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魔術士オーフェン使い魔編-1

「あんた、何?」 
 気がつくと目の前に見知らぬ少女がいた。
 というか見知らぬ場所にいた。
 抜けるような青空と豊かに広がる草原をバックに桃色の髪をした少女がえらくシンプルな質問を問い掛けてくる。
 自分はついさっきまでトトカンタにいたはずなのだが。
「……と、言われてもな。君こそ誰だ?ていうかここどこだ?」
 あまりにも唐突で混乱することすらできない。呆然とした状態で思わずオーフェンは聞き返してしまう。
「質問してるのは私よ!いいから答えなさい」
「……オーフェンだ。家名はない」
「ってことは平民ね……。まあ格好から予測はしてたけど……」
 つい反射的に答えてしまってからオーフェンは自分の質問に答えてもらってないことに気がついた。
「いや、ちょっと待て。こっちの質問にも答えてないぞ。ここはどこだ?君は一体……」 慌てて質問をしようとするオーフェンだが、それは途中で大勢の人間の笑い声に遮られた。
 ぎょっとして周りを見回すと、そこには目の前の少女と同じぐらいの年恰好の少年少女達が自分達を取り囲むように人垣を作っていた。
「ルイズ!ゼロのルイズ!使い魔を召喚しようとして平民を召喚してどうするんだよ!」
「しかも、見ろよ!あの平民の目つきの悪さ!あれは絶対どこかのチンピラだぜ!」
「使い魔を呼び出そうとしてチンピラを呼び出した!さすがはゼロのルイズだ!」
 周りの少年少女達は笑いながら目の前にいる少女をはやし立てる。
「う、うるさいわね!ちょっと失敗しただけよ!」
 少女は顔を真っ赤にして抗弁していたが、周りの連中は笑って取り合わない。
 それのやり取りを見ていたオーフェンはさらに混乱した。
(なんなんだ、こいつら。とりあえず文脈から考えると彼女がルイズって名前で、チンピラってのは……俺か)
 いささか落ち込みながら考える。
 まあ、チンピラと言われても仕方がないのは確かなので反論はできないが。
(しっかし……。使い魔の召喚だと?)
 先ほどのやり取りには聞き逃すことのできない単語が含まれていた。
 使い魔。召喚。
 穏やかな単語ではない。特にいきなり訳のわからない場所に飛ばされて、訳のわからない人間達に囲まれた人間にとっては。

「ミスタコルベール!」
 ルイズと呼ばれた少女が怒鳴った。
 すると人垣が割れて、一人の頭部が禿げ上がった中年男性が進み出てくる。
「げ」
 オーフェンはうめき声をあげた。別にその男性の顔に見覚えがあったわけではない。見覚えがあったのは真っ黒なローブという彼の格好だった。
 その格好がかつて彼の学び舎でもあった魔術士育成施設の最高峰、牙の塔の教師達の制服にそっくりだったのだ。もっとも彼らは木の杖なんて代物は持ち歩いてなかったが。
 あそことはもう関わりたくなかったのでつい声を上げてしまったが、よく見ると細部がかなり違う。
(……どこかの魔術士専門学校かここは?)
 そう思って目の前の少女を改めて観察する。
 黒いマントの下に白のブラウス。グレーのプリッツスカート。ほかの連中も皆同じような格好である。
 それらの格好からここは魔術士専門学校であり、この服装が制服だと言われても違和感はない。
 なにより黒のマント、ローブ等は黒魔術士が好んで着るものでもある。実際黒魔術士でもある自分の格好も黒を意識した服装だ。
 そして後ろを振り向くと、遠くに巨大な城が目に飛び込んできた。
 歴史の古い魔術士関連の施設は城砦の形を取っているものもある。魔術士の歴史は迫害の歴史でもあるからこれはある意味必然ではあるのだが。
 もっともこれほど大規模な魔術士の施設など、彼の知る限り牙の塔しかないはずだが。
「もう一度やらせて下さい!」
「それはできない。二年生に進級するために行う春の使い魔召喚の儀式は、今後の属性を見極めるためでもある神聖なものだ。気に入らないからと言って、やり直しを認めるわけいかない」
「でも!平民を使い魔にするだなんて前例がありません!」
「ならば君がその前例を作ればいいではないか」
 思索にふけるオーフェンをよそに二人が言い争う。
 その際、オーフェンの耳に春の使い魔召喚の儀式だのと怪しげな、だがそれでいてどこか景気がよさそうな、よくわからない単語が飛び込んでくるがそれは聞かなかったことにする。
(大体なんだ、春の使い魔召喚って。春になると使い魔のバーゲンセールでもやるってのか。……いや、そんなことはどうでもいい。問題はここに来る直前、俺は何をしていた?思い出せ、思い出すんだ俺)
 記憶を辿る。
 といっても別にいつもと変わったことをしていたわけではない。
 朝起きて、いつものように地人兄弟を魔術で吹き飛ばし、ついでになにやら厄介事を押し付けてくる無能警官も吹き飛ばした。
 その後は宿屋に戻って纏わりついてくるボニーをやはり魔術で吹き飛ばし、いきなり現れて喧嘩を売ってきた変態執事を吹き飛ばそうとしたが逃げられた。
 そのため今度こそこの世から完璧に葬り去る為に、あの変態執事を追いかけていたのだが……。

(思い出した!あの変態を補足するために馬車をハーティアの名前使って徴発して、街中でデットヒートを繰り広げてた時!あの時いきなり俺の目の前に銀色の鏡みたいな物が現れたんだ!)
 そしてその銀色の鏡に飲み込まれた。
 何しろ猛スピードで走る馬車の上である。そんな物がいきなり現れたら避けようがない。
(そして俺はここに飛ばされた……。あれは空間転移の魔術だったのか?)
 そういった機能を持つ天人――過去に栄えた古代の魔術士――の遺産があると言う事はオーフェンも知っていた。ただその手の代物は禁制品のはずだが。
 いずれにしてもこれ以上は考えるよりも目の前の少女に聞いたほうが早い。ちょうど言い争いも終わったようだ。
 ちなみに言い争いは少女の負けのようである。顔を俯かせ、悔しげにこちらに向かって歩いてくる。
「ええっと、もういいかなお嬢ちゃん。そろそろ俺の質問に―――」
 しかしやっぱりというかなんというか、二度遮られた三度目の質問はすぐ目の前に立ち止まった彼女にやっぱり遮られた。
「あんた感謝しなさいよね。」
「は?」
 いきなり意味不明なことを言われてオーフェンは戸惑った。
「貴族にこんなことされるなんて普通は一生ないことなんだから」
 さらに意味不明なことを言ってくる。
 それだけ言い放つと少女はオーフェンを無視して、懐から棒切れを取り出した。いや、これは棒切れではなく杖というべきか。
 その杖を振ると同時に、
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司《つかさ》どるペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 いきなり呪文のようなものを唱え始めた。
 とっさに警戒して構えを取り、さらに防御の為の魔術構成を編み上げるがそれは違和感を感じて中止する。
 違和感の正体は単純な物だった。魔術士なら見えるはずの彼女が使用しようとしている魔術の構成が見えなかったのだ。
 だがそれでも警戒は解かず、即座に体を動かせるように緊張させながらオーフェンは尋ねた。
「……何の真似だ?」
 それに対してルイズは小さく何かを呟く。オーフェンはつい言葉を聞き取る為に身を屈めて聞き返した。それがいけなかった。

「よく聞こえない。なんだって?」 
「……背が届かないからしゃがみなさいって言ったのよ馬鹿!」
 ルイズはそう叫ぶや否や、自らの唇でこちらの唇を塞いできたのだ。
「っ!?な、何しやがる!!」
 慌ててオーフェンが飛びのくとルイズは不服そうに叫んでくる。
「何よ!私とキスするのがそんなにいやだっての!?平民の癖に!ファーストキスだったのに!!」
「ファーストゴロだろうがピッチャーフライだろうが関係あるか!初対面のガキにいきなりキスされて驚かない奴がいるか!!」
「ガキとはなによ!ガキとは!!私はこれでもピッチピチの16才よ!」
「嘘こけ!そういうセリフはもっと体に凹凸を付けてから言えってんだ……い、いでででででで!?」
 口論の最中、突如左手に襲いかかってきた激痛にオーフェンはのたうちまわる。
「な、何しやがったぁ!?」
 左手を抱えながら叫ぶが、当のルイズはどうでもよさそうに答えてくる。
「大したことじゃないわよ。ただ使い魔のルーンが刻まれてるだけ。すぐ終わるわ」
「大したことありまくりだろーが!?そもそも何だ使い魔って!」
「大したことないっていったらないの!それぐらい我慢しなさい!男でしょ!?」
 俺は男女平等主義者なんだよ!
 そう叫んでやりたかったが限界だった。元々ここ二日ほど碌に物を食べてなかったのに加えて、キースと繰り広げたカーチェイス(馬車に乗ってたのはオーフェンだけだったが)の疲れが今ごろになってまとめてやってきたらしい。それが激痛と一体となってオーフェンの意識をもぎ取ろうとしていた。
なんとかそれらに対抗しようとしたオーフェンであったが、襲い掛かってきたのは痛みだけではなかった。
 痛みで封印が解けたと言うわけではないだろうが、唐突に封じられていたはずの記憶が蘇ってきたのだ。
 それは神を名乗るえらく貧弱な「ぽいもの」であり、一撃で竜すら撃ち殺す呪文を操る勝気な女魔導士でもあった。ついでにやたらと硬そうな石っぽい人でもあり、脳が溶けてそうな凄腕の剣士でもあり、正義という単語と格闘をこよなく愛する王女でもあった。
 さらになぜかミストドラゴンと戦わせられて半泣きになってる自分でもあり、とどめに黒髪のアホみたいな格好をした女魔道士―――これは出てきてすぐ消えた。たぶんこの非常時にあっても自分の脳が思い出すのを拒否したのだ。
(えらいぞ俺。さすが俺。……じゃなくて。こんな記憶がわざわざ出てくるって事はだ。もしかして―――もしかして、ここも異世界ってことなのか!?)
 悲鳴を上げる。全力で。
 そんなわけで、オーフェンはあっさり意識を手放した。

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