あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Persona 0-07



Persona 0 第七話


「はぁ、はぁ、はぁ……」
 使い魔たちの集会場として使われいる洗濯場でサイトは蹲っていた。
 その顔は青を通り越して蒼白で、繰り返す嘔吐と体の震えはなにかの禁断症状にでも耐えているようにも見える。
「くそ、惑わされるな。この記憶は俺には関係ねぇんだ……!」
 そう言って力任せにサイトは地面を叩く、手の皮が破れ血が滲むがそれでもサイトは全くそのことに気づいていないようだ。
 苛立ちのままに頭から桶の水をぶちまける、春先のまだ寒い時期だと言うのにサイトの体からはまるで炎のように気化した湯気が立ち上っていた。
 発作のような染みたが収まった後、サイトは地面にへたり込み乾いた笑みをこぼした。
「はっ、ざまぁねぇや」
 自嘲するその瞳には以前の彼からは信じられないけど疲れた光が宿っている。
 そんなだからサイトは気配を完璧に殺して近づいてきた相手に気付けなかった。
「動くな」
 首筋にあたる冷たい感触にサイトはゆっくりと両手をあげた。
「サイトとか言ったか、ここ数日貴様の動きを監視させて貰った」
 年若く、しかし恐ろしく鋭いものを感じさせる女性の声。
 その声にサイトは聞き覚えがあった。
「――アニエスさん」
 女性の声に若干驚いたような口調が混じり、そして若干ながらサイトの首筋を剣の刃先が切り裂く。
 薄皮一枚の傷口からはたりと血が零れ、そのくたびれた青いパーカーを新たな血で汚した。
「貴様、何故私の名前を!?」
 困惑するアニエス、そんな彼女の握った剣が大声でわめき始めたのは次の瞬間のことだった。
「おでれーた! おめぇ使い手のご同類かい。確か……」
「デルフ……?」
 まるで死んだと思っていた親友に帰り道でばったりと会ったような顔をしながら、サイトはデルフリンガーの刀身を握り締めた。
 当然刃はその掌を切り裂き傷を作ったがそんなことサイトは気づいてもいないよう。
 その際右手に巻かれた包帯がぷつりと切れ、その下にあるものを曝け出させた。
 淡く光を灯す使い魔のルーンは、こう読むことが出来る。
『ヴィンダールヴ』と。
「またまたおでれーた! 俺っちのことまで知ってるっておめぇ一体何者よ?」
 剣は鍔を鳴らし、カタカタと声をあげる。




「うぅぅん」
 夢の中で彼女は魘されていた。
 今彼女のテンションは屋敷を蹂躙された子供の頃へと戻っている。
 彼女は走っていた。
 はぐれてしまった妹を探して、必死で迷宮のような屋敷のなかを走っていた。
 何があったのかは分からないが、自分は絶対にテファの側にいてやらなければいけないと。
 だがちょうど角を曲がったところで最も会いたく相手と鉢合わせしてしまった。
 金髪の髪の王子と白髪の髪の王。
 巨大な影を持つその二人は幼い彼女に向かって杖を構え、好色な視線を向けてくる。
 逃げようと背後を見るといつの間にかそこは壁になっていた。
 彼女は意を決すると、
「変身!」
 しゃらんらーと言う効果音と共に彼女の体を光が包み、手足が伸び、その胸がばいんばいんになる。
 光はやがて黒いローブとなり、持っていたペンシル型の杖は装飾過多の伝説のステッキになった。
「地に嘆きが満ちる時、あたしはいつでもやってくる! 腐れ貴族に天誅下す、当たって砕けろが身上さ! 盗みはいつでも力技!」
 そしてマチルダは見栄を切り。
「怪盗フーケただいま参上!」
 双子の月の月光を背負い、マチルダは塔の上から飛び降りた。
 さっきまで屋敷に居たのでは? と言うのは深く突っ込んではいけない、所詮は夢だ。
 そのまま杖を振ると地面から巨大なゴーレムが立ちあがり、マチルダはその肩に飛び乗った。
「セクハラは死刑!」
 いつの間にかジェームズ一世はオールドオスマンことゲドウセクハラジジイに、プリンスウェールズは蝶の仮面をつけた青年になっていたがそんなことたぁマチルダの知ったことではない。
「やぁっておしまい!」
 そう言うとゴーレムは二人を叩き潰した、拳をあげるとぺらんぺらんになった二人が見える。
「はっ、魔法学院もこの程度かい、てんで大したこと」
 べちーんと思いっきり引っぱたかれた。
 ゴーレムの上から無理やりに振り落とされる、何事かと見てみればそこにはさらに巨大化していくゴーレム。
 その体を巨大にするための精神力が無理やりに吸われていくのが分かる、ゴーレムはその二つの瞳を金色に光らせるとマチルダを押しつぶそうと向かってきた。
「い、いや……」
 マチルダは一歩後ずさる、ぎろりとゴーレムが笑った気がした。
「いやぁぁぁぁぁああああ」



 そしてマチルダは全力で走りだした、森の中を小屋のそばをラグドリアンの湖を、逃げても逃げても追いかけてくるゴーレムを振り切ろうとするが、しかしゴーレムは影のようにぴたりと後ろからついてくる。
 逃げて逃げて、逃げた先に居たのは……
「テファ!?」
 最近胸が苦しそうな愛しい愛しい妹の姿。
 マチルダはためらいもせずその胸に飛び込んだ、豊満にて巨大な母なる胸に。
「会いたかったよ、テファ~」
 そう言いながら頬ずりする。
 けれど何かおかしい、あの顔を埋めれば窒息してしまいそうな胸がいつもよりどこか勢いがない。
「痩せたかい、ちゃんとご飯食べないと……」
「あ、ああ、あのミスロングビル?」
 氷点下以下の戸惑いの言葉にマチルダは目を覚ました。
 ゆっくりと瞼を開くと褐色の胸と、微妙に頬を染めた赤毛の娘の姿。
「すいませんがさすがのあたしも同性はちょっと」
「あ、え、ああああああああ!?」
 寝ぼけた頭が一瞬で状況を理解し、それと同時にその場から飛びずさる。
 当然狭いベットの上から飛びずさればどうなるかなど火を見るよりも明らかだった。
「あっ、痛っ!?」
 頭から床とキス、たまったものではないミス。
 そんなマチルダのことを呆れ顔で見るのは赤毛の娘とその仲間一同、皆一様に生暖かいにやけた表情をしている。
「知りませんでしたわミスロングビルにそのようなご趣味が……」
 キュルケが言った言葉にマチルダは頭に疑問符を浮かべるが続く言葉にその疑問は氷解した。
 ギーシュは薔薇を振るうと
「“大好きなテファ、もう絶対に離さないんだから!”ですか」
「ぶふぉ!?」
 思いっきり咳きこんだマチルダは全力で赤面する。
 もし彼女が部屋の隅を見ていたなら同じく赤面して自室の壁を睨みつけるルイズの姿が見えただろうが、それはそれ。
「な、なななな、な……」
「良いのですよミスロングビル、愛の形は人それぞれ、個人的には受け入れられませんが可愛い女の子が好きと言う気持ちはわかります。きっと始祖も祝福してくれるでしょう」
 その日、霧の魔法学院に一つの悲鳴が木霊した。 


ロングビルの悲鳴から三日が経った。
 今日もまた三人はいつものようにテレビのなかへと来ている。
 向かったのはついこの間見つけ出した硝子張りの真四角な石の塔が立ち並ぶ、奇妙な場所。
 今の力量にちょうど良いシャドウが現れるのと、その割に手に入る宝があまり見たことないものなのでどうしていいか分からなくなったときは此処で腕を磨くのがルイズたちの最近の行動だった。


「しかし分からないね――シグルズ!」
 ギーシュが出現させたペルソナがその右手の剣で鳥のようなシャドウを貫く、シャドウは暫くもがいていたがまるで霧のように溶け消えていった。
 ヒートウェイブ、斬撃を得手とするギーシュのペルソナの得意技だ。
「分からないって何がよ? イドゥン!」
 ギーシュが怯ませた敵をルイズが蹴散らす、悪くないコンビネーションだが出番を奪われたキュルケは不満そうだった。
 二人とも余裕があるのは既に一度倒したことのあるシャドウばかりだからで、初めて戦った時と比べて随分と二人のペルソナも成長したからである。
 ギーシュのシグルズは攻撃力を上昇させるタルカジャや敵の防御力を下げるラクンダを会得し、ルイズのイドゥンは仲間全員を回復させるメディアやメギドラを使えるまでになった。
 だからこそ最初からずっと系統魔法でのみ戦い続けているキュルケは面白くない。
 ペルソナは現実世界でこそほとんど力を発揮できないが、こちら側ではルイズやギーシュのペルソナはトライアングルクラスに匹敵しようかと言う特技や魔法を使いこなせるようになり、尚も成長を続けているのだから。
「マヨナカテレビもそうだし、ペルソナだってそうだ。何で僕とルイズには簡単に発現したのにキュルケからは出ないのかとかね? 基準は一体なんなのかな?」
 そう言いつつ更にギーシュは貴婦人と踊る紳士のような姿をしたシャドウにパワースラッシュで一撃を加える、だが今度は倒しきれず逆にカウンターで“ダブルシュート”を食らって転んでしまったが。
「うわっ!?」
「何やってんのよあんたは!?」
 咄嗟にルイズがギーシュを助け起こすが、その時にはもうシャドウの次の一撃が間近に迫っていた。
「――!?」
 レイピアの一撃が来ようかと言う瞬間に燃え上がるシャドウ。
「油断は禁物よ、ヴァリエール」
 わざわざ気取った様子でキュルケは言い、そして杖を振るった。
 炎が弱点だったのか残りシャドウたちも簡単燃え尽きていく。
「わ、私のせいじゃないわよ!」
「はいはいクマクマ。ギーシュはいつも詰めが甘いクマね」
「おっと今日はモンモランシーと約束があるんだった、帰ることにしよう」

 ――トラエスト!

 ギーシュのペルソナが蒼い光を発すると同時に意識が白くなり、気づけばルイズ達は入ってテレビから入ってすぐのエントランスに立っていた。
「しっかし便利ねぇ、あんたのペルソナ」
「ふふん、僕を仲魔――じゃない、仲間にして良かっただろう?」
「ええ、ワルキューレも雑用にもってこいだもの」
「酷っ!?」
 そう言ってみんなで笑う。
 いつの間にかキュルケと二人で始めたテレビのなかの探索は日課となり、体とペルソナを鍛えることはルイズたちのライフワークとなった。
 もっとも雨の日が来ず、サイトの行方も分からない以上他にすることもないのだが。
 みんな嫌だったのだ、もし今度何かあったと時何もできずに見ているだけしか出来ないと言うのは。
 特にルイズとキュルケはギーシュの影に負けたと言う事実も探索に熱を入れる要因である。
 もっともギーシュはただ子供のころから憧れた「英雄の理想像」とでも言うべき存在の力を自由に振るえる今の状況を楽しんでいるだけだが。
「ん? どうしたの? クマちゃん」
 その時、キュルケはいつも騒がしいクマが押し黙っていることに気がついた。
 クマは何時になく真剣な顔で、熱心に鼻をひくつかせている。
「クマたちが探検してる間に、誰か入ってきたみたいクマ」
 クマの言葉に皆の顔に驚きの表情が浮かぶ。
「まだ匂いが残ってる、こっちクマ!」
 クマに導かれて立ち入ったのは、今まで見たことない強力なシャドウが闊歩する迷宮。
 雨の代わりに剣が降り注ぎ、あらゆる方向から雪風が吹きすさぶフィンブルヴェトル城であった。
 すべてが凍てつき何もかもが白に染まるその世界は、まさしく異世界の伝説にある――“大いなる冬”の名に相応しい。
 そんな迷宮の入口から何やら声が聞こえてくる
「おーい誰かいねぇのかい? 誰でもいいから俺っちを助けて!」
 一本の剣がそこに突き刺さっている。




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