あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

虚無と狂信者-04



ベッドの上の男は、震える手で老人にそれを渡した。胸には金の十字架がある。
「このマークを…知るものが居れば…それを…渡して下さい…。」
男は十字架を触りながら、震える声で呟いた。
「我らは…右…手に…短刀と毒…薬を持ち…、左……手に」


トバルカインはトランプを無数に取り出し、アンデルセンは銃剣を逆手に持ち大上段に構えた。
先に動いたのはトバルカインだった。横に駆けながらトランプを放って行く。
アンデルセンはそれの間を抜けながら銃剣を投げつける。双方の得物が双方の頬を掠める、その傷が治らないことに吸血鬼の緊張は高まる。
遠距離での戦いに不利を見たアンデルセンがトバルカインに突撃を敢行するも、トランプの一斉正射に身を交わすのみ。
だがトバルカインとしてはアーカードが追い付く前に決着を付けねばならない為、精神的には不利であった。
(仕方あるまい、一瞬で蹴りを付けてやる)


サイトはいきなり目の前で始まった戦いを茫然と眺めていた。ふと見やれば辺りの鬱蒼とした森が随分歩きやすくなっている。
二人がどのように戦っているかはわからないが、片方には見覚えがあった。

(確かブラジルだっけかのテロ事件の映像にあんなのが居たなあ)
ふと自分のかつての行き過ぎた好奇心が生み出したトラウマに落ち込む。
もう一方は心底楽しそうに笑う長身の男だった。K-1にでも出ていそうな体格だ。

(しかし、リアルで長い夢だな)
そう思い呑気に戦いを眺めていたが、流れてきたトランプがサイトの頬を掠めた。
その痛みと流れる血の感触に(おかしいなあ)と苦笑した。



彼らは傍観者を別段気にすることなく戦い続けた。アンデルセンはトランプに邪魔されながらもじわりじわりと距離を詰める。
そして十分な距離となった時、伊達男のトランプ斉射の壁の上を飛び越え銃剣を突き立てる。しかし神父は顔をしかめた。

「かかった」
伊達男は無数のトランプに姿を変える。死角から不意を突きトランプをぶつける算段だった。
だがその顔は苦痛に歪む、腹には祝福儀礼済の銃剣が刺さっている。
アンデルセンは、攻撃を回避した際の隙に高速に横からすり抜けたトバルカインを視界の端で捉えていた。
アンデルセンは膝をついた伊達男に歩み寄る。

「DUST TO DUST!塵にすぎないお前たちは、塵に還れ!」

だがその時、何故かアンデルセンは真横に吹き飛んだ。

弾丸が木々の隙間を縫ってすすみアンデルセンの頭部に当たる。なおも頭部で回転を続けるそれを素手で抉り出した。傷は瞬時に再生する。
これが誰の仕業か覚えがあった。面識はなかったが。その隙にトバルカインはトランプをアンデルセンの首に刺そうとする。

だがアンデルセンにも助太刀が現れた。彼の後から呪文の詠唱が聞こえる。

「レビテーション!」

トバルカインの全身が爆発した。ただルイズの失敗魔法といえども吸血鬼相手には大したダメージを与えられない。
しかし、一瞬の躊躇を呼び込んだだけで充分だった。動きの止まったトバルカインにアンデルセンはさらに二本の銃剣を突きさす。
そして首を刎ねて終えるはずだった。トバルカインが生前の時なら、アーカードと闘う前なら。



あの化け物の言うように豚の様な悲鳴を挙げて、血を吸われ、燃えて死ぬ無様な自分。
それはただ敗れるよりも恐ろしいことだった。またあの様に死ぬならなんと惨めだろうか。
それなら最初から戦わない方がマシでは無かったか。

「なぁぁぁめぇぇぇぇるぅぅぅぅなぁぁぁぁ」
振り絞るような声をあげ、地獄に落ちる前の全ての力を使い切りトランプの群れを放った。
それらはアンデルセンの胴体を貫き続ける。長い長い弾幕だ。永い永い時間だ。攻撃を終えた後彼を見る。
胴体には穴が空き、血が滴る。ぐらりと後ろに倒れる。歓喜の顔を浮かべるトバルカイン。しかしアンデルセンは踏みとどまった。
まだ笑顔の彼になぜかトバルカインもつられて笑ってしまった。銃剣が振りかぶられる。
トバルカインにもはや余力は無い。一言呟くだけだ。

「Gooood…」

彼の首が舞った。笑いがこびりついていた。しかし神父はいつもの様に言った。

「AMEN!!」




トバルカインにとって自己と敵との闘争以外に関心事は無く、アンデルセンの後に位置する彼女に対しても気遣いはなかった。
サイトは動いていた。何が自分を動かしているかはわからない。ただ目の前に少女がいて、何か危ないものが迫っている。
それだけでサイトは駆け、少女を押し倒した。背中を襲う痛みに呻いた。
そして視界はかすみ、口からこみ上げる何かに不快感を覚えた。
幾度も幾度もそれは彼の体を抉っていき、終に激痛により意識を手放した。

ギリギリだった。魔弾の不意打ちはあったものの、それを見積もっても充分な苦戦だった。
気配をさぐるが、魔弾と思しきものは無い。どうやら退いたようだ。楽しい時間だった。
楽しい敵だった。ふと我に帰り、トバルカインの盗んだものを探した。
その銀の箱はすぐに見つかる。持ってみるとそれに刻まれた印に驚いた。アンデルセンのよく知るマークだった。

「ヴァチカンのマークだと!」
中を開ける。そこには注射器が数本入っていた。


ルイズは自分の状況が掴めていない。アンデルセンを追っていたら、彼は闘っていた。そして敵に呪文をかけ爆破した。
そして彼が剣を突き立てて終わった筈だった。しかし、何やら敵が動いたと思ったら横から何かが降ってきた。
ふと上を見ると男が自分を押し倒している。顔が近い。

「ちょっとあんた何すんのよ。私はヴァリエール公爵家の三女よ?手を出したら極刑よ?この変態!どきなさいよ!」
しかし彼の口元の血を見て気づいた。極力彼を動かさないように這い出し彼の背中を見た。
彼の背中は真赤に染まっている。いや、腕足を含めた背面全体が。悲鳴が夜の森に響いた。



「ちょっとルイズ大丈夫?」
キュルケが駆け付けた時、彼女の感心はそこにいた黒髪の少年に注いだ。
明らかに致死寸前の出血の少年、背骨らしきものも見える。ルイズは口元を押さえて泣いていた。

「私を…庇ったの。私のせいで…、この子………。」
キュルケはどう見積もっても彼が数分で死ぬと見抜いた。いや、とっくに死んでいてもお
かしくないのだ。脈は弱く、呼吸はしていない。

「どうにか…ならないの…?」
キュルケは自分の使い魔を見る。

「吸血鬼にするにしてもな…こいつが童貞でなくてはな。」
ふざけているようだがこれは真面目な問題だ。非童貞の人間ではグールにしかならず、
そうなった場合この勇敢な少年を二度殺さねばならない。しかしそれでも可能性に賭けようとした時、アンデルセンが近づく。

「アンデルセン!待って…こいつは…」

彼の狂信をしるルイズはこの使い魔を説得せねばならぬと思った。しかしアンデルセンは黙って少年の横に座り、聖書のページを飛ばした。
一人でにそれらは少年の回りを囲む。すると何か陣のような物が浮かび上がる。そして何かを物々と呟き始めた。
キュルケは彼が僅かに呼吸を始めたことに驚いた。そしてアンデルセンは銀の箱から何かを取り出した。

そしてそれを彼の腕に当てた。



冷たくて気持ちいいな。っていうか夢で死ぬとかレアだなあ。あのトランプ攻撃があの娘に向かって行くのを見て何か助けちゃったな。
俺あんなに早く動けるんだなあ。ちょっとびっくりだな、なんかスポーツやってたら賞取れてたかもな。
母さんもちっとは喜んだかも知れない。けど女の子助けたから父さんは褒めてくれるかもな。
そういや抱きついた女なんて母さん以外で初めてだな。そういやあの子すげー可愛かったなちょっとないのは欠点だけど。
アレ俺今凄い頭回ってね?これって死ぬ前の走馬灯ってやつか。あーあもっと親孝行しときゃよかったな。死ぬのか。
でも死にたくねえな。なんか暖かくなってきたぞ?体温が下がったからかな?いよいよかよ。嫌だ嫌だいやだいやだいやだイヤダ痛い!
なんかチクってした。これってあれだな注射だな。でもこれ風邪ってレベルじゃねえっつの。
なんか変だな…。体中に何かが回って…。虫みたいのが体中を…。!!!!!!

「ねえ?暴れ出したわよ?」
彼はくるしそうに唸り身を捩る。
「再生しているのだ。痛みはある。」


何だコレ?ミミズが体から這い出しているみたいな感じは?傷口が痛い。しかし気付いた。
これは治っているのか。背中が、くっつく。刺さっていたトランプが一人でに抜ける。
俺?どうなったんだ?何になったんだ?




「凄い…。」
サイトの体が見る見る内に綺麗になる。そして完全に治癒され、立ち上がった。
「良かった…。」
ルイズが顔を覆う。サイトは辺りを見回す。
「俺どうなったんだ?あんたら俺に何をしたんだ?」
どうなったかはキュルケが掻い摘んで説明した。そして話をアンデルセンに振る。
「お前に打った注射は生物工学の髄をこらした再生能力強化製剤。そしてそれに私の回復方術を使った。これによりそれぞれの効果が」

「もういいです。」
サイトは頭を抱えた。一体どういうアメコミだというのか。

「まあ死ぬよりマシと思え。圧倒的にな。我々になるよりは利便性が高い。」
アーカードも口を挟む。気になったのか聞き返した。
「我々って?」
「吸血鬼」
この場にいる全員に声を重ねられ少年は頭を抱える。アーカードが彼に構わず尋ねた。
「貴様童貞か?」
「ハァ?」
「そうか、惜しいことをした。」
サイトは何事か反論しようとするが、不意に視界が暗転する。そしてフラリと倒れてしまった。
地面に伏せそうになる彼をアンデルセンは支えた。
「所詮はどちらも当人の体力次第。これが限界だろう。」
「どうするかね。」
「持っていこう、魔弾には逃げられたようだ。」
そう言うと少年をおぶりアンデルセンが歩きだす。二人の少女も歩きだした。

アーカードは皆の後ろで一人ごちた。
「いいだろう何度でも来るがいい。鉄火を持って闘争を始めるのに一度も二度もないのだから。」



サイトは虚ろな意識の中、大きな背中に気づいた。ふと幼少の頃を思い出す。いつもこうやって父や母におぶさってもらったっけ。
(これからどうなるんだろう。)
不安に圧されながらも彼は懐かしい感触に身を委ねた。

ルイズは少年の看病をしている。命をかけて私を守ってくれた彼。ふと彼にしたことに頭を悩ませた。
(助けて貰っといて変態呼ばわりはなかったわね。)
そこにアンデルセンはやってきた。彼女の横に座る。
「明日、オールド・オスマン氏の所へ皆で来るようにとのことです。」
「そう。」
ルイズはじっと少年を見て、唇を噛んでいる。
「ありがとうございました。」
「へ?」
素っ頓狂な声を上げるルイズ。アンデルセンは続ける。
「危ない所でした。」
「あ、あれは当然よ。貴方のご主人様だもの。」
彼は温厚な神父の顔だ。
「ええ、あなたは正しいことをしました。ですから悔やむのはお止めなさい。」
ルイズは彼の方を向く。
「あなたは皆を救いました。あの吸血鬼を倒し、私も死なず、彼も死にませんでした。」
「結果よ。一歩間違えたら…。」
彼も私もアンデルセンも死んでいたかもしれない。だがアンデルセンは笑う。
「正しい心で行った行為には何時だって正しい結果が得られるものです。それが信仰であれ誇りであれ信念であれね。」
アンデルセンはにっこりと笑う。



「ヴァチカンとして、カトリックとして感謝します。あなたのおかげで失われた技術を取り戻せた。」
「その銀の箱のこと?」
アンデルセンは箱に描かれた紋章を見て考える。
これをヴァチカンへ届けねばならない。それがイスカリオテとしての使命だ。手段を問わず帰投する。単純な思考が彼を支配する。
ふと後ろを見るとルイズは寝息をたて寝ている。
アンデルセンは穏やかな笑顔で彼女に毛布を掛けた。
何事もなかったように静かに、長い夜が過ぎていく。





「嬢ちゃん。」
「何?『地下水』さん。」
「袋にいれて持つのはやめてくれよ。汚いもん見たいにさ。」
「仕方ないでしょ。」
「しっかしあいつら何なんだ?あの化け物共。」
食えない笑顔で長い黒髪の女性は答えなかった。
「さあ、ガリアに戻りましょう。」





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