あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-06



「これは?」「黒鉄」「これは?」「陶工」
サイトは中庭で聖書と格闘していた。アンデルセンの手でハルケギニアの言語で直されたそれを読んでいく。
一度単語の意味さえ知れば以後意味がずっと解る様になる為、読むこと自体は簡単である。便利なものだ。
アンデルセンからは他にも祝福済みの銃剣二本と13課のコート、ロザリオが与えられた

「回復法術を使うにはどうすればいいんですか。」
「神に祈ればいいのです。」
(え?そんだけ?)
「瞬間移動や結界もですか?」
「ええ。」

(んなわきゃねえよな……。)
サイトは昨夜の神父とのやりとりを思い出し、溜息をついた。もしそれが本当なら地球人の内10億人が超能力者だ。
(きっと修行とかするんだ。)
と自分に言い聞かせ、とりあえず聖書を読むことから始める。そしてそんな彼に言葉を教えてくれる少女を見る。
青い髪の、小学生ともとれる小柄な少女。タバサと言う名前らしい。アンデルセンに紹介された少女は
彼の隣で本を読みながら、サイトが質問するたび答えてくれる。ふと、その無表情な少女が気になった。
「なあ、アンデルセン神父とどんな関係だ?」
「知り合い。彼に文字を教えた。」
「なんで協力してくれるんだ?」
サイトはここでの生活の中で貴族が自分やアンデルセンのような平民の言うことなど聞くことはないと感じていた。
「アンデルセンは私の目的に協力する。これはその対価。」
淡々と答える。
「目的?」
今度は答えない。気には成ったが、これ以上問い詰めるのは無粋と判断した。
「それに、あなたには義理がある。」
「え?何の?」
その時、昼時を知らせる鐘が鳴り、タバサは立ちあがる。多少引っ掛かりはしたが、自分も昼食を摂るために厨房へ向かった。



「また困ったことがあったんだよ。」
その人はこの前吸血鬼が出た村の配達員だ。彼はマルトーに話始めた。
「村に竜が出たんだ。青くて図体がこの厨房位あるんだぜ。皆怖がって仕事にならねえ。」
その話を聞きながらマルトーは首をかく。
「そんなこと言われてもなあ、竜なんてメイジが束になっても勝てねえしなあ。」
「そもそも話を聞いてすらくれねえのよ。なあ、あの神父様に頼んじゃくんねえか。」
マルトーは考える。たしかにあの神父様は強い。けれども、竜相手ではさすがに分が悪いだろう。(実際はそんなことは無いが。)
いくらなんでもシエスタの恩人である彼にそんなことは頼めない。サイトは男に聞く。
「その竜?って何か悪いことするんですか?」
「いや、そんなことは無いんだが…。」
「じゃあほっとけよ。」
「でもあんなことがあったばかりでな。」
吸血鬼事件の後、散り散りになった住民が戻って来た所にドラゴンである。村を出ようとする人間が出始めていた。
「このままじゃはしばみ草採りができなくなっちまうよ。」
はしばみ草はその近辺の山々で採れる。最近はそれを採取するのも皆怖がってできない。正直サイトはあまり好きでは無いが、
肉料理には合うし、マルトーが作るサラダは結構美味かった。
「けどアンデルセン神父は街に買い物に行ったよ。」
今日はあのルイズとかいう子と一緒に朝方出かけて行った。自分もあの子に誘われたが、悪いので断ったら何故か機嫌を悪くしていたっけ。
配達員は残念そうに俯いた。その時厨房に誰かが入って来た。
「タバサ」
「タバサの嬢ちゃん。」
彼女は無駄の無い動きで男に近づくと、彼の肩に手を置き、
「協力する。」
と言った。マルトーが怪訝そうに言う。
「そりゃ、タバサ嬢ちゃんはこの学院随一のメイジだが、相手は竜だぜ。そもそも何だってそんなことするんだ?」
サイトはマルトーの評価に驚いたが、タバサはその表情をいくらも変えず言う。
「何も倒す必要は無い。おそらく迷い込んだだけだから少し驚かすだけでいい。それに…。」
タバサは厨房を出る。
「はしばみ草がない食事は…味気ない。」


「で?どうやって行くんだ?馬は?」
サイトとタバサは中庭に居た。タバサはじっとサイトを見る。
「ついてくるの?」
サイトは、ドラゴンというファンタジーの中のファンタジーを是非見たいと思った。それは強くなりたいからと、
あの狂信者に弟子入りするほどの冒険心の持ち主(命知らずとも言う)ならある意味当然と言える。
「戦績は?」
「えっと…一応吸血鬼に引き分けそうでした。」
タバサは黙考する。話半分に少しは相手になったレベルとしても学院のお坊ちゃん達よりは使えるだろう。
「分かった。けどドラゴンは普通の吸血鬼など問題にならない存在。間違っても戦おうとしないで様子を見ること。」
サイトは真剣な顔で頷く。タバサは続ける。
「私の使い魔で行く。空を飛べば一、二時間程度でいける。」
そう言われ、サイトは目の前の少女の使い魔を想像する。グリフォン、ペガサス、もしかしたらこの子もドラゴンかも知れない。
少しワクワクして来た。タバサが後を見る。
「来た。」
その姿を見て彼は拍子抜けした。

それは一組の男女だった。


男の方は長身に長い茶髪を結んでおり、左目に眼帯をしている。女性は金髪であり、アホみたいに巨大な大砲を背負っている。
二人ともどこか軍隊を思わせる格好をしている。しかし、サイトの最も注目したところは女性の一点。顔。
(ちょ…超美人)
その女性の美貌は彼の美人という概念を塗り替えてしまった。おもわず見とれる
「タバサ嬢ちゃん。準備できたぜ。」
男の声で正気に戻り、とりあえず彼女に聞く。
「2人?使い魔って一人一体じゃないのか?」
「始祖ブリミルは四人の使い魔を使役した。二人でもあり得なくはない。」
そういうものか。そしてタバサはそれだけ凄いメイジと理解した。
「男の方はピップ・ベルナドット、女性はセラス・ヴィクトリア。」
「どうぞよろしく。」
「あ、どうもヒラガサイトです。」
そう言い男と握手する。優男に見えたが、その実サイトよりも全然力がある。おまけに近くでみると背が高い。
そして隣の女性と握手しようとする。よくよく見ると本当に美人でどこか愛らしさがある。おまけにスタイルも抜群であり、
思わず目を逸らしてしまう。しかしそこであることに気づく。女性の目に戸惑いがある。セラスは彼の胸のロザリオを凝視する。
「プロテスタントですか?」
「NO NO NO」
「東方正教ですか?」
「NO NO NO」
「カトリックですか?」
「YES YES YES」
「もしかしてアンデルセン神父の仲間ですか~?」
「はい、そうです。」
瞬間彼女は悲鳴を上げ、逃げ出した。


「レビテーション」
彼女の体が浮き、じたじたと暴れる。タバサの魔法だ。
「逃げない。」
「アンデルセン神父と知り合いなんですか?」
サイトが宙でもがくセラスに訊ねる。セラスは話し始めた。
「実は私、元居た所では吸血鬼を狩る仕事をしてまして、その仕事でアンデルセン神父と鉢合わせ、いきなり7本いや8本だったかな?
の銃剣を突き刺されて殺されかけ、一時期なんとか怖くなくなったけど、こっちきて何か布教してるし、
マスターとしょっちゅう喧嘩してるし、やっぱり神父は怖いですありがとうございました。」
言っているうちに自分で落ち着いてきたようだ。そしてサイトは彼女の正体に見当を付けた。
「ああ、つまりあなたは吸血鬼なんですね?」
サイトの言葉にまたパニックを起こすセラス。
「ななななな何でわかったんですか?」
どこの世界に銃剣を10本近く刺されて死なない人間がいるのだろうか。とにかくパニックを起こす使い魔。なだめるベルナドット。
その主人はじっとサイトを見ている。サイトは頭をかいた。
「まあ、タバサには世話になっているし、特に人を襲ったりしなければ戦う気はないし、そもそも俺一人では勝てないですし。」
その言葉に静止するセラス。しばらく沈黙し、徐に口を開く。
「あなたもしかして…常識人?」
「常識あっちゃ悪いですか?」
セラスは泣きながらサイトの肩を叩く。
「そのまま大人になってね。おねがいよ。」
頷きながらもこの人はかわいそうな人だな(頭の中身的な意味で)と思ったサイトだった。
「おい、そろそろいこうぜ。」
ベルナドットが三人を呼ぶ。その手に持たれている巨大なものを見る。
「……籠?」


セラスが体を翼に変え、飛んで行く。彼女は籠をロープで吊るし、その中にサイト達は居た。意外といい乗り心地と、いい景色にサイトは喜んだ。
かなり早いスピードだが、タバサの魔法で風圧はほとんど感じない。その中でサイト達は互いのことについて話し合った。
特にロンドンの話にサイトは驚いた。表向きはテロ事件で処理されていたが、あの世紀の大虐殺が吸血鬼のものとは初めて知った。
「オカルトっすね。」
「まあその時に俺は死んでセラスに血を吸われてな…、まあ意識はあったんだが一つになってた。
それがだ、こっちの世界に呼ばれてからなんだか知らねえが体が復活してな、ほんとタバサ様々だぜ。」
そう言い笑いながらタバサを撫でるも、彼女は表情を変えないで本を読む。
ふと、サイトはアンデルセン神父も死んだ筈なのに召喚されたことを思い出した。一体どういうことかとしばし空を見て考える。
ふと空を飛ぶセラスを見て重大なことに気づく。
(あの人…スカートじゃん!)
首を横に振り煩悩を振り払う。葛藤している所、ベルナドットが視界に入る。
彼は凄く頑張っていた。その姿は、
(ああはなるまい)
とサイトに思わせるには十分な無様さだった。何かを悟った様な心境になる。
ふいにタバサは立ちあがった。眼下にはあの村があった。タバサは小さいが通る声で言う。
「セラス、あなたは翼人。」
無用な混乱をさけるためだ。その後サイトと自分を指でさし、「チーム」と言った。その後ベルナドットとセラスをさし、三人は頷く。
「絶対単独で戦わないこと。無用な刺激はだめ。知能が高い竜なら交渉できるかもしれないし、ダメでも四人なら追い出すくらいはできる。」
作戦は決まった。


村に降りる彼らに、村人達が何事かと寄ってくる。サイトは事情を説明する。ふと、村人達が女性と老人、子供ばかりなのが気になった。
「男の人達はどうしたんですか?」
村長らしい老婆が困り顔で言う。
「皆竜を追い出しに鍬持って行きましたよ。」
サイトはタバサを見やる。タバサはぽつりとつぶやいた。
「面倒。」


「銀の武器はありませんか?」
トリステインの城下町の武器屋、長身の神父が居る。その隣には桃色の髪の少女。ルイズはアンデルセンに武器を持たせることにした。
正直アンデルセンは乗り気ではなかったが、どうせ貰えるならと対吸血鬼用に銀の武器にしようと決めた。しかし、主人は首を横に振る。
「なんでも大陸中で吸血鬼が出るってな噂でね?実際に村が消えたり人が消えたりってな事件がそこいらであるから、
銀の武器ってのはもうそりゃ、飛ぶ用に売れている訳で今品切れなんですよ。」
その言葉に二人は顔を見合わせる。
「確か、この辺でも出たんじゃないですか。まあ、それは三人組が退治したって話だが。」
「三人組とは?」
「何でもコートを着たガキとメイド姿の剣士、それにバーサーカーって言うんでさあ。笑っちゃいますぜ。」
アンデルセンは苦笑する。自分でも的を射ていると感心する表現だ。
「こまりましたね、では銃剣はありますか?」
「?いや無いですが。」
「そうですか…。」


「は、武器選んでる暇が有れば腕鍛えろ木偶の坊。」
声のした方を見る。誰もいない。
「こらデル坊、客に喧嘩売るんじゃ無え。」
ルイズは剣の山にあるひと振りを掴みだす。
「へえ。インテリジェンスソード?珍しい。」
アンデルセンがそれを取り、見つめる。錆びだらけだが、切れ味を失っていないそれはなかなか良いと感じた。
「?……おまえ、四番目だと?!」
「ちょっとなんだっていうのよ。」
突然騒ぎ出した剣にルイズが抗議する。
「いいか、よく聞け嬢ちゃんこいつの胸のルーンはな!!……………」
「何よ?!」
「何だっけ?」
その言葉にルイズがずっこける。
「あのねあんた……。」
「いや忘れたんだよ。こちとら六千年前から生きてんだぜ?」
ふむ…とアンデルセンは唸る。普通の剣よりはこういう霊的な物の方が奴らには幾分か有効だろう。
「これにしましょう。」
「ええっ、こんなの?」
「なかなか名刀なようですし。それに見た目と性能は別ですよ。」
「いいこと言うじゃねえか。まあ使われてやってもいいぜ。」
さっきまでと打って変わり友好的な剣。100エキューと安かったこともあり渋々ルイズは承諾した。
「半分も残っちゃったわ。」
「………嬢ちゃん。200エキューじゃ銀のは買えねえよ。」
アンデルセンの溜息は宙に消えた。


男達の悲鳴が聞こえる。捜索を始めていたサイトとタバサは急いで声のする方へ行く。みると男たちが竜に対峙していた。
サイトは竜の方を見る。男たちに怯えたようにずり下がっていく竜を見て、サイトは拍子抜けた。
「何だ、恐がってんじゃん。」
タバサも頷く。しかし男たちも怖がっており、さらに、止せばいいのに武器を構え近寄って行く。このような状態の時、人は突拍子も無いことをする。
男たちの中の一人が銃を構えた。そして、爆ぜる音と共に銃弾が竜の横を掠める。その瞬間、それは起こった。
竜が翼を広げると巨大な風が巻き起こった。塵のように吹き飛ぶ男達。
「余計なこと。」
タバサが頭を掻きながらぼやいた。

「人間来ないで!人間来ないで!」
サイトはその声に驚く。その声は青い竜から発せられていた。
「タバサ!あれ何だ?!」
サイトは丈夫そうな木の影に隠れるタバサに聞く。
「韻竜、言語能力を持ち、先住魔法を操る竜。」
「先住魔法?この風のことか。」
「そう」
サイトと会話をしながら、タバサは懐から本を取り出し、読み始めた。
「おい、何してんだ?この非常時に?」
「どうしようもない。」
随分割り切るんだな、と思いながら、サイトは考える。あの竜だってそんなに怖いならとっとと逃げればいい。
ってことはこの竜は逃げられないってこと。
ってことは……。
サイトはコートを脱ぎ捨て、竜の元へ向かった。


最初は彼がなにをしようとしたのか、解らなかった。彼はあの嵐の中を進んでいく。
一歩一歩、
向い風にさらされながら。
飛んでくるものに傷つきながら。
風の刃にさらされながら。
肩口に大ふりの枝が突き刺さる。
それでも歩みを止めない。
そして風は止んだ。
彼は韻竜の頭を優しく撫でている。彼は振り向き私を呼び寄せる。
「魔法で治療してやってくれ。やっぱり翼を怪我してる。」
どう見ても治療が必要なのは彼のほうだろう。切りキズは無数で、出血は命に関わるように思える。
「私では、韻竜は治せない。」
本当は他のことが言いたかった。彼は肩に刺さった枝を引き抜き、呟く。
「まじか…アンデルセン神父を呼ばなきゃ。」
そこにぞろぞろと村人達がやって来る。手に武器を携えて。本当に余計なことばかりする。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
彼は慌てて村人達を押しとどめる。
「なあ、あいつ怪我してるんだ。頼む!助けてやりたい!」
そう言い彼は膝を付き、村人達に頭を下げた。その姿を見て彼らも戸惑う。
何で見ず知らずの竜の為にそこまでするのだろう。
そう思いながらも私は彼に習い、頭を下げた。


「神父!アンデルセン神父!」
帰路の途中、上空からの声にアンデルセンとルイズは振り向いた。空から大きな籠を持った、羽の生えた女が下りて来る。
彼はその姿に覚えがあった。
「セラス・ヴィクトリア!!!」
大量の銃剣を、大声に怯む吸血鬼に対し投げつけようとするアンデルセン。それを走って来た少年が止めに入る。
「待って下さい!神父!大変なんです!」
少年はかいつまんで事情を説明する。アンデルセンは銃剣を構えたままだ。
「事情は分かった。」
アンデルセンはタバサを見る。
「吸血鬼が使い魔だったのだな。」
「…あなたが怒ると思った。」
アンデルセンは小柄な少女と、すがる少年と、逃げ腰な吸血鬼、ジド目の主人と順番に見る。
「ドラキュリーナ」
「ハ、ハイ!ナンザンショ??」
アンデルセンは溜息をつきながら籠に乗り込む。
「急ぎなら急げ。」
喜ぶ彼らを見て、(俺も微温くなったな…。)と独り思った。




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