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ゼロな提督-30 a


 夜の聖地。
 千年前なら立派なオアシス都市があったかもしれない場所だが、今は巨大クレーターが
広がるのみ。
 クレーター中心にある召喚ゲートは、今日も光を放ち続けている。人一人がくぐれる程
度の大きさで、10km彼方の土手からだと、小さな光点にしか見えない。クレーター外周の
土手にはエルフの各部族から派遣された人々がいる。
 だが今、その中に何人もの耳が短い人、エルフが蛮人と呼ぶハルケギニア人が混じって
いた。
 彼等は皆、クレーター中心へ視線を向けている。

 金髪の蛮人女性がイライラした様子で懐中時計を取り出し、舌打ちをした。
「まったく、連中と来たら…いつまで待たせる気なのかしら!?」
 一人のエルフが隣の別な蛮人女性に話しかける
「遅いですね。予定では今夜のハズなんですけど…もうすぐ夜が明けますよ」
「そうだねぇ。随分と遅れてるんじゃないかい?」
 そう言って蛮人の女は右腕を顔の前に持ってくる。その右手首にはデジタル表示の腕時
計が文字盤の光を放っている。
 女の横に立っていたエルフの男も腕時計を覗き込む。
「かなり遅れているようだな。何かトラブルが起きたなら連絡があるはずだが」
 そういってエルフの男は胸元から手の平サイズの機械を取り出してパカッと開き、中の
画面を見ながらスイッチを押す。
「ふむ…特に連絡は入っていない。今は待つしかないな」

 ほとんどの蛮人はエルフ達と、普段と何の変わりもなく言葉をかわしている。だが、中
にはエルフ達へ近寄ろうとしない蛮人の男もいた。
「はぁ…あのお方の言うとおり、確かに聖地は何もなかった…。しかし、これがエルフ達
の仕業ではなく、始祖の力が暴走した結果だ、などと言われても」
「私達の言葉が信じられない、と?」
 隣に立つ蛮人の女が、怯えて縮こまる男を睨み付ける。すると男は更に小さく縮こまっ
た。
「い、いえ!滅相もない!ミス、私は常にあのお方とミスのご加護を受けてきました。あ
の酒場で出会って以来、私のような小物の『王になってみたい』という願いを叶え続けて
下さいました。
 ですが私とて、かつては始祖の教えにこの身の全てを捧げていたのです。果たして、一
体どちらを信じればいいのか、もう、どうすればいいのやら・・・」
 縮こまった男は頭を抱え、さらに小さくなってしまう。隣の女は、そんな男に目を向け
ようとはしない。ただ淡々と言い放つ。
「別に強制はしないわ。これから起きる事を見て、その上で自分で考えなさい。これから
は、あんたは自分一人で考えなきゃいけなくなるんだから」
 そう言って女は聖地の中央をじっと見つめ続ける。

 そんな話をしていると、少し離れた所に立っていた蛮人の痩せた男が、ゲートを指さし
声を上げた。
「見よ!始まったようだ」
 その言葉に話をしていた人々も聖地中心を見つめなおす。

 そこには、聖地の門がある。人一人がくぐれる程度の大きさだったはずの門が。
 だが今は、徐々に光点が大きくなっていくのが遠目にも分かる。それはゆっくりと、確
実に巨大化していく。沢山のエルフと数人の蛮人が見守る中、それはかつて多くの観測機
や無人機を吐き出した時と同じか、それ以上の大きさへと成長していく。そして今回は、
大地や風の精霊は全く動きを見せない。

 風が吹きすさぶ荒れ果てた荒野の中、輝く門は更に大きくなっていく―――



       第30話     狂宴は終わる




 調印式当日、朝。
 いくつもの雲が浮かぶ空の下、シャン・ド・マルス錬兵場は、熱気に包まれていた。
 式典会場は、一人でも多くの人が連邦設立宣言書への調印を目に出来るようにと、城で
はなく広い錬兵上が選ばれた。

 いま、トリスタニア全体がトリステイン・ゲルマニア両軍による厳戒態勢下にある。特
に式典会場は上空の竜騎士隊に加え、地上にも魔法衛士隊のグリフォン・マンティコア・
ヒポグリフ隊が、調印式に訪れた人々への監視を続けている。
 数万人が演習可能な錬兵上の座席は、既にすべて貴族たちによって占められている。彼
らはトリステイン・ゲルマニアのみならず、ガリア・ロマリア・アルビオンからすら来た
貴族たちだ。もちろん舞台のすぐ近く、最前列から後ろ数列は各国の要人が占めている。
他の席とは異なる豪華な作りの椅子が並び、王族もかくやという立派なマントやドレスの
紳士淑女が並ぶ。
 錬兵場の外側は、会場に入りきらなかった平民たちが、遠くにわずかに見える式典を見
ようとしていた。少しでも中が見渡せる高い木の上、屋根の上等にも人が鈴なりになって
いる。

 錬兵上の入り口から一番奥には、一段高くなった舞台が設置されている。白い布に覆わ
れた舞台の上には幾つもの豪華な椅子が、さほど大きくはないが立派な机を中心に並べら
れている。舞台の背には二枚の大きな布、トリステインとゲルマニアの旗が下げられてい
た。
 そして、既に各席はそれぞれの主によって占められている。トリステイン女王マリアン
ヌ、その背後に立つは宰相ヴァリエール公爵。ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世と、後ろ
のカイゼル髯がトレードマークのハルデンベルグ侯爵。アルビオンからは皇帝クロムウェ
ルと背後に控える秘書のシェフィールド。ガリアからジョゼフ王と隣に立つ王女イザベラ
が参列していた。
 各王の警備陣は、壇上下から目立たないよう周囲と相互への警戒を怠っていない。

 会場内で着席している貴族たちの間から、もうすぐ始まる式典を待ちわびながらも、囁
き声が漏れてくる。
「なぁ、宰相や将軍が後ろにいるのはともかく、アルビオンの秘書もいいとして、なんで
ガリア王は王女が控えてるんだろう?」
「いや、舞台へ上るお付の方は一名のみ、人選は自由になってるから」
「社交界へのお披露目、のつもりかな?」
「多分な。今回は単に調印の証人という儀礼的なものだし、ガリア王女として各国要人へ
印象付けるには丁度いいだろう」
 各国の支配者と同じく王冠を戴いた頭に前髪を納め、ツヤツヤした額に陽光を反射させ
るイザベラは、静かにジョゼフの横で立っていた。

 別の場所からも囁き声が聞こえてくる。ただし、それは壇上ではなく、貴族席の一部を
占める若い貴族たち、トリステイン魔法学院生徒達の席を見つめながら、ヒソヒソと囁か
れていた。
「なぁ、おい。見ろよ、あの娘」
「あれは、間違いない。例の『虚無』のルイズだよ。ヴァリエール家の」
「その左右に座ってるのは、噂の平民使い魔の夫婦だな。夫のほうは何でも遥か遠方の異
国、ガリアすらも軽く凌駕する大国の将軍らしいぞ。衛士隊からの話では、恐るべき策士
らしい」
「ああ、噂は聞いてるぜ。ヴァリエール家のお抱え軍師で、異国の船で飛び回ってるって
な。最近は主と一緒にトリステインを離れていたって話だったが、もう帰って来てたんだ
な」
 彼らが目立たないように指差す先には、確かにルイズがいる。その左右にはヤンとフレ
デリカも、同盟の軍服を着て静かに着席している。三人とも黙って調印式の進行を見つめ
ている。
 彼らの周りにはオスマンを先頭に、ギトーやコルベールといった教師達はもちろんギー
シュ・モンモランシ-・マリコルヌ、といった生徒たちも大人しく着席し、この歴史的儀
式を眺めていた。



 そんな政治談議もそこそこに、長いマリアンヌとアルブレヒト三世の演説が始まった。
ふくよかで優しげな女王と、野心の塊を絵に描いたような四十男の皇帝が、長い長い演説
をする。
 権威と儀礼に満ちた二人の演説がようやく終わり、いよいよ調印の儀が執り行われる。
上空は甲冑姿で警護する竜騎士が綺麗に隊列を組んで旋回し、周囲の騎士達も整列。視線
だけは周囲への監視を怠らない。

 濃い紫色の神官服に、高い円筒状の帽子を身につけた人物が現れた。ロマリアの教皇聖
エイジス三十二世が、幾人もの神官を従えて舞台へと進んでいく。とたんに会場の人々は
聖杖を手にした美しき教皇へ目を奪われ、恭しく頭をたれる。会場の外から祈りの声が聞
こえてくる。

 ヴィットーリオは壇上に上がりつつ、観客席を見渡す。
 会場内にいる小さなピンクの髪の少女、その左右の異邦人を見つける。次に壇上へ視線
を戻し、ガリア王と目を合わす。ジョゼフはニヤリと笑ってから、フードで顔半分を隠す
シェフィールドへ視線を送る。真の主からの視線に、ミョズニトニルンは僅かに頷いた。
その様子に教皇も小さく頷く。

 壇上に上がった教皇は、調印内容が記された用紙の広げられた机を前に立つ。軽く用紙
へ視線を落としてから、ヴィっトーリオは仰々しく両手を広げた。
「マリアンヌ女王と、皇帝アルブレヒト三世は、ここへ」
 若き聖者の声に導かれるように、二人は優雅に立ち上がり、机の左右に立つ。二人は最
初に教皇へ、次に壇上の彼らを見守る貴族たちへ礼をした。

 会場は、しん…と静まりかえった。

 教皇は一瞬視線を下げて、机の上に置かれた調印用紙の内容を確認し、それを高らかに
読み上げた。
「・・・今ここに、トリステイン・ゲルマニア両国は過去のわだかまりを捨て、互いの手
を取り合い新たな時代を作るべく、ゲルマニア=トリステイン連邦を成立することを誓う
か?」
「誓おう」
 アルブレヒト三世が力強く頷く。
「誓いますわ」
 マリアンヌも微笑みと共に頷く。
 そして教皇も頷き、調印書を指し示した。
「では、異存なければ、両者ともここにサインを」

 二人とも杖を取り出し、書面上に自らの名を記していく
 その姿を教皇は黙って静かに眺め続けた。
 数多くの観衆も、固唾を飲んで歴史的瞬間を見守っている。
 全ての視線が新国家設立の瞬間へ向けられている。

 二人はサインを終え、書面から一歩下がる。
 教皇は書面のサインを確認してから、観客席へと向き直る。
 聖杖を手にした手を大きく広げ、賛美歌を歌うような透き通った声を響かせた。
「今ここに、トリステインの女王マリアンヌと、ゲルマニアの皇帝アルブレヒト三世は、
ゲルマニア=トリステイン連邦成立宣言書に名を記した。
 よって私は、ここに・・・」
 教皇は半身を引き、壇上の机を前に立つ両者へ向き直る。
 そして、右手に握る聖杖を、二人へ突きつけた。


「両者を、邪教に基づく国家を設立せんとした背教の咎により、火刑に処す!」


 瞬間、ヴィットーリオは壇上から飛び降りた。
 シェフィールドも観客席へ向けて駆け出した。
 ジョゼフは一瞬で席を跳ね、舞台の下へ飛び降りた。


 舞台を見守る人々は、警備の騎士達も含めて、何が起きたのか分からなかった。
 それでも騎士達は反射的に杖を引き抜き、舞台へ向けようとした。
 だが、杖を向けた時には、既に舞台が無かった。


 壇上には、各国の支配者がいたはずの場所には、紅蓮の炎があった。


 一騎の火竜が壇上の直上に舞い降りていた。
 その、大きく開かれた口からは、赤い鱗と同じ色の炎が吐き出されていたのだ。
 その炎は一瞬で、壇上に残っていた世俗支配者と、その付き人達を消し炭にした。

 上空警備の竜騎士隊、その内の一騎が隊列を突然離れ、壇上へ急降下していたのだ。
 そして壇上から飛び降りた三人は、教皇お付きの神官達が作り出した氷の壁『アイス・
ウォール』によって炎の熱から守られていた。


 眼前で起きた突然の事態に、人々は動く事が出来なかった。各国から来た警護の騎士達
も、一瞬で杖を引き抜いたはいいが思考が停止していた。無論、血を吐くほどの訓練を積
んできた騎士達ゆえ、思考停止は一瞬でしかなかった。即座に『ジャベリン』等の水や氷
のルーンを唱えようと口を開く。
 だが、その空白の一瞬を教皇は逃さない。澄み渡る声が会場に響く。

「全ブリミル教徒へ告ぐ!」

 世俗支配者達を上回る権威を持つ教皇の言葉。なおかつ、「火刑宣告」の説明をするであ
ろう言葉。
 行動停止に陥った客席の貴族達だけでなく、警護の騎士達までもルーン詠唱を中止して
次の言葉を待ってしまう。燃えさかる炎を背にした教皇へ視線を集中させたまま動けなく
なる。

 教皇は静まりかえった会場を優雅に見渡す。
 その横に、舞台を焼き払い支配者達を抹殺した火竜騎士が着陸する。極めて気性が荒く
気難しいため、自分が認めた乗り手しか乗せないはずの火竜は、大人しく教皇へ頭を垂れ
る。そして、まるで当然のように翼を下げ、自らの背を教皇にしめす。教皇は火竜の背へ
軽やかに上がる。
 赤き火竜の背に上がり赤い炎を背にするその姿は、伝説や御伽噺が本から飛び出てきた
かのように神秘的で神々しい。騎士達のルーンは既に完成していたが、すぐにも消火して
主を救いたいが、目も意識も奪われてしまい、呪文を放つ機会を失してしまった。

 そして若き教皇は、高らかに語り始めた。
「トリステイン女王マリアンヌと、帝政ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世。彼等はヴァリ
エール公爵が捏造した『聖地消失』『エルフによる世界の守護』という、神をも恐れぬ讒言
をもとに、邪教の国を打ち立てんと企てました!
 始祖と教会に背き、ハルケギニア全ての民を謀ったのです!この地を闇に堕とさんと邪
心を抱いていたのです!」

 会場にどよめきが走る。突然の教皇からの糾弾に、トリステイン・ゲルマニア両国の貴
族達に動揺が広がる。

「加えてオリヴァー・クロムウェル!
 彼は教会に属し始祖の教えを守るべき司教の地位にありながら、始祖の教えに背きまし
た。始祖より授けられし神聖なる王権を滅ぼし、皇帝の地位を僭称するという簒奪を行っ
たのです!」


 アルビオンからやってきた貴族・騎士達にも動揺が走る。その点については彼等も考え
ないではなかった。だが聖地奪還という旗印の下、教皇は皇帝への即位を承認すると思い
こんでいた。
 しかし、確かに教皇の承認を得ておらず、かつ司教として始祖より授けられた王権に背
く事は重大なる罪。その事を今さらに思い出したのだ。

「よって、私は教皇聖エイジス三十二世の名の下に、この場を借りて宗教裁判を行いまし
た。判決は、火刑!裁判と刑の執行が終了した事を、ここに宣言致します!」
 教皇は聖杖を高々と掲げ、居並ぶ貴族達へ宣言した。

 いきなり教皇から宣言された貴族達は、言葉が出ない。目を白黒させ、口は酸欠の魚の
如くパクパクと虚しく開閉するばかり。練兵場にいる数万の貴族達が揃って沈黙してしま
う。

「なお、ヴァリエール公爵の捏造した讒言につき、それを語る証人も既に呼び寄せてあり
ます。
 今、ここに集う全てのブリミル教徒達に、証言してくれます。今回の調印式がほんの一
握りの、私欲に駆られて神の教えに背いた、哀れなる悪鬼による狂言であったという真実
を!」

 教皇は、高く掲げていた聖杖を観客席へ向ける。
 その聖杖の先には、小柄なピンクの髪の少女、ルイズがいた。彼女は目の前で父を焼き
殺されたというのに、何の感情も表していない。いや、聖杖を向けた教皇へ、爽やかな微
笑みを返した。

「ヴァリエール家の息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
よ!父たるヴァリエール公爵に脅され、此度の陰謀に利用された事実、今ここで証言しな
さい!」

 人々は、一体どういう事なのかと訝しみ、ざわめきが広がる。
 そんな中、ルイズは淡々と立ち上がる。左右のヤンとフレデリカも無表情なまま後に続
く。三人は学院生徒達の間を抜け、前に進み出ようとした。


 だが、出来なかった。
 さらなる突然の出来事に、練兵場の人々は再び言葉を失った。
 ただし、今回は教皇と、お付きの神官達までもが目を見開いて驚愕した。


 いきなりルイズの首が宙を舞った。
 さらにヤンの胸から杖が生えた。
 フレデリカは上半身が斜めにずり落ちた。


 マリコルヌの杖が、ルイズの首を切り落としていた。
 ギーシュの杖が、ヤンの心臓を背後から貫通していた。
 さらには彼等の同級生男子がフレデリカの前に立ち塞がり、杖で袈裟切りにした。



「やった…ヴィリエ、ギーシュ。やったよぉ!僕ら、やったんだよ!」
 マリコルヌが、感動に震える拳で杖を掲げた。
 ヴィリエと呼ばれた男子生徒がマリコルヌに抱きついた。
「そうだ!やったぞ!僕たちはやったのだ!トリステインを狙う侵略者共を、貴族を軽ん
じる身の程知らずの平民を、討伐したのだ!」
 ギーシュの震える手は、造花の杖を取り落とした。そして、マントの中から円筒状のも
のを取り出した。
「姫殿下、見て頂けましたか!?僕はやりました!姫殿下を害し、トリステインを異国へ
売り渡そうとした悪党共を、切り伏せたのです!
 あの中央広場、サン・レミ聖堂前で姫殿下に誓った言葉を、今ここに果たしました!必
ずや姫殿下の無念を晴らすと。ヤンによって地に堕とされた姫殿下の名誉を回復するとい
う誓いを!
 あの日、あの時から、すぐに僕達は山へ籠もりました。竜をも倒す銃を持つ悪党共を倒
すため、厳しい修行を積んだのです!今、この瞬間のために!」 
 叫びながらギーシュは、取り出した円筒状のものに頬ずりをしていた。
 それは液体の詰まった瓶。液体の中には、細長い肉塊が漂っている。

 中央広場でヤンとシエスタの銃撃により千切れ飛んだ、アンリエッタの右腕だ。

 三人は、歓喜の叫びを上げ続けた。
 呆気に取られた貴族達の視線が集まる中、彼等は手を取り合い、肩を叩いて喜びを分か
ち合っていた。


「ちぃっ!」
 ジョゼフが舌打ちした。
「くっ!せっかく指輪で洗脳したのに。ガキ共が、余計な事を!」
 火竜の横で、ミョズニトニルンも呪詛を呟く。
 その言葉に、教皇が我に返った。即座に横にいる甲冑姿の竜騎士へ目配せする。
 一瞬教皇と目があった竜騎士は、その意図を瞬時に理解した。火竜を飛び降り、ミョズ
ニトニルンの首へ剣を振るった。

 彼女の首は、頭を覆っていたフードごと宙を舞った。

 さらに竜騎士は剣を翻す。ミョズニトニルンの横にいたジョゼフの分厚い胸板を、正面
から易々と貫いた。
「貴様…!?」
「洗脳が不要なら、あなた方も用無しですよ。無能王」
 ジョゼフの目の前には、兜の隙間から竜騎士の月目が見えていた。
 月目の目にも、ジョゼフの目が見えていた。
 満面の笑みを浮かべる目が。


「そうだな、確かに俺は用無しの無能王だ!」


 胸板を剣で貫かれているジョゼフが、笑顔で陽気に断末魔の笑い声を発した。
 同時にジョゼフの体は消えた。跡形もなく一瞬で消え失せた。
「なにっ!?」
 月目の竜騎士は周囲を見渡す。ついで足下を見る。
「これは…人形!?」

 地面の上には、一体の小さな人形が転がっていた。

 慌てて月目がミョズニトニルンが立っていた地面を見る。
 そこにも首がもげた人形が転がっていた。



 会場の彼方、ルイズ達が襲撃された辺りから、少年達の悲鳴が上がった。それはマリコ
ルヌとギーシュとヴィリエの悲鳴。
「うわあーっ!な、何だこれはー!」
「に、人形!?これは、アルヴィー(小魔法人形)だ!」
「ガーゴイルの身代わり!?しまった…やられたぁーっ!」
 ガヤガヤとどよめきが上がる会場の一角。ただし、先ほどとは異なる性質のどよめき。
今回の連邦設立の立役者が暗殺された驚きではなく、彼等が襲撃を予測して逃走済みだっ
たという驚きの声だ。
 その中心には、ちっぽけな人形が三個、壊れて地面に転がっていた。


  《はーはっはっはっはっ!いやはや、これは参った!》


 突如、声が響き渡った。
 それはジョゼフの笑い声。

  《教皇よ、俺は宗教裁判の被告人じゃないぞ。何故俺まで殺すのか説明しろ!》

 その声はどこから聞こえてくるのかと、人々は周囲を見渡す。
 だが、どこから聞こえてくるのか分からない。いや、周囲の全方位、四方八方から聞こ
えてくるとしか思えない。
 その声は会場外の平民達にすら聞こえていた。

 銀髪を持つ初老の貴族が、最前列に座るリッシュモンが気が付いた。自分の尻の下から
声が響いてくる事に。彼は慌てて身を屈め、自分の席の下を覗き込む。
「なんだ…これは?声を伝えるという、風魔法の魔道具か?」
 彼は自分が座る椅子の下に、ちっぽけな黒いものが張り付いているのに気が付いた。手
を伸ばしてそれを指先につまんでみる。
  《どうした?言えんのか?》
「うわっ!?」
 リッシュモンは驚いて黒く小さな塊を地面に放り出してしまった。
  《お前は教皇なのだろう、ブリミルとかいう神の代弁者なのだろう。さぁ、神の言葉
  を口にしろ。俺を殺す理由を、神の言葉で語ってみせろ!》
高等法院長の周囲に座っていた貴族達も、ジョゼフの言葉を吐き出し続ける黒いものに
気が付いた。彼等は一体それが何なのか、分からなかった。
 ただ、その黒いものの裏には見た事も無い文字、「Mini Speaker」と書いてあった。


 教皇の乗る火竜が首を巡らす。背後の、焼け落ちかけた舞台の方へと牙をむける。
 教皇も肩越しに後ろをみやる。
「そういえば、あなたへの判決を言ってませんでしたね」
 この不可解な状況にあって、抹殺したはずの男の声が響く中でも、涼やかな声でヴィッ
トーリオは語り出す。

  《おいおい、死刑を執行してから死刑判決を下す気か?》
 会場外の、木に登って会場を眺めていた少年が気が付いた。自分の真上の枝に小さくて
黒いものから声が響いてくるのを。


  《昔から、死刑囚が死刑執行を受けても死ななかったら無罪放免、だろうが。俺も無
  罪って事で良いだろう。神のお慈悲で見逃してくれよ》
 会場から遠く離れた、『魅惑の妖精亭』でも、店長のスカロンが気が付いた。店の軒先に
ひっついた機械から声が響いてくるのを。
「あらやだ。これってオイゲンのひいジーサマが言ってた『すぴーかあ』てヤツね。とい
うことは、ヤンさんが付けたのかしら?」
 長身のスカロンはヒョイッと腕を伸ばし、マイクロスピーカーと書かれた物体を取り外
し、しげしげと眺めた。それから周囲をキョロキョロと見渡す。
「…随分と沢山つけてまわったのねぇ」
 ジョゼフの声は、街のそこら中からも響いてきていた。
 トリスタニア各所から生じた声が、街全体を包む。



 月目の少年はニヤリと口の端を釣り上げる。そしてジュリオは舞台の後ろへ剣を突きつ
けた。
「お戯れはおよし下さい。さぁ、被告人は証言台へ」
 舞台がガラガラと焼け落ちた。火の粉と煙の向こう側に人影が見える。
  《やれやれ、やっぱり神の法は厳しいな。まぁいい、それじゃ出るとしよう》
 ズンッ…と地響きが鳴る。
 焼け残った舞台の残骸が、鋭い爪を持つ前足に踏みつぶされた。

 そこにいるのは魔法人形だ。黄色く光る眼、禍々しい牙をのぞかせる口、鋭い爪を生や
した手、長い鞭のような尾、そして長大な羽を持つ、巨大なガーゴイル。
 どこからか現れた巨大ガーゴイルの頭上に、ジョゼフがあぐらをかいて座っていた。そ
の後ろには、フードを外して美貌を露わにしたミョズニトニルンが立っていた。
 ジョゼフはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、ハルケギニアの最高権威である
教皇聖エイジス三十二世を見下ろしている。
「さて、出てきてやったぞ!
 では、検察官にして裁判官たる教皇聖下よ。俺への宗教裁判をやってもらおうか!」
 被告人は叫んだ。傲然と、悠々と。

 見下ろしてくる被告人から裁判を要求された教皇は、爽やかな微笑みを浮かべつつ、判
決文をそらんじた。
「ガリア王、ジョゼフよ。
 あなたがエルフと通じた件、ガリア東薔薇騎士団団員より証言を得ました。また、エル
フから技術供与を受けんがため、彼等に様々な便宜を図っていた事についても証拠を揃え
てあります。
 よって、他の者と同様に火刑を宣告します」
 高らかに宣言した教皇は、聖杖を天へ掲げる。
 そして、ジョゼフへ向けて振り下ろした。

 刹那、炎の嵐が巻き起こった。

 それは火竜のブレス。しかし、教皇が乗る火竜は口を開いていない。空中から炎の豪雨
が降り注いだのだ。ジョゼフとミョズニトニルン、そして二人が乗るガーゴイルへ向けて
真紅の巨大な竜巻が落ちてきたのだ。

 上空を旋回していたはずの竜騎士全てが、急降下してきていた。騎乗して竜を操ってい
るはずの騎士を無視し、彼等を振り落とさんばかりの勢いで。いや、既に何騎もの竜が、
乗り手無しで飛来していた。そしてジョゼフ達へ向けてブレスを放ったのだ。岩をも溶か
す火竜達の炎が束ね上げられ、竜巻と化し、大地ごと全てを溶かそうと吐きかけられたの
だ。
 ジョゼフ達へ剣を向けていたジュリオ。彼の右手甲の隙間から、激しい光が漏れだして
いる。
「…やった」
 月目に勝利の光が浮かぶ。



  《・・・あちっ!あちちぃっ!ええい、熱いじゃないか!まったく、ヴィンダールヴ
  は手加減を知らんなぁ!》


「なぁ!?」
 教皇が初めて動揺を見せた。驚きの叫びを上げた。
 全ての火竜を操っていた月目のヴィンダールヴも、驚愕で目を見開く。
 会場の人々も、紅蓮の嵐が焼き尽くさんとする舞台を凝視する。

 そこには、大きな土の山があった。
 土の山は、表面こそ確かに灼熱に溶けている。だが地面から脈打つようにわき上がる土
と岩が、溶岩と化した土を速やかに地中へ流し去っていた。
 そして、土山の頂上部分がススス…と下がっていく。そこには、相変わらずガーゴイル
の頭上であぐらをかくジョゼフがいた。
 その後ろではミョズニトニルンが主へ向けてパタパタと団扇を仰いでいる。

「あー、熱かった。今のは死ぬかと思ったぞ」 
 服の胸元を開き、分厚い胸板を晒しながら、ノンビリとガリア王は呟いた。
 そして教皇とジュリオを見下ろす。
「そうか、お前も俺やルイズと同じ『虚無』の系統だったわけか?あらゆる獣を操るヴィ
ンダールヴの力、大したものだ」
 王の眼光はジュリオの右手、手甲から漏れる光を睨んでいる。
 教皇は『虚無の系統』と言われても否定する事なく、ジョゼフを睨み上げる。


 ガリア王の口から飛び出した『虚無』の言葉。それはトリスタニア全域に響き渡った。
 会場には、もはや何度目かも分からないどよめきが広がる。
 教皇はルイズを『虚無を騙る偽物』と断じた。だがガリア王は教皇もルイズも、彼自身
も『虚無の系統』だと言う。

 教皇の頭上では火竜の群れが旋回を続けている。足下の火竜も恭しく傅いている。エル
フと並ぶ恐怖と力の象徴たる竜が、尽く教皇の号令に従い意のままに動いている。それは
誰の目にも明らかな奇跡。
 では、教皇の奇跡を易々と退けるジョゼフは何なのか?本当に『虚無の系統』なのか、
それともエルフと通じる異端なのか。
 人々の目は、もはや釘付けだ。彼等は言葉もなく眼前へ、自ら異端審問を行う教皇と、
被告人たるガリア王へ視線を向けたまま動けない。



 月目の少年が口を開いた。鈴のように澄んだ声が響き渡る。
「その土の壁、先住魔法ですか。エルフと通じている点に疑う余地はないですね」
 ふんっ、と王は少年の詰問を鼻で笑った。
「その件については、俺も証人を呼んでおいた。証言台に上がってもらうとしよう。教皇
よ、異存はないな?」
「当然です。被告人には自分に有利な証言をする証人を呼ぶ権利があります」
 教皇も一時の動揺は既に無く、むしろうっすらと笑顔をすら浮かべている。


 ガーゴイルを覆っていた巨大な土のドームが大地へ戻っていく。
 すると、巨大ガーゴイルの足下に数人が立っていた。その先頭に立つ男は薄茶色のロー
ブをまとい羽付の帽子を被った長身。帽子の隙間から垂れる金色の髪が、腰まで伸びてい
る。他には、やはり金髪を垂らしたローブの女性らしき人が、頭をすっぽり覆うような帽
子を被っている。ぶかぶかのローブを羽織って全身を隠す人、その隣に立つ痩せた緑の服
の少年など。
「お初にお目にかかる、ロマリアの教皇よ。そして、ハルケギニアの貴族達よ。
 私の名はビダーシャル。サハラに暮らすエルフの一部族「ネフテス」の一員であり、老
評議会の議員をしている。
 『大いなる意思』と、少々の悪戯心に導かれた今日の出逢いに感謝を」
 そう言って先頭の男が帽子を取って礼をした。彼の金髪から突き出た長い耳に、全ての
双眸が集中する。そして同じように金髪女性も帽子を脱ぎ、エルフの象徴たる長い耳を衆
目に晒した。

 ビダーシャルの後ろにいる人物は、隣に立つ痩せた少年の手を借りて、ぶかぶかのロー
ブを脱ぐ。そこに現れたのは、背に持つ大きな翼をローブの下で窮屈そうに畳んでいた人
間。長い亜麻色の髪が美しい亜人、翼人の女だ。
 妖精のように美しい女性は、背の翼を大きく広げた。
「は…初めまして、皆さん。私はガリアの、エンギハイム村で人間達と共に暮らす翼人、
アイーシャです」
 今度は唐突に現れた翼人の翼に視線が集中する。

 隣に立つ痩せた少年も、小刻みに肩を震わせながら小さな声を絞り出した。その小さな
声もマイクを通じて街全体に響き渡る。
「あ、あの…貴族の皆さん、はじめ、まして…」
 少年はカチカチになりながらも、必死で深々と頭を下げた。隣の翼人女性もペコリと頭
を下げる。
「お、俺は、いえ、僕は、エンギハイム村の村長の息子で、ヨシアと言います。妻の、ア
イーシャと共に、来ました。僕らの王様、ジョゼフ様が、人間と仲良くしている亜人の助
けがいる、ということで…」
 たどたどしい夫の言葉を、妻が受けて続ける。
「私達の村は、ジョゼフ様が派遣して下さった騎士様のおかげで、人間と翼人が仲良く暮
らせるようになりました。私達も結婚する事が出来たのです。
 このご恩に報いようと、こちらのエルフの方々と共に、この地の精霊と契約しました。
皆様が先住魔法と呼ぶ『精霊の力』で、あちらにおられる王様を守りました。精霊達に感
謝致します」
 そう言ってアイーシャは腕を伸ばす。彼女が恩返しすると言った、傲慢に眼下の人々を
見下す男へ向けて。


「はーっはっはっはっはっ!」
 妖精の様な美女に指し示されたジョゼフは、剛胆な笑い声を響かせた。
「と、言うわけで、だ…教皇よ。証人は証言してくれたぞ。
 俺がエルフを含め、様々な亜人達と手を組んで先住魔法を我が物とする、見まごう事な
き背教徒である、とな!」
 王の後ろで団扇を仰いでいたミョズニトニルンが、白々しく呟く。
「ジョゼフ様、被告人側の証人が証言したら、かえって不利になったように思います」
「おお、そういえばそうだ。これはいかん、うっかりしていた。やっぱり俺は火刑に処さ
れてしまうぞ!」
 そういってジョゼフは、さらに大笑いしだした。腹の底から響く爆笑はトリスタニアを
揺るがすほどだ。




 教皇の美貌から笑顔が消えた。
 凍り付いた眼光が王を射抜く。
「では、あなたは自分が有罪である事を認め、火刑の判決を受け入れるわけですね。
 それとも、まさか、この状況で今さら懺悔し、神に許しを請う、とでも?」
「くっくっく…俺を火刑に、だと?出来もしない事を偉そうに。刑を執行出来ない法など
寝言に過ぎん」
 さも楽しげに笑う王を睨みながら、再び教皇は聖杖を掲げた。ジュリオの手甲から漏れ
る輝きも光量を増す。
「出来ますよ。例え先住魔法がどれほどのものであろうと、あなたは刑を免れません。何
故なら、上空にいる火竜だけでなく、この会場にいる幻獣全てが始祖の御言葉にひれ伏し
ていますから」

 教皇の言葉通り、魔法衛士隊が引き連れるマンティコア・グリフォン・ヒポグリフ全て
もジョゼフに向けて牙をむき、唸りを上げ始めていた。騎士達が、突然に手綱を離れて勝
手に戦闘態勢に入り出した幻獣を押さえ込もうとするが、全く制御が効かない。
 会場を警備していた幻獣達全てもジョゼフを包囲し、じわじわと間合いを詰め始める。
 だが、それでもジョゼフとミョズニトニルンは悠々とガーゴイルの頭の上に居座ったま
ま動かない。

「ああ、違う違う」
 王はいきなり手をヒラヒラと顔の前で振り、教皇の間違いを指摘した。
「違う、とは?」
 ヴィットーリオは、聖杖を掲げ油断無くジョゼフを睨んだまま、それでも落ち着いて尋
ねる。
「刑とは、罪があってこそ下されるものだ。ゆえに、罪なくば罪を贖罪させる刑も無い。
刑は執行されぬ、されてはならぬ」
「ほう?どういうことですか…まるで、己の背教が罪ではない、とでも言いたげですね」
「その通りだ。そこのエルフと仲良くして、何が悪い?」
 堂々と言い放って王はエルフの男へ視線を向ける。
 ビダーシャルは、ちょっと困った顔で笑った。
「ジョゼフよ、いい加減にしろ。悪ふざけにも程があるぞ」
 エルフに名を呼び捨てにされて諫められたガリア王だが、詫びれる様子は全くない。
 くははははは…と相変わらず楽しげに笑うばかり。


 シュンッと風を切る音と共に、ジュリオの剣がジョゼフへ突きつけられた。
「戯れは止めてもらいたい!一体、あなたは何がしたいのですか!?聖地奪還を阻む始祖
の仇敵、エルフと手を結ぶ事が背教の罪でないとは、ロマリアを、教会を愚弄するにも程
がある!」
 突きつけられたジョゼフは、ようやく笑いをおさめた。そしてポンと膝を打つ。
「いやあ、すまんすまん。ちょっとからかうだけのつもりだったんだが、ついつい面白く
なってな。
 それでは、そろそろ全てを明らかにしようか。実は、俺はな…」
 よっこらせ、という感じで立ち上がった王は、これでもかと尊大にふんぞり返り、高ら
かに宣言した。



「連邦派なのだっ!」
 腰に手を当てて断言した。



 教皇もジュリオも、会場の内外全ての人が、何を言われたか分からなかった。
 一瞬の間の後「ああ、そういえばここはゲルマニア=トリステイン連邦設立調印式典会
場で、さっきまで調印式の真っ最中だった」と、思い出した。
 思い出したからって、ガリア王の連邦派宣言に、今さら何の意味があるのかは分からな
かった。



 人々の疑問には構わず、ガリア王は語り続けた。
「俺は、ここに宣言する!俺と同じ『虚無の系統』たるルイズの言葉に従い、地に平和を
もらたす、と!
 『聖地』などという、千年前に消失した幻想から目を覚まし、千年にわたり世界を守り
続けたエルフ達への誤解を解く時が来たのだ!ガリア王としてゲルマニア=トリステイン
連邦と共に、そしてエルフや翼人など、全ての知恵ある者達と共に新時代を築く事を、こ
こに宣言する!」
 その自信と威厳に満ちた言葉は、ミニスピーカーを通じてトリスタニア全体に響き渡っ
た。


  《ありがとうございます、ガリア王ジョゼフ一世よ。私達もあなたの宣言に賛同しま
  すわ》
 それは、マリアンヌの優しい声。
  《うむ、ゲルマニア=トリステイン連邦初代皇帝アルブレヒト三世として、ガリア王
  からの連邦設立承認と和平の申し入れに感謝する。共に、地に平和をもたらそう》
 それは、アルブレヒト三世の張りのある声。

 突如、女王と皇帝の二人が当然の様に感謝の声を発した。
 と同時に、何か甲高い音が空から響いてくる。
 人々が音のする方向、遙か東の空を見ると、雲の彼方に何か小さな点が二つ見えた。
 その点は、徐々に大きくなっていく。甲高い音も轟音と言えるほどに大きくなる。

 あっという間に、それは会場上空へ飛来した。いかなる艦よりも、風竜よりも遙かに速
く。三角の翼を持つ鉄の塊の様なものが二つ、火竜の群れの更に上を飛んでいた。
 それは、銀河帝国の強襲降下艇。
 二機の降下艇は黒々とした腹側をトリスタニアの人々に見せつけながら、甲高い音と共
に降下してくる。飛び回る火竜を気にする様子もなく、その群れの中を貫いて高度を下げ
る。そして、ガリア王とミョズニトニルンが乗る巨大ガーゴイルの横に着陸した。



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