あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

毒の爪の使い魔-01


――衝撃が右胸を貫いた。

一瞬の間を置き……喉元へ押し寄せた物を一気に吐き出す。
口から滴る”それ”を拭い”血”である事を認識する。…肺が破壊されたのだろう。
痛みと熱が宿る右胸を押さえ、目の前の相手――自分の右胸を撃ち抜いた少年を見た。
怒りとも後悔ともつかない感情を宿した瞳で自分を睨み付けながら、未だ硝煙を立ち上らせている大型のハンドライフルの銃口を向けている。
目だけを動かし、少年の後ろに蹲るもう一人の少年を見た。
顔は苦痛に歪み、腹を押さえているその両腕の間からは血が滴っている。目の前の少年を庇い、彼の一撃をまともに受けた結果だ。
視線を目の前の少年に戻す。向けられた銃口にブレは無く、引き金に掛けられた指には力が篭っている。いつでも彼を撃てるといった感じだ。
そもそも自分はこの状態では長くは持つまい…、持ったところでどうなる…?
――なら、いっその事……



「残…念だな…お前の…友達は…俺…様の毒で……あの世…行き……だぜ…。全部…お前の…親父……譲りの……甘さの…所為……だからな…。
キッ…キキキ……、後悔……しな…。俺を……見…逃した…事を……精々…後悔しな……。後…悔して……苦しみ…ぬきやがれ………クソガキィィィッ!!!」

その叫びとほぼ同時に彼は足を踏み外し――

「キィィーーーーーッキキキキキキィィィーーーーーッッ!!!」

――狂ったような笑い声を上げながら真っ暗な闇の中へと落ちていった。



瞬く間に裂け目から覗く星空が遠退いていき、凄まじい速度で落下している事が理解できる。
(ああ……これで終わりかぁ~……)
(…このくだらねぇ世界とも……くだらねぇ人生とも……くだらねぇ奴等とも……お別れだなぁ…)
落下しつつあるにも拘らず、彼は至って冷静だった。――これで最後である事を悟っている為だ。
(楽に…死ねるかな…?)
自分の真下へと目を向けた。だが、そこに広がるのは闇のみ……底がどうなっているかは解らない。
(キキ……甘い期待だよな……)
そうして上へと視線を戻す。既に裂け目の出口は豆粒のようになっている。
「まぁ……どの道……地獄で…苦しみぬく…事になるんだ……。この世で…最後…の…苦しみぐらい……一瞬で…済んでくれ……よな…?」彼の問いに答える者はいない。
そうして、彼は目を閉じた。目を閉じる瞬間、光と同時に暖かさを感じたが…彼はそれが地獄の業火の物だろうと思った。



――実はこの時、彼の背後=真下にエメラルド色の鏡とも卵ともつかない不思議な物体が現れ、彼を飲み込んでいたのだが…そんな事を彼が知る由も無かった…





(お願い…)
切なる願いを胸に秘め、桃色髪の少女は杖を振り上げた。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ!」
その類を見ない呪文に周囲にいる生徒達が一同に唖然とした表情を浮かべる。
しかし、少女=ルイズは気にも留めない。
「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!私は心より求め、訴えるわ!」
呪文を唱えながら天高く掲げた杖を振る。そして…
「我が導きに、応えなさい!!!」
唱え終わると同時に杖を振り下ろした。
瞬間、これまで彼女が引き起こした物とは比べ物にならない……それこそ何かの記録にでも残せるかのような大爆発が巻き起こった。
――無論、そんな爆発が起きて周囲の者達が平気であるはずもなく……
「ゲホッ!ゲホッ!」
「やっぱりこうなったか…」
「まぁ、解りきっていた事だけど…」
「ゲホッ…まったく、ゼロのルイズが!」
…爆発にひっくり返り、煙に咳き込みつつ、ルイズへ文句、罵声、暴言を浴びせ始める。
彼女自身、いつもよりも巨大な爆発が起きた事は解ったが、それだけだと思いあからさまに落胆の表情を浮かべていた。…が、その表情は直ぐに引っ込んだ。
煙が晴れた後の地面に、明らかにその場に居た誰でもない者が仰向けに倒れていたのだ。
「こ、これって……」
猫の目を模したような銀色のボタンが付いた足首がようやく見えるほど丈が長く、手が見えないほど袖も長い濃い紫色のコート。
金色の十字のマークが刻まれたコートと同色の帽子。
首に巻かれた濃さの違う二色の紫の縞模様のマフラー。
身に着けている物はこの辺りでは特徴的だが、どうみても人間――平民である。


「へ、平民?平民を呼んじゃったの…?」
平民を召喚した…、その事実に彼女は一旦引っ込めた――否、それ以上の落胆の表情を浮かべた。
そんな彼女に燃えるような赤い髪をした少女が近づいて来る。その表情は笑いを堪えるのに必死だといった感じだ。
「キュルケ…」
「大見得切っただけあるわねルイズ?まさか、平民を呼び出すなんて…クッ、ククッ…」
赤髪の少女=キュルケが堪えきれずに口から漏らした笑いに周囲が同調し、瞬く間に伝染する。クスクス笑いが辺りを支配していく。
「うう……」
悔しそうに下唇を噛み締めるルイズ。
「ふふふ…って、あら…タバサ?」
青髪を短く切り揃え、眼鏡を掛けた少女=タバサが地面に倒れている平民に近づきその顔を覗き込む。
「どうしたのよ?」
「…平民じゃない」
『え?』
尋ねたキュルケだけでなく、ルイズもその言葉に声を上げる。
そして、倒れている平民だと思っていた人物を見つめる。
確かに平民……いや、人間としては少々変だ。
両方の袖からは手が見えない代わりに左右三本ずつ、長く大きな真紅の爪が伸びている。個人的に伸ばしているとしても、とても人間の爪とは思えない。
そして何より、顔だ。帽子とマフラーに隠れて見え辛かったが――
「ね、猫!?」
――そう、その顔は人間の物ではなかった……、薄い紫色の毛に覆われたその顔は猫のそれだった。
どう見ても人間ではない……これは亜人だ!そう気づいた瞬間、ルイズは思わず飛び上がってしまうほど喜んだ。



「や、やったーーー♪亜人を呼べたんだ!!」
「ゼロのルイズが…初めて成功した?」
「……」
唖然とするキュルケと一切表情を変えずに眼鏡のずれを直すタバサ。
ルイズが召喚したのが亜人だと言う事が解るや、周囲の生徒達からも「あのゼロのルイズが亜人を?」「嘘だろう?」などといった話し声が聞こえ始めている。
それらの声が耳に入るだけで彼女は更に上機嫌になった。
その興奮が冷めないうちにと契約の段階へと移った。杖を操り呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
杖を下ろし、亜人の傍に座るとマフラーを除け、顔がよく見えるようにする。
「五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔と成せ」
呪文を唱え終え、ルイズは亜人の唇にそっとキスをした。毛が顔に当たってくすぐったい。
唇を離すと亜人の体が淡く光り始める。暫く経つと光は収まった。
「コントラクト・サーヴァント、完了しました」
ルイズは監督のコルベールに儀式の無事終了を告げる。
「うむ。ではルーンの確認を……ん?」
言葉を止め、コルベールは倒れる亜人を真剣な目で見据える。
「どうしたんですか、ミスタ・コルベール?」
「この者の右胸に…」
「え?」
ルイズだけでなく、キュルケとタバサも亜人を見下ろす。
見れば右胸の部分に小さな穴が開いている。…いや、それだけではない。
コートの色や召喚成功の喜びなどで気付かなかったが、穴を中心としてコートの色が微妙に変わっている。…いや、湿っているのだ……それも水ではない。
それが何かは亜人の背から地面に広がり始めていた、爪の色と同じ真紅の液体が物語っていた……




新着情報

取得中です。