あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-25


頭がかち割れるかと思うくらいの衝撃がワルドを襲った。
ガアン! と肉と肉が、骨と骨がぶつかり合う音が辺りに響く。防御もままならない状態でくらった為、ワルドは前回同様に吹っ飛ばされた。
ただ、前回と違うのは、ダメージの大きさ、そして同じ場所に二度も受けてしまったので、ワルドを再び立ち上がらせない程の威力へと変わった。
片膝をついて、激しく肩を上下に動かす。
「くそ……、この『閃光』がよもや後れを取るとは」
当麻は、再び駆ける。駆けるとはいっても、本人がそう思っているだけで、実際は早歩き程度だ。
電撃により体が麻痺しているのにも関わらず無理矢理動かした事。それに、全身を襲う火傷の痛みによるせいである。
ワルドは、未知なる敵に初めて恐怖した。魔法を全て打ち消して、どのような事が起きても諦めず、立ち上がり続けるその存在に。
ワルドは杖を振ると、空に飛び上がる。ルイズが叫ぶ。
「ワルド!」
「仕方ない。目的の一つだけでよしとしよう。どのみちここにはすぐに我が『レコン・キスタ』の大群が押し寄せる。
 ほら! 馬の蹄と竜の羽の音が聞こえるだろう!」
確かに、外から大砲の音や、火の魔法が爆発する音が、遠く聞こえて来た。戦う貴族や兵士の怒号や断末魔の音がそれら轟音に入り混じる。
「そうか」
何かに気付いたのか、少年は迫り来る敵に恐怖もせず、迷いなく頷いた。
そしてさらに告げる。
「それなら、最後の踏ん張りが必要だな」

ありえない。ワルドもルイズも感じた。
メイジ相手ならともかく、普通の兵士相手に少年は勝てない。ただの高校生が訓練された兵士に勝てるわけがない。
それも人数の数だって半端ない。それこそ奇跡が起きても不可能に違いないのだ。
しかし、なぜだろう。
この少年なら、そんなありえない事でも平気でやり遂げそうなのだ。
誰もが解けない難問に悩んでいる自分に、いとも簡単に解いてくれるように。
そんな力強さを少年から感じる。そんな頼れる部分が少年にはある。
「ならばやってみろ、カミジョウトウマ!」
そう捨て台詞を残し、ワルドは飛び去っていった。
少女は吹き飛ばされた杖を拾うと、あぐらをかいて座っている少年の所まで近寄る。
「見つかったか、よかったな」
少年の言葉に安心感が含まれたのか、思わずえぇ、と少女は呟いた。
後、少女はちらっと少年の左腕を見る。そこは前以上に酷くなっていた。
ぴくぴくと痙攣している上、酷い水ぶくれになっている。おそらく、背中も同じようになっているのだろう。
そう思うと、胸が痛くなった。そんな命を賭けてまで、一瞬だが心臓が止まったのかもしれないのに、
自分が助けてと言ったばっかりに、こんな目にあってしまったのだ。いや、そもそもそう言っただけでなぜここまでするのだろうか?
「ねぇ……、なんでそこまでしてくれたの?」
少女は思わず呟く。とてもじゃないが、二体ものワルドを倒したメイジの姿には見えない程、弱々しかった。
へ? と聞いてきた少年に、少女は顔を赤くなりながらも聞く。
「だって……死んじゃうのかもしれないのに、平気で無茶なことをやるんだもん……」
下手したら死んでしまうのでは? と思わせる部分もあった。それだけ不安なのだ。幻想殺し以外は普通の人間なのだから。
「いや……お前助けてって言ったじゃん」
少女の言葉に、少年はキョトンとした顔になった。
さらに、続ける。
「助けてって言われたから俺は最良の方法をとったわけで、そりゃ俺が逃げてお前が助かるなら、迷わずそっちを選ぶ――」
「バカ!!」
少女は思わず話を割ってまで、叫んでいた。 助けてくれた事は嬉しいし、感謝もしている。だからといって、少年が命を平気で捨てる必要はないのだ。
目頭が熱くなる。こちらは心配しているのにどうしてこの少年は平気でいるのだろう。
どうしてこんなにも力強く感じてしまうのだろう。
「バカ……」
少女の瞳から涙が零れる。
小さな、小さな粒が顔を伝っていった。
少年は何も言わずに少女に背を向けた。酷い火傷に、思わずうっと呟く。が、すぐに口を結び、問う。
「なんで後ろ向くのよ」
「使い魔の前では泣かないんだろ?」
少女はバカ、と吐き捨てる。バカなのがちょうどいいんだよ、と少年は笑って答える。
すると、少女は立ち上がり、自分の純白のマントを少年に被せた。
そして、手を腰に回して抱きしめる。まだ零れる涙を純白のマントに濡らす。
「そんな簡単な事じゃないよね……? 下手したら死んじゃうのかもしれないのに、怖いとか思わないの?」
少女は少年の事を怒っているわけではない。自分が助けてと言ったのだから、悪いのは少年ではない。
しかし、
それでも死んでほしくないという自分がいるのもまた事実。
わたしってなんでこうなんだろ……と少女は思う。
もっとわかりやすく伝えたいのが、こんな状況に陥った事がないからわからなかった。
少年は、少女の方に振り向かない。そして、躊躇いもせずに告げた。
「いや、怖いっちゃ怖いけど、……ほら、約束だからな」
約束? と少女は聞いてきて、少年は苦く笑った。言うべきかどうか悩んだが、結局、
「……そ、約束だ。ルイズと彼女の周りの世界を守るってな。それが出来なかった勇敢な王子様との約束なんだよ」
言ってしまった。その言葉に、少女はうっすらと笑う。
全てにおいて、この少年は力強いのだ。ただ、それだけの話であった。
そして小さく、少年に聞こえないようにわざと小さく
「ありがと」
と呟いた。
もう、涙は止まっていた。

「さてと」
当麻はルイズの小さな手を自分の腰から離れさせて立ち上がる。
「残りの半分、頑張りますか」
この場から脱出出来る唯一の手段である『イーグル号』は、既に出港している。つまり、二人はこの浮遊大陸に閉じ込められたのだ。
外から聞こえてくる怒号、爆発音は、以前より大きくなってきた。おそらくここにやってくるのも時間の問題であろう。
と、ルイズが当麻の隣に並ぶ。
「わたしも、戦う」
短く、自分の決心を伝える。当麻は小さく笑うと、言った。
「あんまり離れるなよ? 守れなくなっちまうから」
わかっているわよ……、と不機嫌そうにルイズは文句をつけた。
敵はおおよそ五万、体力が限界である当麻と、ゼロのルイズ、敵一人も倒せず終わってしまうだろう。
いや、違う。当麻は断言する。
守るのだ。たとえ何人敵がこようとも、
絶対に守り通すのだと。
その瞬間、当麻の左手のルーンの文字が小さく光る。しかしその光りは僅かであり、別な事が彼らの意識を違う方向へと持って行った。
ぼこっと、当麻の隣にいるルイズのさらに隣の地面が突如盛り上がった。
「ん?」「へ?」
これから命を捨てる者とは思えない間抜けな声を出して、二人は地面を見つめた。
ルーンの文字の輝きは気付かれる事なく消えていた。

すると、ぼこっと床石が割れ、茶色の生き物が顔を出した。
「……………………………………………………はい?」
「あああああああああああ」

二人、それぞれ別々の反応を見せる。忘れるわけがない。見覚えのある動物。
その茶色の動物は、ルイズの存在に気付くやいなや、直ぐさま飛び掛かり、当麻は確証を得た。
「お前……まさかルイズ求めて三千里ですか?」
「そんなこと言っている暇があったらどかしてよ! きゃっ!」
ルイズが頬を朱に染めて、ギーシュの使い魔である巨大モグラをどかそうとしていた。
「こら! ヴェルダンデ! どこまでお前は穴を掘る気なんだね! 構わないがね! って……」
巨大モグラが出てきた穴から、ギーシュの声がする。一拍置いてからひょこっとギーシュが顔を出した。まさかとは思ったが、当麻の目が見開かれる。
「おや! きみたち! ここにいたのかね!」
「いやいやいや、どうやってここにこれたんだ?」
「いやなに。『土くれ』のフーケとの一戦に勝利した僕たちは、寝る間も惜しんできみたちのあとを追いかけたのだ。なにせこの任務には、姫殿下の名誉がかかっているからね」
「まて、いくらなんでも巨大モグラがここまで来ちゃう設定はおかしいだろ」

そのとき、ギーシュの傍らに、キュルケが顔を出した。
「タバサのシルフィードよ」
「キュルケ!」
「アルビオンについたはいいが、何せ勝手がわからぬ異国だからね。でもこのヴェルダンデがいきなり穴を掘り始めた。その結果がこれだ」
「ちょっと! 無視しないでこれなんとかしなさいよ!」
巨大モグラは、ルイズの指に光る『水のルビー』に鼻を押しつけている。
いや、まて。あなた様の鼻の効果範囲はどんだけ広いんだ!? と突っ込む当麻。ここで巨大モグラが助けにくるなんて予想外過ぎる。
「ねえ聞いて? あたし、もうちょっとであのフーケを捕まえ――」
「話は後、後。逃げるぞ!」
キュルケが顔についた土をハンカチでぬぐいながら言っているのに対して当麻が割り込む。
逃げた方が手っ取り早い典型的な例である。
「逃げるって任務は? ワルド子爵は?」
「任務は終わり、ワルドは裏切り者です。わたくしたちの任務は無事帰還することですから早くして下さい!」
「なぁんだ。よくわかんないけど、もう終わっちゃったの」
キュルケはつまらなそうに言った。
あ……、と当麻は何かに気付くと、事切れているウェールズに近づいた。
小さく黙祷を捧げると、ウェールズの指に嵌めてある風のルビーをポケットにおさめた。
何か、アンリエッタに渡す形見の品はないかと思った故の行動である。
「俺は、あんたのこと忘れないから」
当麻は再び告げる。
「アンリエッタだけじゃない。ルイズを囲むその世界を守り抜いてやるから……」
「おーい! 早くしたまえ!」
当麻は一礼して、穴に駆け戻る。
最後の当麻が穴に潜った瞬間、王軍を打ち破った貴族派の兵士やメイジが飛び込んできた。

当麻達は、シルフィードに乗っていた。
キュルケやギーシュがしきりに、当麻の左腕に負った怪我の具合について質問してきたが、曖昧な返事をしてごまかした。
疾風とも呼べる風が心地よい。
すると、何かが自分の肩に寄り掛かってきた。
見ると、それはルイズである。ようやく緊張から解放された為か、寝てしまっている。
スースー、と小さな寝息を立てているのにドキッとした。
しかし、そんな気持ち、数分後には忘れ去る。キュルケが思いっきり抱きしめて、失神したのであった。


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