あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

SnakeTales Z 蛇の使い魔-20

  デブリーフィング
― 帰 還 報 告 ―

凱旋帰還中に敵に襲われる、ということも無く、無事に全員王都に帰還した。
シルフィードの背中は思ったより心地よく、スネークはルイズに起こされるまで目を覚まさなかった。
そのルイズの顔が赤かったのは少々気になったが、誰も何も答えてはくれなかった。。
王都に入ってまず出迎えてくれたのは緊張に顔をこわばらせた門番の兵士。
どうやらアルビオンがトリステインに攻め込んでくるという噂が立っているためらしい。
城壁をシルフィードで越えようものならマンティコア隊が取り囲むのも仕方が無いことだ。

「杖を捨てろ!」

地面に降りて開口一番。
どこの兵士も同じことを言うようだ。
黙ってそれに従う。
スネークもデルフリンガーを投げ捨てた。
デルフがぞんざいな扱いに抗議するのを無視する。
もちろん、それ以外の武器は持ったままだが。

「今王宮の上空は飛行禁止だぞ。触れを知らんのか?」
「私はラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。
 姫殿下にお取次ぎ願いたいわ。」

ラ・ヴァリエール家と聞いて少し狼狽し、杖をおろす兵士。

「ご用件は?」
「いえません。密命なのです。」
「それでは取り次ぐわけにはいきません。私の首が飛んでしまいます。」

密命だからいえないのだが。
だが、この状況では仕方が無い。
国交が悪化してぴりぴりした状態というのは、多少のことでも過剰反応してしまうものだ。
ましてや戦争が絡むとなったらなおさらだ。

「ルイズ!」

不意に宮殿の入り口から声がした。
声のほうからアンリエッタが駆け寄ってくる。
ルイズの表情が仏頂面から煌く笑顔に変化する。
一度スーパースローカメラで見てみたいほどの変わり身の速さだ。

「姫様!」

兵士が見守る中、二人はひっしと抱き合った。
端から見ればほほえましい再会だが、押し付けられた任務のことを思い出すと
そう簡単にほほえましいとは思えなかった。

まあ、美少女の百合百合しい姿に見とれていたのは否定しないが。


ルイズはアンリエッタ王女の居室にて、帰還報告を行った。
最初はいなかったキュルケとタバサとの合流
空賊に変装していたウェールズ
最後の晩餐
そして、ワルドの裏切りと、ウェールズの死。そして遺品の風のルビー。

脱出手段を話し終えるまでアンリエッタは無言で聞いた。
ルイズが話しを終えると、アンリエッタは深くため息をつく。
その目には大きな愁い。手には翠に輝くルビー。

「わかりました。任務遂行、ご苦労様です。」

アンリエッタが感謝の詞を述べる。
ルイズはそれだけで誇らしげだが、スネークの表情は暗い。
それどころか、スネークはこの部屋に入ってから一言もしゃべっていないのだ。

「どうかしましたか?」
「…アンリエッタ―姫。聞きたい事があります。」

珍しく丁寧なスネーク。
それを気味悪く思うルイズであった。

「言葉遣いなど気にせず申してください。」
「すまない。…今回の任務、なぜルイズに?」

アンリエッタの眉がピクリと動いた。
扉を開け、人を確認し、窓の外を確認。そしてディテクトマジックをかける。
人に聞かれるのを警戒しているようだ。

「…人はいないようですね。
 わかりました。お話します。」


「今回の任務の本来の目的はあの手紙をウェールズ様に届けてもらう事でした。
 回収のほうはどちらかといえばついで、でした。」
「そんなことは分かっている。なぜ―」
「ルイズに頼んだか。
 それはルイズ、あなたが軍属ではないからです。」

ルイズが首をかしげる。

「手紙だけならゲルマニアは手紙を信じないでしょう。
 ですが、それを回収しようと国軍が動いた、と分かってしまえば話が別です。
 少なくともゲルマニアは不信感を抱きます。
 同盟が無事結ばれたとしても、ゲルマニアと対等な関係を築き上げるのは難しくなるかもしれません。
 そのため軍の人間を動かすことが出来ない。そこで浮上したのがルイズです。
 あなたなら大使として派遣するに値する血筋、さらに婚約者が強力なメイジだったのも重要な点でした。
 あなた自身もあのフーケを捕まえたメイジの一人、任務を任せるに値する実力を持った人物です。
 …まさか、ワルド子爵が裏切るとは思いませんでしたが。」

まだ怪訝な面持ちでアンリエッタを見つめるスネーク。

「まだ、何か?」
「…その作戦、あんた一人で考えたのか?」

とても信じられない、といった声だ。
わからなくもない。齢17の少女一人の判断だけでこの国が動いているわけがあるはずないのだから。

「勿論、私ではありません。」
「じゃあ誰が?」
「マザリーニ枢機卿です。」

スネークは顎に手をやる。ぶつぶつと独り言をつぶやいている。
何かを考え込んでいるようだが、イマイチまとまらないようだ。

「あんた、さっきから何なのよ?」

スネークの脇でルイズがたずねる。

「…いや、何か引っかかってな。」

この国の政治の実権を握っているような人間が、とてもこんなくだらないことに手を貸すとも思えない。
だが事実、手を貸している。何か理由があるのか?

「ただの老いぼれの妄想でしょ?」

ルイズにこの一言で切り捨てられ、スネークの気力ゲージが低下したのは言うまでもない。

「色々引っかきまわして、すまなかった。」

アンリエッタに頭を下げて謝るスネーク。

「お気になさらず。ルイズ、水のルビーは差し上げます。今回の報酬と思ってください。」

ルイズが口を開いた。
だが、その口から抗議の言葉が出る事はなかった。
うつむいたアンリエッタの顔を見たためだ。

「二人とも、ご苦労様でした。」

口ではそういっているが、肩が震えている。
少しばつの悪そうな顔をするスネーク。
二人とも何も言わずに部屋を後にした。


「…あなたは、やっぱり逝ってしまったのですね。」

独りになった部屋で呟く。
返ってくる言葉はない。

「…仕方ありませんね。
 あなたは、い、つも…私ではない、なに、かを見てました…。
 あなたは、王族である前に、戦士でしたもの…。
 最期も戦士でいられたのでしょう…?」

戦士の魂は戦場でしか存在できない。
そしてその魂は戦場で消え去る。
それを覚悟して彼を愛した。

いつまでも泣いてばかりはいられない。
彼の生き様を心に刻み付ける。

「…死に名誉あれ。」

彼に届くことを祈って、手向けの言葉を指輪に囁いた。


「スネーク、姫は…大丈夫かな?」

学院への帰り道、シルフィードの上でルイズが聞いてきた。
その表情は親友を心配しているものそのものだ。
今回の旅で酷い目に合わされたことなどまったく気にしていない。やはりやさしい子だ。
だが、その純粋さがスネークに恐怖を与える。
そんな考えを頭から振り払い答えた。

「大丈夫だろう。」
「どうして?」

すぐに聞き返してくる。それほど心配なのだろう。

「彼女は愛されるだけじゃない。ただ愛され続けていたわけじゃない。
 彼女は自分から愛することができるということも知っている。
 人は人を愛することができるということを知っている。
 そんな彼女だ、支えてくれる人間はたくさんいるさ。
 お前みたいに心配してくれる人間は一人じゃない。」

そういってやるとルイズの表情が少し表情が緩んだ。
元気を取り戻したようだ。

「あんたが愛だ何だっていってるのは少し気持ち悪いわね。」

元気になると減らず口が増えるのはいただけないがな。


かつては名城と謳われたニューカッスル。
現在は戦争の傷跡がいたるところに見受けられた。
それを何人もの兵士が修復している。
どうやら貴族派はこれを再利用するつもりらしい。

ひどい戦争だった。
王党派も貴族派も一歩も引かない死闘。
一方向からしか攻められないという地形を利用して王党派は貴族派に二千という大損害を与えた。
その代償は自軍の全滅。
流れた血はおそらくアルビオン中のワインの総量と匹敵するほどであっただろう。
地面は血で少し赤黒くなっていた。

そんな中、アルビオンには珍しいトリステインの魔法衛士隊の制服を来た青年がいた。ワルドだ。
その隣にはフードを目深にかぶった女、『土くれ』のフーケだ。
二人は城の修復を見守っている。
フーケはただ見ていることに飽きたのか、黙り込んでいるワルドをからかう。

「あの『閃光』のワルド子爵ともあろうものが獲物を取り逃がすなんてねぇ?」
「…言い訳はしない。」

反応するワルド。それだけでからかい甲斐があるというものだ。

「あの小娘と男、生きてるのかしら?」
「使い魔はアルビオンの大陸から身投げしたと報告が来ている。…ルイズのほうは知らんな。」

口ではそういっているが、ワルドはあの二人が簡単に死んだとは思っていない。
死体は上がっていないし、そもそもアルビオンの周囲は雲で覆われている。
雲の中に仲間がいなかったとは考えがたい。
報告を信用しているふりはしているが、本心は別だった。

「あんた、信じてないわね。」
「当然だ。この私を出し抜いた男に、そう簡単に死なれては困る。」

左手で杖を撫でる。
次にあの皮肉屋に出会ったときも自分が生きているという確信は無い。
だが、もう一度戦いたいのも事実だった。

ワルドは既に、あの戦いの、あの不思議な緊張感に魅了されていた。
ただの平民に、今まで敵と見なさなかった平民との命のやり取り―思い出すだけで鳥肌が立つ。
自然と笑みがこぼれた。

「子爵、このようなところで何をしておるのかね?」

重厚な凄みのある男の声が背後から投げかけられた。
声の主はこの『レコン・キスタ』の総司令官、
そしてアルビオンの新たなる皇帝―オリヴァー・クロムウェル。
年の程は三十台半ば、丸い球帽をかぶり、緑色の身に着けた聖職者の姿をしていた。
だが、その眼光は鋭く、威圧するような碧眼。そしてその鉤鼻から獰猛な猛禽類のような印象を受ける。
それに付き従うは彼の秘書―シェフィールドだ。
冷たい妙な雰囲気のする二十代半ばの女性で、漆黒のコートを身にまとっている。

「ただの愚痴です、閣下。」
「ふむ、君は今回の戦いでは目覚しい活躍をした。気にすることなど無いはずだが?」
「己の未熟さに愚痴っていたのです。」

こういったただの世間話なのだが、ワルドは緊張を覚える。
話しているだけで心を射抜かれる、そういう感覚を初めて体験した。
話しながら城内へ入る三人。
だいぶ修復が進んでいる。だが、まだ壁や天井にはひびが入っていた。

「ふむ、真面目だな。期待しておるよ。」
「ありがとうございます。」

ウェールズの亡骸の眠る部屋の前に到着する。
そこでクロムウェルとシェフィールドがぴたと足を止めた。

「閣下…。」

シェフィールドがクロムウェルに小さくつぶやいた。

「わかっている。子爵…動くな。」
「…?」

何のことかと疑問に思ったその直後、すぐ脇に天井の一部が落下してきたのだ!
あのまま歩いていたのなら、確実にワルドに当たっていたことだろう。

「か、閣下!」「子爵!」

天井の修復に当たっていた兵士が駆け寄ってくる。

「ご無事で!?」
「問題ない。」
「申し訳ありません閣下。お怪我は?」
「心配は要らない。余を傷つけることなど、運命が許さない。
 それより、君は動かないほうがいい。負傷者の手当てを頼む。」

兵士をそうなだめた後、壁の大穴から外に顔を出し、声を張り上げた。


「作業を急がせてすまない。
 だがこのクロムウェル、諸君らの働きに対する敬意を一時たりとも忘れたことは無い。
 諸君らが手がけているこの城は、われわれの新たな国家建設には絶対に必要なものだ。
 だが、諸君ら自身も、われわれの国家にとって同じく貴重な資源であることを忘れてはならない。
 われわれが求める国家は、もっとも純粋で、強靭な力を持った民主国家だ。
 平民を王の道具として切り捨てる時代を終わらせるため―
 そして、戦争という選択肢を国際政治から抹消するために―
 最高の戦力から生まれる民主国家だ。
 軍事技術者であり、そして兵士である諸君ら一人一人が
 その新たな国家の国民であり、財産であり、そして軍事力そのものである。
 無為にその貴重な資源をを損なうことの無いように―私は切に願う。」


下の兵士たちが敬礼し、涙ぐむ。
既に感動で泣き出しているものもいた。

驚くべきことに今まで彼は演説だけで兵士の心を奪い、彼らの士気を高めてきたのだ。
おかげで、彼の実力を知るものは数少ない。
ワルドですら、彼の魔法は見たことがなかった。

そして隣で初めて彼の聞いたワルドは彼の声に奇妙なものを感じとった。

本当に心の奥深くまで染み込んでいく演説だった。
染み込むなんてものじゃない、これは―

「洗脳だな…。」

そのつぶやきは幸い誰の耳にもとまることは無かった。

新着情報

取得中です。