あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は神様?-2


ルイズは驚いていた。
自室に戻って、使い魔の名前をあれこれ考えている最中だったのだ。
『それ』は突然声を荒げて使い魔に文句をたれ始め、頭上で真っ赤になって跳ねていた。
(何? 何? 何なのこいつ???)
今の今まで使い魔のそばで転がっていただけだったので気にも留めていなかったが、『それ』はどうやら生物であるようだ。
かなり小さい。真っ赤な体を…いや、淡い緑色に変色している。感情によって発光色が変わるらしかった。
よぉ~く見てみると、それは極小サイズの小人のように見て取れる。
しかも人語を解している。忙しく飛び跳ねながら饒舌に喋っていた。
このような妖精(?)を、ルイズは見たことも聞いたこともなかった。

ぴょんぴょん飛び跳ねていた『それ』は、
「…ところであんたは一体誰なんでィ?」
ルイズにそう問いただしてきた。

………
……


「おいアマ公!
 お前本当に昔あの化け物を退治したのかァ?
 相棒のイザナギがよほど強かったとか、酔わせた酒がやたら強烈だったってオチじゃあねェだろうなァ?」

――場所は神州平原。
風神宮の赤カブトを討ち取ったアマテラスらは、一路神木村へと向かっていた。
アマテラスはイッスンの問いにも耳を傾けずに駆け抜けてゆく。
神木村の守護神木、コノハナさまを祀る神木祭りはもうじきのことであった。

…現状のアマテラスとヤマタノオロチとでは力の差がありすぎた。
現に先ほどオロチの影が現れた際に、アマテラスは何もできずにいたのだ。
百年あまり昔―
オロチをイザナギと共に退治した白野威が世を去った後、物の怪が蔓延り、世は乱れ、神々への信仰は薄れゆき、
復活したアマテラスは全盛期にはとても及ばないほどに力を落としていのだった。
かつて失った筆しらべの力を取り戻しつつあったが、まだ全ての筆神を集められたわけではない。
その力も、かつてのそれとは比べ物にならないほど弱体化していた。
今のアマテラスがオロチとまともにぶつかって、果たして勝ち目はあるのか…
そこで、かつてイザナギがヤマタノオロチを退治した際に使ったとされるお神酒、
八塩折之酒を分けてもらいにいく途上であったのだ。
コノハナさまへ奉げられる八塩折之酒は、いかなる妖怪をも酔わせることができるという霊験あらかたなお神酒。
今一度その八塩折之酒でもって、ヤマタノオロチに立ち向かわんとアマテラスはひた走る。

「しかしよォ…
 ウシワカの野郎に水晶のヘビイチゴは持って行かれちまうし、
 スサノオのおっさんも何やら様子がおかしかったし…
 全く、赤カブトを退治できたってのに幸先悪いねェ。
 まァ。今はンなこたァ置いといて、神木村のお祭りを堪能するとしようかァ」
この分ならば夕刻には村へたどり着けるだろう。
イッスンはクシナダの造った酒の味を想像してゴクリと唾を飲み込む。
神木村のコノハナさまに奉げられるお神酒を、彼はちゃっかり味わう腹づもりらしかった。
サクヤの姉ちゃんを酔わせて云々かんぬんと、何やら善からぬ想像を働かせている模様。


…それはアガタの森が見えた頃に起こった。
アマテラスは小山の頂上から勢いよく跳躍し、空高く舞い上がる。
全身を風が打ち、アマテラスは気持ちよさ気に身を躍らせていた。

が、

突如目の前に現れた鏡のような物体にぎょっと目をむいた。
疑問に思う暇さえなかった。
アマテラスとイッスンはなすすべなく鏡に吸い込まれ、そして―

………
……

「信じられる訳ないでしょう!!」
「だから本当だっつってんだろォこのチンチクリン!」
「あ、あんたねぇ…貴族に向かってなんて口の聞き方なのよ!」
目覚めたイッスンは見た目美少女の異国人と意見交換を交わした結果…
案の定口論となっていた。

イッスンはまず現状の把握に努めた。
まずこの目の前に居るやたら高圧的な異国人の女の名はルイズ。
そしてここはハルケギニアの、トリステイン王国の、トリステイン魔法学院であるという事。
アマテラスと自分は、ルイズのサモン・サーヴァントによって召喚され、
しかもアマテラスはすでにルイズと契約を交わしてしまったという事。

訳の分からない事ばかりのたまうルイズをイッスンは一笑し、
「寝惚けた事を言うなィ、いいからここはナカツクニのどの―」
そう言いかけて、イッスンは停止した。
窓の空向こうに浮かぶお月様を見てしまったのである。

ルイズはルイズでイッスンの説明を受けて爆笑していた。
まず判明したこと。
この犬の名はアマテラス、ちっこい小人はイッスンという名の旅絵師であるという事。
そして二人はナカツクニという緑溢るる美しい国にいた、というのである。
『ヤマタノオロチ』だの『カミキムラ』だの、ルイズには何一つ聞き覚えのない単語ばかりが飛んだ。
しかし極めつけはこれだ。
なんとこの犬が神様だというのだ。
ルイズは笑った笑った。
「こっ、こんなの神様だっていうの?
 あんたの世界は随分おかしなか、神様がいるのね…」
まだ肩をひくつかせている、相当ツボにハマったらしい
「…信じてやがらねェなおめェ」

「というかね」
ひとしきり笑ってようやく収まったらしいルイズはアマテラスを指差し、
「こんな呆けた顔の神様がいるわけないじゃない」

ちなみに当のアマテラスはそ知らぬ顔で眠りこけていた。
異世界に飛ばされた事は、本人にとってはとるにたらぬ些事らしい。
ナカツクニはどうでもいいのか? おい?


「とにかく! オイラたちゃやらなきゃならねェことが山ほどあるんだよォ!
 今すぐナカツクニに返しやがれェ!」
「…ムリよ、サモン・サーヴァントは使い魔を呼び出すだけの儀式だもの。
 送り返すなんて真似はできないわ、
 そもそもそんな異世界のことなんて聞いた事もないし、
 大体あんたたち自分の意思であのゲートくぐって来たんでしょう?」
「ふざけんなァ!
 あんな身動きもとれねェような状態で突っ込ませといて意思もクソもあるかァ!!」
真っ赤になってイッスンが叫ぶ。
あれを『自分の意思』とされてはたまったものではない。回避の選択肢すらなかったのだ。
「元の世界に帰る方法は?」
「知らない」
「どういう理由でオイラたちが召喚されたんだよォ?」
「知らないわよ、そもそもサモン・サーヴァントはハルケギニアの生き物を呼び出す魔法なのよ?」
「元の世界に返せ」
「だからムリだと(ry」
五月蝿げにアマテラスが顔をそらす。
二人の言い争いは続く。

「あのねぇ、そいつは私の使い魔になったんだから、今更何を言おうが手遅れよ。
 勝手なことしないで」
「ケッ、誰がおめェさんの使い魔なんざになったりするかよォ!
 アマ公、いくぞ!」
いつもの定位置に収まり、アマテラスを促すイッスン。
が…アマテラスは微動だにしない。
「…どうも『私の使い魔』はここを出てく気はないみたいだけど?」
ことさら『私の使い魔』を強調するルイズ。
「おい! …アマ公、お前まさかこのチビ助の下僕に成り下がるつもりじゃねェだろうなァ?」
「誰がチビ助よっ!」

「お前はだァってろィッ!!!!」

イッスンの剣幕に一歩後じさるルイズ。
「アマ公、耳かっぽじってよォ~く聞きやがれェ!
 今ナカツクニはなァ、復活したオロチの脅威に晒されてンだぞォ!?
 事の重大性を理解してるのかよォおめェは!
 こんなとこで足止め食ってる時間はねェンだよォ!
 ほれ、行くぞッ!!」
…茶化せない真剣な空気だった。
アマテラスがゆっくりとイッスンに向き直る。
その顔は「何も案ずる事はない」とでも言いたげであった。
「………………」

こいつと一緒に旅をして分かった事がある。
こいつはポァっとしているように見えて自分のやるべき事、成すべき事をしっかり理解している。
そしてその行動に間違いなど一つとしてなかった。
賽の芽を蘇らせ、幾多の妖怪を打ち払い、散り散りになった筆神をその身にとり戻しつつここまでやってきたのだ。
ならば今回の件も…そういうことなのかも知れない。
落ち着きはらっている点を見るに、こいつには帰る当てがあるのだろう。
たぶん。
おそらく。

「………………………………ケッ、ったく!
 わァったよ! 付き合えばいいンだろォ付き合えばァ?
 もう好きにしやがれェ!」
こうしてイッスンは折れた。
アマ公に本当に大丈夫なんだろうなァ?と念を押して。
全くの無反応だったが。

………
……

「…でよォ?
 その使い魔ってのは具体的に何をするもんなんだァ?」
「…へ? あ、ああうん。使い魔は…まず主人の目となり耳となる能力を与えられるの」
「どういうことだァ?」
「使い魔が見た事、聞いた事を、主人も共有できるのよ」
「ほォ~、そいつァ便利だねェ」
「でも私、なにも見えてこないんですけど」
「他には?」
「雑用とかまぁ色々あるけど一番重要なのはこれ、
 外敵から主人を守護すること!
 使い魔は自身の能力でもって主人を命を賭して守るのよ」
「…要するによくできた従者みてェなもんなんじゃねェか」
「ま、やる事はあまり変わらないわね。
 従者との違いは、『使い魔は終生主に付き従う』って点かしら?」
「おいおいおいおいおい!
 オイラたちゃ帰るべき世界があるって言ってンだろォ?
 いつまでここに居る事になるんだかわかンねェが、死ぬまでおめェさんと一緒になんざいられねェっての!」
「別にあんたに言ってる訳じゃないわよ、私の使い魔はアマテラスだもの。そうよね?」
と、ルイズは己が使い魔に目配せする。
が、アマテラスは露骨に目を反らしやがった!

「ちょ、ちょっとあんた! 私を主として認めたんじゃなかったの!?」
今の反応でイッスンは確信する。
アマ公はナカツクニに帰る方法を知っているのだ。
「プフフフフ! 残念だったなァ嬢ちゃん?
 アマ公のやつァおめェさんと一生を共にはできねェそうだぜ?」
「何でよ! なにが不満なのよ!?」
「大体なァ、考えてもみねェ嬢ちゃん。
 いきなり有無を言わさず異世界に召喚されて
 しかも訳の分からん奴に自分に仕えろとか言われておめェさん承諾できるのかィ?
 誰だって元居た世界に帰りたいって思うだろォ?」
「………………」
少し冷静になるルイズ。
イッスンの言うことは、当然と言えば当然のことだった。

仮に、
仮にだがもし自分が召喚されたとして、異世界に飛ばされてしまったら…?
…論外だ。
そんな世界など行きたくもなかった。
…魔法も使えず、ゼロと蔑まされて、学院での生活は正直楽しいものとは言えないけれど、
この世界には家族がいて、大切な人がいるのだ。
それは、アマテラスとイッスンも同じなのだろう。

「…………はぁ…分かったわよ。
 ただし! あんたたちが元の世界に戻るまではみっちり働いてもらうからね!」
「みっちりって…嬢ちゃんあんたそんなに敵に狙われてンのかァ?」
「そんなわけないでしょ!
 基本的には私の使い魔として、恥じない立ち振るまいをしていればいいわ。
 私に恥をかかせるような真似をしたら承知しないんだから!」
「…………」
イッスンは少しだけルイズに同情した。
そんなのこいつに期待できるわけねェだろ…

「そういえばさ」
アマテラスの頭をポフポフ撫でるルイズ。
「あン?」
「…アマテラスはえっと、その、強いの?」
ルイズはかねてからの疑問を問うてみた。
呼び出してからこっち、そのことばかり気にしていたのだ。
ぶっちゃけ、あまり強そうには見えないが…
「ヘヘッ、アマ公の実力を舐めんなよォ?
 そんちょそこらの妖怪ごときじゃあ傷一つ付けられやしねェぜ!」
実際そんなこともないのだが虚勢をはるイッスン。
しかし全盛期とは比べるべくもないが、それでもアマテラスは強力な使い魔と言えよう。
「ふ~ん…」
やや疑わしいがそれなりに力を持った犬っころではあるらしい。
神様云々は微塵も信じていないルイズではあったが、唯の犬ではないのだろう。
少なくとも使い魔云々で級友連中にバカにされることはないかな…とルイズは思った。
翌日即撤回することになるが。

「…まぁいいわ。今日はもう寝ましょう。
 いい加減眠くなってきたわ」
もう夜も深い時間帯だ、そろそろ寝なければ明日に響く。
「オイラたちゃどこで寝ればいいんだァ?」
「あんたたちは隅っこの方で寝なさい。
 明日になったら藁の寝床、用意してあげるから」
どうも思いのほか手触りがよろしかったようで、アマテラスの頭をまだ撫で続けている。
ルイズはアマテラスの両の目をしっかりと見据えて、言った。

「いい?
 あんたが元の世界に帰るまで、私が面倒見てあげる。
 だからその時が来るまでは、あんたは私の使い魔よ?」


新着情報

取得中です。