あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

HELLOUISE-7

  、、、、、、、、、、、
「駒は、僕の手の内にある」
ぽつり、ギーシュは呟いた。
それは誰に聞かせるでもない――
…否、自分自身に聞かせる、言い聞かせる言葉。
それを口にして、ギーシュは薔薇の杖を握り込む。
同時、自分にできる限りの「不敵な笑み」を浮かべ。
ギーシュは状況を開始する。

「……さて、マリコルヌ。まずはルール確認といこうか」
できるだけ「いつも通りの自分」を演じながら、ギーシュは語り始める。
「ルールだって?」
「そうだよ、ルールだ。決闘を決闘たらしめるもの。ただの闘争ならば野蛮な獣にもできるからね。
 不満かい?けれど、僕は貴族だ。
 『君と違って』、野蛮な行いで無意味に自分を貶めるつもりはないんだ。
 ああ、オーク鬼と同じになりたいというのなら、そんな奴に怒る方が恥だし、挑戦を撤回するよ?」
ギーシュはそこまでを一気に言い放つと、くるり、と恰好をつけて回り。
観客の女子たちにウィンクをしてみせる。

それを見て、マリコルヌの神経がさらに逆なでされた。

「~~~~~…ッ!
 君は本当に僕をコケにしたいらしいな…いいじゃないか!ルールを言えよギーシュ!!」

――かかった。


にやり、ギーシュが「本当に」笑う。
「殆どは普通のメイジの決闘と同じだよ。
 勝敗は杖を落とすか、降参させることで決まり。
 ただ、開始の合図を決めておきたいだけさ。『不意打ちをされては堪らないから』ね。」
ギーシュはそう言うと、す、と薔薇の杖を前に差し出した。

「……これから僕が杖から一枚の花びらを落とす。それが地面についた瞬間から決闘の開始だ。
 詠唱はそれ以前からしていて構わないが、落ちるまで魔法を放ってはならない。
 ああ、落とした花びらは僕が最初の魔法に使うよ。
 それでどうだい?」
「――っ…………わかった。」
ゴクリ、と息を呑み、マリコルヌが杖を構える。
不意打ち、という言葉に憤るかと思われたが、そんな余裕はないらしかった。
考えてみれば、マリコルヌも学生なのだ。自分に杖が向けられるのは怖いのだろう。
否、ギーシュはグラモンの血筋として、軍事教練の真似事位はしたことがある。
そんな経験すら持っていない分、本当はマリコルヌの方が恐怖が大きいのかもしれなかった。
当たり前なのだが、そんな事実に気付き、ギーシュは少し楽になる。
ふぅ、と一息つき。
覚悟を決める。

決めた。




「さあ、行くよマリコルヌ!」
ばっ、と大仰な手つきで、ギーシュが天高く一枚の花びらを舞わせる。
同時、二人は花びらを必死に見ながら詠唱を始めた。
ひらひらと舞う花びらはやがて二人の間、目線の高さにまで落ちてくる。
花びら越しに二人の目が合った。
ギーシュはやはり口元だけで笑ってみせる。
気分を害した様子のマリコルヌが目線を外し、落ちる花びらを追った。
それを見て、自然な動作でギーシュが一歩下がる。

そして。

「『錬金』!」
「『エア・ハンマー』!!」
二人の呪文が交錯する。

ズドン、と、思いの外激しい音がして、観客は目を見張った。
盛大に土埃を巻き上げ、地面が吹き飛ばしたのはマリコルヌの『エア・ハンマー』だ。
空気の槌は「ドット・メイジとは思えない威力で」先ほどまでギーシュが立っていた位置を吹き飛ばしていた。
その威力と言ったら、吹き飛ばされた土がほんの少しの間だが全員の視界を遮ってしまったほどである。

そして、この結果に最も驚いたのは、おそらくはマリコルヌであったろう。
だが、それも少しの間。
視界が戻ってくるにつれて、マリコルヌは確信を抱く。
即ち――勝てる、という確信を。


自分の魔法の威力が上がった理由は分からない。
けれど、それは今この場においては間違いなく良いことなのだ。
あの生意気な『元』友人を懲らしめてやるのにちょうどいい。
むしろ心配といえば、あれでやっつけてしまっていないかどうかだ。
なぜならもっといたぶってやりたいのだから――じゃなかった、『元』友人が大けがでもしたら大変だからだ。
まあ何にせよ、それは杞憂だったらしい。
憎っくきギーシュはいまだに二本の足で立っていたのだから。

「やるじゃないかマリコルヌ!正直驚いたよ、君がこんなに強い魔法を持っていたなんて!!」
ギーシュが叫ぶ。
「だけど、それでも勝つのは僕さ!
 行くよマリコルヌ、 ……『錬金』!!」
「……『エア・ハンマー』!」
ぼごぉ、という音とともに、二つ目のクレーターが出来上がる。
ギーシュの『錬金』は『エア・ハンマー』で消し飛んでしまったのだろう。
ワルキューレの最大錬金人数は七人。
あと五人分、地面ごと吹き飛ばしてしまえばマリコルヌの勝ちだ。

 、、、、、 、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
…もっとも、ギーシュがワルキューレを錬金しているのなら、の話だが。


「……とんだ茶番ね」
心底呆れた様子でキュルケが呟く。
なんであんなバレバレの仕掛けに気付かないのだろうか。
マリコルヌも、今まさに熱狂している観客たちも。
やはりトリステイン貴族はどいつもこいつも慢心の過ぎる阿呆なのかと、
以前あったくだらない嫌がらせのことも思い出しながら、心の底から深くため息を吐く。
見物するものの中でこれに気が付いているのは、恐らく自分とタバサ、
そして異世界からやってきた使い魔たちくらいのものだろう。
ただ、ギーシュが心配で仕方ない様子のセラスはそこまで頭が回っていないかもしれない。
全く、こんなに単純な戦術なのに。
座学ならあんなに優秀なのに。
そんなにハラハラしているのを見せられては放っておけないではないか。
主にからかい的な意味で。

真剣に見入っている様子のルイズに、後ろからこっそりと近付く。
途中でアーカードと眼が合い、にやりと笑いあった。
「全くバカらしいわよねぇ、ルイズ」
言いながら、華奢な肩にぽんと手を置く。
「な、何がよ、ツェルプストー!?」
――かかった。



驚いた様子ではあるが、熱中していたのに気付かれたくないのだろう、変な方を向いてルイズが返答した。
手に汗握っている辺り、やはりこの子も仕掛けに気付いていないらしい。
傍から見てるだけでも面白いくらいに感情豊かな観戦っぷりではあったが、やはりこの子は弄ってこそだ。
アーカードと二人で、こっそりとガッツポーズ。

「この決闘のことだろう。ここまで力の差が有っては最早いじめと変わらぬ。
 全くかわいそうだのう、誰かさんのせいで」
「誰でしょうねぇ、こんなひどいことが起こした元凶って」
う、とルイズが詰まる。
「大体、貴族同士の決闘はハルケギニアじゃ禁止されてるのに。
 勝った方も負けた方もあとでオールド・オスマン直々に厳罰を食らうでしょうね。
 勝った方はまだいいけど、負けた方なんて踏んだり蹴ったりよ」
「ほほう、それはそれは」
ああ、とルイズが頭を抱える。
「「ホント、哀れだと思(われることよのう)(うわよねぇ)……」」
二人も倣って頭を抱えるふりをしつつ、ちらりと決闘の様子をうかがってみる。
うん、そろそろか。
再びアイコンタクト。
「「ホント、マリコルヌ(とやらは)(って)かわいそう(だのう)(ねぇ)、ルイズ」
「うぅ…悪かったとは思ってるわよ………

 ………って、へ?」

このときのルイズの顔を、自分は一生忘れないだろうとキュルケは思った。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
荒い息をつきながら、マリコルヌはあたりを見回す。
この『エア・ハンマー』は何度目だったろうか。
ヴェストリの広場がもう穴ぼこである。
敷き詰められた芝生も台無しだ。ひどく歩きづらい。
が、土埃の舞う視界にも段々と慣れてきた。
そろそろ終わりにしたいなぁ――と、しばし目を凝らしていたが。
「そろそろ終わりにしようか、マリコルヌ」

声は、真後ろから聞こえてきた。

心底あわてた様子でマリコルヌが振り向く。
即座に『エア・ハンマー』を詠唱し、ギーシュに向けて放とうとするが、場所が悪かった。
既にマリコルヌの周りはクレーターに囲まれていたのである。
足を踏み外し、転びかけるマリコルヌを見下ろしつつ、ギーシュは杖を掲げる。
大仰な仕草で花びらを一枚落とし、告げる呪文は『錬金』。
対して、マリコルヌも先ほど撃ち損ねた魔法を花びら向けて解き放つ。
そして。
ギーシュの花びらが銅像と変わる前に、マリコルヌの『エア・ハンマー』がそれを打ち貫いた。
ああ。これで詰みだ。
視界は良好。次に『錬金』を唱える暇なんて与えない。
「僕の勝ちだ、ギーシュ!」

「いや。僕の勝ちだよ、マリコルヌ」

果たして、戦乙女が現れたのはギーシュの後方。
大げさに落として見せた花びらはブラフだったのだ。
生み出したワルキューレを突進させながら、ギーシュは『錬金』を唱え始める。
さては一体で時間を稼ぎ、その間にワルキューレの数を増やすつもりだろう。


だが、ワルキューレとマリコルヌは遠い。
ワルキューレが突進してくるより、そして次のワルキューレが生み出されるより早く、
マリコルヌの詠唱が終わった。舌なめずりをする。
今いるワルキューレと、今作ろうとしているワルキューレ。
どちらも一度に吹き飛ばしてやればギーシュも負けを認めるだろう。
ふん、と鼻を鳴らして、マリコルヌはギーシュの足元を見――
驚愕した。

「なんで花びらがあんなに……っ!?」
ギーシュの足元には大量の花びら。マリコルヌは焦った。
広範にばらまかれた花びらの、どれがワルキューレになるのか分からない。
ならばギーシュをと杖を振り上げたが、さっきまでいたはずの場所にギーシュがいない。

……あれ?と、マリコルヌの頭が一瞬真っ白になり。

その隙に、最初に作られたワルキューレがマリコルヌへ槍を突き付けた。

「……あ。」
思わず間の抜けた声を出すマリコルヌ。
「……」
「……」
「……」
突き刺さる観客の視線と、
「さて、マリコルヌ?」
どこからとなく聞こえるギーシュの声に。

「…………ま、参った」

マリコルヌはがっくりとうなだれて、か細く答えたのだった。


「至極単純な作戦ね」
ふん、とキュルケが嗤い。
「まず、マリコルヌを怒らせて、冷静な判断力を奪う。
 『錬金』で土の性質を変えて、相手の『エア・ハンマー』で地面が吹き飛ぶようにする。
 目くらまし、足場を悪くすること、相手を増長させることがその狙い。」
タバサが淡々と解説。
「それと、隠れ場所にもなる」
そしてアーカードが補足。
種明かしタイムである。

「相手が動きづらくなるように意識しながら、しばらく穴を開けさせ続ける。
 相手が疲れてきた頃合いを見て、先に花びらを撒いておいた辺りに立って、声をかける。
 あとは見ての通り。
 ワルキューレを突っ込ませて注意を奪い、自分はその隙に穴に隠れた。
 本当は、相手が判断に迷った時間でワルキューレの数を増やすべきだったけど」
「……精神力が無かったのね。あるいは、思ったよりマリコルヌの反応が鈍かったから、とか」
「たぶん、両方。」
なるほど。
「でも、綱渡り過ぎない?マリコルヌがギーシュ狙いしてきたらどうしてたのよ」
「そう。花びらを攻撃してくることが前提の作戦。あぶない」
ルイズの問いに、タバサとキュルケが首肯する。が。
「いや、その辺りも多少考えてはいたようだぞ?」
「アーカード?」


「最初の一撃は、おそらくギーシュ狙いだったのだろう。
 だからギーシュはさりげなく後ろに下がった。『開始の合図』で注意を別の所へ引いてのう」
「でも、その後は?最初がギーシュ狙いだったんなら、なおさら危ないじゃない!」
「そのためにあのおデブを増長させたのだろう。
 圧倒的な力を手にしたとき、そして相手が憎かった時、多くの人間は考えるのだ――
 少しでも長く力に酔いしれていたい、いたぶってやりたい、とな」
特に、長く虐げられてきたものは。
そう付け足された科白は、何やらとても実感のこもった,重い言葉だった。


「そのギーシュは?」
「校長室でオスマンに説教食らってるわ。決闘禁止令を破っちゃったわけだし」
「セラス――も付き添い、か。なるほどね。
 全く、決闘なんてするからよ。法を破るなんて、トリステイン貴族失格だわ」
「全くだ、のうルイズ」
(いや、あんたらのせいだろ……)
その場にいた誰もが思ったが、誰も口にすることは出来なかった。
君子危うきに近寄らず、である。

「不幸だーーーーっ!!」






新着情報

取得中です。