あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ご立派な使い魔-06


ルイズは思う。
夢は夢のままであり続けるから美しいのだ。
夢が現実になってしまえば、それはたちまち輝きを失ってしまうのだと。
あれだけ望んでいた、誰からも一目置かれる強力な使い魔を、いざ手に入れてみればどうしたことか。
なるほど誰からも一目置かれている。が、それがなんだというのだ。
『ゼロのルイズ』の名は今や消えたといってもいい。……これも、夢見ていたことなのに。
今、彼女を呼ぶ名はひとつ。
そう……

『ご立派なルイズ』、と。

「私本人は立派じゃないわよぉぉぉ!」

ルイズの悲痛な叫びが、部屋に木霊した。

「はぁはぁ……落ち着くのよ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
 あれをどうにかするためには、いつだってクールでないといけないわ。
 それだけ強大な相手なんだから」

とにかく、冷静に考える。
例えば使い魔の素行が悪いというだけなら、それは矯正すればすむことだ。
鞭をくれてやれば、まあ、大抵の使い魔なら怯むはず。
きっと平民の使い魔なんていたら、鞭で叩いてもあんまり効かなくてこう、色々アレだったりするのだろうけれど……

(って平民の使い魔って何よ。本当に落ち着きなさい私)

何かの記憶でも混信したのかもしれない。
ともあれ、だ。あのマーラは、実に信じられないことだが素行は悪くない。
率先して主の雑用を勤めようとするところまである。……やめてほしいのに。
意外とあれで言うことはちゃんと聞いてくれるし、実力もなかなかのもののようだし、それは悪くない。
悪いのはただ一点。

外見だ。

「それが一番問題なのよぉ……」

なのだ。
あんなもん人前に出すもんじゃない。常識的に考えて。
しかもなまじ実力があるだけに、おぞましき未来が脳裏をよぎる。

もし、あの使い魔のお陰で、歴史に名を残してしまったとしたら。
突拍子のない想定にも思えるが、何かの間違いでそうなったとしよう。
すると歴史に残るのは、『ナニを使い魔にした魔法使い』の名である。
未来永劫、その名は刻まれ続けるのだ。
そして遥か未来のお子様どもにまで、

「おい、今日の歴史の授業はご立派なルイズが出てくるんだぜ!」
「やった! これは授業に出ない訳にはいかないでしょう!」

とか言われるのだ。
あまりにも絶望的な未来。想像するだけで身が重くなってくる。
無論、これは可能性の低い、ありえないはずの未来、なのだが……
昨今の情勢を思うと、戦乱が近いなどという噂もあるし、

「戦争ってナニが起こるかわからないからね……」

貴族は戦場に立つもの。戦場で何が起こるか分からないのは人の世の常。
である以上、大功を立ててしまう可能性は、使い魔がアレではゼロとは言い切れない。

「それなら」

今のうちだ。
今のうちに、マーラはなんとかしなければならない。
一度召喚した使い魔は常に主と共にあるのが定めといえ、例外だってもちろん存在している。
それは使い魔が死んだ時。
使い魔が死んでしまえば、サモン・サーヴァントはやりなおさざるを得ない。
そちらが成功するかどうかはわからないけれど、それでも今よりは。
ああ、今よりは。

「今よりはずっといいわ。そう、ずっと……」

ルイズの頬を、透明なものが一滴。零れて落ちた。


キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーは恋多き女性である。
これはギーシュと違って、実践しているところからもその名は大きい。
しかしそんなキュルケは、ここ数日その呼び名の如く微熱をずっと感じ続けていた。
あのルイズが呼び出した使い魔を思ってのことである。

「一目見ただけなのに、まだ動悸が収まらないわ。これは恋なんて次元を圧倒してしまっている……」
「僕が一緒にいてもかい、キュルケ」
「そうだよキュルケ」
「今日はなんだかおかしいよ、キュルケ」

部屋には三人、四人。もっと多いのかもしれない。まあ興味がないのでどうでもいいが、それだけの男がいる。
確か夜に来てくれるようにと約束をしていたような気もするが、今のキュルケには本当にどうでもいい。

「あの時とは気が変わってしまったのだもの。
 今となっては、あなたたちには興味がないわ」
「そんな!」

悲鳴をあげる男達。だが、次の言葉で。

「では、この中で、ルイズの使い魔よりも己が立派だと言える人はいるのかしら?」

たちまち、一同しゅんとなってしまう。

「それは反則だよキュルケ……」
「あんなモノ、到底敵わないじゃないか」

キュルケはため息をつく。
そういうことではないのだ。
確かにアレほどに立派なモノはない。が、そこで負けを認めてしまうのが不甲斐ない。
例え大きくなかろうとも、他の部分で勝負をすればよいものを……

「それじゃあ、今日はみんなお帰りなさい」

鬱陶しそうに杖を振ると、みんな炎とともに吹き飛ばされていく。
まったく、こんな男ばかりだから、ますますあの御方が輝いて見えてしまうというものだ。

「そうはいっても、本当にあの方を誘うとなるとそれはそれで難しいのよね」

ベッドの上で、熱い吐息を漏らしながらキュルケは思う。
あれ、どうやっても入らないんじゃないかと。

「いくらあたしでも無理よねあれは……」

でももしも受け入れたのならその時はどんな世界が広がって

「……キュルケ、アレ知らない?」
「あらルイズ。珍しいじゃない」

際限の無い妄想を止めたのは、通称ライバルであるところのルイズだった。

「アレって……ああ。アレ?」
「そう、アレ。なんだか部屋に帰ってこないんだけど……」
「あんな立派な使い魔なんだから、逃げられただなんて話はなしにしてよ?」
「……逃げてくれるならずっといいわよ」

どうもこの反応は珍しい。
大抵は突っかかってくるルイズなのだが。

「何よ。今日はおかしいじゃない、あなた」
「おかしい……まあ、そうかもしれないけど……
 でも色ボケのツェルプストーのところにもいないなんて、どこにいったのかしら……」

色ボケ、というのは、まあ、いつもの憎まれ口だろう。
それくらい聞き流す余裕はある。

「いや、いくらあたしでもあれは入らないわよ」
「……本当にどこにいったのかしら。あと入るとか入らないとかツェルプストー自重して」


さて。
そのマーラは、ある使い魔に呼び出されて、さる生徒の部屋にいた。
マーラを呼び出した使い魔は、今は主の下でじっとしている。
使い魔とは、モグラの姿である。

「お待ちしておりました」
「ワシを呼び出したのはお主か。ギーシュよ」

そこには土下座してマーラを出迎えるギーシュの姿がある。

「はい。お聞きして頂きたいことがありますのでお呼び致しました」
「ほほう。話を聞こうではないか」

ギーシュは顔を上げる。
その目には、決然としたものが篭っていた。

「真の愛の道を歩むには、やはり僕には足りないものがあると気づいたのです。
 それは、貴方の如きご立派……
 ご立派のみが愛を体現するとは思いません。が、ご立派あってこその愛の道であるのも事実。
 そこで、ぜひとも貴方からご立派の道を学びたいのです」
「ご立派道は地獄道。そうと知っても貫けるかな」

ギーシュの目は、揺らぎを見せない。

「無論です。例えこの身が砕けようとも」
「生半可な覚悟では、立派どころか粗末に堕ちようぞ」
「望むところです!」
「よくぞ申した。これよりお主は我がアプレンディスだわな」
「ありがとうございます、先生!」

マーラの触手が伸ばされる。
ギーシュはそれを握ると、きらきらとした目で師となったモノを見上げた。

「何してるのよギーシュ」
「……あなた、何か変わった?」

それを見ていたのは、二人でマーラを探していたルイズとキュルケだ。
ようやくマーラを発見したと思ったら、ギーシュがおかしなことをのたまっている。

「ああ、ミス・ヴァリエール。それにミス・ツェルプストーじゃないか。
 僕は愛の道を究めようと思ってね。こうして先生に道を教わろうと決意したのさ」
「何の道よ」
「ご立派道さ」

へえ、とキュルケは感心したように目を見開く。
一方、ルイズは顔を赤くして、プルプルと震え始めた。

「グワッハッハッハ、なかなかに見所のある若者だわな。これは将来が期待できるぞ」
「恐れ入ります、先生」

そしてルイズが。

爆発する。

「こここ、このバカギーシュ! それにバカマーラ!
 ああああ、あんたたち何考えてるのよこのバカ! バカ!」
「バカじゃあない。これは愛のためさ」
「小娘も道を究めてみるかな。グワッハッハ」
「ばっ……」

バカぁぁぁぁ、というルイズの叫び声と。

ギーシュの部屋が爆発するのは実に同時だったという。


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