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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第十七話


 翌日、船員達の声と眩しい光で静留は目を覚ました。舷側から下を覗き込むと、白い雲が広がっており、フネは雲の上を進んでいた。

「アルビオンが見えたぞー!!」

 鐘楼の上に立った見張りの船員の声に、静留はフネの前方へと顔を向けた。
そこに広がっていたのは圧巻の光景だった。雲の切れ間から、黒々とした大陸が姿を覗かせていた。大陸は遥か視界の続く限り延びている。地表には山がそびえ、川が流れていた。

 「あれがアルビオンよ……驚いた?」

 いつのまにか横に来ていたルイズが静留に言った。

 「事前に教えてもろうたとはいえ……ほんに聞きしに勝る絶景どすなあ」

 静留はそう言ってルイズに微笑むと、空に浮かぶ大陸を眩しそうに眺めた。

 「浮遊大陸アルビオン。ああやって、主に大洋の上をさ迷ってるわ。大きさはトリステインの国土ほどもある通称『白の国』」
 「白の国……?」

 不思議そうな様子の静留にルイズは大陸を指差した。
 大河から溢れた水が白い霧となって、大陸の下半分を包んでいる。その霧が雲となり、ハルケギニアの大地に雨を降らせるのだとルイズは説明した。

 その時、鐘楼に登った見張りの船員が大声を上げた。

 「右舷前方の雲中より、船が接近してきます!」

 静留はルイズは言われた方を向く。なるほど、大きな黒いフネが一艘近づいてくる。舷側に開いた穴から、大砲が突き出ていた。

 「どう見ても普通の商船には見えまへんな」

 静留の言葉にルイズは眉をひそめて呟いた。

 「いやだわ……反乱勢、貴族派の軍艦かしら」


 結果的に言うとそのフネは海賊ならぬ空賊のもので、ルイズ達の乗ったフネは停船させられ、あっというまに彼らに制圧されてしまった。
 ルイズ達は相手がただの空賊か、貴族派の私掠船か判断できるまでは様子を見た方がよいというワルドの策に従い、特に抵抗することなく捕ったので、杖とデルフを取り上げられ、フネの一番奥にある船倉に閉じ込めてられてしまった。

 「放り込まれて大分経つけど、誰も来ないわね」
 「そうだな、後で頭目が尋問に来るといっていたが……」

 じっとしてるのに飽きてぼやくルイズをなだめるようにワルドが答える。

 「まあ、焦っても仕方ないですやろ……っと、どうやら誰か来なはったようですわ」

 入り口の近くに座っていた静留がそう言うと同時に扉が開いて、やせぎすで目つきの悪い空賊が顔を除かせる。

 「お頭がお呼びだ」



三人は甲板の上に設けられた空賊船の船長室へと連れて行かれた。
 部屋の中央に置かれた立派なテーブルあり、一番上座にバサバサの長い黒髪を真っ赤な布で纏め、無精ひげを顔中に生やし、左目に金のアイパッチをした赤銅色の肌の空賊が他の空賊たちにかしずかれて座っていた。
 大きな水晶のついた杖をもっており、どうやらメイジくずれの空賊らしい。

 「おい、お前たち! 頭の前だぞ、挨拶しねえか!」

 ルイズたちを連れてきたやせぎすの空賊が後ろからルイズをつつく。だが、キッとした視線で頭を睨みつける。

 「気の強い女は好きだぜ。子供でもな。さてと、名乗りな」
 「その前にこっちの質問に答えて……あんた達は王党派、貴族派、どっちなの?」

 ルイズは、頭目の言葉を無視して言った。

 「当然、貴族派に決まってる。もうすぐ負けそうな王家に忠義立てしたって儲かりゃしねえからな」
 「じゃあ、この船は貴族派の私掠船ということね」
 「そういうことだ。お前らが貴族派だと言えば、きちんと港まで送ってやらんこともないが」

 そう言って頭目はにやにやと笑う。しかし、ルイズは首を縦に振らずに、真っ向からその空賊を見つめた。

 「お断りよ! 誰が薄汚いアルビオンの貴族派なものですか! 私はトリステインから遣わされた王党派への使いよ! だから正式な大使としての扱いを要求するわ」

 ルイズの言葉に頭はあっけにとられた表情を浮かべ、静留が大げさに天を仰ぎ、ワルドが困ったように顔を手で覆った。

 「お嬢ちゃん、確かに正直なのは美徳だが、こういう交渉事では致命的な欠点にしかならんよ。それより、貴族派につく気はないかね? あいつらはメイジを欲しがってし、先のことを考えりゃ、ここで恩を売っておいた方がトリステインにとっては有益なはずだ」
 「死んでも、嫌よ」

 ルイズは胸を張って言い切った。それを見た頭目は大声を出して笑った。

 「やれやれ、トリテインの貴族は気ばかり強くて、救いようがないな。まあ、どこぞの国の恥知らずどもより何百倍もましだがね」

 豪快に笑いなら立ち上がると、ルイズの前までやってきた。静留が警戒して身構える。

 「失礼した。貴族に名乗らせるなら、まずこちらから名乗らなくてはな」

 そう言って頭目は、頭と顔に手をやると、バサバサの長い黒髪と真っ赤な布、左目のアイパッチを投げ捨てた。そして、最後に作り物だったらしいひげを引き剥がして現れたのは、凛々しい金髪の若者であった。
周りに控えた空賊たちが、一斉に直立不動の姿勢をとった。

 「私はアルビオン王立空軍大将……いや、それよりはこちらの肩書きの方が通りはいいかな? アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」

 頭目――ウェールズ皇太子はにっこりと魅力的な笑みを浮かべると、ルイズたちに席を勧めた。

 「アルビオン王国へようこそ、大使どの。さて、御用の向きを伺おうか」

 あまりの展開にルイズは口をあんぐりと開け、静留は驚きに目を丸くし、ワルドは興味深げにいきなり名乗ったウェールズを眺めた。

 「いや、大使殿には失礼いたした。しかしながら、君達が王党派というのがなかなか信じられなくてね。この『イーグル号』が堂々と王軍の軍艦旗を掲げれば、あっという間に反乱軍に囲まれる。空賊を装うしかない、というわけさ」

 いきなり目的の王子が眼前に現れ、何も言えずに立ち尽くすルイズに代わってワルドが優雅にウェールズに頭を下げて言った。

 「アンリエッタ姫殿下より、密書を言づかって参りました」
 「ふむ、姫殿下とな。君は?」
 「トリステイン魔法衛士隊グリフォン隊隊長、ワルド子爵」

 それからワルドは、ルイズたちをウェールズに紹介した。

 「そしてこちらが姫殿下より大使の大任を仰せつかったラ・ヴァリエール嬢と、その使い魔たる少女にございます、殿下」
 「なるほど! 君のようなりっぱな貴族が後十人いれば、我らがこのような姿を晒す事もなかったろうに! して、その密書とは?」

 ルイズが慌てて、胸のポケットからアンリエッタの手紙を取り出し、恭しくウェールズに近づく。だが、途中で気がついたように足を止めると、ちょっと躊躇うように口を開いた。

 「あ、あの……失礼ですが、本当に皇太子様?」

 ウェールズは笑った。

 「まあ、無理もない。さっきまでの顔を見せられてはね。では、証拠をお見せしよう」

 ウェールズは自分の指に光る指輪を外すと、ルイズの嵌めた『水のルビー』に近づける。
二つの宝石は共鳴し、その間に虹の輝きを創り出す。

 「水と風は虹を作る。王家の間にかかる橋さ」
 「大変、失礼をばいたしました」

 ルイズが一礼して、手紙を渡すと、ウェールズは受け取った手紙にその場で目を通した。

 「アンリエッタ……姫は結婚するのだな」

 ウェールズの言葉にワルドが頷く。ウェールズはどこか寂しげに微笑むと、ルイズに手紙を返却することを了解すると伝え、そして言った。

 「肝心の姫から貰った手紙だが、残念ながら手元にはない。多少、面倒だが、ニューカッスル城まで足労願いたい」



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