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鷲と虚無-02


ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは貴族でありながら生まれてからただの一度も魔法を成功させた事がない。
トリステイン魔法学院に入学して、魔法が使えない事が露呈して周りから「ゼロ」というあだなをつけられて1年経つ。
周りから見れば彼女はそんなあだなの事など大して気にしてないかの様に振舞うが、実際はその名で呼ばれるたびに腸を引きずり出される様な気持ちになっている。

貴族は単純に言ってしまえば魔法が使えるからこそ貴族を名乗れ、魔法を使えない平民の上に立つ事を許されている。魔法を使えない貴族がいるなら平民と同じ、いや貴族の名を持つ分、平民以下の役立たずのクズになってしまう。
そしてその汚名はクズ本人だけでなくそんな出来損ないを生み出した家にまで及ぶ。

自分だけならまだ良い。だが由緒正しく、王家の傍系ですらある公爵家の名に傷をつけ家族までもが侮蔑の対象になるのだけは耐えられない。
そして当然ながら「ゼロのルイズ」等という呼び名は彼女にとっては侮辱と自分の無能の証明でしかない。

だからこそ人一倍勉学に打ち込み、実技以外の成績も学院でも上から数えた方が早い位に上達した。
だが肝心の魔法がどうやっても成功しない。どれだけ理論を暗記し、完璧なタイミングで杖を振り呪文を詠唱しても起こるのはいつも爆発。
そうこうしてる内に二年生になってしまい、召喚の儀式の日がやってきた。
もしこれに失敗すればよくて留年、下手すれば退学になってしまうだろう。

退学になる。今のルイズにとってこれ以上の恐れは存在しなかった。
それだけでもとてつもない恥だが、単に何かの問題を起こして退学になるのではない。
使い魔を召喚できなかった為に退学になると言う前代未聞の理由で学院から放逐されてしまうかもしれないのだ。

だからこそ彼女は何週間も前から夜な夜な儀式に使われるサモン・サーヴァント、コントラクト・サーヴァントの呪文について予習を繰り返し、万全を期した。
そうして儀式に望んだが、何回やっても起こるのはいつも通り、爆発だけ。
他の生徒たちの嘲りも無視し何回も繰り返すが成功しない。
今まで必死に抑えてきた不安、もしかしたら自分は本当に周りの言う様な「ゼロ」、魔法が使えないクズなのかもしれない。
その恐れは召喚を失敗するごとにルイズの中で大きくなっていった。

彼女はもう既に何百回もの間、サモン・サーヴァントを失敗し続けていた。
日はもう暮れかかっている。
他の生徒達はとっくに帰っており、残っているのは教師のミスタ・コルベールのみである。

そのコルベールも
「ミス・ヴァリエール。あなたが非常に真剣にこの儀式に取り組んでるのは解ります。ですがもう夜が近い。例え今日失敗しても落第する様な事はありません。私も協力しますからまた明日と言う事にしてはどうですか?」
と言い出した。
「お願いですミスタ・コルベール!後一回、あと一回だけやらせて下さい!」ルイズは必死の形相になって頼み込む。
彼女もコルベールが、例え今日はたまたま午後に受け持つ授業が無かったとは言えここまで付き合ってくれ、なんとか自分を成功させようといろいろとアドバイスをしてくれた事には(例えそれが何の役にも立たなくても)感謝していた。

もし逆の立場なら自分は何かもっともらしい理由をつけて強引にやめさせたかもしれない。
他の生徒たちは殆ど一発で成功させているんだから、もう何百回も失敗している自分は明らかに異常だ。

そして今日だろうと明日だろうと恐らく違いは無い。それも解っている。
だが、いま諦めてしまったら本当に「ゼロ」になってしまうのではないか。もう魔法が使えないと決定してしまうのではないか。彼女はその考えに取り付かれていた。
だからその恐れを打ち消す為に彼女は盲目的に詠唱に打ち込んだ。それに集中すればその恐れを少しの間忘れる事が出来るからだ。

そしてもし今日止めてしまったら明日、他の生徒たちは思う存分自分を嘲り、わざとらしく自分たちの使い魔を見せ付けるだろう。
既に彼らは何回も召喚を失敗した自分に対して思い出すのもいやになる程嘲っている。
それも嫌だった。特にあのツェルプストーの女は自分が召喚したご立派なサラマンダーをここぞと自慢するのは目に見えてる。
そんな事は耐えられない。

コルベールは、ルイズの哀願を聞き入れ「解りました。ですがこれが最後ですよ?これが失敗したら明日の放課後にまたやる事になりますからね」と言った。

これが最後の機会だ。失敗は許されない。
ルイズはそう強く自分に言い聞かせ、全神経を杖に集中させ、頭の中で呪文をイメージする。
呪文を詠唱し、杖に魔力を送り込んだ。

それまでの二倍はある巨大な爆発が起こり、土と草を巻き上げ轟音を轟かせた。
爆発が起こった場所は濃い煙で覆われ何が起こったか良く見えない。

傍目には大失敗にしか見えなかったが、ルイズは成功を確信していた。
手ごたえが明らかに今までと違う。
今回ははっきりとイメージしたままに魔力が杖に送られたのが解った。

生まれて初めて自分の魔法が成功した!その興奮で体の震えが止まらなかった。
(お願いだから他の人から見ても恥ずかしくない使い魔であって!ドラゴンだなんて高望みはしないからせめて鷲かなにかを。
でもおかしいわ……魔力を杖に送った時二回放出された様な気がしたんだけど……でも魔法が成功したのは初めてだからそれが普通なのかも……)
ルイズは自分が召喚した使い魔をいまかいまかと待ちわびていた。

煙が晴れ始める。少しずつだが煙の中心にいる者の姿が見え始めた。
獣ではなく、者である。輪郭と背格好からして人間である事は恐らく間違いない。
どうも地面に倒れている様だ。
しかも三つ。
つまり――使い魔を召喚する筈の儀式で、人間が召喚された。しかも三人。
(亜人にしては小さすぎる……まさか人間なの?なんでサモンサーヴァントで人間が現れるのよ!で、でももしかしたら凄いメイジを召喚しちゃったとか?でもそんな偉い貴族の人を召喚したら大問題になるんじゃ……?そもそもこれって成功なの?)
ルイズは顔をコルベールの方を振り向いたが、彼も困惑しているようだ。

煙が無くなり、三人の姿が明らかになった。
三人とも男の様だ。
一人は黒い髪を持った少年。
奇妙な格好をしているがとても高価な服装には見えない。
杖も持ってない。これはどう見ても平民だろう。

もう二人は少年よりずっと奇抜な格好をしていた。
一人は頭には大きな毛飾りが水平につけられた兜をしている。
体には胸に様々なメダルがつけられ、肩の部分が二重になっている鎖帷子。
腰には剣と短刀の鞘をさしてあるベルト。
左手には何かの模様が描かれ中心が丸い金属で出来た大盾を持ち、右手には剣を握っている。
足にはズボンではなく何故かスカートの様な物を履いていた。
もう一人はほぼ同じ格好だが兜は馬の毛の飾りがついているだけで、鎧にはメダルがついていなかった。

(マントをつけていないし杖も持って無い上に、剣をつけている。だからメイジじゃないわね。じゃあ平民の兵士?でもなんで男がスカートをつけているのかしら?
数々のメダルや兜の飾りを見る限り、ただの兵士じゃないみたいね。傭兵の隊長か何かかしら?)
そこまで考えてルイズは二人が血にまみれているのに気づいた。

(ち、血!?まさか死んでるの?)
「ああ、ミス・ヴァリエール。おめでとうございます。とうとう成功しましたね……ただいささか奇妙な結果になったようですが……」
「ミ、ミスタコルベール!あの傭兵、血まみれです!い、生きてるんでしょうか?」
「えっ!?ちょ、ちょっと待って下さい。私が見てきましょう」

コルベールは二人に近づき彼らの体を見た後に、ルイズに返答した。
「いえ、これは返り血です。彼らは無傷のようです……血はまだ乾いていませんから恐らくこの二人は今さっきまでどこかで戦っていたのかもしれません」
そう聞いてルイズは安心した。死体を召喚するなんてシャレにもならない。

だがこれは一体どうすればいいのだろう。
人間が召喚された事を抜きにしてもサモン・サーヴァントで一度に三体も召喚されるなんて聞いた事が無い。
そもそもこれは成功と言えるのかどうか。

ルイズはコルベールに振り向いた。
恐らく彼にとってもこれは予想外の事態だ。
「あの……先生はサモン・サーヴァントで人間が召喚されたり一度に複数の生物が呼び出される例を知っていますか?」
「ごく稀に複数の動物が召喚されると言うのは聞いた事がありますが、人間、しかも三人とは……」
やはり彼も何が起こっているのかわからないらしい。
その時、黒髪の少年がむっくりと起き上がった。

少年は阿呆の様な顔をしながら周りをキョロキョロと見渡している。
「これは成功、なんですよね……?」
「サモン・サーヴァントによってゲートが開き、生物が召喚される。そう見れば成功したとは言えますが……これは果たして……」

そう言ってコルベールは思索に耽り出した。
そしてルイズはある事を思い出した。契約だ。生物を召喚したのだから契約して使い魔にしなければならない。
それが召喚の儀式の規則だった。

「あの……契約……しなきゃいけないんですよね。あれと。と言うか契約って複数の生物と出来るんですか?」
「はい。複数の動物が召喚される例でも一体と契約すれば残りの動物にもルーンが刻まれ契約された筈です。」
正直言って嫌だった。ファーストキスを見ず知らずの平民に捧げると言う屈辱もさる事ながら、平民を使い魔なんかにしたら更にクラスメートから馬鹿にされるに決まっている。
下手をすれば召喚に失敗した時よりなまじ成功してる分嘲りは強くなるかも知れない。

そもそも平民の使い魔なんて何の役にも立たない。傭兵の二人なら用心棒位には使えるかもしれないがそれだけだ。
「あの、召喚をやり直す事は出来ませんか?お願いです!今回も一応成功したから次はきっと……」
ルイズはコルベールに哀願する。
「無理ですね」
コルベールは申し訳なさそうに答えた。
「召喚した使い魔と契約しなければならないのがこの神聖な儀式の規則です。そもそも彼らが召喚されている以上、サモン・サーヴァントの効果は持続していますからやり直す事は物理的に不可能なんですよ」

あれだけ予習をしていたのに忘れてしまっていた。
確かにサモン・サーヴァントで既に生物を召喚してしまった以上、契約しようとしまいと、その生物を殺さない限りもうゲートを開く事は出来ない。
(もう諦めるしかないみたいね……)
その時、少年が口を開いた。
「あの~、あんたらは一体誰?つーかここはどこ?」

……頭に靄がかかったみたい様に何も考えられない。
自分が誰でさっきまで何をしていたのかよく解らない。朝に、目は開いているのに夢を見ているあの状態に似ている。
何か声が聞こえてきた。頭がボヤっとしているからよく聞こえないが、口論の様だ。

「……もう一度聞くぞ。なんなんだよお前は!ここはどこなんだ!一体何をしたのか説明しろ!あれは一体なんのつもりだ」
少年の声だ。それを聞いた時、ウォレヌスは手の甲に一瞬鋭い痛みを感じ全てを思い出した。
自分はあのとき光る鏡の様な物に吸い込まれたんだった。
「使い魔とか契約とか意味不明すぎるぞ!何を訳のわからない事を…………」
「訳がわからないのはあんたよ!大体なんでサモン・サーヴァントで平民が召喚されちゃうのよ!」
「まあまあ、ミス・ヴァリエール、まずは落ち着いて……」
この二人は一体何を話しているのだろう。そもそも何が起こったのか、自分達がまだタプススにいるのかどうかすら解らない。

ウォレヌスは身をゆっくりと起こした。
目の前には三人の人影がいた。
一人は黒髪の少年。
もう一人は桃色がかった金髪の少女。随分と変な色に染めているなとウォレヌスは思った。
もう一人は頭が禿げた中年の男。ウォレヌスはその見事な頭を見てカエサルを連想した。
奥には石造りの壁と幾つかの巨大な塔があり、そしてその周りには大きな森があった。

全員見た事も無い様な奇怪な服装をしている。そして周りの景色を見たとき、ウォレヌスは絶対に何かがおかしいと察知した。
木々が鬱蒼と生い茂るここはどう見たってタプスス、いや、それどころかアフリカですらない。
気温もアフリカが嘘の様に涼しい。
ガリアに似ていない事も無いが、ガリアにはこんな巨大な建造物は無かった。いや、ガリア以外でもこんな巨大な塔が存在するかどうか。
存在したとしてもこんな立派な建築物の名が知られていない筈がない。

一瞬あの鏡がどこぞの神の仕業で、目の前の三人が神々だと言う考えが頭をよぎったが、その考えはすぐに破棄した。
目の前の三人からはどう見たってそう言う雰囲気が全く感じられないし、神々がこんな事をするとは聞いた事が無い。
神々が人間に手を出す時はもっと直接的にするか、全く悟られないようにする筈だ。

だとすればこれは一体どう言う事なのか。
そこまで考えてウォレヌスはプッロの事を思い出した。
そして隣にプッロが自分と同じく身を起こして怪訝な表情で三人を見ているのを発見した。
どうも目の前の三人は口論に夢中で自分達が起きた事には気づいていないようだ。
プッロを見つけウォレヌスは安堵し、ウォレヌスはプッロの耳に小声で呼びかけた。

プッロはウォレヌスに気づき、小声で話し返した。
「あぁ、隊長もここにきたんですね。一体なんなんですかここは?訳がわかりませんよ」
「聞け、プッロ。見ての通りここはどう見てもアフリカじゃない。これが神々のイタズラじゃないとするならこれは異常だ」

そう、自分で言って気がついたのだがこれは明らかに異常だ。
もし神々の所業でないとするならば自分達は何らかの理由でどう見てもタプススから少なくとも数百マイルは離れた場所に運ばれたのだ。
「目の前の連中が恐らく我々をここに連れてきたんだろう。少なくとも我々の言葉をしゃべっているのだから話は通じる筈だ。プッロ、剣を構えろ」
「え、もう殺っちまうんですか?ちょっと性急なんじゃ……」
「馬鹿め!殺しては意味が無いだろうが。捕縛して尋問するんだ。こちらに一体どう言う害意を持っているのか解らないからな。私が合図を出した後に少年を羽交い絞めにし、喉に剣を突きつけろ。私は男をやる」
「はい、解りました。殺しは無し、ですね」
「連中はまだこちらに気がついていない。機は今だ」
二人はスッと立ち上がり、剣を構えた。
盾は邪魔なので地面に置いたままだ。
そしてウォレヌスが「行け!」と叫ぶと二人は脱兎の如く駆けだし、男と少年は反応できる前に羽交い絞めにされた。

ウォレヌスは素早く男の喉に剣を押し付け、もう片方の手で男の握っていた杖を叩き落し、彼の耳に囁いた。
「よく聞くんだ。貴様に質問が幾つかある。速やかに答えなければ私の部下が少年の喉を掻き切る。解ったな?」
男は狼狽しながら言った。
「お、落ち着いて下さい。あなたたちは……」
「黙れ。質問に答えろと言った筈だ。余計な事を言っても少年の命は無い。解ったら頷くんだ。質問に答えればお前も少年も危険は及ばない」
男は抵抗するのは不可能と悟ったのか、おとなしく頷いた。

「ミ、ミスタ・コルベール……!あ、あんた達自分が何をやってるのか解ってるの?先生を今すぐ放しなさい!」
少女が目を見開いて叫び、杖を取り出した。
それを聞いて高々に笑ったのはプッロだ。
「ハハハ、こりゃまた威勢の良いお嬢ちゃんだ。いいかい、お嬢ちゃん。武器を持ってるのはこっちだ。あまりそんな態度を取らん方が良いんじゃないか?それにそんな棒切れで一体何をしようってんだ?」
ウォレヌスも少女が取り出した棒を見ていぶかしんだ。
あんな棒切れで一体何をしようと良いのだろう。
少女は棒をこちらに突きつけてるが何もしようとしていない。まさかあれで脅しだとは思えないが念を押す事にした。

「娘。その棒切れをゆっくりと地面に置き、そして手を頭上に掲げてこちらが聞くまで何も言うな。少しでもおかしな動きを見せたら両方の命は無いと思え」
少女は歯軋りをしながらもウォレヌスの指示に従った。
「よし。では、えーと、コルベールだったな?私の質問に答えて貰おう」
だがコルベールが返事をする前に少年が声をあげた。
「な、なあ。誰かは知らないけどあんたらも俺と同じくあの光の鏡を通ってきたんだろ?俺も被害者なんだよ!俺を人質に取るのはおかしいって!放してくれ!」
喉元に剣を突きつけられた経験など無いのだろう。少年の額には汗が滲んでおり、顔は青ざめていた。
「ふーん。口は達者な方だな、坊主。だがそんなバレバレな嘘で……」
そこにウォレヌスが口を挟んだ。

「彼の言う事は多分正しいぞ、プッロ」
プッロは驚いた様子で抗議の声を上げた。
「あんた、こんなあからさまな嘘を信じるってんですか?」
「理由は二つ。第一に彼は娘と口論をしていた。第二に彼の服装は他の二人とまるで違う。これらを考えれば彼の言う事と辻褄がある。だが」
とウォレヌスは少年の方を向き、「君の言う事には証拠が無い。よって解放はしない。そして娘と同じく許可が出るまで口を開かないでくれたまえ」と言った。
少年は諦めた様子で「わ、わかりましたよ……」と答える。

「さて、コルベール氏。質問に答えて貰おう。第一にここはどこなのか?第二にお前達は何者なのか?第三に我々に何をしたのか?少年とあなた自身の命の為にも速やかに答えた方がいい」
「こ、ここはトリステインの魔法学院。私はここの教師のコルベールで、彼女は生徒のルイズ・ラ・ヴァリエール。少年の名前は知らない……彼はあなたたちと同じく先ほど召喚されたんですよ」
ウォレヌスは剣を更にコルベールの喉に押し付けた。
剣の刃が皮膚を薄く切り、血が滲んだ。

「トリステインの魔法学院だと?トリステインと言うのは一体どこだ!?」
ウォレヌスにとって全く聞いた事が無い地名だ。
魔法学院と言うのもわからない。魔術師と呼ばれる連中は大抵何かの教団に属している。ここはその類の場所なのだろうか?
コルベールはこの質問に驚いた様だった。
「ト、トリステインはトリステインだ。ハルケギニアの北方にあるトリステイン王国だよ!まさか知らないのかね!?」
「もし貴様が訳のわからない事を言ってこちらを煙に巻けると思っているなら大間違いだぞ?もう一度聞こう。ここはどこだ。もし本当にトリステインとやらならハルケギニアはどこに位置する?ローマからどれ位な距離だ?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……君はトリステイン王国もハルケギニア大陸も知らない。そう言う事なのか?ローマ?そんな場所は知らない。ロマリアと関係があるのか?」
それを聞いたプッロが呆れた様に言った。

「そいつの親指でも切り落としたらどうです?そうすりゃ目が覚めて少しはマトモな事を言い出すかも知れませんよ」
「お前はそのうるさい口を閉じていろ!コルベール氏、もしあなたが我々を謀ろうとしているならフリアイの名にかけて少年も娘もお前も殺す。解ったか?もう一度聞く。ユピテルの石に誓って言え。ここはハルケギニアのトリステイン。間違いないんだな?」
「ユピテルというのが何かは解らないが、始祖ブリミルの名に誓って言おう。私は嘘は何一つついていない。ここはハルケギニア大陸、トリステイン王国の魔法学院だ。そしてローマと言う場所がロマリアに関係ないのなら私は何一つ知らない。」

コルベールははっきりと答えた。
剣を喉に突きつけられていると言うのにもう落ち着いている。
貧相な見かけによらず中々肝が据わった男らしい。

とても嘘をついている様には見えない。無論そう見えない様にうまく嘘をつける人間はいるがこの男はそう言うタイプではないとウォレヌスには思えた。
「解った。信じよう。では三番目の質問だ。我々に何をした?」
そしてコルベールはウォレヌス達に召喚の儀式について説明をし始めた。

「あなた達はミス・ヴァリーエルに召喚されたんです。使い魔召喚の儀式で。サモン・サーヴァントと言う呪文でゲートを開いてそこから……」
コルベールが説明し終わる前にプッロは吹き出し、馬鹿笑いを始めた。そして突然笑うのをやめた。
「おいおっさん。あんたはつまり自分たちが何かの魔術を使って俺たちをここに呼び寄せたと、そう言いたいのか?」
「え、ええ、その通りです」
「てめえ、ふざけてるのか?そんな事が出来る筈がねえ。嘘をつくんならもうちょっとマトモな嘘をついた方がいいぞ?」

ウォレヌスは呆れていた。
コルベールに対してでなくプッロにだ。
(少しは理性を使え、馬鹿者め)

「プッロ」
「ん?なんですか?」
「周りを見てみろ。何が見える」
「周り?木が沢山あって馬鹿でかい塔がありますね」
「我々はどこにいた?」
「タプススです」
「ここがタプススに見えるか?」
「見えませんね」
「つまり我々はどう見てもタプススから数百マイルは離れた場所に一瞬で連れて来られたのだ。この時点でもう馬鹿げてると思わんか?」
「まあそりゃそうですが……」
「この男の話を全面的に信じる訳ではない。例えば我々の事を知らない彼がなぜ我々の言葉をしゃべっているのかは判らない。だが話の筋は通っている」

ウォレヌスは何とかして事態を冷静に把握しようと努めていた。
確かにプッロが言った通りこれはどう考えても馬鹿げた話しでしかない。
謎の魔術師が魔法を使って何百マイルも離れた人間を呼び寄せるなんて子供でも信じなさそうな荒唐無稽な話だが、
現にこの意味不明の場所にいる以上、ウォレヌスには他にこの現象を説明出来る話が思い浮かばなかった。

「そうだ。学院の中に入って学院長、ここの責任者と話してみませんか。ここで何時まで話をしていてもラチがあきませんし、彼ならあなた達に私が嘘をついていない証拠を見せる事が出来ます。それに正直言って事態は私一人の手で負える段階じゃなくなっているので……」
コルベールは相変わらず落ち着いた声で言った。
これはどうした物だろうか。

罠である可能性もあるが、もし害意を持って自分達を「召喚」したならとうに襲われている筈だ。
だが彼らには警戒心は全く無くあっさりと我々に捕縛された。
そして彼の言う通り何時までもここで押し問答を繰り返していても進展は無いだろう。

「……解った」
「ちょ、ちょっと、正気ですかあんた!?どうせ罠に決まってる……」
「もし殺したり捕まえるつもりだったんなら我々はとうに死んでるか牢に入ってるだろう?こっちに現れた時、我々は呑気に寝ていたんだから」
「そ、そりゃそうですが……」
「それに彼の言う通りこのままじゃどうにもならん。ここの責任者に話を直接つけた方が早いだろう。もちろん彼らが妙な事をしたらすぐに遠慮なく叩き切れ。だが今は押さえるんだ。解ったな?」
プッロは納得いかない様子だったが、頷いた。

「では行きましょうかコルベール氏。先にどうぞ。娘、お前ももう動いて構わん。プッロ、その少年も離してやれ」
そう言ってウォレヌスはコルベールを解放し、歩く様に促した。
剣は鞘に収めたが用心深く柄は握ったままだ。
「あんた達、自分が何したか自覚してる?平民が貴族二人に剣を向けたのよ?良くて縛り首、悪ければ釜茹でよ!?」
ルイズが血相を変えて叫んだ。
ウォレヌスにとって二人が貴族だと言うのは少し意外だった。

だがそう言われればこの二人は見慣れない物だが高価そうな服装をしていた。
「貴族?あなたがたは貴種だったのですか。それは失礼を致しました。あなたの口の利き方は貴族と言えど娘が大人の男にする物ではないのでまったく予想がつきませんでした」
ウォレヌスは露骨な皮肉を含ませて返した。
「へっ、平民の傭兵が私に礼儀を教えようっていいの!?なんと恥知らずな……だいたい魔法学院の生徒なんだから貴族なのは当たり前でしょ!」
「おいお嬢ちゃん、ぎゃあぎゃあ騒ぐのはそれ位にしてくれ。うるさくてかなわん。それに剣を持ってるのはこっちだって事をまた忘れてないかい?」
プッロがうんざりとした様子でルイズに言った。
ルイズはプッロをにらみつけたがそれ以上何も言わなかった。



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