あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔の夢-7

 本塔最上階にある学院長室にて、
 トリステイン魔法学院の最高権力者であるオールド・オスマンは溜息をついていた。
「あんのコッパゲめ、こんな紙切れ一つで済ませ追って」
 溜息の原因はコッパゲ、ではなくコルベールの提出した一通の報告書。
 報告書に書かれていたのは
 昨日行われた春の使い魔召喚の際にミス・ヴァリエールの召喚した青年の事。
 彼女とその青年が『契約』を交わした証明として現われた特殊なルーン文字の事。
 そのルーン文字が始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』の物であるらしい事。

 正直オスマンにとっては、長々と書かれているルーン文字の下りはどうでもよかった。
 変人奇人と評されるコルベールの事だ、何かの見間違いに違いないだろう。
 気になったのはおまけ程度に添えてあった『ディテクト・マジック』の結果。
 微弱ではあったが青年から感じる事のできた異質の力の事。
 只の平民でもなければ、メイジでもない。亜人でもなければ、エルフでもない。
 彼は一体何者なのか。
 胸騒ぎが止まらなかった。

 考えあぐねていた時、ドアがノックされた。
「誰じゃ?」
「私です、オールド・オスマン」
 扉の向こうから聞こえたのは秘書であるミス・ロングビルの声だった。
「おおミス、してコルベールのやつめは? 」 
「それが午後からお休みを頂きたいとの事で」
「また例の研究とやらか……、ところでミス、寝不足かね? 」
 日頃整然としているロングビルにしてはいつになくくたびれた様子である。
「ええ、色々と資料を……ではなく、
 オールド・オスマン、ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がいるようです。」
「ふむ、誰が暴れておるんだね?」
「一人はギーシュ・ド・グラモン」
「グラモンとこのバカ息子か。おおかた女の子の取り合いじゃろう。相手は誰じゃ?」
「それが、メイジではありません。ミス・ヴァリエールの使い魔の青年だそうです」
 オスマンの目が鷹の如く鋭く光った。
「教師達は決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めております」
「アホか。たかが、子供のけんかじゃて。放っておきなさい」
 ミス・ロングビルが去る音を聞いて、オスマンは杖を振り 
 壁に掛かった大きな鏡にヴェストリ広場の様子を映し出した。


 使い魔の夢


 六体のワルキューレは巧を囲んだまま、沈黙を保っていた。
「……さて、言う事はあるかね? 」
「どういうこった」
「ここで頭を地面にこすりつけて土下座するというのなら、今なら許してあげないこともない」
「誰がするか」
「君は愚かだ」
 ギーシュが薔薇を振ると、六体のワルキューレが巧に向かって一斉に襲い掛かった!


 許せなかった。平民が理不尽に力ある貴族に蹂躙されるのが。
 まるで、その日まで平和に暮らしてきた人々が突然オルフェノクに全てを奪われるようで。
 気に入らなかった。魔法を使えないご主人様が『ゼロ』と他のメイジに馬鹿にされるのが。
 まるで、人間の心を持ったオルフェノクが「裏切り者」と迫害を受けているようで。
 受け入れたくなかった。この世界そのものが。
 まるで、そう遠くない未来、何処かの国の物語のようで。
(……何考えているんだ)
 全く覚えのない記憶を打ち消して、巧の意識は鮮明になった。

 倒れている自分の体は見るのも嫌になるぐらい打傷だらけだった。
 六体のワルキューレはかなり奥にいるギーシュの傍に控えていた。
 そうだった。この人形どもにボコボコにやられたんだっけか。
「随分と早いお目覚めだったね」 
 ギーシュの手にはフォンブラスターが握られていた。
 届かないと分かりつつ、手を伸ばす。
「変わった形の銃だね、これが君の唯一の頼みの綱という訳か」 
 物珍しそうにフォンブラスターを見つめた後、ギーシュはそれを遠くに放り投げた。 
「……テメェ」
「ほう、まだやる気かい? 」

「ギーシュ!」
 人ごみの中からルイズが飛び出してくる。
「やぁルイズ、悪いね。君の使い魔をちょっとお借りしているよ」
「いい加減にして! 大体、決闘は禁止じゃない! 」 
「それは貴族同士の決闘のみだよ、平民と貴族との間の決闘なんか誰も禁止していない」 
「だけど、そ「黙ってろ」」
 巧はルイズの言葉を遮った。
「タクミ! 」
 初めてじゃないか。こいつが俺を名前で呼んだことって。
「もうわかったでしょう? 平民はメイジには絶対に勝てないの! 」
「うっせぇ」
「そのまま寝ていても良かったんだよ」
 ギーシュが軽く挑発したが、巧はそれを無視し立ち上がった。
「バカ! どうして立つのよ! 」
 よく見るとルイズの鳶色の瞳が潤んでいる。泣いてるのか、こいつ?
「もういいじゃない、あんたはよくやったわ。こんな平民見た事ないわよ」
 なんて目をしてるんだ。見ちゃいられない。
 ああ、俺がさせたのか。他でもない俺自身が。
「なぁルイズ」
「な、何よ」
「おまえ、夢ってあるか? 」
「い、いきなり何変な事聞いてるのよ、今はそんなの関係ないでしょ!? 」

 ……そうか、あるんだな。
 ギーシュに目をむけ、歩き出す。 

「おやおや、君の武器はあちらだよ」
 ギーシュはフォンブラスターの方を指差す。
「お前等の相手なんか素手で十分だ」
 表情から笑みを消し、ギーシュは薔薇を振る。
 ワルキューレが疾風の如く迫り、巧の顔面を殴打した。
 続けて腹、右腕、腰、左肩、右足、再び腹、矢のように攻撃は次々と飛んでくる。 
 痛みが限界に来たのか、両膝をつく巧。
「続けるかい? 謝ると言うのならここで手打ちにしてもいいのだが」
 巧はギーシュを睨みつけて言った。
「お前に頭下げるぐらいなら、死んだほうがマシだ! 」
「そうか、では望み通りにしてあげよう」
 目の前のワルキューレの手に剣が握られる。 
「タクミー!」 
 ルイズが叫ぶ。
 ワルキューレは剣を巧の頭上にかざし、振り下ろそうとし―

 噴射音が響くと共に、天からワルキューレの元に弾丸の雨が注がれた!

 ギーシュは慌てて薔薇を振り、ワルキューレを後退させる。

「何だ!? 」 

 その場にいた全てのものが天を仰ぎ見る。

 巧だけが分かっていた。今、何が起こったのか。

 忘れることはない。撒き散らされたこの薬莢の匂い。あの独特の電子音。

 忘れることなんてできない。俺はこいつにこうやって何度も助けられてきたんだ。

 ヴェストリ広場のその上空、巧が目にしたのは
 バトルモードに変形したバリアブルビークル・オートバジンが
 左腕に内臓されたガトリングガン、バスターホイールを構えている姿だった。 

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