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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第十六話


 宿から出たルイズたちは裏路地から続く長い長い階段を上がって桟橋のある丘にたどりついた。

 「へえ、こらまた凄い眺めやねえ」

 丘の上から見える光景に、静留が感嘆の声を上げる。
 そこには四方八方に枝を伸ばした高さが数百mはありそうな巨大な樹が鎮座しており、その枝にまるで木の実のように何隻ものフネがぶら下がっていた。

 「……なるほど、確かに『桟橋』どすなあ」
 「いや、そんな普通のことを感心されても……」

 そんな会話を交わしながら静留とルイズはワルドに先導され、樹の根元に開いた裂け目を潜り抜けて、その内部へと入り込んだ。
 そこは吹き抜けのような空洞になっていて、各枝に通じる階段が縦横に張り巡らされていた。
 その中からワルドが目当ての階段を見つけると、三人はその階段を駆け上り始めた。
 足場の悪い階段きしむ音を聞きながら、途中の踊り場に差し掛かった時、静留は何者かの気配を感じて背後をふりかえった。
 黒い影が頭上を飛び越え、のっぺらぼうな白い仮面を被った黒装束の男がルイズの側面に降り立った。
 静留はデルフを鞘から引き抜くと同時にルイズに怒鳴る。

 「ルイズ様!」

 ルイズが振り向く。一瞬で男はルイズを抱え上げると何の躊躇もなくその身を空中へと躍らせた。

 「ルイズは渡さんぞ!」

 即座にワルドが杖を振り、風の鎚(エア・ハンマー)の呪文を叩きつける。それに打ち据えられた仮面の男は思わずルイズから手を離す。

 「きゃあああっ!!」
 「ルイズ!!」

 ワルドは踊場から飛び出すと、ルイズ目掛けて急降下した。そのまま落下中のルイズを抱きとめ、空中に浮かぶ。
 仮面の男は身を翻して踊り場へと引き返すと、デルフを構えた静留と対峙した。

 「どこの回し者かしらんけど、しつこい男は嫌われますえ」

 ワルドと同じぐらいの背格好をした男は静留の言葉には答えず、無言で突き出すように杖を構えた。
 とたんに周囲に冷気が漂い男の方へと収束していく。男が呪文を放とうとしているのに気づいた静留が阻止しようとデルフを振り上げた瞬間、デルフが叫んだ。

 「姐さん! 俺を突き出せ!」

 静留がデルフを突き出した瞬間、男の杖から放たれた稲妻の束がデルフを持った静留の左腕に直撃した。

 「こんの、くっそたれが~~~~!」

 デルフの絶叫と共にほとんどの稲妻がデルフに吸い込まれるが、わずかに残った電流が静留の体を貫く。

 「――くっ!」

 心臓を貫くような痛みに静留は意識を手放しそうになるが、歯を食いしばってそれに耐え、男に向かってデルフを袈裟懸けに振り下す。
 男は弾き飛ばされるようにして踊場から足を踏み外し、地面に向かって真っ逆さまに落ちていった。

 「シズル!」

 ワルドに抱えられて踊場に戻ってきたルイズが、その場にしゃがみ込んだ静留に駆け寄る。

 「痛っ……心配せんでも大丈夫どす。ルイズ様の方こそ怪我とかありまへんか?」
 「この馬鹿っ、私より自分の心配しなさいよ! 服の左袖が肩の方まで焼け焦げてボロボロじゃないの!」

 ルイズはそう言うと服の袖を引き裂き、静留の腕に怪我がないか調べる。幸い袖のコゲで汚れたぐらいで左腕には何の外傷もなかった

 「しかし、いきなり風系の上位のライトニング・クラウドを撃ってくるとはな。あいつ、相当の使い手だぜ」

 デルフの言葉にワルドが驚いた表情を浮かべる

 「それは本当か? 本来なら死ぬほどの威力があるはずだが……ふむ、この剣が魔法を中和したというところか。ところで君の材質は金属ではないのか?」
 「知らん、忘れた」

 デルフが不機嫌そうにワルドに答える。

 「インテリジェンスソードか、いささか口が悪いがいい品のようだ」
 「まあ、うちに相手してもらえんでスネとるだけなんで、口が悪いのは堪忍したってや」
 「ちょっ、姐さん! 俺は別に……」

 静留は自分の言葉に反論しようとするデルフを鞘に押し込んで黙らせると、ルイズの手を借りて立ち上がった。

 「ほな、邪魔もいなくなったことやし、一気にフネのとこまでいきますか」


 階段を駆け上った先は、一本の枝が伸びており、一隻のフネが係留されていた。ワルドたちがフネに乗り込むと、甲板で酒を呑んでいた船員が邪魔するように立ちふさがる。

 「なんでえ、おめえら! 用があるなら、明日の朝改めて来な!」

 船員は酔いの回った表情で、酒くさい息を吐きながらそう言い放った。

 「僕は貴族だ。死にたくなければ、僕が杖を振るう前に急いで船長を呼ぶんだな」
 「ひぃっ、き、貴族!」

 杖を振り上げたワルドの脅しに船員は顔を真っ青にして、船長室にすっ飛んでいった。

 「何の御用ですかな?」

 睡眠中だったらしい初老の船長は寝ぼけ眼で、うさんくさげにワルドを見つめる。

 「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ」
 「これはこれは……して、当船へどういったご用向きで?」

  相手が身分の高い貴族と知った船長は態度を一変させると、揉み手をしながらワルドに尋ねる。

 今すぐにアルビオンへと向かうと言われた船長は最初難色を示したが、ワルドが王家の勅命だと宣言し、積荷の倍に相当する報酬を保障すると言ったら、あっさりと出航することに同意した。

 「アルビオンにはいつ着く?」

 ワルドが尋ねると、

 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」

 と船長が答えた。

 静留は舷側から地面を見下ろした。『桟橋』である大樹の枝の隙間から見えるラ・ロシェールの街の明かりがぐんぐん遠くなってゆく。結構な速さのようだ。
 ルイズは静留の隣に並ぶと、同じように地面の方をじっと見つめて呟く。

 「いよいよアルビオンにつくわね」
 「……そうどすな」

 そのまま無言で佇む二人の元に、ワルドが近寄ってきた。

 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、攻囲されて苦戦中のようだ」

 ルイズがはっとした顔になった。

 「ウェールズ皇太子は?」
 「わからん。生きてはいるようだが……」

 ワルドの答えにルイズは困ったという表情を浮かべた。

 「どうやって、連絡を取ればいいかしら」
 「……危険だが陣中突破しかあるまい」

 ルイズは緊張した顔で頷いた。それから尋ねる。

 「そういえば。あなたのグリフォンはどうしたの?」

 その言葉にワルドが微笑んで口笛を吹くと、グリフォンが甲板に着地し、船員達を驚かせる。

 「ほな、うちは先に寝かせてもらいますわ」

 静留はそう言って舷側に座り込むと、まだ続いているルイズとワルドの会話を聞くこともなく、深い眠りについた。



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