あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

最『恐』の使い魔-01


『最「恐」の使い魔』


   あらすじ
 魔法学院二年生のルイズが春の使い魔召喚の儀式で呼び出したのは、なんと悪魔のよう
な顔をした日本の高校生であった。
 彼の名は北野誠一郎。顔は怖いけれども心は天使のように清く、そしてやさしい少年である。
 数々の誤解をうけつつも、彼は友達をつくり勉強をして少しずつこの世界にも慣れてきたと
ころであった。そんな中…。

   最「恐」の使い魔

「はあ…」ルイズは一つ溜息をついた。
「なによ、露骨に溜息なんてついちゃって」隣にいた同じ二年生のキュルケがそう言った。
「ねえキュルケ」
「なに」
「あなたのサラマンダー、貸してくれる?」
「はあ?いきなり何言ってるの。使い魔を人に貸すなんて聞いたことないわ」
 サラマンダーとはキュルケの使い魔である。
「どうしても、だめ?」
「なんでよ、理由を言いなさい」
「実は・・・」
 ルイズは、昨日の夜実家から手紙がとどいたことを話した。その手紙の内容とは、いつも仕事
で忙しい父親が家に帰ってくるので、ルイズも帰ってくるように、とのことであった。
「別に、普通のことじゃない」とキュルケは言う。
「問題はその先よ。手紙では、今年召喚した使い魔も連れてくるようにって書いてあるのよ」
「それが?」
「そこが問題なのよ。だってあたしの使い魔って、その…」
 天使のように清い心の持主ではあるけれども、その外見、特に顔は悪魔の化身としか思えない
凶悪な面構えをしている。
「なに?それであたしの使い魔を借りようっての?」
「うう、この際ギーシュのモグラでもいいわ・・・」
「ルイズ…」
 キュルケは、子供を諭すように言った。
「隠したりごまかしたって、いずれはバレるのよ。だったら、最初から堂々と見せればいいじゃない。
それともあなた、“彼”が嫌い?」
「いえ、そりゃあ…、大事だと思ってるけど…」
「だったらちゃんと紹介なさい」
「でも、でも。うちの父親は頭が固いから、きっと彼のことを見たら暴れちゃうかも…」
「おおい、ルイズちゃああん」
「ひっ!」
 男にしては甲高い声が響いた。
「誠一郎…」何度見ても、北野誠一郎の顔は心臓の鼓動を早めるような気がする。
「厨房からクッキーをもらってきたよ」
「あ、ありがとう…」

   *


 ラ・ヴァリエール家に向かう馬車の中。
「どうしてキュルケとタバサがついてくるわけ?」
「だってえ、こんな面白そうなこと…、じゃなくて心配になるじゃない。だから私たちが
一緒に行って、いろいろ助けてあげるのよ」キュルケは笑いながら言った。
「どうかしら」
「・・・」タバサは相変わらず本を読みふけっている。
「ねえ、ルイズちゃん。僕が君のお父さんに会って大丈夫かな」
「大丈夫よ誠一郎、お父様も話せばきっとわかってくれるわ」
「そうかな」
「気をしっかり」
「でも、ルイズのお父さんのことだから、あんたに対して『魔法がロクに使えないからっ
て、悪魔と契約したのか!』とか言って怒るんじゃない?」キュルケが悪戯っぽい笑み
を浮かべながら言った。
「いくらウチの父が頑固でも、そこまではしないんだから!」

   *

「魔法がロクに使えないからって、悪魔と契約したのかあ!!!!」
ラ・ヴァリエール公爵の声が屋敷の前にある高大な庭に響き渡った。
「お父様、彼はこんな顔をしておりますけど、決して悪い人じゃあ」ルイズが必死になって
反論してみるが無意味であった。
「ワシの六十年の人生がこやつの顔を悪魔だと言っておる!!!」
「六十年の人生なんてなくても十分悪魔顔ですよお父様」公爵の後ろで笑顔で話すのは、
ルイズの姉のカトレアであった。
「この悪魔!娘から離れろ」そう言って杖を振り、魔法を繰り出すヴァリエール公爵。稲妻
やら竜巻やらが飛び交った。
「あの、いいんですか?」そんな様子を見て、キュルケがカトレアに聞いた。
「かまいませんわ。いつものことですもの」カトレアは相変わらず笑顔で答えた。
「いつもの…、こと?」
「ほら、あそこにある大きな穴があるでしょう?」カトレアは庭のある方向を指さした。確かに
大きな穴がある。
「はあ」
「あれはエレオノールお姉さまが、二十七回目のお見合いに失敗した後にお父様と大喧嘩を
して開けた穴ですわ」
「はあ…」キュルケは、身内の恥も笑顔で言うカトレアの性格と、大穴があくほど喧嘩をする
ヴァリエール家の内情に圧倒されてしまった。
「ファイヤーストーム!!!」
「きええええええ!!!」
「お父様!ちょっと待って!」
 庭では、先ほどからずっとヴァリエール公爵による北野誠一郎への攻撃が続いていた。


 このままじゃラチがあかない。そう思ったルイズは、父の動きを止めるため魔法を繰り出す
ことを決めた。
「ええい、行動停止(フリーズ)!!」
 数秒の沈黙の後、大爆発が起こった。


「ごめんなさいお父様。動きを止めるためにやったんです」
「動きどころか、息の根まで止められるところだったよ」
「あら、それは惜しかったですわ」
「え?カトレア、今なんて言った」
「なんでもありませんわ。うふふふ」
 屋敷の中で交わされる会話を聞きながら、キュルケは未だに呆然としていた。タバサは
熱心に本を読んでいる。
「で、そいつがルイズの使い魔ってわけか」ソファに深く腰掛けたヴァリエール公爵は言っ
た。
「はあ…」力なく答える北野くんを見て、キュルケは気の毒に思えてくる。
「お前みたいな悪魔に娘をやれると思うか」
「だから悪魔じゃないんだってお父様」
「ルイズは黙ってなさい」
「もう!」
 一向にかみ合わない親子の会話。
「で、なんでルイズなんだ」
「え?」
「なんでルイズなんだと聞いておるのだ」
 ヴァリエール公爵がそう言って北野君に詰め寄る。
「なんでと言われましても、ある日突然」
「そんな理由があるか!」
「ええ、僕だって来たくて来たわけでは」
「じゃあアレか、ルイズとは遊びだったのか」
「いや、決してそういうわけでは…。ただ、運命というか」
「そんな曖昧なもの、わしは信じないもんね!!」
「信じる信じないというか」
「男なら、娘のことを一生かけて幸せにします、くらい言ってみろ!」
「し、幸せにします…」
「え…?」不意にルイズの顔が紅潮した。
「許さん!!」
 自分で言わせといてなんだよそれは、とキュルケは思った。


「だったら勝負をしたら良いのではありませんか?」カトレアが三人の間に入ってきて言った。
「勝負?」と公爵。
 するとカトレアは一本の火縄銃を持ち出した。
「これはロシアンルーレットと言って、楽に勝負をつけられますの」
「よっしゃー!まずはワシから。ラ・ヴァリエール家の勇気、見せちゃるけんのお!」
「やめてください!この銃、どう見ても一発目から出るじゃないですか。というかルーレットじゃ
ありませんよ」
「お父様!!飛び散ったら片付けるの面倒だからやめてええええ!!!」
 ニコニコしているカトレアを見ながら、実は彼女は外国のスパイではないのか?とキュルケ
は思った。

(筆者注:この世界にロシアという国は存在しない。よってロシアンルーレットという言葉も存在
しないのだが、そんなことは気にしない)


 長い剣を持つヴァリエール公爵。
「お主は魔法が使えんようだな。だったら剣で勝負だ」
「お父様、やめて!彼は強いんです」
「なにを?娘を守るためならどんなことでもするぞ!」ヴァリエール公爵は何かに酔って
いるようだった。
「ああなったらお父様は止まりませんわ」とカトレアは笑顔で言った。
 その笑顔が怖い、とキュルケは思った。
「誠一郎…」ルイズは剣を渡しながら言った。
「なんだい、ルイズちゃん」
「お父様のことなんだけど」
「心配いらないよ。なるべく傷つけない・・・」
「死なない程度にボコボコにして」
「・・・」


 ヴァリエール家の敷地内の山。
死合(しあい)開始!
「どりゃああああ!」
「きええええええ!!!」
 六十過ぎとは思えないヴァリエール公爵の剣さばき。しかしそれをかわす北野君の動きも
洗練されて無駄がない。
「このワシを魔法だけと思わんことだな。くらえ!ヴァリエール家奥儀!!!」
「へ?」
「悪魔封殺滅却剣!!!!」
 ヴァリエール公爵の剣が大きく振り上がる。
「北野くん!!!」キュルケは叫んだ。
 しかし、その戦いの様子を見ていたタバサは言った。
「かわした…」
「ふわあ、びっくりしたなあ。革の鎧が斬れてる…」北野君は、ルイズから借りた革の鎧の表面
を撫でながら言った。
「うむむ…。わがヴァリエール家奥儀をくらっても生きているとは、よほど高等な悪魔使いに
召喚されたようだな」
 いや、召喚したのはあんたの娘だよ、とキュルケは思った。
「ヴァリエール家にはそんな奥儀もあるんですか?」そしてキュルケは横にいたカトレアに聞く。
「あるわけありませんわ。お父様が勝手に作っただけですから」
「…なんか、ヴァリエール公爵。足もとがふらついていますね」
「それはそうでしょう、もう年ですから」
「だったらあんな所で戦わすのはまずいんじゃないですか」
「あんな所って?」
「それは…」
 北野君とヴァリエール公爵が戦っている場所、それは崖のすぐ近くであった。
なんであんな場所で戦ってるの?とキュルケは思ったが、すぐ近くでニコニコしているカトレア
の横顔を見て、それ以上は突っ込むまいと彼女は決意した。
「あう!!」
「お父様!!」
 足元フラフラなヴァリエール公爵は、当然ながら足を踏み外し崖から転落しそうになった。
「な!?」
 そこには公爵の左腕をしっかりと掴む北野君の姿があった。


「た、助けてくれたのか」
「そりゃあもう」
 北野君は、ヴァリエール公爵を引き上げるとお互いに向かい合う。
「ワシは君のことを誤解しておったわ」
「わかっていただけましたか」
「お父様!」ルイズもその言葉を聞いて嬉しそうに二人のもとに駆け寄った。
「君は良い悪魔じゃ」
「いや、悪魔じゃないんですけど…」
「娘をよろしく頼む!」
 そう言うと、ヴァリエール公爵は、娘のカトレアと一緒に夕陽に向かって歩いて行っ
たのである。


   エピローグ
 帰りの馬車の中。
「ごめんね誠一郎。お父様が迷惑かけちゃって」
「いいんだよ、なかなか楽しい家族じゃない」
「けが、してない?」
「平気だよ。体だけは丈夫なんだ。お父さん譲りだって、母さんが言ってた」
 ルイズは、北野君のその言葉を聞いて少し考えた。
「ねえ誠一郎、あなたにも父と母がいるのよね」
「うん」
「会いたいと、思う…?」
「そりゃあ、そうだね。僕、お父さんとお母さんのこと大好きだから。ルイズちゃんもそうでしょう」
「あ、うん…」
「仲良さそうだったもんね」
「誠一郎…」
「なに?」
「なんでもない」
 そう言うとルイズは、北野誠一郎の肩に静かによりかかった。

   おしまい


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