あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

スナイピング ゼロ-08



「あぁルイズ、懐かしいルイズ!」
「いけません姫様、こんな下賤な所にいらっしゃっては!」
 アンリエッタは歓喜の笑顔を浮かべ、勢いよくルイズに抱き付いた。膝をついていたルイズは、そのまま仰向けに
引っ繰り返ってしまう。

「止めてルイズ、そんな堅苦しい行儀は! 貴女と私は立場を超えた、お友達じゃないの!」
「私などには勿体無い言葉です、姫殿下」
「ここには枢機卿も母上も、甘い汁を吸おうと寄ってくる宮廷貴族もいないのです。私にとって心を許せるのは一人だけ、
ルイズだけよ。そのルイズにまで余所余所しい態度をとられたら、私は・・・」

 そう言うとアンリエッタは膝をつき、目に涙を浮かべる。衝撃のスクープ映像に、セラスは驚いた。リップは懐をゴソゴソ
しているが、カメラを持っていない事に気付き残念そうにしている。ルイズがハンカチを取り出し、手渡した。

「その通りです、私と殿下はお友達。宮廷の中庭で蝶を追いかけたり、クリーム菓子を取り合って掴み合ったりしてた時から、
それは変わっていません」
「ありがとう、ルイズ。あ、そう言えば私達が『アミアンの包囲戦』と呼んでいた一戦は覚えてるかしら?」
「姫様の寝室でドレスを奪い合った時ですね、勿論覚えています。どちらが姫の役をするかで揉めて取っ組み合いになって、
姫様のボディー・ブロー → ガゼルパンチ → デンプシー・ロールの3連コンボで私は気絶しちゃって」
「そして私が椅子に座って真っ白になってた所を侍従のラ・ポルトに見つかって大騒ぎになったのよね、あははははは」

 とても子供同士の喧嘩とは思えない昔話に、セラスは呆れた顔で見つめていた。隣ではリップが口元に手を当ててクスクス
と笑っている。そこで気になった事を、セラスは尋ねた。

「あの、マスター。その、王女様とはどう言う関係で?」
「姫様が幼少の頃に、遊び相手をさせていただいたのよ」
 ルイズは懐かしむように答えると、アンリエッタに向き直った。

「でも驚いたわ、ルイズがそんな昔の事を覚えてくれていたなんて・・・私の事など、とっくに忘れていると思ってた」
「何を言います姫様、忘れる訳など決してありえません! 悩みなど無い楽しい日々は、今も記憶に深く刻まれています!」


それを聞くと、アンリエッタは立ち上がった。ベットに腰掛け、溜息をつく。
「貴女が羨ましいわルイズ、自由って素晴らしいわね」
「何をおっしゃいます、姫様は王女じゃないですか!」
「王国に生まれた姫など、良いものではありません。籠に飼われた鳥も同然、飼い主の機嫌で右に行ったり左に行ったり」
 アンリエッタは月を見上げながら、もの悲しげに言った。そしてルイズに振り返ると、手を握る。

「実は私、結婚する事にしたの。相手はゲルマニアの皇帝、アルブレヒト三世」
「ゲルマニア!? 何故ですか、何故あのような成り上がり共の国に!」
「あの、マスター」
「何よセラス、今は話中よ」
「そんなに大声を出すと、隣に聞こえちゃうんじゃ・・・」
 ハッとして、ルイズはドアを見る。数秒ほど待つが、隣人から反応は無い。どうやら外出中らしい。一安心すると、
ルイズはアンリエッタに顔を戻す。

「すいません、失礼をば。えっと、どこまで話しましたっけ?」
「皇帝に嫁ぐ所までよ、ルイズ。でも仕方が無いの、同盟を結ぶためだから。それよりルイズ、そちらはどちら様なの?」
 そこで初めて、アンリエッタは二人に目を向けた。二人は黙って、アンリエッタを見つめ返す。

「二人は私の使い魔です、姫様。赤い服がセラス、黒い服がリップです。女王陛下の前よ、眼鏡を外しなさいリップ」
 いい加減な説明をされながら、リップは眼鏡を外す。アンリエッタは二人を見ると、キョトンとした目でルイズに向き直る。

「魔乳と乙女にしか見えませんが・・・」
「魔乳と乙女です、姫様」
 セラスとリップが並んで、軽く一礼する。それを見ると、アンリエッタは小さく笑った。

「貴女って昔から変わってるなって思ってたけど、相変わらずみたいねルイズ。人を使い魔にするなんて、初めて聞くわ」
(本当は人じゃなくて吸血鬼なんです・・・でも黙っとこ)
 そう思っていると、アンリエッタは溜息をもらした。気になったルイズは、声をかける。

「姫様、どうかなさいましたか? なんだか、元気が無いように見えますが」
「・・・実は今日ルイズには、頼み事が有って来たの。とある人から、手紙を受け取る任務を受けてもらうために」

「手紙・・・ですか? えっと、因みに手紙の持ち主は今どこに?」
「持ち主はウェールズ皇太子、場所はアルビオンのニューカッスル城です」
「皇太子って、あのプリンス・オブ・ウェールズ様がですか!?」
「そうです。現在のアルビオンの政治情勢は、ルイズも知っていますね」

 ルイズは即座に頷く、知らない者などいない。今アルビオンでは王党派と貴族派による戦争が起こっており、すぐにでも
反乱軍が勝利を収めそうだ。もし王室が倒されれば、次はトリステインに侵攻してくると言う噂も出ている。

「そのために、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶ事にしたのです。ですが、その同盟を妨げる材料が一つあります。
それが、ウェールズ皇太子が持つ手紙。それは、私が以前にしたためた物なのです・・・」
「姫様が、ですか・・・。どんな内容の、手紙なのでしょう?」
「それは機密です。ですが手紙をアルビオンに奪われたら、婚姻は解消され同盟が破棄されるのは間違い無い。そうなると、
トリステインだけでアルビオンに対抗しなくてなりません」 
 言い終えると、アンリエッタはベットに座ったまま両手で顔を覆った。ルイズはドンと胸を叩いて、声高に宣言する。

「お任せ下さい姫様、地獄の釜や竜のアギトの中に入る・・・のは流石に無理ですが、手紙を受け取るくらいは容易い事です。
 このルイズ・フランソワーズ、必ずや任務を遂行してみせます!」
 セラスはビクッと体を震わせると、主人を見つめる。リップは壁際に座り、王女を見つめる。二人の脳内では弱々しい声で
『マジですか?』と弱音が浮かんでいる。

「引き受けて、くれるんですか? この私の、力になってくれますか?」
「はい! なにせ私には、『土くれのフーケ』を捕らえた優秀な使い魔がいますから!」
「これが、誠の友情と忠誠なのですね。感謝するわ、ルイズ・フランソワーズ」
アンリエッタは立ち上がると、セラスの前に立つ。ゆっくりと手を掴むと、明るい声で言った。

「頼もしい使い魔さん、どうか私の友達をよろしくお願いしますね」
「え・・・あ、はい。よろしく、お願いします」
 曖昧に返事をし、差し出された左手の甲に牙を見られないよう口付けをする。リップにも言葉を交わし、口づけをした。


その時、ドアの向こうから笑い声が響いてきた。キザッたらしい声に振り向くと、ドアが勢いよく開かれる。
「その任務、このギーシュ・ド・グラモンにも参加させていただこうじゃないか!」
「ギーシュ、あんた盗み聞きしてたの!?」
 現れたのは、以前モンモランシーにフラれてセラスと決闘したギーシュだった。薔薇の造花を銜えたまま、器用に
喋り始める。

「姫殿下、是非とも我がギーシュ・ド・グラモンを任務に加えていただけないでしょうか?」
「グラモン? と言うと、あのグラモン元帥の」
「息子でございます、殿下」
ギーシュが立ち上がって一例すると、アンリエッタは優しく微笑んだ。

「貴方も私の力になってくださるのね、お父様の血を受け継いで勇敢だわ。お願いします、この不幸な姫を助けて下さい」
「ありがとうございます殿下、名を呼んでくださって歓喜の極み!」
 ギーシュは感動の余り、両膝をつけて両手を天に仰いだ。『映画プラトーンのようだ』とは、セラスの感想である。

「大丈夫なの、この子は?」
 さっきまで黙っていたリップが、口を挟む。目線の先には、仰向けで気絶したギーシュの姿が。ルイズの指示で、セラスが
廊下に引きずり出す。

「では明日の朝、アルビオンへ出発します。」
「道中は危険に満ちていますから、気をつけて行動してください。アルビオン派の者達には、決して捕まらないように。
もし捕まったら拷問によって情報を吐かされ、消されてしまいますからね」
 そう言うとアンリエッタは机に座り、手紙を書き始めた。手を止める事無く最後の一行を書き終えると、杖を振って封蝋
をし花王を押す。手紙を掴むと、ルイズに手渡した。

「ウェールズ皇太子に面会できたら、この手紙を渡してください。目的の手紙と交換してもらえるはずです」
 ルイズが了解の意思を示すと、アンリエッタは右手の薬指から指輪を抜き取りルイズに手渡した。

「『水のルビー』です、お守りに付けていなさい。この指輪が、貴女達をアルビオンの荒ぶる風から守る事でしょう」


 翌日の朝、セラスとリップは塔の壁に寄り添い、隣合って座っていた。ルイズは馬小屋で、人数分の馬に鞍を付けている。
ギーシュは出発の準備に手間取っているのか、まだ来ていない。

「何か、変ですね・・・」
「何が?」
 空を見上げていたセラスの質問に、リップは聞き返す。

「綺麗な空に、綺麗な太陽。まるで、何処かのリゾートみたいだなって思って」
「・・・確かに」
 リップの返答に、セラスは再び空を見上げる。

「来たの間違いですかね?」
 自分の意思で召喚された訳では無いのだが、セラスはそう言った。懐から弾丸を取り出し、リップは面倒臭そうに答える。

「私がどう思おうが、関係無いわ。いったん闘争が始まってしまえば、任務だの何だの・・・どうでもよくなるから」
 指先で弄びながら、じっと弾丸を見つめている。

「とにかく、任務を果たしたいです」
「・・・気を抜かずに、主人を生かして連れ帰らないとね」
 マスケット銃を正面に構え、リップは笑みを浮かべた。ハルコンネンと共にセラスの背中に背負われたデルフリンガーは、
黙って二人の会話に耳を傾けている。そうしていると、ギーシュが塔の入り口から走り出て来た。

「やあ待たせたね、ちょっと身だしなみに時間が掛かってしまって」
 そう言った割には、外見に目だった変化は無い。違う所と言えば、靴が乗馬用なくらいだ。
その時、馬小屋からルイズの悲鳴が響いた。セラスは即座に立ち上がり、主人の元へと走る。

「ちょっと、どこ触ってるのよ! や、離しなさいよ!」
「どうしたんですかマスターって、何ですかソレ!?」
 そこには巨大なモグラに押し倒される、ルイズの姿が。セラスの後を追って馬小屋に入ったギーシュは、爽やかな笑みを
浮かべながらモグラをルイズから引き離す。

「紹介しよう、僕の使い魔ジャイアントモールのヴェルダンデだ。ヴェルダンデ、ミミズは沢山食べてきたかい?」


「全く、酷い目にあったわ。自分の使い魔くらい、キチンと躾けなさいよね」
 不満を口にしながら、ハンカチで顔に付いた泥を拭き落す。因みにリップはモグラを見た途端、外へ走り出して行った。
どうやら、モグラは苦手らしい。指輪をハンカチで拭うと、ルイズは自分の馬に乗り上がった。

「セラス、馬の用意が出来たからリップを連れて来て」
「あ、はい」
 小走りで馬小屋を出ると、すぐにリップを見つけた。長身で羽帽子を被った貴族と、向かい合っている。
相手の正体に、セラスは気付いた。たしか、朝の王女訪問の時に護衛をしていた・・・

「私は女王陛下の魔法衛士隊、ワルド子爵だ。君達の任務に同行するよう命を受けたんだが、ルイズはいるかな?」
「馬小屋にいるけど・・・」
 リップの胡散臭い物を見る目を気にした風も無く、ワルドは軽く礼をする。そこでセラスに気付くと、歩み寄る。
「君もルイズの使い魔だね、初めまして。私はルイズの婚約者、ワルド子爵だ」
 婚約者、と言う言葉にセラスは思考が止まる。マスターの婚約者? この20歳以上の男が、18歳未満のマスターの?
黒い一つ目の妖怪が登場しそうな雰囲気になりかけた時、馬に乗ったルイズとギーシュが馬小屋から出て来た。

「ワルド様!」
「おやルイズ、久しぶりだね」
 近寄ってルイズを馬から抱き上げると、クルクルと回し始めた。使い魔の前で赤ん坊のように扱われている事に、
ルイズは顔を赤く染める。

「ワルド様、降ろして下さい。私はもう子供じゃありません」
「これはすまない、嬉しくてつい。あと、彼らを紹介してくれないかね?」
 ルイズを地面に降ろすと、ワルドは帽子を目深に被って言った。
「学友のギーシュ・ド・グラモンと、使い魔です。金髪がセラス・ヴィクトリア、黒髪がリップバーン・ウィンクル」
 ルイズは交互に指差しながら説明した。ギーシュは全貴族の憧れである魔法衛士隊の隊長に、深々と頭を下げる。
セラスは軽く頭を下げ、リップは余所見をしている。


満足げな顔でワルドが頷くと、口笛を吹いた。すると朝靄の中からグリフォンが飛び出し、ワルドのそばに佇む。
幻獣にビビるリップに気付かず、ワルドはルイズに手招きする。
「おいでルイズ、乗りなさい」
 爽やかに笑う許婚に、ルイズは断りの言葉が言えなかった。

門を出て出発するルイズ達を、アンリエッタは学園長室から見つめていた。隣ではオスマンが椅子に座り、頬杖をついて
ボ~っとしている。部外者が見たら、痴呆症と勘違いされそうだ。

「彼女達に加護を与えてください、始祖ブリミルよ・・・オールド・オスマン、貴方は祈らないのですか?」
「姫、見ての通り老いぼれは横乳・・・ではなくて、祈る王女の姿に見惚れておる所ですじゃ」
 下手な誤魔化しに呆れると、アンリエッタは溜息をつく。そこで何かを思い出したのか、真剣な顔でオスマンを睨む。

「実は先ほど王宮から連絡があったのですが、チェルノボーグの牢獄からフーケが脱走したとか。ご存知ですか?」
「いや、初耳ですな。確か城下で一番に監視と防備が厳重だと聞いとるが、何か不備でもありましたかな?」
「門番の話では、不審な人物に風の魔法で眠らされたとか。私と魔法衛士隊が不在の隙を狙われた、つまりは城下に
裏切り者がいると言うこと。これは由々しき事態です、オールド・オスマン」
「なるほど、アルビオン貴族が暗躍しとると考えられますな。確かに、一大事ですな」
 首の骨をコキコキと鳴らしながら、面倒くさそうに答える。アンリエッタは、その姿を不安そうな顔で見つめる。

「オールド・オスマン、なぜ貴方はそれほどまでに余裕の態度でいられるのですか? いくら杖は振られ、我々には
待つ事しか出来ないと言っても・・・」
「なあに、あの者達なら道中どんな強敵に阻まれようとも、任務を達成できますからの」
「者達とは、ワルド子爵のことですか? それともギーシュ?」
 オスマンは首を横に振る。残るは、ルイズのみ。
「まさか、ルイズと使い魔が!? ルイズは魔法が使えないし、使い魔は平民ではないですか!」
「姫は始祖ブリミルの使い魔の一人『ガンダールヴ』をご存知ですかな?」
「一通りは知っていますが・・・まさか彼女達が?」
 そこまで喋って、オスマンは言い過ぎたと気付いた。なんとか誤魔化そうと、例え話に言い換える。

「彼女達がガンダールヴと言うのでは無くてですな、『ガンダールヴ』並みに使えると言う意味ですな。ちょっと勘違い
させてしもうたかな? あと、彼女達は異世界から来たと申しておりましたぞ」
「異世界、ですか? 彼女達は、ハルケギニアの者では無いと?」
「そう、どこか別の世界の住民。その言葉を、この老いぼれは信じております。余裕の態度は、それが証拠ですじゃ」
 アンリエッタは、窓の外を眺めた。手の甲に、その彼女達の唇の感触が残っている。何故か少し冷たい感覚に疑問を抱き
ながら、手を合わせ無事を祈った。





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