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UM☆アルティメットメイジ 第3話 後編


「形勢逆転ね・・・ どうする? 色男」

見晴らしの良くなった室内から、青き巨人の雄姿を臨みながら、キュルケが言う。
目の前のエルフが自分たちを人質に取る可能性も少なからず残っていたが、何故だかそれは、除外して良い可能性に感じられた。

「・・・どうもこうも無い 貴様等の勝ちだ 蛮人」
相変わらず感情の篭らぬ声で、ビダーシャルが答える。合理的なエルフらしい諦めの早さと言えよう。
やがて、その体が音も無く宙に浮き上がった。

「まあ ガリアの王への義理立ても この程度で十分であろう 
 後は蛮人同士 好きなだけ争うといい・・・」

「 ? どういう意味」

今度は問いかけには応じず、そのままビダーシャルは、空の彼方へと消えた―。

「蛮人同士・・・?」
キュルケが中空に呟く。程なく、トタトタという足音が、部屋に近づいてくる。

「キュルケ! 大変よッ!!」
「・・・名門ヴァリエール家の御令嬢が マント一枚でストリーキングしなきゃいけないほど大変なの?」
「そんな事 言わなきゃ分かんないじゃないの! 余計な事をッ!!」

下らない漫才をしている間に、何が大変なのかを説明する必要は無くなっていた。
大地を揺さぶりながら近づいてくる騎士人形の一団が、部屋からハッキリと見えたからである。



「あれが【イーヴァルディの勇者】ね ・・・流石は陛下 見事な読みですわ」
騎士人形の肩の上で、黒衣の女が呟く。

女の名はシェフィールド。
【神の頭脳】・ミョズニトニルンの名を冠し、あらゆるマジック・アイテムを使いこなす、ガリア王ジョゼフの使い魔。

「渡りに船とはこの事だね
 この【先行量産型・ヨルムンガント軍団】の力、存分に試させて貰おう」

主の意気に呼応するかのごとく、重武装の魔法人形たちの瞳が、真っ赤に輝いた。



「こっちに近づいてくる」
「狙いはアルティメットメイジなの・・・? 来るわタバサ! 気をつけて!」

だが、キュルケの激励に対し、タバサは何の反応も示さない。
女の子座りの状態で、情けなくへたり込んでいる。

『どうしたタバサ!? しっかりするんだ!!』
「―ん きゅい・・・?」

やる気無さげな声を響かせ、ようやくタバサが顔を上げる。
呆然と当たりを見回し、湖水を覗き込んだところで、突然、驚きの悲鳴を上げた。

「きゅ きゅ きゅいッ!? な なん! 何なのコレ!?
 私がお姉さまでお姉さまが私ィ!?」

『・・・ハ?』

「お お お姉さまはどこなの~!? ちっ 違うの! お姉さまはここなのね!!
 きゅい! それじゃあ私はッ!? 私は一体誰なのぉ~!?」

パニックのあまり、両腕をパタパタと羽ばたかせ、首を左右にカクカクと動かし始めるタバサ。
いや、我々の良く知るタバサは、こんな意味不明な行動を取るマヌケでは無い。

「・・・シルフィード よね? アレ・・・」
「ちょっとー! 何があったの? UFOマン」

『・・・ッ!? しッ しまったあーッ!!』
何事かに気づいたUFOマンが、ここで叫び声を上げる。

『刺激が強すぎたんだ・・・! 合体のショックで・・・  タ バ サ が 気 絶 し た ッ ! !』

「「「え え え え え え え え え え ! ?」」」



「フン どうやら向こうさんは 何かのトラブルらしいねえ」
青き巨神の謎のダンスを遠目にしながら、シェフィールドが邪悪に笑う。

「構うこたァ無いよッ! やっちまいな! ヨルムンガントッ!!」
主の指示を受け、騎士人形達が一斉に突撃を始める。

『こうなっては君だけが頼りだ 何とか持ちこたえろ! きゅいきゅい!』
「た 立てない・・・ 地面が遠いのね」
『しっかりしろ~! お前それでも風竜かッ!?』

震える子鹿のような足つきで立ち上がり、何とか内股ぎみに構えるシルフィード。

「たぁあぁぁああぁ~」
力の抜けるような声が辺りに響き、間近のヨルムンガント向け、シルフィードがよろよろと突進する。
ポスンと胸元に飛び込むと、ブ厚い鋼の胸板目掛け、ポカポカポカと乙女パンチを繰り出す。
恋人にやられたら男冥利に尽きるこの攻撃、当然ダメージは無い。

呆れ顔のヨルムンガントが、ぺちぃ、とデコピンを繰り出す。
青き巨人は勢い良くぶっ飛び、思い切りはしたない体勢でひっくり返った。

『全然ダメだ!! キュルケ以下だ!! これっぽっちも勝てる気がしないッ!!』

「きゅい! 分かったの! きっと この窮屈な服がいけないのね!」
言うが早いか、ただちにスーツを引っ張り始めるシルフィード。
腹部の素材がビリリと破れ、愛らしいおへそがチラリと覗く。

『なッ ナニをするだァーッ!? キサマッ!!
 分かってんの!? パンツはいてないんだよ!!』

「きゅい? 全然平気」

『ら らめェーッ! 女の子はもっとおしとやかにッ!!』

アルティメットメイジの宿命なのか。
いつしか周囲は、大量のギャラリーに取り囲まれていた。

「見ろ! コルベール君!! やはりイーヴァルディマン・Pが戦っておるぞ!
 イーヴァルディマン・Pの出現は3人の少女と関係があるのではと思い
 君が設計した新造艦・オストラント号を駆って はるばるガリアまで来た甲斐があった!!」

「見事な推理です! 学院長 でもこれって真剣に外交問題・・・」

ギャラリーを意識したか、トドメを刺すべく騎士人形が取り囲む。

「ブザマだね~ とっととトドメをくれてやんな!」
シェフィールドの一声を合図に、容赦の無いストンピングが降り注ぐ。
一切の台本がないガチンコな攻撃に、シルフィードはたちまち失神する。

「きゅ きゅい~・・・」
「さて フィニッシュと行くこうか!」

背後の2体のヨルムンガントが、シルフィードを無理やり引き起こし、羽交い絞めにする。
大きく破れだしたスーツから、雪のように白い背中が、牝鹿の様にほっそりとした脚がこぼれだす。

盛り上がるギャラリーを尻目に、眼前の1体が、巨大な蛮刀を最上段に構える。

「ヤ ヤバイわよ! アレ!?」
「タバサァァァッ!! 目を開けてーッ!!」

キュルケの叫びが届いたのか。
タバサの体がピクン、と動き、その右腕が、ゆっくりと前方に差し出される。
震える手先で、親指と中指を必死に擦り合わせる。

「・・・? なんだい? おまじないのつもりかい
 くだらない事してんじゃないよッ!!」

「イヤアアアアア タバサアアアアアアア!!」

右手ごと脳天を叩き割らんと、ヨルムンガントが蛮刀を勢い良く振り下ろす。

―刹那、


      パ ッ チ ィ ィ イ ィ ン


という、乾いたスナップ音が響き、一条の光が騎士人形を走り抜ける。
無骨な刀身が根元から弾け跳び、ヨルムンガントの動きがピタリと止まる。
やがて、ズ、ズ、ズ、と土煙を上げながら、切断された頭部が、胴体を緩やかに滑り落ち始める。

「わッ! 私の最高傑作がッ!!」

「指パッチンで・・・ ゴーレムを切断した・・・!」

「詠唱も唱えずに真空波を・・・ なんて素晴らしい
 あれが スクウェアクラスのUM・・・」

騎士人形達が色めきだった一瞬を突き、タバサが立ち上がる。
両脇のヨルムンガントをそれぞれ片手で捕らえると、ジャイアントスイングの要領で乱暴に振り回す。
回転は次第に怪物級の竜巻と化し、人形達を遥か上空まで吹き飛ばす。

ダメ押しとばかりにタバサが左手をかざす。
大気中の水分が凝結して氷槍の大群となり、空中の2体を容赦なく串刺しにしていく。

「ミ、ミサイルストーム!? なんて荒業ッ!!」
「やった やったわ! すごいわ タバ・・・」

ドワオォ!!

目標を大きく外した槍の一本が、ルイズ達の真横を通過し、外壁を丸ごともぎ取っていく。
先ほどより、さらに見晴らしの良くなった部屋の中で、ふたりが絶句する。

「・・・タ タバ・・・サ・・・」

暫くの間、ハァハァと大きく肩で息をしていたタバサだったが、
やがて、キッと顔を上げると、人形達を激しく睨み付けた。

形の良い眉は大きくつりあがり、
ほほから耳たぶに至るまで、顔中を真っ赤に紅潮させ、
小さな口元はキツくへの字に結ばれ、
そして、つぶらな瞳には、今にも零れ落ちんばかりの大粒の涙を携えている。

無理からぬ事である。
任務のため、ひいては復讐のためならば、人前で肌を晒す事もいとわぬ人形になれる彼女だったが
あくまでその本質は、不器用で一途な女の子なのだ。
人前であっけなく昇天し、気がついたら公然ストリップなどという状況に耐えられるほど、器が整ってはいない。

踏みにじられた乙女の純情が、長年抑え続けた激情の扉を押し開こうとしていた・・・。

「・・・ッ ううっ ひぐっ・・・」
『お 落ち着け タバサ 君のMOEは危険すぎ・・・』

「う ぼ あ゛あ゛あ゛あ゛ア ァ ァ あ あ あ あ ア ァ ア ァ ァ ァ あ゛あ゛あ゛ァ ァ ァ ! ! ! ! 」

「きゅい!? お姉さまがッ! お姉さまが暴走したッ!!」

― 水 水 風 風 萌 萌 ―

未知なる第5の属性を孕んだヘクサゴン・スペルが完成し、魔法以上の氷塊が、限りなく降り注ぐ。
突然巻き起こった地獄絵図に、蜂の巣を突いたようなパニックに陥る群集。
こうなってしまうとヨルムンガントなど、ただのデカい的に過ぎない。
氷塊に押しつぶされ、指パッチンでスパスパ切断され、大雪山おろしでスクラップと化す。カンタンなんだよこんなの。

「ダメエエエエエ! 正気に戻ってッ! タバ・・・」
キュルケの叫びも空しく、アーハンブラ城を直撃した氷塊が、部屋の屋根をまるごと引っぺがす。

「バカッ! 何やってんのよ! キュルケ!」
「でも・・・ タバサを止めないと」
「ムリよッ! アレを止められるヤツは人間じゃないわ!」

ルイズの言う通りであった。
今のタバサは、怒りで我を忘れているなどという生易しいレベルではない。
何かもっと、禍々しい存在に取り憑かれているとしか思えなかった。

「 こ の   ロ リ コ ン ど も め ! ! 」

愛らしい少女の唇からは想像のつかぬ、黙示録の始まりを告げるかのような邪神の咆哮が轟き渡る。
烈風が大地を切り裂き、降り注ぐ氷塊が、エルフの愛した大地を容赦なく破壊する。
その姿は、まさに地上に降り立ったシャイターンそのものだった。

「逃げるのよ! 非力な私達人間には 逃げることしか出来ない!
 彼女の変身が解けるまで おそらくは30秒弱!
 全身全霊を篭めて逃げ切るのよ!!」

不幸にもその場に居合わせた者達にとって、人生最長の30秒が幕を開けた・・・。


【○月×日


 ガリア王国・アーハンブラの国境地帯にて、3体目となるアルティメットメイジと遭遇する。

 彼女達をして『イーヴァルディの女神』と呼称する、市井の噂はまさに違わず

 その脚の白きは、人の子が美貌を誇る事の空しさを悟らせ

 その唇の紅きは、この世の芸術がいかに無力であるかを知らしめ

 その瞳の碧きは、あらゆる地上の光景をガラクタへと貶めた。

 しかるに、その性、残酷にして極めて凶暴。

 当地は彼女の癇癪により、瞬く間に地獄と化す。

 幼子が戯れに蟻を踏み潰したしても、卑小な蟻にはそれを知覚し得ぬように

 我々の文明も、努力も、そこに至る人の情念すらも、

 彼女の気紛れの前では、何ら意味を成さないように思われた。

 かろうじて命を拾い、こうして震える手でペンを走らている今も、

 私は人が、現在を生きるという事の、その奇跡の大いなるを思わずにはいられなかった・・・。


 ― グラモン家所蔵 『ギーシュ・ド・グラモンの手記』より抜粋 ―            】


オストラント号は、文字通り奇蹟的に飛んでいた。

果たして船というのは、どこまで痛めつけても飛べるものなのか、その限界が今のオストラント号であった。
乗員達もまた、一切の口を利かない。
財産も、空腹も、今日を生き延びた事に対するブリミルへの感謝も、全てがどうでも良かった。
誰も彼も、今はただただ、泥のように眠りたかったのだ。

「おかえりなさい タバサ」
かろうじて人間らしい営みが残る一室には、再開を喜び逢う少女達の姿があった。
主賓のタバサは部屋の中央、母親に寄り添い、体育座りで毛布を被っている。

ごめんなさい、と、ありがとう、と
友人ふたりに対し、幾つもの言葉を言いたかったタバサだったが
それらを口にした途端、自分の全てが、ほどけて消えてしまいそうで・・・

「・・・ただいま」と、俯きながら呟くのが精一杯だった。

「もう ひとりで無茶はしないでね」
そう言いながら、キュルケは熱い抱擁をした。

「ま アレの恥ずかしさが アンタにもようやく分かったみたいだしね・・・」
ルイズは彼女らしい天邪鬼っぷりで、持て余した指先で髪の毛をいじっていた。

「フフッ 今のマント1枚のアンタじゃあ 何言ったって締まらないわね ヴァリエール」
「だから~ッ! 言わなきゃ分かんないって言ってんでしょうがッ!」

他愛の無い、ありふれたいつもの光景に、久方ぶりにタバサは笑った。

『ウム! 雨降って地固まるとは まさにこの事だな!』

「・・・なんでアンタは そんなに元気なのよ」

『もうすぐ日が昇るぞ デッキへ行こう! 諸君!』

「イ・ヤ・よ! ゆっくり寝かせてちょうだい」

『ナニを言うか! こういうイベントこそ大切なのだ さあ タバサも』

「・・・あ」

UFOマンに引き起こされて、タバサの毛布がはらりと落ちる。

何しろ激戦であった。ルイズすら衣服を拾っている余裕が無かった程に。

折りよく、生まれたばかりの太陽の恵みが、窓から室内に差込み・・・


生まれたままのタバサの姿を、余すところ無く照らし出した。


「あ」
『うほっ』
「・・・ッ!」
「れ・・・冷静になって タバ・・・」


「 こ の   ロ リ コ ン ど も め ! ! 」


「うわあああ タバサが暴走したッ!?」
「早くッ! 奥方様を安全な所へ!!」
『バカなッ! 合体もせずにMOEをうぎゃああああああああッ!!』
「いやあああ! お姉さまあああああ!!」
「近寄っちゃダメ! 今のアレはタバサじゃないッ!!」

ズワオッ!!

「ひ! 氷柱がメインエンジンを直撃ッ!!」
「機体がッ! 機体がもちませんッ!?」
「イカン! 何としても国境までもたせるんじゃあ!!」
「人間の盾だ! アレを機関室に近づけるな!!」

「ああっ!? 私の船が沈んで行く~!!」




あらゆる困難を乗り越え、新しい夜明けを迎える事に成功した一行。

―にも拘らず、本日のギーシュの日記もまた、えらく長くなりそうな気配を見せ始めていた・・・。



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