あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

スナイピング ゼロ-06


「セラスってそんな物まで使えるのね、今までに見た銃なんか比べ物にならないぐらい大きいわよ」
「やっぱり目立っちゃいましたね。馬を取りに戻るまで、周りの人からジロジロ見られましたし」

 街から学園に戻るまでの間、ルイズはセラスに質問攻めだった。内容は勿論、購入したハルコンネンについて。
ただの長い棒だと思っていた物が、実は人の拳ほどの大きさの鉛玉を飛ばす、巨大な砲撃銃だと分かったからだ。
学園に着いて小屋に馬を戻してからも、ルイズは喋り続ける。

「それを使えば兵士や傭兵なんか相手にならないわ、竜騎士を除く全ての地上部隊を撃破出来るわね」
「それくらいなら楽に撃ち倒せますけど・・・えっと、因みに竜騎士って何ですか?」
「ドラゴンに乗ったメイジで組織された部隊の事よ、あとグリフォンとかマンティコアとかの部隊も有るわね」
「そんなのも有るんですね・・・まぁ、そんなのに遭遇した時はリップさんに任せれば大丈夫ですよ」
「大丈夫って、リップはマスケット銃しか持ってないのよ。あれだけでどうやって「ルーイズ~やっほ~!」 
 ルイズが頭上を見上げると、ウィンドドラゴンが降下してくる所だった。着陸すると、キュルケが話しかけて来た。

「何よキュルケ、私たち買い物に行ってて疲れてるんだけど」
「アンタが使い魔を連れて街に向かってたから、気になってストーキングさせてもらったのよ。何を買うのかと思ったら
インテリジェンスソードだからビックリしたわ、あんたってホント変わってるわね、ルイズ」
「仕方が無いでしょ、あんまり持ち合わせが無かったんだから。と言うか、いちいち着いてこないでよね!」
「でも結果としては正解だったわ。アンタが買おうとしたシュペー卿の剣、あれ偽者だったから。おかげでタバサが
『うぬか、偽剣を売るはうぬか』とか言って、店主を杖で叩いて鼻と口にハシバミ草を詰め込んじゃったわ」


ケラケラと笑うキュルケの後ろで本を読むタバサを、ルイズは何とも言えない表情で見つめた。ハシバミ草と言えば
棘の形をした葉で、とても苦い。なんでそんな物を、このチビッ子は持っていたんだろうか?
 ルイズの視線に気付いたタバサは、本を閉じる。そして懐からハシバミ草を取り出すと、ムシャムシャ食べ始めた。
無表情で食べる姿にルイズはおろか、セラスやリップまでドン引きだ。
 そんな面白いんだか面白く無いんだか判断しかねていた時、背後から地響きが轟いた。


「きゃぁああああああああああああ!」
「え・・・ええ!? 何ですか、このデッカイの?!」
 キュルケの悲鳴にセラスが振り向くと、そこには巨大なゴーレムが自分達に向かって歩いて来るのが見えた。
30メイルは有ろうかと言う巨体が一歩動くごとに、猛烈な地響きが伝わってくる。

「逃げるわよセラス、あんなデカイのどうしようも無いわ!」
「や、ヤー! リップさん、早く逃げ・・・リップさん!?」
 後ろを見ると、リップがマスケット銃を抱き締めたまま座り込んでいた。呆然とした顔で、ゴーレムを見上げている。
 すぐに走り寄って、声をかける。

「何してるんですかリップさん、早く逃げますよ!」
「ザミエル・・・ザミエル・・・」
「しっかりしてくださいリップさん、それでもヴェアヴォルフですか! もう、こうなったら!」
 動かないリップに業を煮やしたセラスは、リップを抱き上げた。現代で言う、『お姫様抱っこ』で。
そのままルイズの後を追って植え込みに隠れると、ゴーレムを見上げる。
 ゴーレムはルイズ達の前を通過すると、とある外壁の前で止まった。そして両手を光り輝やかせ、外壁を殴りつける。
右・左・右のワンツーフィニッシュで穴を開けると、腕を伝って誰かが入って行った。


「マスター、あれって何ですか? あと、誰か入っていきましたけど・・・」
「大きいのは土ゴーレム、きっとトライアングルクラスのメイジね。入ったのは、恐らく土くれのフーケだわ」
「それって、確か店の人が言ってた盗賊の事でsうきゃっ・・・、ちょ、ちょっとリップさん!?」
 セラスの声に視線を移したルイズは、思わず目を見開いた。リップがセラスの胸元に顔を埋めて、グスグスと泣いて
いるのだ。まるで父親に叱られて、母に泣き付く子供みたいに。

「ちょっと何やってんのよリップ、セラスから離れなさいよ!」
「目を覚ましてくださいリップさん、今はこんな事してる場合じゃ!」
「ひ、ひぐ・・・ぐす・・・・・・あ?」
 泣き止んだリップは、周りを見る。ゴーレムをバックに、自分を見つめる二人。現状を理解して瞬時に顔を真っ赤に
させると、頭から猛烈な湯気を噴出させた。


リップバーンが慌てふためいている頃、フーケは宝物庫から『破壊の杖』を見つけ出していた。壁に犯行声明分を残し、
急いでゴーレムに戻る。左手に破壊の杖を持ち、右手に握った杖でゴーレムを歩かせる。

 魔法学園の城壁を難なく乗り越え、森へ向けて歩いて行く。その真上を、タバサが乗ったウィンドドラゴンが追跡して
いた。犯人の顔を見ようとするが、振り回される豪腕によって近寄る事が出来ない。そのため、上空を旋回するしか無い。
 その内にゴーレムは崩れ落ち、土の山と化してしまった。地表に降りて周りを見るが、人の気配は感じられない。
黒いローブを着たメイジの姿は、忽然と姿を消していた・・・。




そして翌朝・・・トリステイン魔法学園は、蜂の巣を突いたかのような騒動が昨夜から続いていた。
なにせ『土くれのフーケ』が『ゴーレム』で壁を壊し、『破壊の杖』を盗み出したのだ。『 』の所、テストに出ますよ。
宝物庫には学園の全ての教師が集めり、壁に開いた大穴を見て立ち尽くしていた。ある者は口を開けっぴろげ、ある者は
呆然とし、ある者は唖然としている。ルパンⅢ世も真っ青な盗みっぷりに、みな言葉が出ないのだから・・・。

「土くれのフーケめ、今度は我が学園にまで手を出しおったか! 所詮は衛兵など平民だ、役にたたんのだ!!」 
「あいつは我々の国家 我々の学園、そして教師を舐めきっている! くそ盗賊め、絶対に生かしておけん!!」

 ミセス・シュヴルーズは隅の方で震えていた。昨晩は当直であるにも係わらず、自室で寝ていたからだ。本来ならば門の
詰め所で待機する決まりなのだが、教師は皆サボっている。だから自分もサボった、その結果がこれだ。まさか魔法学園に賊
が侵入するなど、完全に予想外だった。

「これこれ、生徒の前で暴言など言ってはならん。少し落ち着きなさい、カルシウムが足りとらんぞ」
 ゆっくりとした歩調で、学園長のオスマンが現れた。その暢気な仕草に、教師のミスタ・ギトーが噛み付いた。

「何をノホホンとされてるんですかオールド・オスマン、学園の宝が盗まれたんですよ! もう少し緊張感とかですな、
危機感とかを持ってください!」
「確か君はギトー君だったね、君は怒りっぽくていかん。腹立たしいのは私だって同じじゃが、だからと言って口から唾を
飛ばして興奮したって事態は改善せん。深呼吸でもしなさい、ヒッヒッフーヒッヒッフーとな」
「それはラマーズ法でしょう、ここは病院の分娩室ではありません! そんな事より、事件を目撃した生徒から事情聴取を」

ミスタ・ギトーが指差す方向には、三人の生徒が控えていた。ルイズ・キュルケ・タバサ、そしてセラスとリップ。因みに
キュルケとリップは顔を赤くし、俯いている。前者は逃げる時に飛んできた石を頭に受けて気絶していたため、後者はセラス
に泣いて抱き付きルイズに見られたためである。


「君たちが目撃者か・・・では、状況を説明したまえ」

「中庭に居たら、突然ゴーレムが現れたんです。壁に拳で穴を開けたら、黒いメイジが入って行って・・・。そして
『破壊の杖』が入った箱を持って、ゴーレムに戻り森に逃げました。それで途中で土になって、犯人の姿は影も形も・・・」
「ふむ、後を追うにも手掛かり無しと言う事か・・・」
 ルイズの説明にオスマンが髭を撫でていると、ロングビル息を切らして現れた。

「ミス・ロングビル、どこに行かれたんですか! 国を恐怖のドン底に陥れた大怪盗が、宝物庫を襲ったと言うのに!」
 コルベールが興奮した声で尋ねたが、ロングビルは胸に手を当てて深呼吸をしてるため聞いていない。なんとか息を
整えると、ロングビルはオスマンに向き直った。

「報告します、近くの農民からフーケらしき人物を目撃したとの情報を得ました。馬で四時間ほど離れた森の中に有る
廃屋に、黒いローブを着た男が入るのを見たとの事です」
「オールド・オスマン、すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵士を派遣してもらわなくては!」
 犯人の居場所が判明した事に、コルベールは意見を述べた。だがオスマンは、首を横に振る。

「駄目じゃ、王室に頼むにも衛士隊が来るのにも時間が掛かり過ぎる。その間にフーケが逃げない保障など無い。
 それにこれは学園の問題じゃ、我々が解決しなくてはならん!」
 そこで咳払いをすると、オスマンは教師達に振り向いた。

「捜索隊を編成する。我こそはと思う者、フーケを捕まえて名をあげようと思う者は、杖を掲げよ」
 オスマンは周りを見回すが、教師は誰も杖を上げない。相手は巨大なゴーレムを操るメイジなのだ、当然の反応だろう。
だが、敵の技量を知るにも係わらず杖を上げる者がいた。目撃者である、三人の生徒だ。


「何をしてるんですか、貴女達は生徒でしょう! ここは教師に任せて・・・」
「誰も掲げないじゃないですか。それに相手に背を向けられて平然としていられるほど、私は腰抜けではありません!」
 ルイズが横を見ると、キュルケが嬉しそうに顔を歪めている。タバサは仕方ないと言う感じだが、まんざらでは無い様子。
そして後ろを振り返ると、セラスが了承の意味を込めて首を縦に振った。まだリップは顔が赤いが、異議は無いらしい。

そんな三人と二人を見て、オスマンは笑った。
「そうか、では君達に行ってもらう事にしよう。コルベール君、異議は無いの?」
「え? あ、いやその・・・はい、ありません」
「少しは彼女達を信頼してあげなさい、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だそうじゃからな」
「シュヴァリエの称号って・・・タバサ、それって本当なの?」
 教師と友人の視線が集中するが、タバサに反応は無い。それを無視する形で、オスマンは説明を続ける。

「ミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出であり、彼女が使う炎もかなり強力じゃ」
 キュルケは得意気に髪をかきあげ、ルイズに流し目を送る。負けるものかと、ルイズは可愛らしく胸を張る。オスマンは
脳細胞を活性化させ、なんとか褒めの言葉を選び出す。

「ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の娘であり、将来は有望なメイジと聞いておる。
 しかも、その使い魔は!」
オスマンはセラスの、特にデッカイ胸を熱い目で見つめた。それに気付いたルイズは舌打ちし、リップは妙に落ち込む。

「平民の身でありながら、グラモン元帥の息子ギーシュ・ド・グラモンを決闘で打ち負かしたそうではないか! そして隣
の者も、何やら不思議な能力を隠し持っとるようじゃが?」
「そ、そうですぞ! 何せ、二人はガンdむぐぅ!?」
「兎に角、フーケ討伐は三人の生徒に行ってもらう。他に志願したい者がおれば、一歩出たまえ!」
 コルベールの口を塞いだまま、オスマンは教師に一喝する。誰もいない事を確認すると、オスマンは三人に向き直った。



「魔法学園は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する!」
「「「杖にかけて!」」」
 ルイズ・キュルケ・タバサは直立すると、同時に唱和した。それからスカートの裾を掴み、恭しく礼をする。
後ろの二人はマネをして、銃を直立させ礼をした。

「魔法は目的地に到着するまで、なるべく控えるように。ミス・ロングビル、馬車の用意じゃ!」
「お任せ下さい。皆さん、着いて来て下さい」

 五人はミス・ロングビルの後を追い、宝物庫を走り去って行く。その姿を、教師一同は複雑な気持ちで見つめていた。

 ◇

フーケが潜む森へ向けて、一台の馬車が進んでいる。屋根が取り払われた荷車のような馬車の後ろでは、ゴーレムが
現れた場合の対処について話し合いが続いていた。上空ではタバサのウィンドドラゴンが、周囲を警戒している。
 キュルケが手綱を握るロングビルに話しかける。

「ミス・ロングビル、目的地まで後どのくらいでしょうか?」
「もうそろそろです・・・皆さん、準備をしてください」
 その言葉を聞いて、ルイズとキュルケはマントを外す。タバサが取り外した方が良いと言ったため、キュルケが理由を
聞くと『引っ掛けたり踏んづけたりしないため』との事。そしてゴム紐で髪を馬の尻尾のように括り、首に巻きつけた。
 セラスとリップは銃に弾を込め、前方に目を向ける。鬱蒼とした深い森で薄暗く、気味が悪い。ロングビルが手綱を
引いて馬車を止め、後ろを振り返る。

「ここから先は馬車では入れませんので、徒歩で向かいます」
 そう言うと、ロングビルは懐から杖を取り出して馬車を降りた。それに習い、ルイズ達も下車する。森の奥深くへと
続く小道を、ゆっくりとした速度で進んで行く。先に進んで行くセラスの腕に、ルイズが抱き付いた。



「ちょっとセラス、置いて行かないですよ。ただでさえ真っ暗で怖いのに、リップまで一緒になって」
「あ、すいませんマスター。明るいもんで、つい何時もの調子で・・・」
「明るいって、こんなに薄暗いのよ? 何で平然と進め・・・吸血鬼だから当たり前か」
「吸血鬼の夜は、人間の昼も同然ですわ。急いて急いていらっしゃいな、ご主人様♪」
 立ち止まって待っていたリップが、ルイズの疑問を解き明かす。頬がまだ少し赤いが、調子を取り戻したらしい。

そうこうしている内に、一行は開けた場所に出た。魔法学園とほど同等の広さの空き地が、森の中に広がっている。その
中心に、廃屋があった。もう随分と使われていないのか、ほとんど朽ち果てている。六人は森の茂みに身を潜め、廃屋
を見つめた。

「まだ移動していなければ、フーケは中にいるはずです」
「・・・作戦をたてる、コレを見て」
 タバサが地面に座り、五人が取り囲む。杖で絵を描き、自分がたてた作戦を説明した。
まず偵察兼囮が小屋に近付き、内部を確認。フーケがいれば、外に引きずり出す。小屋の中にはゴーレムを作る事は
出来ないため、必ず外に出るはず。そして出た所で、杖を抜く暇も無く攻撃。集中砲火で、フーケを拿捕するのだ。

「で、偵察兼囮は誰がするの?」
 キュルケの質問に、ルイズが目の前を指差す。正面に座って絵を見ていたセラスが、自分を指差した。
「私ですか?」
「そうよ、貴女が先頭に行って。腕っ節は強いんだから、大丈夫でしょ」
「・・・分かりました、じゃあ逝ってきます」
 ハルコンネンを正面に構え、小走りで小屋に近付いた。窓から中を覗いて見るが、人の気配は感じられない。酒瓶や
薪が転がった、狭い一部屋しかないようだ。
 壁伝いに移動して、ドアの前に立つ。後ろを振り返り、左腕を左右に振った。森から全員が飛び出し、足音を立てずに
近付いて来る。タバサが杖を振るい、罠が無いのを確認する。ドアを開け、セラスを先頭に入る。ロングビルは偵察のため
森に向かい、リップは警戒のため外に残った。


ルイズ達はフーケが痕跡を残していないか、部屋を調べ始めた。そしてタバサが机に置かれた箱の中から『破壊の杖』を
見つけ出したのだ。それを見たキュルケがタバサに抱きつき、猛烈な勢いで頭を撫でる。
「よ~しよしよしよしよしよしよしよしよし、偉いわタバサ、お手柄よ!」
「・・・・・・ブイ」
 髪をクシャクシャにされながら、タバサは勝利のVサインをする。ルイズは箱に手を入れ、破壊の杖を取り出した。

「これが破壊の杖? 変なの・・・それにしても軽いわね」
「・・・これって、まさか」
 セラスは近寄って、破壊の杖を見つめた。その時、外からリップの悲鳴が聞こえた。

「奴が来たわ!」
「どうしたのリップ、何が来たの!?」
 ルイズがドアを開けようとした時、屋根がツイスターの直撃を受けたかの如く吹っ飛んだ。頭上に広がる青い空に、
巨大なゴーレムの上半身が見えた。タバサが杖を振るい、巨大な竜巻を叩きつけた。続いてキュルケが杖を引き抜き、
巨大な火の玉でゴーレムを包み込む。だがゴーレムは、びくともしない。

「無理よこんなの、まずは退却よ!」
 ルイズが破壊の杖を持ち、外に飛び出した。キュルケとタバサが続き、セラスが最後に飛び出る。そこでは
リップが方膝を付き、マスケット銃に次弾を装填していた。セラスはハルコンネンを構え、引き金を引いた。


30mm対化物用砲ハルコンネンから発射された劣化ウラン弾は、鋼鉄の2.5倍の強度を持ってゴーレムの頭部を
撃ち抜いた。衝撃で後ろに倒れかけるが、足を踏ん張り転倒を避ける。地面の土を吸い上げ、すぐに頭部を再生させる。
セラスの方に振り向くと、ゆっくりと近付いて来た。

「セラス、次弾発射用意! 目標、ゴーレム胸部左部!!」
「ヤー!」
 薬莢を輩出し、焼夷弾を装填する。すぐに狙いを定め、引き金を引いた。轟音と共に弾丸が発射され、人間で言う心臓
に当たる部分に命中した。爆発によって大きな穴が開いたが、それでも致命傷にはならない。やはり土を汲み上げ、穴を
塞いでしまう。

「駄目ですマスター、銃撃が効きません!」
「じゃあコレを使って、破壊って名が有るんだから通用するかもしれない!」
 そう言って、ルイズは持っていた破壊の杖をセラスに手渡す。受け取った時に右手のルーンが光り輝いたが、二人は
気付かない。セラスは破壊の杖を肩に乗せると、照準器を立てて安全装置を外す。四角い照門に目を通し、ゴーレムに
狙いを定めた。
 何時の間にかゴーレムは後ろを向き、キュルケの魔法とリップの魔弾を受け止めている。上空からはタバサがウィンド
ドラゴンに乗って、氷の刃を飛ばしている。無防備な背中が、巨大な標的のように佇んでいる。セラスはルイズに怒鳴った。

「後ろから離れてください、爆風が来ます!」
 ルイズが慌てて横に伏せると、セラスはゴーレムの腰に狙いを定めてトリガーを引いた。

 ボンと花火のような音を響かせ、白煙を引きながら安定翼を開いた15cmの成型炸薬弾頭が発射された。真っ直ぐ
ゴーレムの腰に命中すると、鼓膜が破裂しかねないほどの爆音が轟き、ゴーレムが上半身と下半身に引き千切れた。
上半身は後ろに倒れ、下半身は前に倒れた。そして、以前のように土の山と化した。ルイズは呆然とした表情で
見つめていたが、腰が抜けたのか座り込んだ。キュルケ達が走って来るのを眺めながら、セラスはハアッと溜息をついた。


「凄いわセラス、今のって何だったの!?」
 着陸したウィンドドラゴンからタバサが降りると同時に、キュルケがセラスに抱き付いた。恐ろしいほどに変形する
双方の巨乳に、ルイズは舌打ちする。崩壊したゴーレムを見ていたリップが、ふと呟く。

「ロングビルは?」
「そう言えば先生がいないわね、確か森に入ってったきりのはず・・・あ、出て来た」
 キュルケが指差す先を見ると、頭を左手で撫でながらミス・ロングビルが茂みから出て来た。かなり痛そうな様子に、
ルイズが尋ねる。

「どうされたんですかミス・ロングビル、フーケは見かけましたか?」
「見かけましたが、捕らえられませんでした。頭を殴られて気絶してまして・・・すいません」
 そう言うと、ロングビルは頭を下げた。ルイズらが慰めの言葉をかけるのを見ながら、セラスは破壊の杖を見ていた。
と、急にロングビルが立ち上がってセラスから破壊の杖を取り上げた。

「ロングビルさん?」
 セラス達が困惑の表情を浮かべる中、ロングビルは後ろに下がりつつ破壊の杖を五人に向けた。優しそうだった目が
吊り上がり、鷹のような目付きに豹変している。

「皆さん、この旅は大変ご苦労様でした。この土くれのフーケ、無事に破壊の杖の使い方が分かって嬉しい限りです。
まさかゴーレムを破壊してしまう程の破壊力が有ったことには、驚きを禁じえません」
 感謝の言葉を喋りながら、フーケはニヤニヤとした笑みを浮かべる。タバサが杖を振ろうとしたが、破壊の杖を向けら
れてしまう。
「おっと動かないで、破壊の杖は貴女達をピッタリ狙ってるわ。全員、杖を遠くに投げなさい」
 仕方なく、ルイズ達は杖を捨てた。これでメイジは、攻撃や反撃が出来なくなった。セラスとリップは、黙ってフーケを
見つめている。

「そっちの二人は、銃を捨てなさい。貴女達の持つ銃は、なんだか厄介や武器みたいだからね」
 それを聞いたセラスは振り向いて、リップに妙な合図を送る。右手でフーケを指差し、次に空を指差し、手を握り締める。
そしてリップを指差すと、自分の首を指差し手で叩いた。互いに頷き合うと、二人は銃を捨てる。


「何を企んでるのか知らないけど、無駄な足掻きだよ。じゃあ短い間だったけど、さような・・・ら?」

フーケの声が急に止まったため、目をつむっていたルイズは前を見た。
そこには一瞬でフーケの目前に移動したセラスが、破壊の杖を奪い取っていた。そして背後に移動したリップが首に手刀を
叩き込む。フーケはあっさりと意識を手放し、地面に倒れこんだ。あっと言う間の出来事に、キュルケとタバサは目を
見開いたまま立ち尽くしていた。


「まさかミス・ロングビルが土くれのフーケだったとはな、美人だったもんで疑いも無く採用してしもうたわい」

 学園長室で、オスマンは帰還した五人から報告を受けていた。その場でフーケを秘書として採用した経緯を聞いて、
ルイズ達と同席したコルベールは呆れてしまった。居酒屋で何処の誰とも知らないメイジの給士に媚を売られ、
尻を撫でても怒らないと言う理由で魔法学園の秘書に任命してしまう。それは明らかな、典型的なハニートラップだった。

「やれやれ、美人はただそれだけで、いけない魔法使いじゃな! 上手い事を言ったな、ちょいとメモしておこう」
 そう言って引き出しからメモ帳を取り出そうとして、生徒と使い魔と教師のトリプル冷たい視線を向けられている事に
オスマンは気付いた。誤魔化そうと照れたように咳払いをして、厳しい顔つきにフェイスチェンジする。

「君達は見事に土くれのフーケを捕らえ、城の衛士に引渡せた。『破壊の杖』は取り返し、無事に宝物庫に戻った。
これにて、一件落着!」
 最後の一文は分からなかったが、ルイズとキュルケとタバサは礼をした。セラスとリップも、遅れて礼をする。
オスマンは三人の頭を撫でながら、嬉しい知らせを言う。

「ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストーには『シュヴァリエ』の爵位を、ミス・タバサには精霊勲章の授与を
宮廷に申請しておいた。追って、沙汰があるじゃろう」
 三人は歓喜の笑顔を浮かべ、更に深く礼をする。そしてオスマンは後ろの二人に目を向ける。



「申し訳ないが、お主らは貴族では無いため賞などは与えられない。代わりと言ってはなんじゃが、『フリッツの舞踏会』に
特別に参加する許可を出そう。予定通り執り行うから、急いで準備するように」
「そうでしたわ、フーケの騒動で忘れておりました!」
「舞踏会の主役は君達じゃ、存分に着飾り存分に楽しみなさい」
 歓喜の声をあげながら、キュルケはタバサを抱き締める。それを見つめながら、セラスはルイズに『フリッツの舞踏会』
が何か質問した。生徒が着飾って踊って食べて飲む騒ぎだと教わり、セラスとリップは納得する。

「では三人は部屋に戻りなさい。後ろの二人は、話はあるので残るように」
「マスターは先に戻っててください、すぐに行きますんで」
 セラスの言葉に頷いたルイズは、キュルケとタバサの後を追って部屋を出た。二人は椅子に座り、オスマンと向かい合う。

「何やら私に言いたい事があるように見えたのでな・・・言ってごらんなさい、分かる事は教えてあげよう」


セラスはバルコニーの枠に背を預け、華やかな会場を座って眺めていた。
ホールの中では着飾った生徒や教師たちが、豪華な料理が盛られたテーブルを囲んで楽しそうに喋り合っている。セラスは
部屋にハルコンネンを置いて服の汚れを落すと、ずっとバルコニーで見学しているのだ。
 因みに部屋を出る際にデルフリンガーに呼び止められ、何が有ったのか根掘り葉掘り聞かれた。そしてフーケ討伐に置いて
行かれた事にショックを受け、泣いてしまった。そのため、騒音被害を防ぐ目的で今も部屋に置いて来たままだ

「それにしてもビックリしたなぁ・・・まさか私とリップさんが、伝説の使い魔になってたなんて・・・・・・」
 空に輝く双月を見上げながら、セラスは学園長室でオスマンと語った会話を思い出す。

三十年前、森を散策していてワイバーンに襲われた事 破壊の杖を持った持ち主に助けられ、倒れたため学園に連れて行き
介護した事 死んでしまい、墓に一本を埋めて一本を宝物庫に保存した事 その話を聞き、リップバーンが口を開いた。

 「助けたのは旧ドイツ陸軍の武装親衛隊で、『破壊の杖』は無反動砲のパンツァーファウストだ」と、オスマンに語った。

その後、セラスの右手に刻まれたルーンに話が変わった。オスマンがセラスの右手の手袋を外した時、リップが驚きの声を
上げた。そして左手の手袋を取ると、オスマンの目が光った。そこには、セラスと同じルーンが刻まれていたのだ。
オスマンの説明によると、二人に刻まれたのは伝説の使い魔『ガンダールヴ』の印だと言う。

        神の左手ガンダールヴは、右手に槍、左手に剣を握り、どんな武器でも使いこなしたと言う。

     セラスが右手に掴む、標的を貫くハルコンネン。リップが左手に掴む、標的を切り裂くマスケット。

  それは伝説の使い魔『ガンダールヴ』の能力を、二人に分け与えたかのような不可思議な偶然とも言えた。


右手に刻まれたルーンを眺めていると、ホールからルイズの名が響いて来た。見ると、ルイズが全身を純白で覆ったかの
ような姿で門から入ってくる所だった。あまりのビフォーアフターぶりに、流石のセラスも頭の回転が止まってしまう。
 あちこちからダンスの申し出を受けるルイズは、誘いを断りながら向かって来る。そしてセラスの目の前に立つと、
腰に手を当てて呆れた声をあげた。

「何してるのよセラス、こんな所で月見? 中に入って食事くらい・・・吸血鬼だから無理か」
「はい、そんな訳で舞踏会を高見の見物です。見てるだけでも、けっこう面白いですよ」
 セラスは目を細めながら、ルイズを見つめる。まるで、どこかの城の王女様だと錯覚しそうだ。リップの姿が見えない事に
気付いたルイズが、セラスに所在を尋ねる。

「そう言えばリップはどうしたの、もう部屋で寝てるの?」
「リップさんなら・・・ほら、下で踊ってます」
 セラスは立ち上がると、バルコニーの下を指差す。ルイズが下を覗き込むと、確かにリップは踊っていた。

ホールの楽士達が奏でる音楽に身を任せながら、マスケット銃を振り回して歌っている。近くのベンチに座っているのは、
メイドのシエスタらしい。横にワインが置かれているのを見るに、一緒に飲もうとして見学しているようだ。


「あっちはあっちで楽しんでるみたいね・・・セラスはどうするの、もう少しバルコニーに残る?」
「いえ、ここで休んでます。色々と考えたい事も有るんで・・・」
「そう・・・じゃ、私はホールに戻るわ。キュルケが踊ってて、ヴァリエール家の私が踊らない訳にはいかないからね」

 そう言うと、ルイズはホールへ戻って行った。すぐに男子に取り囲まれ、ダンスを申し出を受けている。そして近く
で踊るキュルケに張り合うかのように、優雅な踊りを始めていた。美しき情景を眺めながら、セラスは再び腰を下ろす。

「これからどうなるのかなぁ・・・インテグラ局長、ウォルターさん、マスター・・・みんな生きてるかなぁ」

 セラスは空を見上げ、元の世界の仲間を想う。前からは楽器の音を、後ろからカール・マリア・フォン・ウェーバーの歌
を聞きながら、二つの満月を見つめ続けた・・・・・・。


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