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ゼロのしもべ第2部-12



 目を開いたウェールズの目に飛び込んできたのは、神の奇跡を目の当たりにした僧侶のような顔で驚愕する父ジェームズの姿で
あった。目からは涙がこぼれているし、祈るように指まで組んでいる。
 なぜ父は泣いているのだろう。なぜ父は祈っているのだろう。
 父だけではない。その場にいた人間全てが泣いていた。祈っていた。
 そして、口々にある少年の名を叫ぶ
「バンザイ、ビッグ・ファイアバンザイ!」
 父が少年に抱きつき、離れて地に伏せ祈りを捧げる。始祖ブリミルへの感謝をこめた祝詞だ。神聖な言葉の羅列による詩だ。
一国の王が使い魔に与える歌ではない。国の祭典や戦争の勝利など、国家的な祝いの場において、唄われる祝詞であった。
「おお……トリステインの若きメイジ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔よ。貴方は一体何者であるか。
アルビオンの王ジェームズ・テューダーが始祖ブリミルの名において問う。汝は何者也や。」
 ひれ伏し、大地を舐めるように這いつくばるジェームズ国王。それは御使いに会った聖職者のような姿であった。
「やめてください。」
 あわてて少年が父、ジェームズを抱き起こす。
「ぼくは何かに導かれるようにしてこの世界にやってきましたが、ただの人間にすぎません。ただ不思議な力があるというだけで、
あなたほどのかたが頭をさげるような人間ではない。」
「しかし、あなたはわが子ウェールズを蘇らせた。そのような魔法、聞いたことがない。」
 蘇らせた?何を言っているのだ。僕はここにいるじゃないか。幽霊じゃないぞ。というか、なぜこんなに周りに人がいるんだろう。
しかもどうやらここは医務室らしい。怪我でもして運ばれたのか?
 胸を触る。そこに、大きな穴が開いていた。開いて、血が滴っていた。
「げえ!」
 そうだ、思い出した。私はあのとき内通者であるワルドという男に刺され、死んだのだ。いや、いまここにこうしているじゃないか、
どういうことだ?
 そのときウェールズはおかしいことに気がついた。まだ大きな穴が開いて血があふれているじゃないか。普通これはまだ死んだ
状態じゃないのか?だが、その傷口も塞がっていく。一体どうなったんだ、私の身体は。
「ねんのため、もう少し打っておきましょう。」

 おお、とどよめく人々。針を交換して少年が妙な器具を身体に突き刺して、血を採った。
 それを私の身体に注射する。すると再生速度が増し、あっという間にもとの肉体に戻った。もう痛みすらない。
「ウェールズよ」
 と、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった父が話しかけてきた。
 なんでも私に、あの使い魔の少年が「特効薬です」と言い自分の血をわけたところ、脈が止まった私が蘇ったのだという。
 そんな馬鹿な!
「死者が蘇るというのですか…。そんな、馬鹿な。」
「だがあの少年と、伝説の使い魔として伝わっていたコウメイ様は、深い縁がある模様。もしやすれば、虚無の魔法とは人間の生命を
操る魔法なのかもしれない。現におまえは蘇った。目の当たりにすると、信じざるをえぬではないか。」
「そ、それでは……ラ・ヴァリエール嬢は虚無のメイジということになるのでは?」
 うむ、と父王は頷いた。
「これはいまは公にしてはいかんだろう。なにより、お前の愛するトリステインの姫様に迷惑になるではないかな?」
 ぎょっ、と息を呑むウェールズ。
「ご、ご存知だったのですか??」
「父を舐めるなよ。ラグドリアンの逢引から、知っておるワイ」
 かっかっかっと笑うジェームズ王。それは国王の顔ではなく、父の顔であった。
「そ、そういえばコウメイ様から袋を預かっています。何かあればこれを開けてみよ、と。一体何が…」
 あわてて話を変えようとするウェールズ。ニヤニヤしながら見ているジェームズ。いい親父だ。
 そして、そこにはただ一言「生存を隠す事」と書かれた紙が入っていた。

 竜を打ちのめし、怪鳥に乗ったバビル2世が降りてくる。
 怪鳥が着地した。バビル2世が飛び降りた。自由落下ではなく、レビテーションのようにゆっくりと地上に舞い降りた。
 バビル2世の超能力の一つ、浮遊能力である。
 あっというまにアルビオンの人々がバビル2世を取り囲む。
 ウェールズ王子復活の場に居合わせた人々は仏像のようにバビル2世を拝む。事情を知らない多くのメイジは、めずらしい使い魔で
あろうと思い込み、ロプロスについて熱心に尋ねてくる。途中炎を身に纏い、さきほどゆっくり落下したバビル2世の姿を見ていたものが
何人もいて、バビル2世はメイジか、先住魔法を使う少数亜人なのだろうと語りかけてくる。

 ウェールズ王子は、その光景を遠巻きに見ていた。
 感動していたのだ。
 伝説の使い魔「コウメイ」を従え、巨大な怪鳥を自由に操り、強大な敵と戦う少年。
 ウェールズは子供のころ、多少の空想癖があった。一国の大権を握る身にふさわしく育てようと、父ジェームズは息子ウェールズを
軍隊式で徹底的、いやこういうときはテッテ的というべきだ、テッテ的に厳しく育てた。自由なるものは産まれたときから存在して
いなかったと断言してもよい。
 そんな彼にとって唯一自由となるものが空想であった。
 英雄の冒険譚に興奮し、悲劇に涙した。長じては精霊や妖精、妖怪や怪物の話に興味を持ち、公務の合間を縫ってはゆかりの地を
お忍びで探索し、研究をした。そういえば、アンエリッタと出会ったのも妖精がいるという話を聞いて、湖を散策していたときだ。
 そんなウェールズの目の前には、少年時代に憧れた冒険小説の主人公のような少年が立っているのだ。
「いやあ、すごいなぁ。コーイチくんは。鉄人でも危ないかもしれないな。」
 ぬっ、とウェールズの隣に老人が歩を進めてきた。黒い髪に白いものが混じっているが、矍鑠とした老人だ。
 ショウタロウである。
 ウェールズが、さきほど船を救ってくれた老人だと気づき急いで挨拶をする。
「気にすることはない。こういうときはお互い様だよ。」
 まだこのときはコウメイに説き伏せられてはいなかったショウタロウだが、風の噂でアルビオンの王家が革命の嵐の中にあり、
不利な状況にあるということは聞いていた。おそらくアルビオンから逃げてきた一団であり、ウェールズ王子が杖を持っていなかった
こともあり、平民だろうと親しげに話しかけてくる。
「なに。わしが昔住んでいた国も戦争に負けたことがあってね。だが、そのあと生き残った人々が力を合わせ、国を復興したらしい。」
 ショウタロウはバビル2世に聞いた祖国日本を思い浮かべる。想像の中の姿は、あくまで美しい。
「きみたちもこれからが大変だろう。だが、いつか国が立ち直るときがある。それまでは耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶしかない。
今の君たちは例えるならば白昼の残月なのだから。」
「白昼の残月?」
 ウェールズが思わず聞き返した。ショウタロウが頷く。

「そうだ。白昼の残月は、うすぼんやりとして心もとなく見える。月が今にも消えてしまいそうだ。だが、やがてその月は夜を迎え、
ふたたび強く自身を主張し始める。月は満天の星を従え、誰もその存在を無視できなくなる。国を失ったきみたちは、今は日陰の
存在かもしれない。だが、いつか月は輝きだすはずだ。」
 かつて白昼の残月と呼ばれていた男が力強く言う。それは、長い間にたどり着いた思いであった。詳しくはネタバレになるので
言えないが、かつてショウタロウと呼ばれた青年は、自らのあだ名「白昼の残月」に回答を見出していた。
 ウェールズが力強く頷いた。
「そうだ。白昼の残月。……かっこいいなぁ。」
 バビル2世の血で妙な趣味の部分も増幅されたのか、ウェールズ王子は『白昼の残月』なる言葉を大いに気に入ってしまった。
 だからなのか、上半分だけの黒い覆面をかぶり続けているのだろう。

「ビッグ・ファイア様。私は伊達や酔狂で言っているのではありません。私はレコン・キスタどもの影に、なにか巨大な悪の存在を
感じているのです。」
 バビル2世が真顔になった。ウェールズ王子は知らないだろうが、バビル2世はその悪の正体を知っていた。
 ヨミである。
「おそらく我々の力だけではその悪に立ち向かうのは困難でしょう。なにとぞ、お力をお貸しください。」
 深々と頭を下げるウェールズに困惑するバビル2世。困ったように孔明を見ると、孔明は笑みを返してきた。
「お受けなさい、バビル2世様。」
「孔明!?おまえまでそんなことを言うのか?」
「よくお考えください。この世界にはバビルの塔はございませぬ。私が提供できるのはバビルの塔の分析力と、アドバイスだけ。
圧倒的な組織力で戦いを挑んでくるであろうヨミ相手には、残念ながら3つのしもべを合わせて考えても不十分でしょう。ここで
取れる手段はただ一つ。そう、すなわちヨミに対抗できるだけの組織を後ろ盾にするしかありますまい。」
「むむむ」とバビル2世が唸った。
「その点では亡国の王子は非常に役立つことでしょう。その御旗の元に新政権に満足できない人間を集めやすく、再度国を
ひっくり返せば一国の支援を受けることになります。これ以上ない存在だといえるでしょう。」
 しばらく考えていたバビル2世が、「わかった。」と頷いた。

「たしかに孔明の言うとおりだ。ヨミの野望をこのまま放置しておくわけにはいかん。」
「では。」
「ああ、ウェールズ王子。あなたの申し出を引き受けよう。」
 ぱああ、とウェールズ王子の顔が明るくなった。いや、覆面だけど。
「ならばこのウェールズ。今後白昼の残月として忠誠を尽くします。」
 孔明がウェールズ改め残月の傍に寄った。
「よくぞ申された。ならばあなたのその思いに応えましょう。ロデム様、服を。」
 いつの間にかいたロデムが、女官の姿になって、何かを持って静々と進み出た。
 それはスーツと、学帽のような角帽であった。
「こ、これは!?」
「私やバビル2世様の着ている服と、同じ種類のものです。スーツと言いましてな。さあ、召し上がれ。」
 ははっ!と服を受け取って、あっという間の早業で着替えた残月。さらに見るからに怪しくなった。
 まあ、本人が嬉しそうだし、いいか。

「だが、問題なのはレコン・キスタの出方だ。」
 すでに霧もはるか遠い白の国のあるだろう方向を見るバビル2世。
「トリステインに亡命したのはすぐに知られるだろう。なにか策はあるのか?」
 「はい」と笑みも爽やかに答える孔明。
「おそらく、レコン・キスタは此度の敗戦を、「生き残った王党派200の奮戦により甚大な被害が出た」と公式発表するでしょう。
おそらく我々は全滅したということにするのは目に見えております。」
 間違いありません、と残月が相槌を撃つ。
「そこで亡命政権誕生、の報を聞けば連中は行動を起こすことはできなくなるはず。連中の言い分では全滅した人間が生きている
ということになる。攻撃を行えば自分たちの嘘を白状するようなもの。おそらく無視をするでしょう。しかしそのとき国王や皇太子が
表に姿を出していれば、連中は無視できなくなり、暗殺なりトリステインに戦争を仕掛けるなりしてくる可能性は高いでしょう。ここは
ひとつ、重臣の一人を長として亡命政権を打ち立ててはいかがかと。」
「なるほど。連中に無視をする口実を与え、実際は国王の名の元に謀反や裏切り工作をしかけるのか。」
「それはよいかもしれません。父はすでに老齢。反逆者どもから国を取り返す運動を、表に立ってやるわけにはいけません。」
「だがきみはどうする、残月。」

「わたしはすでに死人の身。表ではなく、裏から亡命政権を支えようと思います。」
「ですが、この国の上層部には以上のことは伝えておく必要があるでしょう。でなければ、亡命政権を口実に戦争を仕掛けられると
パニックになって皆様を敵に差し出しかねませぬ。」
「ならルイズがいいだろう。姫様とは仲が良いようだし、直接伝えにいくには適役だ。さあ、いくぞ残月。」
 残月を誘い、ルイズたちのいる部屋に向かおうとするバビル2世。ルイズたちはシエスタの部屋に3人まとめて放り込まれている
はずだ。ギーシュとバビル2世はアルビオンの兵隊5名とショウタロウ老人の家の一室に詰め込まれている。
 ギーシュにはロプロスのことをやかましく聞かれたので、また聞かれるのも面倒だ。ほっておこう。孔明がなんとかするはずだ。
「いえ、バビル2世様。私はアンリエッタの元へいくわけにはいけませぬ。」
 疑問符を浮かべて立ち止まるバビル2世。残月は続けた。
「今の私は死人。そして亡国の王族。このような人間と結婚しても、アンリエッタが不幸になるだけです。会うわけにはいけませぬ。」
 そうか、やはりルイズの持ち帰ろうとしている手紙は恋文だったのか。
「従姉妹には、ウェールズは死んだ、とお伝えください。」
 だが、その目は恋の病に冒された患者のそれであった。なぜか久留間慎一な状態のシエスタを気に入ってしまっていたのである。
というか巨乳の半ズボンにやられた。セーラー服状態を見せたらえらいことになっていた可能性もある。
 バビル2世の血の影響で、じつは浮気性だったのが増幅されたのだろうか?

「うわあああああ!」
 ペドは叫び声をあげて飛び起きた。視界の白い天井と壁と床がぐるっと回転し、天地が正しくなる。
「ゆ、夢か……。」
 ペドは自分の身体を擦った。ここはヨミがアルビオンに作った改造人間研究所の一室である。もっとも今はニューカッスルの戦いで
出た負傷者のための救急病院と化していた。ペドは、比較的早く出たけが人であったため、水のメイジによる治癒魔法の集中と、
サイボーグ手術でなんとか命をとりとめたのであった。後から来た人間は、ペド級の負傷者だと助からないと見捨てられているの
だから、ペドは幸運だと言ってよい。
「まったく。やかましいわね。はいはい、お加減はいかが?」

 呆れたような声を出して入って来たのは、白衣の天使の姿をした……なんとフーケであった。
 ペドの顔の血がスッと失われた。
「貴様か……。」
「貴様か、じゃないわよ。こっちは何の因果か人手が足りないって、こんな格好で衛生兵の真似事をさせられてるのよ?あんな役立
たずをよこしてくれたあんたの面倒なんて、なんて見なくちゃならないのよ。」
 ぶつぶつ言いながら、部屋に入ってくるフーケ。服の効果もあってなんだか可愛いぞ。
「あんたにお客だよ。せっかく案内してきたんだから、すこしは感謝して欲しいわね。」
 快活な、澄んだ声が部屋に入ってきた。
「子爵!ワルド君!やあ、大丈夫かい?手紙は手に入らなかったそうだが、ウェールズは討ち取ったらしいじゃないか。勲一等もの
だよ。もっと嬉しそうな顔をしたまえ。もう痛みだとかはないんだろう?」
 年のころ30代半ば。一見すると聖職者のような格好をしているが、物腰の軽さから軍人のようにさえ思える。高い鷲鼻に、理知的な
光をたたえた碧眼。カールした金髪の上に球帽をかぶっている
「クロムウェル睨下。しかし、任務のうち1つしか成功いたしていません。私のミスは大きいかと……」
「気にするな。確実にウェールズをしとめたことはあらゆる功績においてもっとも大である。理想は着実に、一歩ずつ進むことで達成
される。」
 クロムウェルと呼ばれた男はフーケのほうを見る。
「どうだい、彼女は。以前と変わったところはあるかね?」
「いえ、何も……」
 慇懃に頭を下げるペド。しかし、額には脂汗が浮いている。

 ペドはこの男が蘇らせたという「土くれのフーケ」を横目で睨んだ。恐ろしいことに、以前と全く変わっていないようである。しかも、
死んだときの記憶まで有しているようだ。
 虚無は生命を操る系統。そう言って、クロムウェルはフーケの死体を盗ませて、復活させたのだという。それは、全ての人間は
『虚無』の系統で動くなにかではないか。そう思い、脂汗が耐えなかった。
「ならよい。明日にはヨミ様がご到着なさる。やはりバビル2世の敵はヨミ様でなくてはしまりが悪い。そもそも思うに超能力少年、戦い
挑むは野望の男。宿命運命表裏一体不可避激突、其れもまた良し。」
 おっと、と口を押さえるクロムウェル。
「おっと、つい虚無の魔法の副作用が出てしまった。私はこれで失礼するが希望の歩み也。……また会おう、子爵。」
 部屋を出て行くクロムウェルの影は、なぜかクロムウェル自身よりも小太りであった。
 チリン、と鐘の鳴ったような音がした。



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