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ゼロの赤ずきん-11


フーケは、杖を取り出すために、懐に入れようとしていた手を、その頭上高く上げた。

「まいった。降参だよ。抵抗はしない。……『破壊の杖』を学院から盗んだのは、この私。
 つまり、ミス・ロングビルというは偽りの姿で、その正体は『土くれ』のフーケってことさ。
 ……ぉおっと、危害は加えないでおくれよ、抵抗の意思を表してない相手に暴力をふるっちゃ名分が立たないんじゃないかい?」
最後の部分は、学院関係者に向けたものというよりも、自分の手を握ってる少女に対しての言葉であった。

その言葉に、ミス・ロングビルだったころの、丁寧さはない。目は猛禽類のごとく、つり上がって鋭くなった。
「そんなっ!!!バカなっ!!!」
まさかの事態に、その場にいる全員が驚いた。
フーケ自身も、割り切れない気持ちであった。
まるで、ゲームが始まった瞬間にチェックメイトされたようなものであったから仕方なかった。
だが、降参したのは、本当にこれしか可能性がなかったからなのだ。そう……あの赤ずきんは……。

オスマン氏は、宝物庫で騒ぎ続ける、教師たちを一喝し黙らせたのちに、静かにそしてどこか悲しげに言い放った。

「……杖を取り上げなさい」

フーケは、微塵も抵抗する素振りを見せずにそれを応じた。
「あのさ、赤ずきんの譲ちゃん。手を離してくれると嬉しいんだけど。痺れて手の感覚がなくなりそうなのさ、頼むよ」
バレッタは訝しげな顔をフーケに向けるが、ゆっくりと相手の挙動を伺いながら、手を離した。
フーケはバレッタ以外に聞こえぬように密やかに喋りかけた。
「ありがとうさん。そして、よくもやってくれたね、このクソずきん」
最後の部分は掃き捨てるようにフーケ言った。
「どーも。でも、こちらこそ、よ?」
ニヤりと意地の悪い笑みを浮かべてバレッタはそう言った。
オスマン氏は尋ねた。
「して、『破壊の杖』は、何処にあるのかの?ミス・ロング……いや、『土くれ』のフーケ」
ふん、と鼻を鳴らして、不機嫌そうにフーケは言った。
「さっき、私がフーケの隠れ家かもしれないって言ってたところさ、そこまでの道のりは、そんなに複雑じゃないから、
 口頭の説明だけで十分なはずよ、わざわざ連れ回さないおくれよ」
フーケが道順を説明すると、オスマン氏は手ごろな教師をあてがって、取りに行くように命じる。
言いつけられた教師が、『破壊の杖』を取りに向かおうとした時、バレッタが呼び止めた。
「あぁーとっ。せんせっ?『破壊の杖』は、その隠れ家の裏に隠してあるから、そこを注意してね?」
その言葉を聞くと目を丸くしたフーケは言った。
「やっぱり……つけてやがったのね。ふう、なんでわざわざ隠したんだい、家に入ったら、すぐわかるように置いてたんだけど?」

「おねぇちゃんに、もし仲間がいると仮定して、あの場所が、引渡し所みたいなものだとしたら、
 おねぇちゃんを捕まえても『破壊の杖』が戻ってこないでしょ?持ち帰ってくるのは、しんどいからやんなかったけど」

「……やれやれ、仲間なんていないんだけどね。まあ、とんだもんに目をつけられたもんだ。
 そういや、早く私を、連行しなくていいのかい?オールド・オスマン校長?」

思い出したようにオスマン氏は言った。
「おお、そうじゃな。……誰か、フーケを連行しなさい」
二人の教師の手によって、フーケは連行された。
その姿をルイズ達や教師は見送った。

騒動が終着をみせ、一段落ついた頃、ルイズとキュルケとタバサそして、バレッタは学院長室に集められていた。
学院長室に備えられた椅子に深々と腰をかけたオスマン氏は、窓から見える景色をぼんやりと眺めている。
整列している生徒達に向き直ると、オスマン氏は重々しく喋り始めた。

「フーケについてだが、宮廷に報告を済ませて置いたから、今日中にも城の衛士が、身柄を引き取りに来るじゃろうて。
 だが、まさか、ミス・ロングビルがフーケだとはのう……まったく思慮外であったと認めざるを得ないな」

「ええ、仰るとおりです。私も、なんというか……未だに信じられない気持ちで……」
オスマン氏の横に控えるように立っているコルベールがそう答えた。

「そうじゃ、誰もミス・ロングビルがフーケだとは気づいていなかった。微塵もだ
 そこで、ミス・バレッタじゃ。おぬし、宝物庫に入ってくる前から、犯人の正体を知っておったな?
 何故に、ミス・ロングビルが『土くれ』フーケだとわかったのじゃ?それを我々に説明してくれないかの?」

バレッタは軽い口調で答えた。

「カンタンなことよっ。昨日の夜、宝物庫襲撃があった後ね、逃げよーとしていたフーケを単身追跡したの。一晩中よ、一晩中っ!
 ホントーに疲れたんだからぁ。でね、フーケが、隠れ家って言ってた所についたら、中に入っていったの。
 そして出てきた時には、変装を解いて、来た道をそのまま帰り始めたってわけ。
 あっっれー、これはオッカシイなぁーってことで、杖を隠した後、追跡を続けたの、そしたら学院に戻ろうとしてるじゃない?
 それで、内部犯だって予想がついたのよ。まぁー、どんな思惑があったのかまでは知らなかったわ。
 でも、宝物庫に入っていって色々話ししてるじゃないっ?仕掛けるなら今しかないと思って、行動に移したまでよっ♪」

「ふむ、なるほどのう。そうであったか。さすがはガンダー……ゴホッ、いやなんでもない……。
 それでふと、疑問に思ったんじゃが、おぬしなら、追跡途中で、フーケを捕まえることも可能であったのではないか?」

「それは、カンタンな話しよぉー。だって、事件の全容が明らかになってないのに、『ハイ、コイツが犯人です』って
 突き出しても、なんとも実感が沸かないというか、理解しようとするだけで精一杯になって、
 ありがたみがないでしょ?まあ、そういう思惑があって、当初、本来予定していたのは、
 追跡途中でふんじばって、必要になる時まで、そこらへんに放置しておくことだったんだけど、
 成り行き上、内部犯ってわかったから、逃げられる心配は少なくなったでしょ。だから無理して捕まえなかったの。
 それと、これが一番重要なことだったんだけど。平民には報酬がでないかもしれないってのがネックだったのよ。
 だから、捕まえる前に、ちゃんと、お金の約束を取り付けとかなきゃいけなかったってワケ。わかったぁ?」

「これは、これは……なんとも計算高い。脱帽じゃのう。ああ、ミスタ・コルベール。脱毛じゃないぞよ、気にするでないぞ」
コルベールは冷ややかに言い放った。
「もういいです、学院長……まったく、秘書を連れてきたのはあなたでしょう、その責任について言及しますよ?」
「はて?なんのことじゃったかな?」
オスマン氏は急にボケたように振る舞い、誤魔化した。

感心したような、はたまた呆れたような響きの声でキュルケがバレッタに言った。

「なるほどねぇー、あなた、あの後、姿が見えないと思ったらそんなことしてたのね、ルイズは何も教えてくれなかったし。
 でもねー、あたし張り切ってたのよ?なのに、こんな結末じゃあ、なんか肩透かしをくらったようで気分が晴れないわ」

半分呆れたようにバレッタは述べた。
「おねぇちゃん達はフーケに騙されて連れて行かれるところだったのよっ?つまり、100パーセント罠だったワケ。
 なら、それを、未然に防いであげたんだから、わたしが助けたことにならない?
 別に、感謝はしなくていいけど、謝礼は欲しいくらいよぉ?」

「アハハハハ……そうね、考えておくわ」
キュルケは乾いた笑い声を上げた。

「まったく、この使い魔は、これだから……」
そう言いながらも、どこか嬉しそうなルイズであった。
「なるほどのう。大体のことはわかった。今はこれでよいとしよう。
 で、だ。結果的には捜索隊を組んだものの、その任務果たす前に、ミス・ヴァリエールの使い魔、
 ミス・バレッタの手柄によってフーケを捕まえるに至ったのだが……。
 君達生徒が、捜索隊に志願してくれたことに関しては、私個人からではあるが、賞賛の意を表したい。
 なにせ、本来進んで名乗り出るのが当然であるはずの教師達を尻目に、志願してくれたのじゃからな。
 真に、勇気ある行動であった。うむ、私は嬉しいぞ。本当なら、勲章をやってもよいと、私は思うのだがな。スマヌな」

オスマン氏に、一言謝辞を述べ、恭しくルイズ達は礼をした。
「うむ。さてと、今日の夜は、『フリッグの舞踏会』じゃ。『破壊の杖』も無事に戻ってくることだし。予定通り執り行う。
 今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意しておくのだ。せいぜい着飾るのじゃぞ。」
三人は礼をするとドアに向かった。
しかし、バレッタはその場を動かない。その様子を見たルイズは尋ねた。
「どうしたの?行かないの?、バレッタ」
「ルイズおねぇちゃん達は行っててもらえるっ?ちょっとわたしは、このおじいちゃん達にお話があるから」
少し黙って考えたのち、ルイズは答えた。
「……わかったわ。でも失礼のないようにね。それと、フリッグの舞踏会には来なさいよ。私も話すことがあるから。大事なことよ」
「あぁ?そう……。まあ、気が向いたらねぇ」

部屋には、オスマン氏とコルベール。そしてバレッタだけになった。
「何か聞きたいことでもあるのかの?答えられる類のものなら答えよう。恩もあるしの」
今さっきまでの、少女らしさを排除したバレッタが言った。

「これよ、コレ」

バレッタの言っているのは、左手の甲のルーンについてだった。
それはかつて、ルイズとの使い魔契約の際、刻まれたたもの。
「これについて、あんたたち何か知ってるんじゃないのっ?そっちのハゲに関しては、わたしを見るなり、チラチラと
 この手にある文字みたいなのに目をやってたし。どうなの?」
オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。そして話すべきかどうか悩んだ。
だが、当人であるのに、それを知らないのはどうかと思われたので、二人はバレッタに話すことを決意した。
「いいじゃろう。その手に刻まれたルーンについてわかっている話そう。
 だが、私達も半信半疑であることを、まず知っておいてもらいたい。それでもいいなら……」
「いいわよ、べつに」
オスマン氏はコホンと咳払いをすると、語り始めた。
「その印は、ガンダールヴの印。伝説の使い魔の印じゃ。その印を持った使い魔はあらゆる武器を使いこなしたという」
「……ふーん、ガンダールヴねぇ」
バレッタがこのルーンについて聞いたのは理由があった。

それは、バレッタが、フーケを追跡し始めた頃に遡る。
昨晩、闇夜に紛れ、森の木々の間を縫って、宙を飛ぶフーケの幽かな陰影を正確に見定め、
ハンターとしての能力を遺憾なく発揮し、フーケの後を追っていたバレッタ。
その最中、度々、追跡者がいないかどうか、周りを警戒するためにフーケが止まっているとき、
バレッタは、草陰で、呼吸音や衣擦れの音すらたてず、気配も完全に殺して潜んでいた。

その時、突然、左手の甲のルーンが光り始めたのだ。
フーケに気取られぬように潜んでいたバレッタは心底驚いた。その拍子に握っていた武器を落としてしまったのだが、
それと同時に、ルーンの輝きは失せただった。
そのことで、バレッタは光った原因が武器を持っていたことに起因していたのに気がついた。
恐る恐る、再び武器を持つと、また光り始めた。そうすると、先ほどとは違い、あることも理解できた。
ルーンが光りだした途端、体が羽のように軽くなったのを感じたのだ。
まるで、自分の身体能力が底上げされたような感覚であった。否、実際にも能力は上がっていた。
まず、バレッタはそれが、何なのか見定めた。そして何故、今までは、このようなことが起こらなかったのか。

答えは簡単であった。
それは、バレッタはこの世界に来てから、始めて、本格的な“ハント”。つまり、狩りに相対したことにより、
バレッタ自身の感情が高ぶっていたのことからわかる。
つまりは、バレッタ自身の感情によって左右されるというのが答えだった。
それが、わかると、次にバレッタが考えたのは、この能力を、安全に、そして有効に使えるかどうかであった。
何度か試し、体に害がないとわかると、その能力を、目の前の任務、フーケ追跡に余すことなく利用した。
身体能力が上がったことにより、追跡の速度は格段に増した。無論、バレッタ自身も驚きを隠せない。
元々、追跡などは、バレッタの本分に則するもので、得意中と得意とするものであったが、
魔法を使い、飛ぶことができる相手、元々、追跡の成功率は、あまり高くなかったのだから驚いて当然である。
それに、加え長時間となれば、さらに成功の可能性は落ちる。
しかし、追跡は成功した。

その成功の裏には、ルーンの力が大きく関わっていた。
だからこそ、バレッタは、このルーンの正体について、知りたがったのだった。

「そのルーンがどうかしたのかね?」
コルベールが興奮したように、口を挟んだ。
「まさかっ!特別な能力が、そのルーンに備わっていたのでは!?それならば、ぜひ、教えて欲しいですぞ!
 そのルーンに関しては、ガンダールヴの印であることぐらいしか我々は知らないのですから!」
バレッタは左手をプラプラさせて言った。

「いーえ。そんなのないわよ。何で聞いたのかっていうのはね。このルーンが光ったからよ。ただそれだけ。
 まあ、懐中電灯代わりになって、足元を照らしてくれてねぇ、助かったのよ。それで気になったの。」

まさか、懐中電灯呼ばわりされるとは思っていなかった、伝説のガンダールヴのルーンであった。

「かいちゅうでんとう……なんですかなそれは」
「ああ、気にしないでぇ」
バレッタが、身体能力が上がったことを話さなかった理由。
それは、正体は知りたいとは言ったが、この二人が深いところまで知らぬようであったからだ。
ならば、この能力は秘匿にしておくのに越したことはない。特に戦闘では、こういうものは隠しておいたほうが役に立つ。
「それで、次なんだけど『破壊の杖』についてよ。アレの出所についてよ」
「あれか、あれはのう。30年前、命の恩人が持っていたものなのじゃ。その恩人は死んでしまったがのう、
 なにやら死ぬ間際、しきりに『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と言っておったが。あれは一体なんだったのかのう?
 もしや、おぬし、『破壊の杖』について何か知っておったのか?実のところ、使い方も、あれが何であるかもよくわからぬのだ」
だが、自分から聞いたにもかかわらず、バレッタは、話をそこで断ち切った。
「あぁーいや、もーいーや、この話は」
「……?」
『破壊の杖』。その実態は“M72ロケットランチャー”。バレッタがいた人間界にもあったものだ。
それを知ったバレッタは、今手元にある装備品の補充の可能性をみた。
だが、自分と同じような境遇でよび出された人間が持っていたとなれば、あまり意味は成さない。
だから、話を聞く必要はなくなったのだった。
「聞きたいことはこれで全部かの」

「ええ。そうねっ。まぁーこんなもんねぇ。答えてくれたお礼として、お金は許容範囲内の期限で待ってあげる♪」

忘れかけていた、バレッタとの個人的な金銭の約束をオスマン氏は思い出した。
「おお、そうじゃ、忘れるところであった。へそくりから工面せんとなぁ、それは少し待っておいてくれ。……それと最後に」
一際大きな咳払いをオスマンはすると、真剣な表情でバレッタに問いかけた。

「大事なことを、おぬしに聞く。おぬし、使い魔バレッタは、主人ミス・ヴァリエールに従う気はあるのかね?」

オスマン氏の問いにバレッタは即答した。

「ないよっ。 まったく、これっぽっちもォ。つか、なんで従わなきゃいけないのぉ?タダ働きはだーいキッライよっ♪」

まるで、それが必然の理のように言い切ったバレッタに、オスマン氏とコルベールは逡巡した。

こんな使い魔が、存在するのだろうか。いや、存在していいのだろうか。
使い魔は本来、主人に尽くして然るべき存在なのでは。
なのに、目の前の少女の言葉には主人であるメイジへの気遣いが、砂粒ほども感じられない。

コルベールが我慢しきれなくなり、疑問をバレッタにぶつけた。
「じゃあ、何のために……!!?」

「何のために?そんなの決まってるじゃない。わたし夢があるの。それのためにしかわたしは動かないの。
 ……どんな夢かって?ダーメ、教えてあげなーい。……じゃっ、用は済んだから、バイバーイ♪」

にこやかにそう言い放つと、手を振りながら、バレッタは部屋を出て行った。

「……ああいった人間はなんといったらよいのか、そうだのう……『 唯一不動の存在 』とでも言ったらよいのだろうか、
 誰にも、どんなものに対しても、染まらぬ、『黒色』のような存在。
 ミス・ヴァリエールはとんでもない相手を使い魔にしたもんじゃ。あれは手懐けるには骨じゃぞ……。
 だが、伝説の使い魔ガンダールヴを召喚したメイジであるならば、もしかしや……」
コルベールはため息をついて言った。
「しかし、結局我々は見守ることしか出来ないのですね……」
「そうじゃの、その通りじゃ。これは当人同士で解決せねばならぬ問題じゃ。本人達に委ねるしかあるまいて」
オスマン氏は窓から見える景色に目をやった。

願わくば、全ての事が好転してくれれば、よいのだが……そんな考えは幻想であろうか。


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