あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Persona 0-06



ペルソナ0 第六話



 あれから三日が過ぎた。
 夕刻のアルヴィーズの食堂で三人はテーブルを囲みながら、これからについて談笑していた。
「まずは礼を言わなければね、ありがとう助かったよ」
 薔薇の形をした杖を振りながら、ギーシュは笑みを浮かべる。
「しかし分からないことだらけだね、ペルソナと言う力もあの世界も」
「そうね、下手をしたら全部夢だったって言う方が納得できるくらい」
 紅茶を啜りながらルイズは答える。
「でも現実よ? 見て乙女の玉の肌にこの傷跡、堪らんないわー」
 恨みがましい言い方だがキュルケの目は笑っている。
 話を振られたギーシュはこほんと咳ばらいをして、言った。
「ともかくだね一旦整理してみよう」
 そう言ってギーシュはルイズを指し示す。
「君の使い魔、ええとテレビだったかな? あれを通り抜けるとあちら側の世界へ行ける」
「そうよ」
「けれどテレビを通り抜けられるのは力を持った人間か、それにくっついていくってことだけだ」
「ええ、あたしも試してみたけどルイズと一緒じゃないと無理だったもの」
 まだ気になるのかキュルケは爪と枝毛の手入れをしている。
「けれどルイズ、君は最初から通り抜けられた」
「ええ、そうじゃなければ存在すら分からなかったものね」
 と言うことは、だとギーシュは前置きする。
「君にはあの最初からあの世界へ行く才能があったのか、もしくはその他の何かの影響だと言うことになる」
「よく分からないけど、才能って言うのは違うと思う」
「そうクマね、そうじゃなければルイズちゃんのシャドウは出なかったと思うクマ」
 そう言いながらガツガツとデザートのケーキをホールごと頬張るまるっこい物体はまさしく……
「ク、クク……」
「「「ク、クマーーーー!」」」

 三人の声が見事にハモる。
 そうそれはあちら側の世界の住人であるクマであった。
「な、なんであんたが此処に居るのよ!?」
「そ、そうだよ。君外に出れたのかい!?」
 空になった皿をぺろぺろと嘗めながらクマは答える。
「もちろんクマ、と言うかクマがルイズちゃんたち外に出してあげたんじゃない」
 しかし自分まで外に出てこれると言うのは完璧に三人の予想外だった。
「今日も美味しいクマ、さすがねマルトーのおっちゃん」
 しかもなんだか厨房のみんなと仲良くなっているらしいことに、ルイズたちは頭を抱える。
「あんたねぇ……」
「うーん、やっぱり腹八分目じゃ満足できない、シエスタちゃんおかわりクマ!」
「あっ、はい」
 その言葉にケーキの配膳台を押していたシエスタはルイズたちの側にやってきた。
「はっ、はい。この学院で働かせて頂いておりますシエスタと申します」
 シエスタは必死に頭を下げる、よほど貴族が怖いのか――怖いのだろう。
 ルイズはペルソナを得て思ったことがある。
 魔法とは力であってそれ以上でもそれ以下でもない。
 自分も自分の影も、使っていた魔法はほとんど変わらない――同じ存在の表と裏なのだから当然と言えば当然だが、それが起こした結果は全く正反対だ。
 影の魔法はキュルケを殺しかけたが、しかし同時に自分やキュルケを救ったのも同じ魔法。
 系統魔法だって同じだ、正しく使えば人を助けるがしかし誤った使い方をすれば人を苦しめる。
 だからこそその力をどう使うかが大切なのだと。
 風の噂で聞いた魔法を悪用してスリを行う盗賊や、権力を笠に着て平民の娘を手篭めにする貴族の話を聞いていると、なおさらそう思うのだ。
「そう、ねぇシエスタ」
「はっ、はい」
「貴族って一体なんなのかしらね……」
「はい?」
 魔法は貴族の必要条件だが、しかし魔法が使える人間が必ずしも貴族として相応しいとは限らない。
 ならば貴族とは一体なんなのだろうか? それがルイズの心のなかに浮かんだ疑問であった。
「いいわ、ただの気まぐれよ、忘れて頂戴」
 シエスタが困惑したことに気づいたルイズはそう言って紅茶を啜った。
 埒もないことだとは、ルイズ自身が一番よく分かっていた。
「ところでミスシエスタ、今日はあのサイトと言う平民の姿が見えないようだが、なにかあったのかい?」
「ぶっ」
 啜っていた紅茶を盛大に吹き出しそうになったがなんとか踏みとどまる。
 だが無理をしたせいで少々咳きこんでしまった、我ながらなんて情けない。
「サイトさんは、今日は……」
 言いよどむシエスタ、その姿に何かひっかかるものを感じて問いただそうとしたが、その前にギーシュが横やりを入れてきた。
「いやいないならいいよ、すまなかったね可憐なレディ」
 一礼して下がっていくシエスタ、訳が分からないままどういうつもりなのかギーシュに尋ねる。
「あの世界に行けるのは、ルイズの部屋のテレビから、ペルソナを扱う才能のある人間だけ――ここまではあっているはずだよね?」
「ええ、たぶん……」
「ならなんで、あの平民があの世界に居たのかな?」
「――ギーシュ! それってどう言う!?」
 問いただそうとしたところ、突如として振動が食堂を貫いた。
 地震とは違う、何か巨大なものが地面を踏みしめるような振動である。
「なに!? 一体!?」
 慌てて食堂から飛び出したルイズ達が見たもの。
 それは一体の巨大なゴーレムだった。



「一体なんなんだいこいつは!?」
 学院長の秘書であるロングビルは焦っていた。
 もっともその正体は宝物塔に納められた秘蔵のマジックアイテムを狙って学園に潜入した巷間を騒がす一人の盗賊なのだが、今は彼女は秘書の仮面を外していない。
 だからこそロングビルと呼称すべきであろう。
 ロングビルは宝物庫の目録を整理すると言う名目で、人の少ない時間を狙って宝物庫の調査をしていた。
 だが分かったのは異様なまでの分厚さの壁には異常と言えるほどの強度の固定化が掛かっており、まともな手段では全く歯が立たないと言う事実だけ。
 落胆し、しかし怪盗フーケの名に賭けて必ず破ってみせると決意した彼女に災厄が降りかかったのは一旦諦めて汗でも流そうかと踵を返した時だった。
 光と闇が混じり合いすべてが橙色の影に染まる逢魔ヶ時だと言うのが災いしたのか、彼女は地面に蹲る一匹の化け物と眼を合わせてしまったのだ。
 まさに影が凝固したかのような真っ黒な体表の、犬とも猿とも付かないその体躯。
 片目に突き刺さった剣を引き抜こうともせず塔の屋根から天を見上げていたそいつは、ロングビルのことを認めると落ちるようにして塔から降りてくる。
 その黄金の瞳に睨み据えられた瞬間、ロングビルは死んだと思った。
 理由の分からない嫌悪感に押しつぶされそうになり咄嗟に杖を振るった。
 唱えるのは自分がもっとも信頼するゴーレム作成の魔法。
 影の化け物に相対するように地面から巨大なゴーレムが立ちあがり、そして……

「え?」

 ロングビルの呆けた声が響く、ゴーレムはそのまま踵を返すとその術者自身に向かってその拳を振りおろしたのだから。
 だがロングビルは自分自身の作りだしたゴーレムに潰されて圧死しなかった。
 気づいた時にはロングビルは一人の少年の腕の中で御姫様だっこで抱えあげられていた。
「え、な、なに、誰だいあんた!?」
 どこかで見たことがあるような気がしたが思い出せない。
 ロングビルが瞬く間の間に起きた信じられない出来事の連続に戸惑っている間に、少年はロングビルに当て身を食らわせる。
 ロングビル――マチルダ・オブ・サウスゴータは薄れゆく意識のなかで確かに聞いた。
「どうか“こちら側”ではテファと元気で……」
(ガキのくせになんて悲しそうなもの貌をするんだい……)
 そんなことを思いながら、マチルダは意識を失った。



 マチルダが意識を失うと同時に崩れ始めるゴーレム、だがそのゴーレムの体表を侵食するように影の化け物が触れた場所から“影”が広がっていく。
 それはまるで土と言う虫を数多の蟲が食らって穴だらけにしてしまうようにも見えた。
 彼は――サイトはそれをただ辛そうな顔で眺めている。
 数秒後、そこには巨大なシャドウを引き移したかのような黒い巨人が立っていた。
 サイトは息を吐くと右のポケットから拳銃を取り出した。
 ハルケギニアでは場違いな工芸品と呼ばれるその銃は、別の世界で“平和の作り手”と名付けられた名銃だ。
 やはりギーシュの影と闘った時のようにそのシリンダーに一発だけ弾を込め、何処に入っているのか分からないように回転させ、自分の頭に突き付ける。
 そして目を堅く閉じ、震える指で引き金を……

「ウインドブレイク!」

 突然巻き起こった爆発に、サイトは引き金を引くのを踏みとどまった。
 視界の端に映るのは桃色のブロンドを翻した一人の貴族の少女。
 杖を振りかざすその姿に堪らない懐かしさを感じ、サイトは思わず声を上げそうになったがそんでのところで踏みとどまった。
 自分にはその資格がない、少なくともこの“自分”には……
 ふと見てみるとハンマーが叩こうとしていたのは唯一先ほど実弾を込めた薬室で。
「また、救われちまったな」
 天に輝き始めた二つの月を眺めながら、サイトはそう呟いた。



 せっかく決死の覚悟をして向かっていったのに拍子抜けするほどあのシャドウはあっさりと去って行った。
 こちらの世界ではペルソナはほとんど力を出せない、だから使ったのはただの失敗魔法。
 爆発させることしか出来ない出来ない出来そこないの系統魔法だったと言うのに。
 取り残されたゴーレムはまるで熟れすぎた肉が腐り落ちるようにぐずぐずと崩れ落ち、後には気を失ったミスロングビルを抱えたサイトと言う平民だけが残された。
「これは一体、あんたは……?」
 まともに話したこともないはずなのに狂おしいほどに既視感を感じさせる青い服装の少年――スケベでお調子者でけれど大切な……あり得ない筈の記憶がいくつもフラッシュバックし、ルイズは吐き気に口を押さえた。
「俺はただの平民さ、それだけだよ」
「嘘よっ!」
 聞いている者すら不快にさせる、明らかに嘘と分かる言葉。
 ルイズは堪らず癇癪を爆発させる。
 まるで大事に大事にしまっておいた宝物を奪われ、その記憶すら誰かに持っていかれたみたいにじりじりと心が乱れる。
 何も失くしていないはずなのに、何か大切なものを奪い去られてしまったようなそんな感じ。
(あれ? この感じ前にどこかで……)
「おーい、待っておくれよルイズー!」
 そんな風に考えていたら、後ろからギーシュやキュルケたちが追い付いてくる音が聞こえた。
 それがきっかけとなったのか、サイトは床にロングビルを横たえるとルイズに向かって背を向けた。
「出来るなら全部忘れてくれ、お前が感じているのは全部ただの幻だから」
 そう言って去っていく背中を、ルイズはただ見送ることしかできなかった。
 サイトは去っていく、一体彼は何者なのか? あのシャドウとの関係は? そして一体どうやってテレビのなかに入ってきたのか?
 ただ深まりゆく謎だけをルイズに残し。
 二つの月光が夜を照らし、今宵もまた霧がやってくる。 



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