・【大鐘音】!!」
「オゥ!!」

團長・ギーシュの先導の下、全身全霊を込めた漢達のエールが、タルブの地へと響き渡る。

「フレェーーーー フレェーーーー アールティメーット!!」「フレェーーーー フレェーーーー アールティメーット!!」
「フレェーーーー フレェーーーー イーヴァルディ!!」「フレェーーーー フレェーーーー イーヴァルディ!!」


奇跡とは、偶然の積み重ねではない。
人と人との魂の結びつきがもたらす、運命のリレーなのだ。

大鐘音のエールにシンクロするかのように、今、タルブの地で、ひとつの伝説が始まろうとしていた・・・。


「今こそ 我らの玉座に正当な主を迎える時! ガリア東薔薇騎士団 及ばずながら加勢いたす!」
「貴族の勇気 今こそ見せるときだ!」

「カステルモール・・・ それにオリヴァン・・・!」



「アルビオンは我らの故郷! 一命に代えても守り抜くのだッ!!」
「ウェ! ウェールズ皇太子!? ウソ! だって あなたはニューカッスルで・・・」
「死んだハズだよ・・・かい? 言ったハズだよ 私は不死身だと!!」



「我らゲルマニア空軍・超ド級火力艦隊もいるぞ!!」
「へ 陛下御自ら・・・ そ それに・・・ あなたはまさか!?
 【かの高名なゲルマニアの錬金魔術師 シュペー卿】!? 初めてナマで見たわ・・・」

「フォッフォッフォ! サインなら後じゃ お若いの! まずは このデカブツをなんとかせねばの」



「おらおらァ~! どきなッ 国家の犬ども! 悪党のお通りだよッ!!」
「土くれのフーケ! それに 出番をカットされたハズのワルド!?」

「フッ ライバルの座から降格し 微妙な扱いのまま作者に忘れ去られるのもツライ事だが・・・
 初めからいなかった事にされるのは もっとツライからね! 助太刀させてもらおう!!」

「ハルケギニアがダメになるかどうかなんだ! やってみる価値はありますぜ!!」
「メンヌヴィル! そんな・・・ キャラまで変わって・・・!」



「皆 大いなる意思に耳を傾けるのだ 失われつつある かの大陸の【理】を取り戻せ」
「エルフですって・・・ まさか! ビダーシャルなのッ!?」
「勘違いするなよシャイターン・・・ 貴様を倒すのは 大いなる意思だッ!」



「タルブのみんな! いまこそ立ち上がるときよッ!!
 私達の住む世界を 誰かに委ねているだけでは駄目!!」

「そうだ! シエスタの言うとおりだべ!」
「力の無いオラたちにだって できることはあるハズだ!」
「女神さエールっこば届けるだ!! 大鐘音さ加わるべェ!!」

「フレェーーーー フレェーーーー アールティメーット!!」「フレェーーーー フレェーーーー アールティメーット!!」
「フレェーーーー フレェーーーー イーヴァルディ!!」「フレェーーーー フレェーーーー イーヴァルディ!!」

「負けるなァー!! アルティメットメイジ!」
「あなたの後ろには 私達がついてるわ!」
「オレ達の世界を救ってくれ! イーヴァルディの女神!!」


人々の願いが、叫びが、魂が、新たなる力となり、3人の少女を包み込む。

「あったかい・・・ みんなの思いが 伝わってくる・・・!」

「わたしたちは 一人じゃない・・・」

『これが・・・ これが人の 思いの力・・・ イケる! やれるぞッ! ルイズ!!』

「・・・・・・」

『・・・ルイズ?』


「もおおおおおお~~~ッ!! いいから見ないで~ッ!!」

「「「あ」」」

忘れていた。
世界が奇跡で結ばれてる間に、ルイズは既に、99%全裸になっていた。

世界中の人々が注目する中、少女の決定的な最後の砦が、プツンと音を立てて切れる。


「 も う  い や あ あ あ あ あ あ あ あ あ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ! ! ! ! ! 」


時間と空間を飛び越えたルイズの魂の叫びが、
トリステインに、アルビオンに、ゲルマニアに、ガリアに、ロマリアに、サハラに、聖地に、遥かな東方、ロバ・アル・カリイエに
そして宇宙の果て、太陽系第3惑星地球の島国、日本の首都・東京が誇る電脳都市・秋葉原にまで響き渡る。

『な なんというパワー! なんというMOE! こんなの初めて・・・!』
「落ち着いてえええ! ルイズ!! ハルケギニアが壊れちゃう~!!」
「ああ! そうか そうだったんだ・・・!」

「 ふ え え え え え え え え え え え え ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ん 」

まばゆい輝きの中、少女の背中の虹色の羽が世界を覆い、金色の繭がアルビオンを包み込む。
まるで時間を巻き戻すかのように、破損した大陸が修復を始め、白の国が、ゆっくりと宙に浮き上がっていく。




光が収まり、皆が気がついた時には、既にアルビオンは地平線の彼方にあった。

「俺達・・・ 助かった・・・ の か?」

「アルビオンが あんな遠くに・・・」

「女神様はどこに行ったの・・・?」

「・・・ルイズ」


アルティメットメイジの姿は、地上から消え去っていた・・・。



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