あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Persona 0  第二話


「――私は、私ィィィィィ!」
 下から響いてきた絶叫にキュルケは慌ててレビテーションを解いた。
 頭から真っ逆さまに地面へと落ちていく、その途中に異様なものを見てキュルケは思わず再度レビテーションを唱えるのを忘れそうになった。
「あは、あはは、あははははぁぁぁ」
 それは船だった、どこにでもあるような小さな小さな木製の船だ。
 そこから冗談のように太い樹が天に向かって生え聳えている。
 太い根を船中にのたくらせた樹は血のように赤い葉をを思うままに茂らせている。
 もっともその樹が茂らせているのはそれだけではない。
「あはは、キュルケェェェ!」
 小さな船を苗床に育ったその樹は、首を吊った桃色の髪の少女と言う実をつけた。
「――!? ヴァリエール」
 船が揺れるたびにガサガサと葉がこすれる音が響き、それに伴って少女の体も右に左にと不安定に揺れる。
 その揺れの狭間にわずかに垣間見えるのは、船の中に倒れ伏した桃色の髪の少女。
 ――ヴァリエールが二人?
「あんたも私のこと馬鹿にしてるんでほぉぉぉぉぉ」
「きゃ!?」
 考え事のせいでレビテーションの操作がおろそかになったところに撃ち込まれる見えない力、その強烈な威力にキュルケは吹き飛ばされ床の上に投げ出された。
「なにすんのよぉ」
「うるさいうるさいうるさい、私のことを馬鹿にするやつはみんな死になさい!」

 ――メギド!

 聞いたことの詠唱に、聞いたことのない効果。
 一見して魔法と分かるのにどんな攻撃をされているのか皆目見当が付かない。
「あぐっ!?」
 体を抉られるような痛みにキュルケは呻き、その場に膝を折った。
「あははは、当たった。当たったわぁ、もう一発!」
「くっ、フライ!」
 笑いながら詠唱を唱えるルイズの姿に本能的な危機感を覚え、キュルケは反射的にフライを唱えた。
 次の瞬間キュルケが居た空間に閃光が火花と散る。
「どうせあんたもわたしなんか死ねって思ってるんでしょう、生まれてこなかったほうがいいって思ってるんでしょう!」
 首を括ったルイズは目から血の涙を流しながら、高々と高々と吠える。
「いいわ死んであげようじゃない、後腐れなく死んであげようじゃない!」
 まるでこれまでの鬱屈すべてを吐きだそうとしていみたいに、キュルケにはその姿はとても晴れ晴れとして見えた。
「でも一人は嫌、だから一緒に死にましょう? いいわよね?散々バカにしたんだから」
「いい加減にしなさいよヴァリエール!」
 だがその姿は到底キュルケには受け入れられるものではなかった。
 ルイズが彼女の好敵手足りえたのはひとえにどれほどの嘲笑にも負けずルイズが意地を張り続けた故。
 今は魔法は使えずとも、いずれは必ずヴァリエールの名に恥じないメイジになると言う愚直なまでにまっすぐな生き方に、フォン・ツェルプストーの敵として相応しいと思った故に。
 だからルイズの姿でルイズの声で、普段のルイズとは似ても似つかない言葉を囀る目の前の相手は到底許せるものではなかった。
「こんのぉぉおぉぉ、フレイムボール!」
 全力を込めたフライを解除する目標はルイズの姿をした化け物、回避などしない。フライの慣性を使って全速力で吹き飛びながらキュルケは呪文を完成させた。
 杖の先に燈る紅蓮の焔、自らの皮膚や肺すら焦がすその熱を抱えたまま。
「ルイズゥゥゥゥゥ!」
 キュルケは笑い声をあげるルイズへと向かって突っ込んだ。





「げふっ、げっふ……」
 一瞬黒く吹き飛んだ意識は次の瞬間猛烈な痛みによって引き戻された。
 どうやら激しく地面に叩きつけられたようで呼吸ができない、咳きこんだ息には血が混ざり左手は変な方向へと曲がっている。
「っぐ」
 それでもキュルケは立ち上がった、ぼろぼろの体でよたよたと不格好に。
 まず最初にしたのは自分の傷がどれほどの対価を生み出したのかと言うこと。
「いたい、いたい、いたいい、いたいいぃぃぃぃ」
 骨の一本や二本折った甲斐はあったとキュルケは笑った。
 半ばほどから折れたキュルケの杖は首を吊ったルイズの胸に突き刺さりその周囲を炭に変えている、樹から生えた腕のような形の枝がその傷を庇うように押さえている。
 その傷口からしてもやはり人間のものではない、痛みのなかに一体こいつはなんなのかと言う疑念が湧きあがり、次に本当のルイズはどうなったのか? とキュルケは視線を巡らせる。
 見れば先ほどの特攻で船のなかから放り出されたのか、すぐ近くには桃色の髪の少女が安らかな寝息を立てていた。
 一見して大きな傷はなく、多少髪や皮膚が焦げ跡や火傷が残る程度このくらいなら水の秘薬で綺麗に治るだろうとキュルケは胸を撫で下ろす。
「痛いじゃないの!」
 それが油断となったのか、もう一つのルイズの声に振り向いた瞬間強烈な張り手が来た。
「あんたうるさいのよ人のこと“ゼロ”、“ゼロ”って、うるさい、うるさい! だからお返ししてあげるわ!」

 ――マカラカーン!

 お返しすると言った割にはもう一人のルイズは動かない、それを訝しく思いながら霞む視界でキュルケは折れた杖を構え。
「いい、加減に、黙りなさい、よ……」
 最後の力を振り絞り呪文を唱えようとしてそのまま気を失った。
「あ、あは、あはは、あはははは!」
 もう一人のルイズはそれをあざ笑う、滑稽だ、馬鹿みたいだと嘲笑する。
 一頻り笑った後で気が済んだのか、ユラユラと揺れる船底に足を生やしのしのしと歩きだした。
 キュルケは無視して、目指すのは勿論本当の自分。
「さぁて、“ゼロ”の人生もこれでおしまい」
 細い細い指で桃色の頭を掴んで吊り上げ、その愛らしい寝顔にこれでもかと言うほどの悪罵の礫を投げつける。
「さようならルイズ、生きる価値のないルイズ、だぁれにも愛されていない“ゼロ”のルイズ」
 そしてルイズはゆっくりとその指に力を込めて行く。
「あなたが死んでもきっとだぁれも泣いてくれないわね」
 そう言ってルイズはわずかに儚げにくすりと笑い。
「さようなら、さようなら、大っきらいなルイズ」
 そして血の花が咲いた。

 はたり、はたり地面に黒い滴が零れる。
「あ、れ……?」
 ルイズはそう呟くと背後を見た。
 その瞬間におもちゃのような樹の細腕がもげる。
「何よ、あんた?」
 ルイズは根本から取れた樹の根本を見ると、次に背後に立つ影を見た。
 金色に光る二つの眼をしたそいつは形こそいびつに歪んでいるが人の形をしているように見える。
 もっとも背丈が巨大な樹木の二倍以上もある人間など居るわけがない。
 ソイツの正体もまた、ルイズと同じシャドウだった。
 では一体誰の? これほどの大きな影を持つ人物をルイズは知らない。
「ズゥゥゥ、ズゥオオオオオオオオオ!」
 ソイツは高々と一声吠えると固く固く拳を握った。
 その拳の先には影に覆われた長い棒のようなものを持っている。
 だが体中を覆う黒い靄のような影に覆われて、その輪郭すら確かではなかった。
「なんなのよ!あんた!」
 夢から醒めたようにそう言うと、影のルイズは魔法を唱える。

 ――メギド!

 炸裂する万能、だがソイツは全く痛痒など感じないとばかりに船の舳先をその足で踏みつぶした。
 その事実がさらにルイズを激昂させる、癇癪のままに激情のままに何度も魔法を解き放つ。

 ――メギド、メギド!! メギド!!!

 それもすべて無駄だった。
 だからもう一人のルイズは己のすべてを注ぎ込んで、可能な限り強力な魔法を唱えた。
 偽りの体が崩れていくが、それすら一切構わなかった。

「あんたは一体、なんなのよぉぉぉ!」

 ――メギドラオン! 


 一際大きい激情が力を引き出し巨大な力となって爆心地にクレーターを作る。
 だがソイツはまるで何事もなかったかのようにその黄金に光る二つの眼を輝かせると、紙でも引き裂くようにルイズの影を真っ二つにした。






「しっかりするクマ、傷は浅いぞ、がんばれー」
 ぺちぺちと頬をはたかれ、キュルケはゆっくりと目を覚ました。
 体中に残る鈍痛、それでも先ほどの気が狂うほどの激痛はない。
 目の前にはクマがいる?
「ううん、此処は……」
「お、目を覚ましたクマね」
 目の前の謎の物体は安心したように笑うと、ゆっくりとキュルケに近寄ってきた。
「いやぁよかったクマ、君たちが倒れているのを見た時はクマどうしようクマかと」
「あんた――何?」
「クマは、クマクマ!」
 どうやらこの子が自分たちを運んで来て、おまけに応急処置までしてくれたのだろう。
 ならばよくはわからないが貴族として礼は言わないといけない。
「ありがと、よくわからないけど助かったわ、えっとクマちゃん?」
「気にすることないクマ、こんな可愛い女の子二人ならクマ大歓迎」
 もう一人と言われて咄嗟にキュルケは悲鳴じみた声をあげる。
「そうだルイズは!?」
「ルイズってもう一人の女の子クマか?」
「そうよ! 桃色のブロンドの……」
「それならそこにいるクマ」
「え?」
 言われて振り返ると、そこには好敵手と認めた相手が体育座りでベソを掻いていた。
「いやぁ驚いたクマよ、いきなり霧が晴れる日でもないのにシャドウが暴れだしたと思ったら、2体のシャドウが同士討ちしてるんだもん。クマ怖くなって君たち浚って逃げてきたクマ」
 聞きなれない言葉にキュルケはクマに向かって聞き返す。
「シャドウって、やっぱりさっきの」
「そうクマ、このコのシャドウもすっごく大きかったけどもう一匹のシャドウはクマが見たことないくらい強い奴で、もうクマおしっこちびっちゃいそう」
 あーおっかないおっかないクマクマと五月蠅いクマに向かってキュルケはもう一度問いかける。

 >シャドウって何

「シャドウ? シャドウは人の押さえつけた心から生まれてくるクマ」
「押さえつけた心?」
「そうクマよ、シャドウはもともと人の心の一部なのクマよ。けどそれを認めてあげないとただ暴れることしか出来なくなってやがて宿主すら殺してしまうクマよ」
「それって、つまりは……」
 あの巨大な化け物はルイズの心の一部なのだろうか?
 普段顔を突き合わせている相手の以外な一面に驚きつつ、キュルケはルイズに声を掛けた。
「ヴァリエール……」
「う゛、うるざいわねぇ、ほう゛って、おいで、よぅ」
 ルイズはぽろぽろと涙を流す、しょうがない発破をかけてやろうと立ち上がったキュルケは。
「――!?」
 クマの影に隠れていた、ルイズに向かい合って座るもう一人のルイズの姿を見た。





 キュルケは慌てて杖を構えようとするが、しかし杖がないことに気づいてたじろぐ、どうしようと歯が未してどうしようもないことに気がついた。
 もう一度暴れられたら今度こそもう止められない。
「安心するクマ、ルイズちゃんの影は落ち着いてる」
 そう言いながらクマはぺったんぺったんとルイズの隣に歩いて行く。
「ねぇ、ルイズちゃん」
「らによぉ、あんたは!」
「クマはクマよ、ルイズちゃんこの子を許してやって欲しいクマ」
 そう言ってクマはもう一人のルイズを指さした。
「暴走しちゃったけどこの子もルイズちゃんの一部なのクマよ、だから……」
「違うもん、こんなの私じゃないもん」
 涙声でルイズは拒否するが、その声には力がない。
 その代わりにまるでルイズの内面を代弁するように影がさらに激しく涙を零す。
「ルイズちゃん……」
「私は立派なメイジになるんだもん、いつか必ず魔法を使えるようになって、胸を張ってヴァリエール家に帰るんだ、もん」
 それはどうしようもなく虚勢だった、それはルイズ自身にもわかっていた――はずである。
「だからこんなところで挫けちゃ駄目なんだもん」
『でもやっぱり怖いだもん』
 ルイズの言葉を継いだのはもう一人のルイズ。
『いつまで経ってもコモンマジックすらろくに使えなくてみんなに“ゼロ”だ“ゼロ”だって言われて、だんだん本当に自分でも“ゼロ”なんじゃないかと思えてきて……』
 ぽつりぽつりと吐き出されるその言葉にルイズははっと息を飲んだ。
「あなた……」
『本当に“ゼロ”なら、そんな私なんていらないって思ってた』
 キュルケもまた二人のルイズを前にして息を呑んだ、あれだけの意地と虚勢の下にはこれほどの苦悩があったのか。
『私なんて、産まれてこなければよかったって思ってた』
 もう一人のルイズはゆっくりと顔をあげると虚ろな目でまっすぐにルイズを見つめる。
『最初からこの世界に居なかったことになってしまえばいいと思ってた』




 ルイズはなにか言おうとして、しかし何も言えずに口を噤んだ。
「ほら、しっかりなさいなルイズ」
 そんな背中をとんと押してキュルケはルイズに笑いかけた。
 その笑顔はまるで炎のよう、凍てついたルイズの心を温め、燃やし、無理やりにでも前に進む活力を注ぎこむ。
 そのおかげだろうか、やっとルイズはまっすぐにもう一人の自分を見ることができた。
 長い桃色の金髪と吊りあがり気味の瞼、普段はきつく結んだ口元は今は薄く閉じられておりこうして見れば随分と可愛らしく見える。
 ルイズをじっと見つめるその姿は、まるで雨に濡れて震える捨てられた子犬のようだった。
「――分かってた、あなたは私のなかにいたんだって」
「ルイズちゃん!」
「弱虫で泣き虫で、ずっと諦めたがってた。どうせ“ゼロ”なんだって認めて楽になりたいと思ってた、私」
 そう言ってルイズは自嘲するように笑った。
「でもごめんね、まだ私は諦められないの。だって魔法を使える立派な貴族になるのは私の夢だから、魔法が使えるようになってちぃ姉さまのご病気治して差し上げたいから」
 だからもうちょっとだけ一緒に頑張ってくれないかしら?
 ルイズのか細い言葉に、もう一人のルイズは同意するようにこくりと頷いた。
「ふふ、一番大切なものはやっぱり私と一緒なんだ……」
 そうしてルイズはくすりと笑う。
「あなたは、私ね」



 >自分自身と向き合える強い心が、“力”へと変わる…
 >ルイズはもう一人の自分。
 >困難に立ち向かうための人格の鎧、ペルソナ“イドゥン”を手に入れた。 


「これが……」

 そのまま意識が遠くなっていく。
 手に黄金の林檎を持った桃色の髪の仮面の乙女、そんなもう一人の自分の姿を目に焼き付けながらルイズは意識を失った。





~二日後~




「あなたの、テレビに、時価ネットたなか~」
「ルイズー、ちょっといい?」
「あ、うん。分かった」
 テレビのスイッチをぷつんと切ってルイズは立ち上がった。
 黒い画面に映る自分の顔を見ながらしみじみと考える。
 魔法の力など少しも使っていないただの箱なのに、ボタンを押すだけでいろいろな映像を見ることができるなんてとんでもないアイテムである。
 クマの話によるとこの箱は“テレビ”と言うらしい、本来は電源と電波と言うものが必要らしいのだが問題なく動いているのはやはり……
「この使い魔のルーンのせいなのかしらね……」
 テレビの側面には珍しい形の使い魔のルーンが今も光を放っている、なぜ珍しいかと言えば半日ほど図書館の本をひっくり返しても該当するルーンは結局見つからなかったからだ。
「ルイズー、聞いてるのー?」
「あーごめん、今出るわ」
 音を立てて扉を開けるとそこには最近親しくなった赤毛の友人の顔。
「もぉ遅いわよぉルイズ」
「勝手に人の部屋に上がりこんでおいて遅いもなにもないじゃない」
「そんなことは後々、早くしないと夏のソナタ始まっちゃうわよ」
 はいはい、と言いながらルイズは指で消したばかりのテレビを弄る。
 ぷつんと言う音と共に画面に光が満ち、まるで遠見の鏡のように番組を映し出す。
『オールハンドゥガンパレード、全軍抜刀、全軍突撃、男と女が一人ずつ生き残れば我々の…』
 ぷつん
『嘘だッ!』
 ぷつん
『空ーと君との間にはー、今日も冷たい雨がふ…』
 ぷつん
『ぱれろちゅちゅ、ぱれろちゅちゅ…』
 ぷつん
「ああ、これよこれ」
 何度かのチャンネル変更を経てテレビにはハルケギニアでは見慣れない服装で抱き合う男と女の姿が映し出されていた。
 それを見るともなしに見ながら、ルイズはついとキュルケに話を振ってみる。
「なんなのかしらね、これ」
「これって、どっち?」
 ルイズは己の手とテレビを見比べながら、拗ねたように「両方」と言った。
「夢じゃ、ないわよね」
「夢だったら良かったわね」
 そう言ってキュルケは未だ生傷の残る左腕をかざして見せた。
 水の秘薬で粗方は直したが、もともと何故こんな大怪我をしたのか公に出来ないこともあって、キュルケが手配した分の秘薬では細かい擦り傷や切り傷まで完治させるには到底足りなかったのだ。
「ペルソナって言ったっけ? 良かったじゃない、魔法が使えるようになって」
「ありがと、けど全然良くないわよ。私自身の力じゃないし……」
 ルイズはそう言って自分の胸を貫くように生い茂る半透明な樹木の枝と、その先端から伸びる若い娘の姿を見た。
 左手に持った籠には黄金の林檎、顔を覆う仮面は硝子のような白い球面、たなびく髪の先には桃色の花が満開に花開いている。
 イドゥン、それがもう一人のルイズが姿を変えた“ペルソナ”の名前。
「それにこんな魔法じゃ、下手したら異端扱いよ」
「まぁ、それもそうね」
 そう言うとキュルケは唇に指を当て、
「けれど一人や二人は喜んでくれる人がいるでしょう?」
「そんなこと……」
 そう言ってルイズの頭に浮かんだのは優しい二番目の姉と厳しい両親、そして子供頃からずっと憧れている一人の青年の姿。
「それに私もその一人だしね」
 ついと横を向いたキュルケの姿がどこかおかしく、ルイズは笑った。
 すっごく嬉しかったけどそれを悟られるのが同じくらい恥ずかしく思えて、ルイズもまた反対方向に向けてそっぽを向く。
 一つの部屋に素直じゃない少女が二人、部屋の中にはテレビのBGMだけが響いている。
 窓の外は、雨。








 午前零時。
 ルイズが寝静まった部屋のなかで電源の切れたテレビにひどく鮮明な映像が映った。
 人のような、獣のような黒い影が、もはや肉塊となった物体を引きずりながら画面に近づいてくる。
「オオオオオォォォ――ズゥゥゥゥ、オォォォォ、ィズゥゥゥゥ」
 深い呼気のようなその遠吠えは高く高く、テレビのなかの世界に響き渡る。
 異なる理に支配された異なる世界、だと言うのにマヨナカのテレビは不吉なものを映し出す。


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