あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

鷲と虚無-03


コルベールは学院長室に案内すると言い、一行はコルベールを先頭に学院の中に入った。
廊下で何人かの人間とすれ違ったが、その度に彼らは血塗れの傭兵二人を怪訝な表情で見つめて通り過ぎる。
やがて一行は長い階段を登り始めた。

「……なあ。あんた達は何者なんだい。この連中とは関係無いんだろ?」
それまでずっと沈黙していた黒髪の少年がウォレヌス達に話しかけた。

この少年はいったい何者なのだろう。
彼の言う事が事実なら彼も偶然ここに連れて来られたと言う事になる。だが彼は完璧なラテン語をしゃべっている。
シリアあたりの属州出身なのだろうか?
だが少年はウォレヌスが一度も見た事の無い奇怪な服装――ルイズやコルベールとはまた違う――をしていた。

「我々はローマ共和国の兵士だ。私は第13軍団の百人隊長ルキウス・ウォレヌス。彼は同軍団兵で私の副官を務めるティトゥス・プッロだ。君は?」
「お、俺の名前は平賀才人です……あ、あの、あなた達は日本とか東京って聞いた事あります?」
「ヒラガサイト。変わった名前だな……ニホンと言う名前は聞いた事が無い。地名か何かか?」
「ああ、やっぱり解らない……俺の住んでる国の名前ですよ」
「こちらからもひとつ質問をさせてくれ。君は我々と同じくここに召還とやらをされたそうだな?顔立ちを見れば東方の人間なのは判るが、どこで我々の言語を習得した?君はどこの出身だ?」
ウォレヌスはさっきから感じていた疑問をぶつけた。
彼だけでなく、ローマの事を全く知らない筈のあの二人まで流暢なラテン語をしゃべっている。
もっともコルベールとルイズの物は貴族や騎士階級の人間が使ういわゆる「古典ラテン語」で、才人の物は大衆が使う「俗ラテン語」だが。

どちらにせよ、三人が結託しておりこちらを騙そうとしているのでなければ明らかにおかしい。
「えと、出身は日本の東京って所です。あなたたちの言語が何なのかは判りません。と言うか俺にはあなた達が日本語をしゃべってる様に聞こえるんですよ?」
「ちょっと待ってくれ、つまり君はさっきからずっと自分の言葉を話してるのか?」
「そ、そうです。そう言えば……なんであんた達もこいつらも日本語をしゃべってるんだ?」
コルベールがそこに口を挟んだ。
「使い魔は通常召還される時に言語を解する能力を与えられます。恐らくそれが関係しているのかと……ああ、学院長の部屋につきました」

コルベールは学院長と話しをするからここで待っててくれと言ったが、ウォレヌスはそれを許さなかった。
ここが学院長の部屋でなく衛兵の詰め所か何かの可能性も少しはある。何時でも人質に取れるようにウォレヌスはコルベールの、プッロはルイズの背後にピッタリとついた。
「言う必要は無いと思うが、もし大声をあげたり助けを呼ぼうとすればどうなるかは解っているな?」
コルベールは頷き、ドアをノックした。

「学院長、コルベールです。突然な事で申し訳ありませんが、急を要する事態が起こったのであなたの判断を仰ぎたいのですが……」
そして扉の奥から若い女性の声が聞こえてきた。
「ミスタ・コルベール、急を要する事態とはいったいなんでしょうか?学院長は現在休息を取っておられるので、もう少ししてから出直した方がよろしいかと存じますが」
秘書か何かであるらしい。

「ミス・ロングビル、本当に緊急の事なのです。直ちに彼と話さなければいけない問題なんですよ」
しばらく間があってから、鍵が外れる音がした。
ドアが開き、中から長い緑髪を持つ女性が現れる。
年の頃は20代半ばだろう。
目にはコルベールと同じような飾りをかけている。
このロングビルと言う女も奇怪な色に髪を染めている。ここの女性の風習なのだろうか。

「これは……一体どういう事ですか?一体彼らは何者なのですか?」
女はウォレヌス達を胡散臭げに見ながら言った。
教師が生徒1人と見慣れない平民三人(内二人は武装していて血にまみれている)を連れてきたのだから当然の反応と言えるだろう。
頭を掻き、困ったような表情を浮かべてコルベールは言った。
「はぁ、それがその、非常にややこしい事なんですがこの生徒が召喚の儀式で彼らを召喚してしまったのです」
「……は?この三人をですか?人間を召喚したと言うんですか?」
「はい、ですからその事について学院長の指示を仰ぎたいのですが……」
「わ、解りました。少しお待ちください」
女はそう言ってドアの奥に消えた。

「学院長か……そいつと会って一体どうするんです?」
プッロがウォレヌスに聞く。
「まず召喚の儀式やらなんやらを詳しく説明して貰う。そしてこの訳の解らん所から元いた場所に送り返して貰う。急げばまだ戦いが終わる前に戻れるかもしれん」
「第一大隊は大丈夫でしょうか?あのときはだいぶ突出していましたが……」
「お前らしくもない心配だな。あの程度の事で壊走するほど第十三軍団がヤワじゃないのはお前もよく知っている筈だ。我々がいなくともマスキウス達が何とかするさ」

無論、突出していたあの状態で指揮官が突然いなくなるのはどう考えてもいい事ではない。
半端な錬度しかない部隊ならそれだけで壊走し始めてもおかしくはない。
だが第一大隊は第十三軍団の中でも最精鋭の部隊だ。
自分がいなくてもマスキウスなどの他の百人隊長がうまく指揮を引き継いでくれる筈だ。

「そりゃあそうですけど、あの肝心な場面でいなくなっちまったてのはどうにも気分が悪い……」
「ちょ、ちょっといいですか?」
そこでサイトと名乗った少年が口を挟んだ。

「何だね?」
「あの、お二人はついさっきまでその、戦っていたんですよね?」
「ああ。その通りだ」
「一体どこで?」
「アフリカのタプススと言う都市の近くでだが……?」
ウォレヌスにはなぜかは解らなかったが、彼の答えを聞いたサイトの顔色が変わった。

「さて……」
そう言って老人は三人を見渡す。
「まずは自己紹介からするのが礼儀じゃろうな。ワシはこの学院の学院長を務めるオールド・オスマンじゃ。あんたらは一体何者だね?」
「ローマ共和国第十三軍団の首位百人隊長及び予備役長官を勤めるルキウス・ウォレヌスと言う者です。隣は私の副官で同軍団兵のティトゥス・プッロ」
ウォレヌスは相手に少しでも威圧感を与える為にわざわざ階級と役職を全て名乗った。
「え……と……俺は平賀才人。日本国の、ええと学生です……」
「ふむ。ニホンと言うのは聞いた事が無いがローマ、と言うのはロマリア皇国とは関係ないんじゃな?」
「あるとは思えません。コルベール氏も同じ様な事を聞いていましたが私はロマリア皇国などと言う国は聞いた事がありませんので」

やはりこの老人もローマを知らないと言う。もしかれらがしらばっくれているので無ければ、
ウォレヌス達はローマの名が伝わっていない程遠くの場所にやって来た事になってしまう。
例えゲルマニアの奥地だろうとパルティアの東部だろうとローマの名前くらいは知られている筈だ。
それを考えればここは信じられない位の僻地に違いない。

そしてウォレヌスはある事を思い出した。コルベールは確かここが「ハルケギニア大陸のトリステイン王国」だと言っていた。
それが口からの出任せじゃない事を確かめた方がいい。

「オスマン氏、ここは一体なんと言う大陸の何と言う国なんですか?」
「ここはハルケギニア大陸のトリステイン王国じゃ。ミスタ・コルベールによればあんたらは全くの未知の国、恐らくは東方のロバ・アル・カリイエの出身と言う事じゃが、それは正しいのかね?」
「……いえ、ロバ・アル・カリイエと言うのも聞いた事がありません」
ウォレヌスは、覚悟はしていたが軽い目眩を覚えた。
どうやら本当に未知の大陸につれてこられたらしい。

オスマンは続けて質問をする。
「召喚されたとき一体あんたらが何をしていたのか教えてくれんかな?」
ウォレヌスは簡潔に自分たちが戦闘中に光る鏡に吸い込まれた事を伝え、才人も自分が帰宅している時に同じく光る鏡に吸い寄せられた事を話した。
オスマンは眉間に皺を寄せてため息をついた。彼にとってもこの出来事は理解を超えているようだ。
「ふむ…………ミス・ヴァリエール、呪文を詠唱した時に何か変わった事は無かったのかね?どんな些細な事でもいい、もしあったのなら話してくれ」
それまでずっと俯いていたルイズは突然声をかけられた為か体をビクッと震わせた。

「あ、あの、私はあの時初めてだったので、その、何か変わった事があったかなんて解りません……す、すみません」
蚊が鳴く様な小さな声だった。

(さっきまでの勢いが消し飛んだな…………どう言う心境の変化だ?)
先ほどまで剣を持った男二人に威勢良く叫んでいたルイズが今では怯えたリスの様になってるのをウォレヌスはいぶかしんだ。
そう言えばここに来る途中も一言も喋ってなかったし、顔色がどんどん悪くなっていた気がする。
だが今それは問題ではない。今度はこちらが質問をする番だ。

「オスマン氏、我々はあなたの質問に答えました。今度は私の質問に答えていただきたい。まず魔法学院とは?そもそも使い魔召喚の儀式とは一体なんですか?なぜ我々はここに連れて来られたのですか?」
「もっともな疑問じゃろうな。答えて進ぜよう。ただ最初に言っておくがあんたらが召喚されたのは事故じゃ。ワシは長年生きているが人間が召喚されたなんて見た事も無ければ聞いた事も無い。まずそこを理解してくれ」
そしてオスマンはここが貴族の子弟が魔法を学ぶ学校である事、使い魔とはメイジと契約で結ばれ一生使役される動物や幻獣で、魔法学院の生徒は二年生になると使い魔を召喚する儀式を行う事を説明する。
ウォレヌスは本当にこの様な摩訶不思議な魔法を使う人間が存在するのに驚愕したが、それ以上に使い魔が何であるかの説明を聞く内に怒りで胸があふれてきた。
要は自分達は体のいい奴隷になる為に拉致された様な物ではないか!
だがウォレヌスが何かをする前にプッロが先に行動した。

プッロは机に身を乗り出すと両手で思い切りバンッと叩き、吼えた。
「おいジジイ、さっきから黙って聞いてりゃふざけた事ばかり言いやがって。何が使い魔だ、ただの家畜じゃねえか!
テメエの言ってる事が本当なら俺たちは奴隷としてここに連れてこられた事になるんだぞ?冗談じゃない、俺は絶対に使い魔になぞなる気は無い!」

ウォレヌスはプッロを止めようとはしなかった。ウォレヌスもはっきり言って腹が立っていたしここは強気に出て方がいいかも知れないと思ったからだ。
だがオスマンはプッロの荒々しい言葉にも顔色一つ変えなかった。
「落ち着きたまえ、プッロ君。最初に言ったじゃろ、人間が召喚された例は無いと。これは本来起こりえない事故……」

だがプッロはオスマンを遮るように捲くし立てる。
「起こり得ない?だが実際におれたちゃここにいるわけなんだがな?もういい、ゴタクは沢山だ!事故なら責任持って早く俺たちをもといた場所に送り返せ。
今すぐにだ。そうすりゃ俺たちはこのわけのわからん場所からオサラバできるしそこのお嬢ちゃんも俺たちがいなくなった後でゆっくりと使い魔召喚でもなんでも出来る!それで万事解決だ!」

オスマンは手を組み合わせ、本当に申し訳なさそうな態度で言った。
「あ~~、大変言いにくいんじゃがな、プッロ君。残念ながらそれは不可能じゃ」
「不可能?」
「そうじゃ」
「な~るほど。つまり俺たちを還す気はないって事か。残念残念」
そしてプッロは軽く笑うと……剣を素早く引き抜いた。



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