あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔はじめました-13



使い魔はじめました―第13話―

「はっ! そんな斧一本でどうこうできるもんか!」
そんなフーケの嘲りの言葉も聞かず、サララは斧を構える。
狙うのは本体ではなく足元。
巨大な分、足が崩れればたちまち倒れるだろう、そう読んでの行動だ。
走った勢いをぶつけるように、斧を横に構え、薙ぐ。
ざしゅり、と鋭いような鈍いような音がして、ゴーレムの足を抉る。
その拍子にバランスを崩し、ゴーレムがぐらりと揺れた。
「……へえ、結構威力はあるようだね。それもマジックアイテムの類かい?」
落ちないように足をふんばりながら、フーケが笑った。
必死に斧を振るうサララには、その声が聞こえていない。
サララの構えた斧は、土や霧、あるいは溶岩などで体を構成する『巨人』と呼ばれる
モンスターを攻撃する際に威力を発揮する『巨人のすね打ち』である。
二足歩行型の生物というのは、元来足元が弱いものだ。
遥かな異国に生息するという成人男性に似た足を持つ巨大な蛇すら、
そのすねを打たれた際には悶え苦しむといわれるほどである。
「けど、甘い! 土のある場所でゴーレムが倒せると思うな!」
フーケが錬金の呪文を唱える。
たちまち、ゴーレムの壊れた足が再生していく。
これではいつまで経っても倒せはしないだろう。
「ど、どうしよう、サララが……!」
「このままじゃやられちゃうよ! な、なんとかしなくっちゃ!」
ルイズとチョコはその光景を見ながらおろおろしていた。
「きゃっ! いたた、何よ、もー」
足をとられたルイズがぶつくさと足元を見る。
「あ……!」
それは、サララが持参したアイテムの詰まった袋だった。
「そうだわ、この中のどれかがあれば、きっとサララは勝てるはず!」
ルイズは袋をひっつかむと、サララとゴーレムの元へ駆け出した。
「サララ!」
ルイズの声に先に気がついたのはフーケだった。
その姿を見れば、袋を抱えている。あれにはマジックアイテムが入っているはずだ。
形勢を逆転されてはたまらない、とばかりにゴーレムの攻撃対象を
ルイズへと変更させた。その拳を錬金で鋼鉄に変える。
「きゃああああ!」
迫ってくる拳に対してあげた悲鳴により、サララはルイズの存在に気づいた。
手にした斧を手放すと、ルイズの元へ急行する。
サララは未だ預かり知らぬことであるが、彼女の額に刻まれているのは
神の頭脳、あるいは神の本と呼ばれる『ミョズニトニルン』のルーンだ。
『あらゆる魔道具の能力を最大限にまで引き出し、使用することが可能』
という能力を使い魔に与える額のルーンが光り、ブーツの性能を大幅に上昇させる。
彼女が身につけているブーツは、装備したものの素早さを上げ、
攻撃の命中精度をあげ、敵の攻撃をかわしやすくするものだ。
その能力が最大限にまで引き出された結果、今のサララは
ブーツの名に冠された異国の神と見まごうほどに俊足であった。
ルイズを抱えたまま、鋼鉄の拳を間一髪で避ける。
「あ、ありがとう、サララ……それより、これ……」
あまりの素早さに目を回しながらも、ルイズは袋を渡す。
「これがあれば、あんたは、フーケをやっつけられるんでしょ?」
そのルイズの言葉にサララはにっこりと微笑みながら眉をしかめた。
助かりましたけど、こんな無茶はしないでくださいね、とため息をつく。
「つ、使い魔の危機を黙って見てちゃ、ご主人様失格だもの」
頬を膨らませて、すねるようにルイズが言い返した。
そんなルイズをかばうように背を向けると、ゴーレムと、
その肩に乗ったフーケを睨みつける。
「茶番は終わりかい? なら、こちらから行かせてもらうよ!」
再び、ゴーレムがその拳をサララに向けた。
サララはその拳から目をそらさず、目的のアイテムを探して、袋を漁った。
手に触れるたびに、アイテムの名前が流れ込んでくる。
……そして、予想だにしなかったものを見つけて、森に響くほどの驚きの声をあげた。
「な、何だい?」
サララの声にうろたえたフーケが、思わず拳を止めた。
わたわたしながら、サララは袋から一つの箱を取り出した。
そんな、なんで? と首を傾げながら、サララはその箱を開ける。
薄紫色に妖しげな光を放つ宝玉と、その台座。
……フーケが手にしているはずの、『魔王の宝珠』だった。
「「「えええええー! なんでえええ?」」」
ルイズとフーケとチョコの声が重なった。
「そ、そっか! さっきロングビルに渡すときに、間違えたんだ!
 『アレ』も、箱に入ってるから!」
サララは、どんなに大事なアイテムでもとりあえず無造作に箱に放り込む。
そのせいで、ルイズが取り出した際に間違えてしまったらしい。
フーケは顔を真赤にして、口をパクパクとさせている。
「そ、そんな馬鹿な! じゃあ、こっちのアイテムは一体?」
自分が持っているはずの宝が、敵の手にあるのを見て、
フーケは冷静さを失ってしまったらしい。
不用意にも、自分が抱えていた箱を開いて中身を確認しようとした。
そして、その中に入っていた『モノ』と目が合って、石になった。
それは比喩ではない。本当に一瞬にして、彼女の体は石像と化したのだ。
魔力の供給が途絶え、ゴーレムがただの土くれに戻る。
土の小山の上には、ぼふり、とその石像が落下する。
土がクッションになったらしく、幸いにして何処も欠けていない。
「……えー……」
怒涛の展開に、誰もが声を失う中、チョコだけが呆れたような声を上げた。
ハッ、と正気に戻ったサララは、石になったフーケの元へ近づく。
石像になったままの彼女を、袋から出したロープで縛り上げた。
それから、その足元に落ちていた木箱の破片を拾いあげる。
この中に入っていたのは、蛇の髪に猪の牙を持つ魔物の生首である。
その邪悪な瞳に見つめられたものは、たちまち石と化してしまうのである。
そんなアイテムだから、普段は箱に入れて保存していた。
まさかそれが、こんな風に役に立つとは思わなかったけど、と苦笑した。
どうやら戦闘が終わったらしいことを確認して
タバサ達を乗せたシルフィードが降りてくる。
彼女達に手を振りながら、サララはちらり、とフーケの顔を見た。
悲鳴をあげたまま、口を大きく開けた顔だ。
この顔なら治すのにアレを使えるな、と安堵のため息をつく。
馬車を置いて帰るわけにも行かないので、四人と一匹と石像一体は
再びがたごとと馬車に揺られていた。
その手綱を取っているのはタバサである。
「それで、どーすんのよ、コレ」
コンコン、と石像になったフーケをルイズが軽く叩く。
「このままじゃあ、衛兵にも引き渡せないものねえ……」
キュルケも興味深そうにそれを見ながら嘆息する。
「あ、うん、大丈夫。元に戻す方法はあるよ。ね、サララ?
 ……サララ、どうしたの?」
チョコに呼びかけられてなお、サララは深い思索の海に沈んでいた。
サララの直感は、フーケがそこまで悪い人物だとは思えない、と告げている。
宝を盗むのは、いつも悪徳貴族からだけだ、と噂で聞いた。
それに、何となく彼女は雰囲気が似ているのだ。
だんじょんの町のお得意さんであった女盗賊サファイアに。
守るべきものがあるがゆえに、非道になっているような、そんな人だ、と思えた。
「サララ、ねえ、サララってば!」
ペチペチと膝に猫パンチを数度食らって、ようやくサララは呼ばれているのに気づいた。
「とりあえず、フーケを戻さないと」
ああ、そうだった、とサララは袋の中から目的のアイテムを取り出す。
「うわぁ、なにそれ? きれいね……リンゴ?」
ルイズの言葉に頷くと、黄金色に輝くリンゴを石像のフーケの口に放り込んだ。
「う、ううん……」
たちまちの内に、フーケの体が石像から元に戻る。
「はっ!」
目を覚ましたフーケは逃げようとしたが、体を縛られているのを見て、
観念したかのように吐き捨てた。
「情けないねえ。この土くれのフーケ様が、お宝を間違えて、
 そのせいでとっつかまっちまうなんて……」
「間違えたのはルイズだけどね」
「あんたは黙ってなさい」
茶々を入れたチョコを、ルイズがギロリと睨む。
「……もう抵抗はしないさ。煮るなり焼くなり、好きにしな」
サララは、じっとフーケの瞳を見つめた。
それから、意を決したようにフーケに告げる。
こちらの条件を飲んでくれれば、逃がしてさしあげますよ、と。
その言葉に場の一同が唖然とする中、サララはただニコニコと笑っていた。



新着情報

取得中です。