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虚無の鍛聖-02


虚無の鍛聖  第2夜 出会いはピンクと双子の月(後編)

ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ、ぎんっ…!!

振り下ろす度に赤い火花が咲いて散っては消えていく。たった一瞬の、でもそれ無しには得られないモノの為に存在する欠片。
小さな頃から見続けてきた。父さんがハンマーを振るう姿も、親方や友人達が熱い鉄を見る間にすごい作品に仕上げて行くのも。
ボク自身もずっと見続けてきた、そしてこれからも見ていくだろう光景を。ただ無心に金属と向き合う為に。
ただ力任せに打つんじゃ駄目なんだ。それはタダの物にしかならない。ボクらが作るものは道具なんだ。人が使う為の特別なものだから。

「クリュウ様、そろそろ…」
「うん、あと4回。…よし、これでいいかな。あとは冷ませば完成だね」
「滑車ですし、研磨もしなくちゃダメですよクリュウ様。それにしても……ちょっと不便ですね、使えるのが井戸水だけというのも」
「川がかなり遠い場所にあるから仕方ありませんよ。何でも、ここは魔法を学ぶのに国でもっとも良い土地だとか。お茶持ってきたんですけどどうですか?」
「何かを封じ込める為、とかじゃないですよね?…はぁ…ノドが元に戻ったぁ…ありがと、シエスタ」
「そうそうそんな場所はあるものじゃありませんよクリュウ様。私も頂きます。…ふぅ、やっぱり働いた後のお茶は美味しいですね」
こっちのお茶は発酵させちゃってからの葉を使うからなんか酸っぱい匂いで味も渋いけど、それでも美味しかった。
シルターンやハヤトさんの元の世界の住んでた国ではお茶の葉は発酵させずに蒸したり、乾かしたものを使ってお茶を作るらしい。
ボク自身もそっちをお茶だと思って育ってきたから未だにちょっと慣れない。苦くて後味の甘いお茶、飲みたいなぁ…砂糖菓子と一緒に飲めたら最高なんだけど。
そういえば、こっちの料理ってどんな物なんだろう。カレーはあるのかな?

「マルトー、彼はどこに……おお、ここにいたかクリュウ君。お取り込み中だったかね?」
「いえ、今ちょうど終わりました…ただの応急処置ですけど。わざわざボクなんかの為に来て頂いて光栄です」
「…行きましょう。オールド・オスマンも待っていらっしゃいます」
「はい。シエスタ、その滑車は明日の朝まで冷やさないと使えないって伝えておいてくれるかな。それじゃ、また後で」


カツン、カツン…と鳴るかなーとか思ってたけど、この廊下は走っても黙ってる。魔法がかかってる様子は無いみたいだから建材の関係かな。
柔らかい石、堆積岩か、急激に冷えて出来た火成岩、軽石の類かな?魔法で強化してあるにしては風化もしてる。

「君は貴族が嫌いらしいですな。分からないではありませんが、ここ(の世界)で言うのは控えたほうがよろしいですぞ、クリュウ君」
「……良ければ、聞かせてもらえませんか?コルベールさんが他の貴族と違う理由を」
「!……まだ話す気になれませんな。私は君を信用したわけではありませんぞ。ただ、貴族が君の信用に足らない者だけでない事を知ってもらいたいですな」
「それとこの学園の代表の人と会う事の関係はあるんですか?…監視までされながら」
「それも向こうの方が話してくれると思いますよ、クリュウ様」
「全部お見通しというわけですか。まったくもって…」

(かんかんっ)
「コルベールです。件の少年と精霊の少女をお連れしました」
「うむ、入りなさい。…それから、武器は置いて来るように言ってくれんかね。何か起こされると怖いのでな」
「断るってボクが言ったらどうします?この言葉は嫌いなんですけど…そっちが魔法を使えるのにこっちには武器を持つな、なんて不公平です。
もし無理矢理にでもと言うならこの話は無かった事にさせてもらいます。魔法を一切使わないという保障は一体誰がしてくれるんですか?」
「よいじゃろう。ミスタ、我々も杖から手を離そう。始祖ブリミルの名に於いて誓う、一切魔法は使わんよ。…入って来てはくれんかね」
「しかし……」
「神様か誰か知りませんけど、自分に誓えない、ここにいない人に誓えない様な人達とじゃ話になりませんよ」


(…ざけて…ふざけてんじゃないわよ!!)
声が聞こえた途端に冷めていた頭が一気に沸点を通り越した。鍛冶屋らしく熱いものが得意(しかも無自覚)な人間だとまだ私は知らなかったから。
つかつかつかっ!!とそれでも歩き方は崩さずに詰め寄って睨みつけた。

「何様よアンタ!!偉大な始祖ブリミルにまで誓われてそれに従わないなんてそれでも人間なの!?エルフの回し者じゃないでしょうね?」
「ボク達にとって神って実際にサプレスにいる存在だし従うとか誓うとか分からないよそんなの。エルフ達は善良な民族らしいよ?回し者って何なのさ」

この場にミスタ・コルベールがいなければ私は目の前のキョトンとしながら怪訝な表情の―――随分器用だ―――彼を蹴り飛ばしていたに違い無い。

「ルイズさん、落ち着いてください。クリュウさまや私がいた世界はそういうものなんです。こっちの世界の事は常識ではないので…」
「凶悪なエルフが善良ですって?神が実際にいるなんて見た事もないクセに!!」
「実際あったよね?パリスタパリスも炎氷で一対の精霊だけど確かそれくらいのはずだったから。他にも召喚されてたのを見たよね」
「サプレスにいた頃は毎日、年月の概念は薄いので頻繁にという事になりますがお会いしてました…キュハイラさん達も位としてはそのレベルです」
「エルフ達には会った事はないけど…それも思い込み激しすぎるんじゃないかな。何か証拠でもあるの?」

あくまでマイペースで『絶対者なんていない』みたいな顔をして『何を言ってるんだこの相手は』というスタンスを崩さない。
それを無礼だとか思っていない。相手が誰であったとしても自分を変えない。王でさえ相手によって態度をころころ変えるというのに。
ギーシュみたいなマイペース極まりない―――ある意味では凄いと思う――人間でさえ上の立場に従い言葉遣いさえ変えるのに。
コイツ以上の異端はそれこそこの世界にはエルフ程度だと思う。革命起こそうと考える平民や貴族とは方向性が違いすぎる。
根っこからして全部違う。異世界なんて何の冗談かとか思っていたけれどいよいよ笑えるどころか背筋が寒くなってきた。
こいつらは何なのか、推察してみようなんて欠片でも考えた私のバカさ加減に腹が立つほどに。

「…話し合うかはともかく、入ってくれんかね。元々秘密裏に話すためにここに来てもらったのだからの」
「………。分かりました、学長さん」
「心配なさらないでください。クリュウ様には私がついてますから」

ミスタ・コルベールが先にドアを開けて入り、その後に精霊、その後に私、最後に彼がゆっくりと入って音も無く閉めた。
部屋の中には明るさが満ちていて、部屋の隅に置かれた魔力の光が眩しくない程度に、私達の影を伸ばす事無く仕事をしている。
オールド・オスマンは私達をひとしきり見回すと、どうしたものかという表情で紫煙をひと吹きした。

「クリュウ、だったかね?君が異世界から来た事はわしも確認しておるよ。じゃからこの世界の事も知らんのは仕方ないじゃろうな。
しかし…場があまりにも悪かったのでは無いかね。如何にこの場にいるのが子供であるとはいえ、いや、だからこそ止まれない事を知っておるはずじゃ」
「つまり何なんですか?何を言いたいんですか」
「分かっておるのではないのかね、貴族がどんな生き物であるのか。適当にやり過ごせばいいではないのかね?…これでも回りくどいのぅ。
ざっくばらんに言わせてもらおう。本当に君達はサモン・サーヴァントという魔法を知らないのかね?分からぬ事が多過ぎてワシも全てを聞く気になれぬが…
本来、召喚用のゲートは召喚されるものしか通過できぬ仕組みになっておるのじゃよ。そこにおったとしても通る事は叶わぬ」
「つまりボク達を疑ってるんですよね、どこかから侵略しに来たんじゃないかって。そうじゃなくても、変だと思ってるんですよね」
「……ふむ。君には回りくどい言い方でも隠す事は無駄じゃな。その通りじゃよ。悪い人間には見えん。じゃが、信用ならぬのが本音と言えよう」

ミスタ・コルベールの顔から真剣な意味での冷や汗が流れるのを見たのは初めて―――というか昼間は見えないし、あまり話した事も無いけど。
私の方はと言えば、卒倒寸前だった。シュガレットの笑顔が流石に引き攣っていたのに妙な親近感を覚えた。



「ミスタ、呆れさせてしまっている所を悪いが本題に入ろうと思う。帰ってきたまえ」
「私は最初からここにいます。…ミス・ヴァリエールの件についての事でよろしいですね?」
「うむ。クリュウ君、他の全てをあえて忘れるとして、改めて言う。その少女の使い魔になってくれる気は無いかね」
「無いです」
「ま…そうじゃろうな。この世界で魔法を使えない存在が低く見られておる以上は普通の平民として生きていった方が余程マシになろう」
「召喚された以上従えとか言うのは無しですよ?」
「分かっておるよ、君を無理矢理引き止めるよりは行かせたほうが双方にとって害が最小限で済むという事くらいはのぅ。そうしたいのじゃが…
それではヴァリエール家とミス・ヴァリエール、生徒達に対して示しがつかん。貴族にとってメンツを潰される事は怖い事じゃからな。
条件をこちらがいくらか飲むという事で、彼女が卒業するまでの使い魔役を引き受けてはくれんかね。その後も君達に協力もしよう」
「こっちが断ったらどうしますか?条件も何も要らないからとっとと開放してください、って言うのが普通かもしれませんよ」

というより、そうしたいのが本音かな。ここにいたって何か得られるわけじゃない。むしろ色々やりにくくて仕方無い。…うん、普通だよね。

「ストレートじゃのぅ」
「嘘をつくのも吐かれるのも苦手ですから。話にならない冗談や例え話なら構わないですけど今回はボクらにとって大事です。そこまで言う理由は?」
「まあ大っぴらに言えば彼女の家の影響力の大きさが相当な物である事が言えようが、もう1つあるのう。彼女もまたワシらの教え子だからじゃよ。
君に迷惑をかけてしまう事よりもそちらをどうにかしたいと思っとる。使い魔は本来一生仕えるのが常じゃが…卒業したらまた他を呼べば良いからの」
「解りました。それじゃ、これは商業的契約の取引きとしてもいいですよね。鍛冶屋であって、傭兵や兵士じゃないですけど商売人ですから」
ここが、ボクにとって歩み寄れるギリギリの線だ。

す、と、音もなくシュガレットが歩み出る。歩み出るという言葉を使うべきかは分かんないけど。

「もう一つよろしいでしょうか。相手が誰であれ命を奪う事をさせるというのなら容赦無くこちらから契約は破棄させて頂けないと困ります。
私達は確かに武器を作ってそれを人々に売る事で暮らしてきました。…ですがその武器を私達が作るのは戦争の為でも殺戮の為でもありません。
遠い昔に、私達の世界をも含めた5つの世界でも戦争が起こりました。
その時に多くの精霊や異世界の存在が人々を脅かし、人々は戦う為の武器を作り出しました。
ですが、それは自分達の野心の為でも殺戮の為でもなく、大切なものを守る為の物として生み出された物です。
その為の武器を作る為に私達がいます。武器は間違い無く他者を傷付け、命さえも奪う物です。それは否定しません。
私達の作った武器が誰かの命を奪ったかもしれません…だからと言って武器が生み出されたその理由を私達が否定する事は許されません。
私達は武器を生み出した人々の誇りを受け継いでいます。
そこがどこであれ、どの様な状況であれ、どの立場であれ私達が鍛冶師であるという事に変わりはありません。理解していただけますか?」

シュガレットがこういうサポートをしてくれるから、ボクはきっとここまでこれたんだろうと改めて思う。
この世界では精霊はあまり一般的ではなくて、貴族や王族であっても敬意を払われる存在であるというのも幸運だったかも。

彼女の以前よりも伸びた銀色の髪が彼女の動きに合わせてふわりと揺れ動くのを見て、今更ながらに綺麗だな……と感じられた。

「ミス・ヴァリエール、言いたい事があるのなら言いなさい。先ほどからそのように頭を真っ赤にさせたままでは煮えてしまいそうじゃからの」
「…こんな屈辱を受け入れろと仰るんですか?」
「ワシとしては彼ら以外に解決策は思い浮かばんがのぅ。それとも、いるはずの使い魔を探しに旅にでも出るかね?あてもなく。
使い魔は下僕でも奴隷でもなく契約した魔道士の友となるべき存在じゃよ。奴隷や下僕ならゴーレムでも作ればよい。奴隷が欲しいかね?」

「要するに自慢できる使い魔で自分の言う事を聞いてくれる子が欲しいって事ですか。酷い侮辱ですね」
「シュガレット。後はそっち次第でいいです。お互い事情が分かっていないのに今決めても仕方ないですからその辺りは状況に応じてお願いしていいですか?」


「……あんた達には私を納得させられるだけの技能があるっていうの?」
「学園長さん、ボクは貴方が相手でも構わないです。誰が相手でも構いませんよ?満足できるものを作って見せますし、どんな相手にだって勝ってみせます」
「クリュウ様!!」
「彼女が納得してくれない事にはどうしようも無いのが現状ですよね?何でも構いません。彼女が納得できるだけの相手を用意してもらえますか」
「じゃあワイバーンだろうとドラゴンだろうと打ち倒して見せてくれるのね?スクウェアクラスのメイジでもいいって言うの?」

答えなんて決まってる。けどドラゴン100頭とか来られたら流石に死んじゃうかも…。ていうかドラゴンってシルターンの?サプレスの?どっちにしてもキツそう。

「―――――――何人だって構わない。騎士団を連れてきてくれたって勝ってみせるよ。それで納得してくれるならそれでいい」
だけどそこで引き下がるわけにはいかない。最初から後ろが無いこの世界ではどの道後ろなんて無いんだから好都合だ。
ボクが、鍛聖がその程度でいい筈無いんだから。……いつの間にか、自分で自分の事を鍛聖って言うようになってる。気をつけなきゃ。

「いいでしょう。オールド・オスマン、私はこの条件、飲ませていただきます。…明日、学院の食堂に張り紙を出して決闘相手を探し出して……
このバカを脳天から尻尾の先まで叩きのめす相手を選び出して完全に根本から叩き直してやります!!それでは失礼します!!」

バンッ!!!!と叩きつける様にドアを開け放ってずかずかという擬音ピッタリに出て行った。…なんて分かりやすい子だろう。
サナレやヴァリラも似たようなものかな。素直じゃなくてプライド高くて自信が…………あ。そっか、そういう事なんだ。
彼女の場合、その自信や実力が無いんだ。高慢でも不遜でもなくて、ただの見栄っ張りな空っぽの意地。それ以外の物を見ていない。それ以外だってあるはずなのに。
ただの推測でしかないけど、多分当たってるんじゃないかな。そうじゃなかったら、あんな―――――――――――――泣きそうな眼にはならない。

「良かったのかね?貴族と争う事になってしまったが」
「何度か経験があるので大丈夫ですよ。後は明日次第でしょうね。ボクはこれで失礼させてもらいますコルベールさん。失礼します、学園長」
「・・・クリュウ様、私は少しお2人にお話が。庭で待っていて頂けますか?」
「うん」

なんだろう。以前にもそういう事はあったんだけど、シュガレットはごく偶にこうやってボクを遠ざけようとする。
この時の彼女は決して引き下がってはくれない。そんな時の母さんと同じ目なんだって事、シュガレットは気付いてるのかな?

誰もいない廊下を自分1人分の影が傾いだり分裂しながら青い光の下を歩いて行く。月の光の色はこの世界でも変わらないんだな。
ハヤトさんもきっとこんな、もっとどうしようもない気持ちでリィンバウムに来た日を過ごしたんだろうな。言葉が通じてもそれ以外は全然分からない何もかも違う世界。
それを思えば、ボクの場合は遠くの召喚術の無い別の遠い国に来たと思えば何とかなる。何せ、誓約者(リンカー)がボクの事を知ってくれているんだから。
……………それって、何年後?早くて5年くらいだよね。シュガレットはサプレスと行き来出来るだろうから、それを応用して何とか知らせる事は出来るけど、そこまでだ。

廊下が途切れて、草が刈って整えられた庭へと続く入口。
そこには、蒼い竜がいた。この学園に飼われているのか個人の騎竜なのか、それともただ単にここで翼を休めているだけの通りすがりかは分からないけど、そこにいた。


「きゅい」(こんばんはなのね)
「え、ええと、こんばんは」
やたら大きかった。地下迷宮に住んでるドラゴンの倍以上は余裕であると思う。翼の大きさからして、あまり地面を歩かずに飛ぶことを生活の移動手段にする種類かな?
眼は優しい柔らかい視線だから、多分大丈夫。……いざ襲われたら手加減できないだろうから、それはなるべくなら避けたい。
じー、と見つめてくる視線は、疑念というよりはむしろ好奇心の様な雰囲気。……どうか「どんな味かな」とかじゃありませんように。

「きゅい。きゅい」(こっちこっち!)

何か呼んでるので近づいてみる。どことなくしなやかな感じを受けるけど女の子かどうかは分からない。シュガレットなら分かるだろうけど、ボク人間だし。
水の入っていないバケツのつるを咥えるとボクの前に突き出す。どこか困っているような目…の様に見える。何となくだから当たっているかは分からないけどね。

「水を入れればいいんだろうけど、水を入れるとしたら井戸…って、ああ、そうか。洗濯物ならまだしも、飲み水は美味しい物が飲みたいって事か」
「きゅい」(正解!)
「うん、任せて。井戸の場所なら知ってるから、待っててくれるかな」

昼間に井戸の水を使ったのも、そこの水が鉄を冷やす為に使えるくらいに冷たくて綺麗だったから。……竜だから生水で冷たくても大丈夫かな?
ガッシャガッシャと上下させるポンプ式では無くて、本当に水の溜まっている所まで滑車を回す古いタイプ。ひょっとして、ここではまだ作られてないのかな?
蒸気機関も無いなんて、それこそリィンバウムでも田舎の村くらいのものだけどこっちではそうでもないらしい。
大変だよね。お風呂の習慣も無いみたいだし、汗のついた身体のまま着替えをしなきゃならないのかな?
「お待たせ。さっきのバケツ壊れてたから新しいので………持…」
「―――――――――――おかえりなさいませくりゅうさま」
「きゅい」(おかえりなさーい)
「………」

――――――――――――竜が助けを求める目を出来る事を始めて知りました。笑顔がブチ切れた時の顔よりも怖いと知りました。人間よりも竜を身近に感じました。
「あー…その、ボクはそのコの為に」
「ええ、それは分かってます。…ですが何故そのコと一緒に先ほどの女性がいらっしゃるんですか?」(にこにこ)
「知らないってば。本当に知りませんホントに!!」
「……それは本当。………シルフィードが迷惑かけて悪かった」
「いいよ、ボクが自分からやろうと思った事だから。シルフィードっていうんだ。…タバサ、だったよね。シルフィードに水あげてもいいかな」
「クリュウ様は種族を問わずに女性に優しいんですね。そして知り合った女性の前でまた新しく女性に声をかけてしまうんですよね優しい方ですから♪」(にこにこ)
「……きゅい」(う…ここは一旦退却するべしなの)
あ、逃げようとしてる。女の子だったのか。

「シルフィード、はいお水」
「きゅい♪」(あ、お水!!)
「……………」
「……………………」
「別に誰かだから優しくするとか、そんなつもりは無いんだけどな。シュガレット、先生達と何話してたの?」
「『武器と相手はこちらで指定する。明日の正午に今日2人が現れた場所に』だそうです。そのついでにルイズさんの決めた相手とも決闘しろと」
「武器は向こうの指定かぁ。疑いたくないけど、保険くらいはかけるだろうね。魔法の鎖や蔦でボク達を拘束するくらいは」
というか、ルイズさんが何もしないとは思えない。あの後1人だけ歩いて帰ったのが気になってたし。

「そうですね。悪い方々ではなさそうですが、それでも私達は異端な存在には違いありません。私も警戒はしておきますクリュウ様」
「………………………もいい」
「「えっ?」」
「……試合前に出来るなら解呪してあげてもいい」
「きゅい?」(お姉様?)

「そのかわり私に協力してほしい」
表情は硬いままだけど、目には強い力がこもってた。

「人殺しや悪い事は出来ないよ?」
「………………その時になったら言う。そちらでするかどうか決めてくれていい」

振り向きもせずに立ち去って行った彼女の背中がその小さな身長よりも小さく見えたのは気のせいだったのかな?



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