あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

SnakeTales Z 蛇の使い魔-19

「助かった…。」

ルイズがつぶやく。
スネークはほこりを払いながら立ち上がった。
スネークも自分の鼓動で生を実感する。本当に助かったのだ。
あそこまでうまくはったりに引っかかってくれるとは思わなかった。
だが、何時までものんびりしているわけにはいかない。急いでここを離れたい。
魔法ならこの程度のバリケードくらい簡単に吹き飛ばせるはずだ。
それにこの爆発で誰かが駆けつけないとも限らない。

「とにかく、外に出るぞ。」

頷いた。意外と素直に言う事を聞くルイズ。
さっきから随分静かだ。
そのことに少し違和感を覚えつつ、二人は城の外を目指した。


未だに外の連中は頑張っているらしい。
おかげで城の中で兵士に出くわすという事はなかった。
これも幸運としかいえない。もしかしたらルイズは幸運の女神かもしれないな、と思う。
その幸運の女神はというと…元気がない。
もちろんそのはず。精神的なものもあるが、何せ火傷がひどい。
出来る限り早く治療したい。遅ければ跡が残るだろう。

「戦場から離れるぞ。」

返事がない。
このままじゃ倒れかねない。
考えた結果、スネークはルイズをおぶり、駆け抜けた。


逃げ込んだ先は夜の森。
辺りは獣の鳴き声や風の音しかしない。
背中の喘ぎが激しくなってきた。辛いのだろう。
休める場所を探して歩くと、無人の洞窟を見つけた。
奥がどうなっているかわからない。見つかったときのことを考えるとあまり良くはないが、四の五の言っている暇はない。
中に入り、ルイズを下ろす。

「大丈夫か?」
「ええ…。」

意識も声を出せる力も残っている。
応急処置をしてしばらく休めば大丈夫だろう。

「服、脱げるか?」
「…何する気よ。」

ジト目で俺を見るな。別に変な意味じゃない。

「ただの応急処置だ。早く治せば跡は残らん。」
「…後ろ向いてて。」

了承したみたいだ。
いわれたとおりに後ろを向く。
服のこすれる音が響く。
いつも見ているだろうに、なぜ恥ずかしがるのか理解できない。

「ほら、脱いだわよ。早くして。」

強気だが、弱弱しい。
いつもより小さくみえる背中が露わになる。
火傷だらけだ。痛々しい。
装備品から軟膏を取り出す。一昨日の蜜蝋から作ったものだ。
指に軟膏をつけ、ルイズの白い背中に塗る。

「ん…。」
「痛いか?」

歯を食いしばって耐えている。
痛いだろうが、我慢してもらうしかない。

ぬちゃぬちゃと音が響く。
外に聞こえなければいいが…。

「…う、い…。」
「頑張れ。もう終わる。」

ルイズにとっては永遠とも思える時間をかけて、治療が完了した。
包帯を巻いて服を着るルイズ。
お互いに洞窟の壁に寄りかかって座る。


沈黙―
外に人の気配はない。
聞こえるのは森のざわめきや、梟の鳴き声など。

やがてルイズが静かに口を開いた。

「スネーク、あなたは…人を殺したことはあるの?」

か細い声での質問だった。

「…ある。」

一言だけで答えた。

「どうして?」
「任務のためだ。」

ルイズは顔を伏せる。

「ワルドは…。」

婚約者の名をつぶやくルイズ。
それを黙って見つめるスネーク。

「…スネーク、人を殺すってどんな感じ?」

潤んだ瞳がまっすぐこっちを見つめる。

「いい気分じゃない。初めて人を殺したときは大変だった。」
「いつ?」
「19歳頃、湾岸戦争だ。グリーンベレーとして戦った。」

ルイズは湾岸戦争やグリーンベレーなどの意味はわからなかったが、
戦争であり、そこで数々の人を殺したというのはわかった。

「…そのときから俺の人生は血で真っ赤だ。
 いや、生まれたときからか。」

その言葉に引っかかるルイズ。

「生まれたときから?」

思わず口にしてしまった。
言った後に後悔するルイズ。

「ああ。…気になるか?」

聞かれて、しばらく考えた後に頷いた。
もっと彼のことを知りたかった。

「…FOXHOUNDというハイテク特殊部隊があった。
 敵地に単身潜入、武器は現地調達の極限状態で戦う特殊部隊だ。
 その部隊に俺は所属していた。
 最初の任務で、俺はBIGBOSSという、俺の指揮官であり、父親のような存在であった男を殺した。」

スネークの顔のしわが深くなる。

「その後、俺はFOXHOUNDを除隊。
 再召喚され、殺したはずだったBIGBOSSと再び対決し、俺が勝利した。」

勝利…つまり殺したのだろう。
そう思うと気分が沈む。

「俺は戦場から逃げ、隠居生活を送っていたんだ。
 そして今度はFOXHOUNDが蜂起。俺はまたも召喚された。
 FOXHOUNDの当時のリーダーが、リキッド・スネーク。このテロの首謀者でもある。」

聞き覚えのあるコードネーム。
確かスネークのコードネームはソリッド・スネーク…

「そう、俺と同じコードを持つ者。
 同じコードは名前だけではなかった。」

何が同じなのかわからない。
それもそのはず。この世界に遺伝子工学なんて存在しない。

「俺と同じ遺伝子配列をもつ、つまりは一卵性双生児、双子だ。
 リキッドは俺にテロの目的と理由を話したんだ。」

一度言葉を切る。
スネークは表情を変えない。変えようとしない。

「1970年代、政府は遺伝子を使ったクローンベビーを作りだした。
 計画名は『恐るべき子ども達』、遺伝子提供は『伝説の英雄・BIGBOSS』
 8つの受精卵を2つに間引きし、その受精卵の遺伝子の能力発芽をさらにいじくった。
 優性遺伝子はソリッドに、劣性遺伝子はリキッドに。こうして二人は生まれた。
 事実を知ったリキッドは優性のソリッドを妬んだ。
 ビッグボスは自分の後継者に、劣性遺伝子を持つリキッドを選んだ。その父をソリッドが殺した。
 ソリッドに対する憎悪は頂点に達した。リキッドは父親の遺志を継ぎ戦士の楽園を作る事に決めた。」

ところどころわからない言葉は存在するが、大本の話はわかる。
息を呑むルイズ。

「ただ、BIGBOSSのクローンである俺たちにも欠点があった。
 調べるとBIGBOSSの遺伝子を受け継いだ人間は、絶滅傾向にあることがわかった。
 自分たちも長くは生きられない。
 その原因と対処法を調べるために、BIGBOSSの遺体を要求したんだ。
 俺にそれだけ伝えたリキッドは俺と戦い、死んだ。」

頭の中でスネークの言葉が反芻する。
スネークは父親を、肉親を殺した?

「兄弟と、お父さん…?」
「ああ。俺は遺伝子的に殺人者の運命が刻まれていたようだ。
 ワルドよりもたちが悪いな。」

自嘲的に言うスネーク。
ルイズのほほを涙が伝う。

「どうしたルイズ。お前が泣くことはないだろう?」
「わかんないわよ、馬鹿!勝手に、あ、あふれてくるのよ!
 あんたがそんな顔、し、してるから悪いんだからね!」

声を荒げるルイズ。
外に聞こえるのでは、と少し驚いたが、その心配はなさそうだ。

「あんたは、そんなやつじゃないわよ…!
 あんたは、あんたは―。」

なきながら訴えるルイズ。
心のどこかで安らぎを感じる。

「…ありがとう、ルイズ。」

俺はそう言って欲しかったのかもしれない。


天気は悪い。
月が昇らないのは逃走にはうってつけだが、雨でも降られると隣の幸運の女神がうるさそうだ。
幸いまだ降ってはいない。
今ここで外に出るか?

「おい、ルイ―、」

そこまで言って言葉を切る。
同時にルイズの右手で口をふさぎ、左手の人差し指で『静かに』と指示する。

遠くで馬のいななきが聞こえた気がした。

目を閉じ、聴覚に集中する。
そして足音―複数。金属のぶつかり合う音―鎧だろうか?
間違いない、兵士だ。
どちらのとはわからないが、ここにいるのはマズイ。

ルイズに囁く。

「こっちに複数の人間が近づいている。
 逃げるぞ。立てるか?」

ゆっくり立ち上がる。
少しふらついている。走れないことはなさそうだが、さすがに逃げ切れるかどうか…。

しばらく考え込み、ウェールズから受け取った風のルビーを取り出す。
ルイズに手渡した。

「これからは別行動をする。お前はまっすぐスカボローへ。船を使って国へ帰還だ。」
「スネークは―」
「俺はお客さんとして奴らのもてなしを受けてくる。」

ルイズがあわてて止めに入る。

「だめよ!死ぬ気!?」

静かだが、勢いよく言った。

「あいにくそのつもりは無い。なに、あいつらも本気で殺そうとはしないはずだ。
 お前がいなければ場所を聞くために必ず生きたまま捕獲しようとする。」

ルイズがつかまっていなければ、の話だが。

「それにつかまっても俺ならこの世界について何も知らない。
 拷問されても話すことがないし、平民だから身代金を要求することも難しい。」

ルイズは迷っている。

「大丈夫だ。逃げ切れるさ。」

励ますようにそう言って、ようやく決心が付いたようだ。
指輪を懐にしまい、頷いた。

さあ、夜の森へ―


ルイズはまだ洞窟の中にいた。
外でまずスネークが注意をひきつけ、その隙に脱出、そういう手はずだ。
先ほどスネークに巻いてもらった包帯をなでる。
それだけで不思議と力がわいてきた。

「スネーク…。」

彼の過去話には衝撃を受けた。
考えたこともなかった話だ。
自分とは違う―そう感じざるを得ない。
だからこそ、あんなに強いのか?
自分はあんなふうな強さを身につけることはできるのか?

彼ならこう答えるだろう。否、と。

だんだん彼のことがわかっていくのがうれしく感じられた。

外から爆発音が聞こえた。
さあ、脱出だ。


「いたぞ!手配書の男だ!」

兵士の頭上に赤い『!』マークが浮かぶ。確かに俺を発見したようだ。
というか、発見させたわけだが。
あんなに足音を立てて体勢を高くして歩いてたら、見つからないはずがない。
グレネードのピンを引き抜き、真上に投げ上げて走り出す。
後ろで爆発。同時に数人の悲鳴。

「逃がすな!」

右前方から三人の兵士。
クイックチェンジでソーコムピストルを装備。発砲。命中。
だが、死んではいないようだ。撃たれた位置を抑えて蹲っている。
かまわず走る。どこへ向かうかなど気にしていない。
ただ、一応ルイズと打ち合わせしたとおりにスカボローへの方角とは逆の向きへ走る。

「あっちだー!」
「GO!GO!GO!」

人員を増やしてきたようだ。
かなりの人数の声が聞こえる。
東の空が白み始めた。
そろそろ夜明けのようだ。
夜通し走っているはずなのに、不思議と疲れない。
これもガンダールヴの恩恵ならばガンダールヴさまさまだ。

「回り込め!」

おっと、考え事をしている場合ではないな。


肩が痛い。
心臓がバクバク言っている。
息も荒いし、髪なんて乱れ放題。
それでも走るのをやめない。
彼の作戦を失敗させたくはなかった。
その気持ちで走り続ける。

東の空が少しだけ白み始めたあたりで頭上に黒い影が。
竜騎士か、と杖を握ったが、その竜には見覚えがあった。
蒼い風竜の幼生―シルフィードだ。
そして上に乗っているのは騎士ではなく、ラ・ロシェールで別れた仲間だった。

「あら、ずいぶんお急ぎで、どこにいくのかしら?」

キュルケの軽口も救いの言葉に聞こえる今の精神状況はいったい何なんだろう?
とにかくシルフィードに飛び乗るルイズ。

「タバサ、私の言うとおりの方向へ飛んで!」
「何があったのよ?スネークは?子爵は?」
「話は後!とにかくお願い!」

蒼い髪の少女は無言で頷き、風竜を飛翔させた。


「それ、ほんとの話?」

日が完全に昇りきったころ。
キュルケが訝しげに聞く。
ワルドの裏切りに付いて話したのだ。

「嘘ついてどうすんのよ?」
「いやぁ、おどろいたね。」

ギーシュもキュルケも驚いているようだ。…多分タバサも。

「で、スネークは…。」
「確かにこっちの方にいるはずなんだけど…。」
「いた。」

タバサが指差す。

「あ、あそこだ!あの崖!」

崖の方へ走っていく大勢の人影。
その先頭は紛れもなくスネークだ。
だが、このままではアルビオン大陸の端っこへ追い詰められてしまうだろう。
案の定追いつめられるスネーク。

「どうするの!?」

頭をひねる。今シルフィードはスネークの頭上高くを旋回している。
このままシルフィードで下に下りても、魔法や矢などが飛んでくる可能性がある。
それに、ルイズとギーシュは既に関係ないが、祖国の問題もある。
タバサやキュルケはガリアやゲルマニアが関係していると思われると問題があるかもしれない。
迷惑をかけるわけにはいかない。

ひとつだけ、名案が浮かんだ。
ただし、それをどうやってスネークに伝えるか…。

「…スネーク?」

頭の中にスネークの声が聞こえた気がした。

『了解した。』

と、確かに聞こえたのだ。
そしてこっちをスネークがはっきりと見る。

「わかった。」
「何?」

作戦を三人に伝える。
まずは、

「シルフィードも含めてみんな、絶対に下は見ちゃだめ。」

と注意だけした。


「武器を捨てろ!」

兵士たちが弓や、銃を構えてこっちへにじり寄る。
非常にまずい。万事休すだ。
上のやつらがいなかったら、の話だが。

不思議と危機感を感じない。
ルイズと心がつながっているようだ。
ルイズの作戦がしっかりと頭に浮かんでくる。

「武器を?」
「そうだ。」
「そうか…。じゃあ受け取れ。」
「おい、お前!何をす―!」

ポイッと、スタングレネードを投げ渡す。
当然、ピンは抜いて。

投げた瞬間、跳ぶ―いや、飛んだ。
後ろの崖、大地の果てへと。

「おい!」

声とともに爆音。
耳には何も聞こえてこない。
顔を風が打つ。

だが、それも一瞬。

「―――――――!」

誰かが呪文を唱えたようだ。
雲に入ってすぐに落下速度が落ちる。
緩やかに落ち、やがてとまる。
聴覚が回復してきた。

最初に聞こえた声は

「スネーク!」

やっぱり幸運の女神の声だった。


スネークが私のひざの上で眠っている。
尋常じゃなく疲れたから眠らせてくれ、だそうだ。
なんてあつかましい使い魔なのかしら!
ただ、悪い気はしない。

いや、むしろどきどきする。

どうしてかはわからない。
こんな親父、好きになるわけなんて…無い、はず。
でも鼓動は高鳴る。

みんなは前だけ見ている。
私のほうは誰も見ていない。

ちょっとだけならばれないかな?

「お疲れ。ありがとう、スネーク。」

私は私を命がけで守ってくれた親愛なる蛇の唇ににちょっとしたプレゼントをしてやった。

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