あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

フーケのガンパレード 5

「エア・ハンマー」
「ファイア・ボール」

ルーンの詠唱が夜空にこだまする。
王立トリステイン魔法学院。
王都トリスタニア郊外に設立されたこの全寮制の学院は、
トリステイン建国期にまでその起源を遡ることの出来る伝統ある魔法学府である。
『貴族は魔法を持ってしてその精神と為す』を校訓に、数多の貴族を国内外に送り出した教育機関。
その名声から諸外国からの留学生も数多い、まさにトリステインが誇る名門校である。

その学院が、何者かの襲撃を受けていた。



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食堂の机の陰に隠れ、放たれる弓矢を避けながら男は頭を抱えた。
何故このようなことになったのか。
ここは伝統ある魔法学院の筈であり、諸国からの留学生も多い。
それは生徒がなんらかの傷を負うようなことでもあれば国際問題となりうるということである。
故に戦場からは一番遠く、かつての諸外国との戦争、あるいは内乱の際でも、この学院だけは戦火に巻き込まれることはなかった。
その実績があるからこそ諸国の貴族はこの学院に自分達の子弟を通わせていたのだが、その伝統も今日を最後に消えることになるようだった。
襲撃してきた者たちの多くはおそらく平民の傭兵の類ではあったが、男はその中に幾人かのメイジの姿を見て取っていた。
それはいい。魔法学院に奉職しており、長らく戦争など経験してはいないが、男とてかつては貴族として戦場に赴いたことも有る身である。没落した貴族が夜盗や傭兵に身をやつしている現状は知っている。
侮蔑や同情の気持ちはあるが、だがそれだけである。頭を悩ます理由にはならない。
問題なのはメイジたちがまさにその杖をこちらに向けているということだけだった。
食事も終わり、職員や生徒の殆どが寮に引き上げた後だと言うのも問題ではある。
襲撃者が何人いるかは解らないが、おそらくはかなりの数が動員されているのは間違いない。
先ほどから魔法によるものと思われる戦闘音も響いてきている。
食堂に残っていたのは、生徒を除けばメイジは自分ともう一人だけである。
その相方は女性であるし、最悪自分だけで戦わねばならぬと思えば背筋に氷が這うのを止められなかった。

「駄目です、勝手口にも暴漢たちがいます。逃げられません」

相方であるところの女性、厨房の奥へと様子を見に行っていたシュヴルーズが彼の横に身を滑り込ませながらそう言った。
彼女を庇うかのように幾人かの料理人たち、貴族嫌いで有名なマルトーがそれに続く。
頭に被った鍋や手にしたまな板は楯か兜のつもりなのだろう。魔法には役立たぬが、弓矢相手なら役立ちそうだ。

「晩飯が終わった時間でちょうど良かったですな。
 あと少し遅ければ明日の仕込みを始めてたところでしたぜ」

飄々と言う料理長に男は苦々しげな視線を向ける。
今のこの状況が解っているのか、こいつら。
この学院で働いていても、所詮は学の無い平民か。
毒の篭った視線にもマルトーは動じず、唇を歪めて見せた。

「旦那、貴族の旦那。
 俺たちからして見れば、旦那の持つ杖は簡単に俺たちを殺せる道具でさぁ。
 たとえ死ぬことがなくたって、魔法一つでこちらは大怪我を負っちまう。
 なのに俺たちには旦那方に刃向かうことも許されねぇ。
 わかりやすかい? 俺たちは、何時だって、死と隣りあわせで働いてるんですぜ?
 魔法が弓矢に変わったからって、それほど変わりはしませんぜ」

マルトーの言葉に、シュヴルーズが辛そうに俯いた。
ああ、やはり自分は何も見ていなかったのだ。
この学院で長い時間を過ごしながら、それでも彼らが何を考えていたのか、
自分達貴族を平民がどんな目で見ているかすら知らなかったのだから。

「……真の貴族は、そのようなことはしない」
「真の貴族、ですか。
“何処かの誰かの為にその力を奮うことが出来るのが真の貴族”だそうですしな。
 確かに真の貴族ならそんなことはせんでしょうな」

マルトーの返答に男の顔が一層引きつった。
そういえばあの無能な娘は平民たちには人気があったのだったか。
魔法がつかえぬゼロの分際で、それでも貴族とは何かを声高に言い放つあの娘。
落ちこぼれのゼロのルイズ。
気がつけば、机の下に隠れている料理人や使用人、生徒たちの視線がこちらに集まっている。
良かれ悪しかれルイズの名はこの学院に暮らす者にとっては注目の的であった。
何度か口を開こうとして止めると、男は入り口と窓の方に視線を向けた。
ルイズについては言いたいことも色々とありはしたが、しかしそれをこの場で口に出すほど空気が読めなくは無かった。
憮然とした男の顔を見やり、マルトーは一つ息をついた。
本音を言えば彼も怖くてたまらない。
だが彼はこの学院の使用人たちの纏め役であり、今はそれに誇りを持っていた。
彼は貴族ではない。魔法も使えない。
だから何処かの誰かの笑顔の為になど戦えない。
だがそれでも、それでもと彼は思うのだ。
彼を親方と慕う弟子たちや、同じ時間を共に過ごしてきた同僚たち。
彼らの為になら、自分はほんの少しだけでも戦えるのではないかと。

「旦那、貴族の旦那」

言いながら、マルトーは手に持っていた浅手の鍋を頭に被った。収まりが悪いが、何とかなるだろう。
篭手代わりに厚めの鍋つかみ。まな板は端の穴に紐を通して首からかけた。
擂粉木と包丁を握り締めて彼は言う。

「俺が囮になりやす。
 旦那はその隙に皆を逃がしてやってくだせぇ」
「使用人や平民たちを、かね?」
「いえ、そこの生徒さんがたもお願いしますぜ」

男が不思議そうに首を傾げた。
料理長の貴族嫌いは有名であるし、なにより真の貴族云々を口にする男であれば、
たとえ学生であっても貴族として平民を守れくらいは言いそうだと思ったからだ。
だが、マルトーは照れくさそうに笑ってそれを否定した。
彼は貴族ではない。魔法も使えない。
字は読めるが、達者ではない。殴り合いの喧嘩だってここ数年したことが無い。
だがそれでも、そんな彼でも解ることがある。
ルイズのように貴族の誇りなど知らないが、それでも知っていることはある。
どこの誰でもが知っているような、何の変哲も無い、けれど間違えようの無い世界の真理。

「旦那、大人は子供を守るものでさぁ」



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それは言うなれば偶然であった。
だが意味のある偶然ではあった。
愛する娘が死地にあるとすれば、一刻も早くそこに向かいたいと言うのが親の愛である。
そしてその母親にはそれを可能にする力、権力と財力があった。
そしてさらに幸運なことに、いつ危篤状態に陥ってもおかしくない次女の為に、
各地にそれを知らせ、あるいは医師を招聘する為の風竜や竜籠すらも完備されていた。
人の口には語られない伝説によって次女が健康を取り戻した今となっては無用の長物であるそれを、
母は惜しみなく三女の為に使用した。
一刻も早く学院へ、そして王都を経て娘の下へ馳せ参じるその為に。
だから、彼女たちがそこから立ち上る火の手に気づき急行したのは、云わば始祖ブリミルの導きとも言うべき必然であった。



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小さな声でルーンが詠唱される。
マルトーが身に着けた鍋やまな板、手袋が微かな魔力を放ちだした。

「『固定化』の魔法をかけました」

杖を構えたシュヴルーズが言った。これで少しは鎧や兜の代わりにはなると。
料理長が笑い、礼を言う。
その光景を見ていた一人の生徒が、眼鏡を押し上げながらおかしそうに言った。

「“イーヴァルディの勇者”それも南トリステイン版ですか」
「おや、ご存知でしたかミスタ・レイナール」

恥ずかしげに女教師が頬を染める。
各国に伝わる英雄譚“イーヴァルディの勇者”、原典が存在しないそれには、各地で様々な伝承が確認されている。
レイナールと言う生徒が言ったのは南トリステイン地方の伝承にある一節だった。
平和な城下町を襲った怪物に立ち向かう勇者イーヴァルディ。けれど彼は剣と槍を持ってはいたが、鎧も兜も持っていなかった。
危険だと止める声も聞かず戦おうとする彼の服に、領主の娘は固定化の魔法をかけて送り出す。

『彼には鎧も無く、兜も無く、けれどそれよりも強いもので守られていました』
『お姫さまの魔法が、みんなの声が彼を守りました。彼が守りたいと思ったものが、彼を守ってくれたのです』
『彼は言いました。
“ぼくの右手には剣がある。ぼくの左手には槍がある。ぼくの後ろには守りたい人たちが居る。ぼくを守ってくれる人がいる。
 だから、これいじょうほしいものなんかなにもない”』
『戦う彼を見て、お姫さまは言いました。
“誰か彼を助けてください! 代わりにこの街を差し上げます!”
 その声に、騎士や町の人々は彼に向かって走り出します。
 人々は口々に言いました。
“街など要りません。わたしたちには、彼さえいてくれればいいのです”』

生徒たちは目を見交わすと、次々に杖を取り出した。
あるものは錬金で武具を作り出し、またあるものは水の魔法の準備をした。
料理人たちも彼らの親方に倣って武装を始めた。
もう誰もマルトーを独りで行かせようなどとは思ってはいなかった。
一方、レイナールから説明を受けた料理長は奇妙な表情で固まっていた。
愉快そうに笑う生徒が、その伝承の続きを、姫が勇者を愛していたことまで話したからだ。
シュヴルーズにはそのようなつもりは無かったが、だが生徒たちや料理人たちにはそれで充分だった。
怪我をしても治しますからねという水メイジに、親方にも春が来ましたなと笑う使用人たち、
年甲斐もなく赤面して慌てるシュヴルーズとマルトー。
男は不謹慎なと口を開こうとして、しかし思いとどまった。
戦を前にしてもなお笑っている彼らに、遥か遠い遠い昔に見た光景を思い出したからだ。
少年の日に、初めて父と出陣した戦場。
初陣を前に眠れぬ身を起こし、陣幕の間を歩いた。
彼に目を留めた古強者の歩兵が彼に酒を進め、戦の前とも思えぬ賑やかな光景がささくれ立った神経を慰めてくれたものだった。
残念ながら彼の初陣はほぼ負け戦であり、あの夜に杯を交わした者たちは殆どが始祖の御許へと行ってしまったが、
それでもあの戦のことは今でも鮮明に思い出せる。
前の晩に笑っていた人々が物言わぬ骸として横たわる戦場。
血と鉄と炎と死の匂い。
そしてそれを圧倒する、あの、鮮烈なまでの感動。
暴力への恐怖から戦場から身を引いても、それでも消えなかったあの日の光景。
圧倒的な力で敵陣に乗り込み、最後の最後で敗北を覆したトリステインの英雄の姿。
何気に気恥ずかしさを覚え、建物の外を確認しようとした彼の目が見開かれた。
窓の向こうに、一瞬だけ見えたそれは、確かにあの日にかつての彼が見たそのままの姿だったのから。
二十数年前と何ら変わらぬ、マンティコアに跨った、あの英雄の姿。
彼は一つ息を吸い、そして吐いた。
もはや恐怖は消えていた。
錯覚かもしれない。幻かもしれない。死と暴力を前にした気の迷いかもしれない。
だがそれでも彼はそれを確かに見た。見たのだ。
ならば、もはや恐れることは何も無い。
二度と見れぬと思っていたあの人の姿を見ることが出来たのだ。
ならば、それに恥じぬように振舞うのみだ。
そうとも、あの人が、彼の英雄が見ているかも知れぬと言うのに、何故に見苦しい真似が出来ると言うのだろう
杖を取り出しルーンを唱えると、彼は常にそうしているように皮肉げな声で生徒たちに語りかけた。

「では諸君、講義の時間だ。
 我が系統である“風”の最強を証明してさしあげよう」



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魔法学院にまた一つ火の手が上がる。
だがそれは滅びを齎すそれではなく、滅びに刃向かう反逆の火の手だった。



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十人がかりでオールド・オスマンと対峙していたメイジたちは我が目を疑った。
無論自分たちだけでオスマンを倒せるなどとは思っていない。
彼らがやるのはあくまで時間稼ぎであり、仲間が生徒や職員を人質に取るまで彼をこの場に止めておくのが任務だと知っていた。
倒せることは出来ずとも足止めくらいなら、とその任務についたトライアングルクラスのメイジが十人。
そこまでの戦力を動員して足止めにしかならぬオスマンの力こそを恐れるべきか。
だがその均衡もあっさりと覆されつつあった。
飛竜とマンティコアに乗って乱入した美しい二人の女メイジが放つ魔法が次々に仲間たちを倒していく。
感じられるその魔力はスクエアクラスに間違いない。
まだ若いその二人は、しかし歴戦の傭兵メイジが及びもつかない程の使い手であった。
だがだからこそ腑に落ちない。そんな若く美しいメイジならば噂にもなる筈だが、しかしそんな噂は聞いた事もなかった。
何者だとの誰何の声と、オスマンの驚愕の視線に答えるように、二人は獰猛に笑って事も無げに言ってのけた。

「「――――母親よ」」



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学生寮の前に集められた生徒たちは目の前の光景が信じられなかった。
突如として乱入してきた傭兵たちに屋外へと引きずり出され、これからどうなるのかと身を震わせていた時のことである。
新たな傭兵たちと共に現れた一人の少女、その顔を見た瞬間に誰かが恐怖の叫びを上げた。
その尖った長い耳は、彼らメイジをして絶対の敵と言わしめたエルフの証なのだから。
だが、なぜ生徒たちを連れ出した傭兵たちすらが驚きの声を上げるのだろう。
まさか全然別の二つの集団が学院を襲ったとでもいうのだろうか。
その混乱はエルフの少女の魔法が完成すると共に極限に達した。
それまで殺気に満ちた目で少女を警戒していた傭兵たちの目が訝しげに細められ、不思議そうに当たりを見回す。
エルフの横に立つ桃色の髪の女性が、優しそうに説得を開始すると、傭兵たちはあっさりとそれに従ったのだ。
ごくりと誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。
あるいは、それがエルフの魔法なのだろうか。自分たちも、あの男達のように魔法で心を操られてしまうのだろうか。
そんな生徒たちを眺め、エルフの血を引く少女ティファニアは悲しそうに息をついた。
エルフが恐れられていることなど知っていた。
何も気にせずに接してくれるマチルダたちの方が少数派なのだと解っていた。
そんなことは誰よりも良く理解していた。理解していた筈だった。
それでも、だがそれでも助けた筈の生徒たちに恐怖の目で見られるのは辛かった。
横に立つカトレアが黙ってティファニアの手を握ってくれるその温かみが今は救いだった。

「ありがとうございます、レディ」

目を上げると、少し、いやかなりふくよかな男子生徒が一歩前に出て彼女に頭を下げている。
驚いてカトレアの方に目をやれば、嬉しそうに背中を押された。

「トリステイン貴族、マリコルヌ・ド・グランドプレ、“風上”のマリコルヌと申します。
 よろしければ、お名前をお聞かせ願えないでしょうか」
「え、あの、ティファニアと申します」
「それはいい名前ですね。まるで草原を駆け抜ける風のようだ」
「は、はぁ……?」

どこがだろう。
不思議ではあるが、嬉しかった。このマリコルヌという少年は、自分をエルフというだけで変な目では見ない。
さすがに顔を見るのは怖いのか、少し視線を下げてはいるが、それでも礼を言ってくれた。
父が付けてくれた名前をいい名前だと褒めてくれた。
ただそれだけのことではある。だがそれでもティファニアがマリコルヌに好意を持つには充分すぎるほどだった。

「マリコルヌ! 何を考えてるんだ! 彼女はエルフだぞ!」

生徒たちの誰かがそういった。
周りの者も男性女性関係なくそれに同意する。
だがマリコルヌはそんなことはどうでもいいと首を振った。

「しかしだね、ギムリ。彼女はぼくたちを助けてくれた。それは事実ではないかな?
 少なくとも、エルフだというだけで恩を恩と感じないという選択肢はぼくには取れない。
 それよりも今は、この出会いを始祖ブリミルに感謝すべきだと思うがどうだろうか」
「エルフとの出会いを始祖に感謝するだって!? 不謹慎にも程がある!」

いかにも真面目そうな生徒が叫ぶが、しかし他の者は互いに顔を見交わした。
確かにそうだ。このエルフの少女は自分たちを襲った男たちに魔法をかけて、自分たちを助けてくれたのだから。
次第に生徒たちから恐怖の色が薄れ、感謝の視線がそれにかわる。
だがそれでもまだいくばくかの疑いの視線が消えることはなかった。
なぜエルフが自分たちを助けてくれるのか。メイジの敵であるエルフと同行しているこの女性は誰なのか。
更に男子生徒の疑いの視線はマリコルヌにも注がれていた。
彼らの知っているマリコルヌは確かに気のいい男ではあるが、勇気などとは無縁であったからだった。
あるいは既に心を操られる魔法でもかけられたのかと、友人とエルフとを見比べていたギムリの視線が一点で止まる。
ややあってその顔に理解の色が広がった。
なるほど、確かに我々は始祖ブリミルに感謝すべきかも知れぬ。
その頃には周囲の友人たちもそれに気づいてお互いに目を交し合っていた。
ギムリは一歩踏み出すと、マリコルヌがそうしたように視線を下げつつ、ティファニアに向かって礼を述べた。

「失礼をいたしました、レディ。
 どうやらこのような事態に混乱していたようです。
 願わくば、わたしの謝罪を受け取っては頂けないでしょうか」
「え、ええ! 気にしてませんから……」
「ありがとうございます。
 始祖ブリミルの名にかけて、あなたに感謝を」

それを見ていたカトレアが一歩踏み出して、マリコルヌに微笑みかけた。
密かに友人のことを心配していた彼女にとって、率先してティファニアを受け入れてくれた少年は実に好ましく映っていたのだ。
自分よりも年上の美女の笑顔、しかも自分に好意を持っているそれに、あまり女性に縁のない少年の頬が赤く染まる。

「わたしの友人を庇ってくれてありがとう、ミスタ・グランドプレ。
 これからも妹のルイズともども仲良くしてくれると嬉しいわ」

驚きの声が上がった。
ルイズの姉ということはこの女性はヴァリエール公爵家の女性であり、
しかもその上エルフの友人だということなのだから。
もっとも、その驚きも一瞬のことではあったが。

「……まぁ、ルイズのお姉さんだからな」
「ああ、ルイズのお姉さんじゃあしょうがないな」

内心では妹の評価に頭を抱えているカトレアの横で、ティファニアはカチコチに固まっていた。
マリコルヌとギムリの言葉を聞いた生徒たち、そう多くはないが数人の男子生徒たちが次々に彼女に挨拶をし、礼を述べていく。
幼い頃から人から隠れる生活を送っていた彼女にとって、このような同年代の男子と話すのは初めての経験だったのだから。
たどたどしくしか話せない自分を自覚し、また赤面して言葉が止まる。
男子たちはそんな彼女を温かく見守っていた。




 『灰は灰に、塵は塵に、乳は乳に。
  生ける者全てが、いつの日にか始祖ブリミルの御許へ還るが如く、
  乳によって育まれし我らは、いつしか母なる乳の元へと還るのだ』

             ――――マリコルヌ・ド・グランドプレ回顧録「ヰタ・セクスアリス」


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