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ゼロの旋風-03



「新たなる仲間、H(ハルケギニア)J9誕生!」

月夜に映える 大巨人
肩に乗りたる その主
なす術さぐる 闖入者
異世界ゆえに 戸惑いも(ナレーション:柴田勝秀)

もしこれが俺が元いた世界で、J9として依頼された仕事の最中で、しかも相手がコネクション構
成員といった「敵対勢力」であることが明らかであったなら、躊躇も容赦も一切なく「即」急所を
狙って射殺し、

「今度生まれ変わる時には、いい子に生まれくるんだよ」

とその死体に向けて軽口を叩いていたはずだ。ついでにあのゴーレムも、ブライガーのブライソー
ドで瞬殺出来るだろう。

だが、今は状況が違う。
第一に、少なくとも現時点では、契約している「ご主人様」であるルイズに直接の危険が迫ってい
るわけではない。もっとも、本人自身もその2人の学友達も対決姿勢満々の意気軒昂だが…

第二に、ここが異世界である以上、自分や主人の身に危害が加わる可能性がない限り、この世界に
大きな影響を及ぼすような干渉の類は闖入者である俺はなるべく避けるべきだ、という俺自身の信
念がある(逆に、俺たちがいた世界に異世界からの闖入者が来て殺人などをしたら、俺たちは不快
に思うだろうから)。俺は戦士ではあるが、決して血を見るのを楽しむ殺人狂ではないし、自分で
言うのもなんだが必要以上に好戦的でもないつもりだ。一応…

第三に、これが最も重要だが、これほど大掛かりなゴーレムを作れるような術者で、しかも魔法学
院という重要施設に堂々と侵入して犯行に及ぶことから考えて、奴には相当大きな背後関係がある
可能性を俺は想起したからだ(一見些細と思えるような事件の背後に、実はコネクションの大掛か
りな陰謀の影があったことはザラだったという俺自身の経験に基づく)。だとしたら、ここで「実
行犯」だけを殺ったところで、背後の黒幕が健在なら禍根は残り続けることになる。
ましてや、相手が本当に、昼間に武器屋の店主から聞いた『土くれのフーケ』であれば、なおさら
だ。もっとも、フーケならば「貴族のお宝」ばかりを狙う理由を個人的に知りたいという俺自身の
願望も含まれてはいたが…

そして第四に、物理的な制約として、俺の手持ちの武器であるブラスターのエネルギーを補充する
手段はこっちの世界では今のところまだ見つかっていない。つまり撃てる回数は限られてるってこ
とだ。無論、ナイフや長剣デルフ程度の武器であの巨大ゴーレムを相手にするのは論外だ。

…と思考をめぐらしてこの場での最適解…「最良の選択肢」は、

1)ゴーレムを動かしている主の、
2)杖を握っている右腕を、
3)ブラスターの出力を抑えて撃つことで、
4)生かしたまま賊を捕らえて、動機や背後関係について徹底的に泥を吐かせること、

との結論に達した。
幸いなことに、賊自身がゴーレムの肩の上に姿を見せてくれている。術者の魔法を使用不能にすれ
ばゴーレムも崩れるはずなので、数日前の対ギーシュ戦の時と同様、杖の使用を封じるべく奴の腕
を狙うことにする。杖だけを狙えれば一番良いが、さすがに異世界へ来て初めてのブラスター射撃
故にそこまで細い標的に当てられるか不安なので、より太くて狙いやすい手首にしたのだ。

ブラスターを手に取り、用心鉄に指を入れて銃を数回転させて銃把を握る。安全装置を解除し、本
体左側の出力調整目盛りを「ショック最小レベル(最弱)」に合わせた。無論、エネルギー節約と、
万一狙いが狂った場合の相手の殺害を防止するためだ。この間、約2秒。

それにしても相変わらず武器を手に取った時に発動している『正体不明の能力』は、身が軽くなり
五感が研ぎ澄まされて、根っからの「戦士」である俺には気持ちがいい。ブラスターを「射撃目的」
で握るのも、この異世界では初めてなのに、不安感より高揚感と自信の方が、なぜか勝る。

「お嬢とお二方、危ないからちょっくら後ろに下がっててもらえないか?俺に考えがある。」

「どうする気なのキッド?あんなバケモノ、いくらあんたでも相手が大きすぎるわっ!」

「なーに、心配ご無用。お嬢様方はこのキッドさまの妙技をとくとご覧あーれ!イェ~イ!」

「いいわダ~リン、あなたの腕前、あたしがしっかり見届けてあげるわよぉ~イェ~イ!」

「…敵は強大。おそらく土のトライアングルクラス以上。十分注意…」

お嬢様方を背後に下がらせて、膝撃ちの姿勢から俺はゴーレム上の術者の右手首を狙った。幸い、
そのゴーレムは俺たちの方には向かってこない。術者の奴はどうやら俺たちに気付いていないか、
たとえ気付いていても、少なくとも現時点における自分の目的遂行上の支障とはならない「取るに
足らない存在」としか認識していないかのいずれかだろう。
…すごいぜ、距離はたっぷり百メートル以上はあろうかというのに、レーザー利用超高倍率ターゲ
ットスコープも顔負けの精度で、標的の狙点とした部分が手に取るように「見え」て、おまけにブラスターの射撃後の「未来着弾地点」まで知覚できるようだ。
俺の意識内で両者が重なった瞬間に引き金を絞る。その時、手首を極細の熱線で打ち抜かれた相手
の悲鳴が聞こえたように思った…いや、おそらく実際に聞こえたのだろう。何せこの能力のことだ
から、標的とした相手の周囲の音声も俺に知覚できるようになっている可能性は大だ。今のピンポ
イント超精密射撃成功が示すように、召喚後、俺に付加された能力は只者じゃない!

当然のように奴は握っていた杖を落とし、程無くゴーレムはその巨体を崩し始めた。

このままでは奴も数十メートル(こちらの単位ではメイル)の高さから転落するか、さもなければ
崩れたゴーレムの残骸に生き埋めになる可能性もある。そうなっては生かして口を割らせることが
できない!背中のデルフも、

「相棒!急げ!このままゴーレムが崩れると、奴も巻き添えになる可能性が高い!」

と叫んだ。

俺は腰のホルスターにブラスターを戻し、その銃把に手をかけて、先程よりは弱いながらも『例の
能力』を保ったまま、まるで低重力下にあるような速さで元ゴーレムだった崩壊中の土砂の山に接
近し、自分でも信じられない速度と身軽さでその頂上まで駆け上がり、右手首を押さえて苦悶の表
情と声を発する奴さんを抱き上げた…

って、女!?暗くて表情は確認できなかったが、体型や「匂い」からも明らかにその賊は女性だっ
た。狙った時は、とにかく手首だけを狙って確実に撃つことだけを考えていたから、相手の性別に
までは頭が回らなかったが…これがボウィの奴だったら口笛を吹いてデレるところだろう。

「口を閉めてろ!これだけの土砂が一気に口から入ったら窒息間違いないからな!」

抱き上げながら彼女に警告すると、俺はお嬢様方が待つ方向へ一気に駆け出した。時々、抱き上げ
ている彼女から、指を両手首のナイフに当て直して…
やはり弱いとはいえ、『あの力』が発動したので、その力を借りて加速できた。
その女を救い出すために抱き上げて走っている最中、俺は念のために、触っただけで対象が武器で
あるか否かとその性能を判別できる『例の能力』の特性を最大限に利用して女の体を精査した。こ
うした大掛かりな犯罪では、犯人が巨大コネクションの工作員や反政府組織のテロリストだった場
合、自殺用の毒薬や最悪の場合、自分自身を含めた証拠隠滅と相手組織への少しでも大きなダメー
ジを与えることの一挙両得を狙って自爆用の強力な爆薬を身に付けていたり体内に埋め込んでいる
場合も、俺の経験上決して少なくないからだ。

幸いなことに、『例の能力』は彼女が特にそのような危険物を所持していないことを俺の意識の深
層に教えていた。もっとも、俺が見聞きした範囲でのこの世界の科学技術レベルでは、小型強力な
爆薬の作成はもともと困難だろうが…

それならば、こいつの杖の使用さえ封じれば、後はあのお嬢様方でも十分相手できそうだ。キュル
ケはかなりの『火』の使い手だし、タバサは大人しそうな外見を一見していたが、俺から見れば若
さに似合わぬ殺気を秘めていた。あれは「戦士」の気配で、かなり「出来る」使い手と見るべきだ、
、と俺の勘が教えている。だから昼食時での批評のように、ギーシュ戦で俺の技量を正確に見抜け
たのだろう。第一、二人とも「トライアングル」クラスの魔法の使い手だ。ルイズも…まぁ、魔法
の発動がいつも爆発という結果になっているから、こういう相手の場合はかえって好都合かもしれない。
万一この女が右手の負傷を省みず格闘戦に持ち込もうとしたなら、お嬢様方の盾となってこの俺自
身が相手をすればいい。

少々余談だが…


それにしても、この世界の支配階層である「メイジ」ってのは、つくづく『哀れな奴ら』だと思う。
なんせ、どんなに高位高官かつ高度のメイジランクを誇ろうと、「杖」無しでは、どんな初歩的魔
法も発動できないのだから。手首さえやられたら単なる役立たずに過ぎない。


「獲物を捕らえてまいりましたのでご笑納を、お嬢様方、イェ~イ!」

元ゴーレムの土の山を背景に、俺は大仰な身振りと台詞で3人の前に賊を置いた。

奴さんは、自分の身に起きたことがまだ理解できない当惑した様子で、痛む右手首を左手で押さえ
ながら、呆然と俺や周囲に立つ3人の少女を見回していた。

「さすがわがダ~リン、見事な腕前だわ~。ではでは、獲物を拝見…ってあんた、学院長の秘書さ
んじゃない!?どういうこと、これって!?」

「…学院長秘書ロングビル女史である可能性大であること、認めざるを得ない…」

「わたしも思い出したわ!ほらキッド、あんたもついこの前、学院長室で会ったばかりでしょ!?」

そういえば、ルイズと契約した直後に、一応この世界では『平民』という区分ながら「人間の使い
魔」という特殊性から、俺にいろいろと特別な便宜を図ってくれることになったため(例:学院の
図書館での一定の図書の閲覧許可、生徒が使用していない時の各種体育施設や運動場の使用許可、
食事の際の厨房への出入り許可他<ただしそれらの対価として、特殊事例ゆえに学院長や教員によ
る俺に対する各種調査への協力を要求された<後で知ったが、これらは俺が「最低限度でも人間的
に学院内で過ごせるように」との配慮から、ルイズと彼女の主担任教師コルベールが学院長に訴え
て実現してくれたものだったそうだ)一応その説明と手続きのためルイズと一緒に中央塔最上階の
学院長室へ連れて行かれた時に、応接してもらった記憶がある。あの時の秘書だったか!

だとすると、事態は重大だ。彼女に対する詮議は慎重に行う必要を感じた(なにせ「学院長秘書」
という、いわばこの学院内の「要人」の一人といえる)。幸か不幸か、少なくともこの場には俺た
ち以外の人間の姿は見えない。他の生徒や教師は、この騒動に気付かないのか、あるいは巨大ゴー
レムの出現という事態に恐れをなして見て見ぬ振りをしているのか、この中庭に姿を見せる気配が
今のところ全く感じられない。
本当に大丈夫か?この学院…暮らしている身として少々不安になったが…

「誰か来たら面倒だ。ここは皆さん、ひとまず物陰に隠れて話を続けた方がいいかも」

どうやら彼女に対して抱いた懸念は他の3人も同様だったようで、うんうんと頷くや否や、手近な
物陰に向かって5人で移動した。無論、賊を抱き上げて走ったのは俺だ。

「相棒、その植木の物陰がいいや。そこならこの学院で現時点で人間が起きている部屋の全ての窓
から死角になるはずだ!」

と背中のデルフが言うので、一応信用することにした。

「ここなら、他の連中の目はないようだな。では、尋問を始めさせて頂きましょうか、侵入者さん」

ようやく事態が飲み込めながらも、手首をやられて魔法が使えない故か、わずかな光でも分かる程
の悔しそうな表情を浮かべて彼女は口を開いた。

「殺すなら殺しなよ…あんたたち恵まれきった貴族連中に話すことなんてないね!」

「なんですって!?この盗人風情がっ」

「よしなさいよヴァリエール、相手を不用意に刺激しちゃ、聞きたいことも話してくれないわよ」

「…相手も一応メイジ、それもゴーレムの大きさと動きからして、かなりの高位能力者。普通なら
盗賊をせずとも十分な身分・収入が保証されるはずの実力クラス。従って相当な『訳あり』…」

確かにメイジの中には、投機失敗や債務超過といった経済的事情や、権力闘争の結果政争に敗れた
などといった政治的事情から『メイジ』でありながら貴族階級から没落したり追放された者達が、
傭兵化したり、用心棒や子女の家庭教師といった上級貴族の家事使用人と化したり、またある者達
は正業に「就かない」か「就けない」かして犯罪者化し、最悪は自分達を没落させた現体制への復
讐を図るテロリスト化する例も多々みられることをルイズから教わった。彼女もそうした『浪人メ
イジ』の一人ということか。

「俺はあんたが何者かはあえて尋ねない。ただ、なぜここを狙ったかが知りたい。この学院には、
俺を召喚し、現時点では俺を養ってくれている『ご主人』がいる。俺はその主人を守る『使い魔』
として、その理由を知りたい。大丈夫、これ以上、肉体的な危害を加えるつもりは俺にはない」

しばらくの沈黙の後、うつむき加減で彼女は口を開いた。

「…憎かったのさ、あたしもかつて貴族だったけど、いろいろあって貴族って奴らが大嫌いになっ
た。だから何回も大貴族の邸宅ばかり狙って、それらの家の『家宝』のマジックアイテムを取り上
げて奴らの鼻を明かしてやったのさ。まっ、いい収入源になるってこともあったけどね…
そしてこのトリステイン魔法学院の宝物庫に、飛び切りのマジックアイテムが保管されてるって噂
を聞いてね、それであの色ボケ学院長行きつけの店を調べてそこに店員として応募して、あの色魔
オヤジのご機嫌を取って、学院長秘書としてここへもぐりこんだってわけさ…」

「ってことは、やっぱりあんた『土くれのフーケ』なのね。でもあれほどの実力だったら、さぞや
名のある貴族だったはずのあんた、がなんで自分自身も属していたはずの貴族階級を憎むわけ?」

「…まぁ、あんた達に話しても分からないかもしれないけどね、王家や貴族社会の醜悪なゴタゴタ
に巻き込まれて、愛する家族を殺され、財産も何もかも奪われちまったのさ…自分がそれまでいた
世界がいかに腐って汚れていたか身を持って思い知らされて、それで一転して、奴らにせめて一矢
報いたいと思うようになって、この稼業を始めたわけさ…」

…俺の杞憂で、どうやら背後の無い単独犯だったようだ。あまりに潔すぎるし、口も軽すぎる。
第一、囚われた場合の対策を何ら準備していた様子が感じられなかった。

それにしても、彼女の言葉は俺にはなんとなく分かる気がする。自分が信じていたものに裏切られ
たが故に、かつて自分が所属していた世界あるいは組織に復讐することをJ9時代に依頼されたこ
とも1度や2度ではない。いや、俺自身、軍隊という組織を信じて入ったが故に、裏切ら
れ幻滅して、たまたま勧誘されたアイザックの『J9』に走った人間ではないか?

と、そこで『J9』の文字が脳内に浮かんだ時、俺にひらめくものがあった。

「なぁフーケさんよ、取引しないか?」

「えっ!?」

「あんたが『土くれのフーケ』なら、少なくとも平民、特に貧しく虐げられた人々の苦しみは分か
っているだろう。」

「まぁね…少なくとも、自分自身がいかに『守られた』世界で過ごしていた世間知らずであること
とだけは実感させられたよ…だから時々、気まぐれで、盗品を売った金の一部を、自分が印象に残
った貧民街にばら撒くこともしたさ。おかげであたしのことを『義賊フーケ』ともてはやす連中も
いるみたいだけどね…あたしは単に一時的な義憤に駆られてやっただけなのに…あたしの本当の目
的は別にあったことも知らずに…」

「だったら話は早い。どうだい?ここにいるみんなで、チームを組んで、世の強者に虐げられてい
る『弱者』のために、晴らせぬ恨みを代わりに晴らす稼業を始めないか?」

「はぁ?」

ロングビルことフーケのみならず、3女生徒も目を丸くしながら俺を見た。

「俺は前にいた世界で、軍を辞めてから、法や権力の壁にぶち当たって本来泣き寝入りさせられる
人々の恨みを代わりに晴らす稼業をしていた。こっちの世界でも、『権力』を握っている連中は、
やりたい放題。地道に真面目に日々働いている者達が一方的に搾り取られている現実がある。だか
らこそ、そうした虐げられた人間の側に立って、少ない報酬であっても、搾り取る強い奴らに立ち
向かう存在が必要なんじゃないか、って俺は思うんだ」

そして一呼吸置いて、理念面からのみならず、俺は『利得』という現実面からも論じた。

「もちろん、金集めだけだったら、富み栄えた貴族層御用達の稼業にした方が儲かるだろう。だが、
それでもなおかつ、あえて困難で見入りも少ない階層を相手にする方が、競争相手がいない分、そ
れだけ『需要』は見込めるんじゃないか?富裕層に媚び諂おうとする奴らは多いから、それだけ競
争も激しく、従って『選ぶ側』である富裕層側は選り取りみどりなのに対して、売り込む側はどれ
だけ媚びても買い叩かれるのが常だ。だったら、たとえある程度小額であろうと、弱い立場の人間
の側に立って、社会的強者、とりわけ権力を振りかざす連中を懲らしめる稼業ってのは『小利多売』
の効果で、長い目で見れば依頼する側もされる側も得じゃないか、とビジネスとして十分に採算が
見込めると俺は思うんだが…しかもこの場には、あんたにミス・ツェルプトー、それにミス・タバ
サと土・火・風と、水以外の3系統のトライアングルクラスメイジが3人も揃っている。我が主で
あるミス・ヴァリエールは、系統魔法こそ使えないが、『爆発』という結果を生めるなら、悪党退
治にはむしろもってこいなんじゃないのかい?」

「ちょっと、キッド!今の言い方、主であるわたしに対してかなり失礼よ!それに盗賊を見逃して、
あまつさえ仲間にしようなんて!」

「…フッ…ものは言い様だね。でも、あんたが言うとなぜか説得力があるよ。あたしが見たところ、
あんたは相当な腕利きの殺し屋だったね。少なくとも二桁は殺ってるだろ。なのに、こんなに涼や
かな表情をしていて、それでいて温かみを感じさる…さっき自分の危険も省みずにあたしを助けて
くれた時にはっきりと感じたよ。あたしの勘に過ぎないけど、あんたは信頼できる」

「お褒め頂いて光栄だ。ただ一つ訂正させてもらえれば、元いた世界で殺ったのは少なくとも実数
四桁に達する。」

フーケはもちろん、他の3人も驚いた表情で俺を見据えた。無理もない、この世界では、ロボット
やミサイルやレーザー砲といった大量破壊兵器は存在しない。実際、ブラスターによる射撃のみな
らず、ブライガーの戦闘担当要員としてブライソードやブライカノンそして何よりブライガー自体
の三本指の手や頑強な足を操作して殺した人間の数は、各コネクションのロボット・戦闘機・宇宙
艦船・車両や惑星・衛星上の基地あるいは宇宙ステーション内にいた者を含めれば四桁どころか、
場合によると五桁すなわち万単位になっているかもしれない。特に水星決戦以降では、ヌビアと対
立していたオメガコネクションの連中を殲滅し、さらにその後ヌビア本体やその傘下に入った各惑
星コネクションの連中との戦いでは、当たるは幸いとばかりに船や基地・コロニー・ステーション
ごと斬り、撃ち、投げ、殴り、蹴り、握り、踏み、潰しまくったからなぁ…ひょっとしたら、ヌビ
ア関連だけでも十万単位になるかも…

この世界の魔法では、いくら強力でも千人単位の人間を、焼く火系魔法や、溺れさせる水系魔法や、
吹き飛ばす風系魔法や、一度に踏み潰すゴーレムを作る土系魔法というものは想像できないだろう。

「無論、人殺しは人殺しさ。時には、好きだった女の兄貴でしかも長年の親友だった男すら手にか
けたり、軍隊時代の元同僚と危うく銃撃戦という場面になったり、またある時は長年憧れてその射
撃の腕に追いつく目標としていた人の最期を看取ったこともあった。多くの人間が暮らす町のよう
場所を、弱い人々に害なす悪党ばかりが居るという理由で全滅させもした。それでも俺は自ら銃に、
そして戦いに生きる道を選んだ。そのことを後悔する気も、また言い訳する気もない。だからとい
って、人の命の重みが分からない訳じゃない。殺した命の重さを一生背負う覚悟と決意はあるつも
りだ。だからこそ、安易な人殺しはしたくないし、助けられる命なら助けたいと思うまでだ…
言い訳はよそう…俺は矛盾の塊であることを隠すつもりはない」

昼間俺が話した内容を思い出したのだろう。フーケもさることながら、3人の女生徒達の表情が重
いものとなるのが分かった。俺の体験談の背後にあるものに思いが到ったが故だろう。

「フッ…まぁいいだろう。どうせこんな稼業は長く続けられるとは思っていなかったし、逮捕され
て身の破滅につながるよりは、あんたが言う『始末屋稼業』の仲間になった方がいいかもね。それ
に、腐った貴族連中を懲らしめることも続けられそうだし、そこそこの実入りも見込めそうだしね」

「面白そうだから、あたしは賛成だな。ちょうどトリステインでのボーイハントにも飽きてきたと
ころだし、何より思いっきり暴れまわれそうなところにツェルプトーの武門の血が騒ぐわ。無論、
ダーリンと一緒にいられることが一番の魅力だ・け・ど!」

「…同意、武人としてのキッド、あなたについてもっと知りたいしもっとあなたから学びたい…」

「しょうがないわねぇ。まぁ、非合法なことをするのは気が進まないけど、世の中の虐げられた人
々を守るために力を尽くすことが、『貴族』たるものの本来の責任だと思うし」

「とか何とかいっちゃって、あんた、あたしにダーリンを取られるのが怖いんじゃないの」

「バッバカ言わないでよね!わたしは純粋に貴族ヴァリエール家の人間としての本分を尽くしたい
だけなんだからぁ!」

「はいはい、ではそういうことにしておきましょうね」

「ではでは、合意成立ということで。で、一応チーム名なんだが、俺が前の世界で同様の仕事をし
ていた時にちなんで、『J9』としたい。ただし、ここはハルケギニアだから、俺の世界の文字で
『ハルケギニア』と書く際の頭文字『H』をつけて、『HJ9』としたいんだが、どうだろう?」

「いいわ、洒落てるんじゃない?話でしか聞けなかったダーリンの活躍が実地に見れる期待にあふ
れるような名前よっ!」

「…異存は無い…」

「まぁいいわ。キッド、今後は単なる使い魔や用心棒じゃなくて、仕事を共にする『仲間』として
も付き合ってもらうんだからね!だから戦慣れしたあんたの知識や技能を惜しみなくわたしにも教
えなさいよ!」

「へいへい、合点ですお嬢様。イェ~イ!!」

「なかなか今後が楽しみな『仲間』たちじゃないか。あと、ちなみにあたしの本名はマチルダ、マ
チルダ=オブ=サウスゴーダだよ。学院の『表』ではともかく、仲間内だけの時はマチルダって呼
んでくれたら嬉しいね」

マチルダねぇ。略して「おマチ」って呼んだら、元祖のマチコ=バレンシアにどう思われるだろう
か?もっとも、元の世界の「お町」がボウイやアイザック同様にまだ見つかっていない以上、とり
あえずマチルダを「おマチ」呼ばわりする支障はないだろう(再会したら、その時にまた考えよう)。
「そうかい、ではこれからよろしくな、ロングビルでもフーケでもない『おマチ』さん」

「で、HJ9の件は決まったとして、当座の急務として、この騒動の後始末はどうするの我がダー
リン?」

「そこはこのキッド様、抜かりはないでございますよぉ!」

俺がそこで、4人に口裏合わせとして説明した内容は次のようなものだった。

1)俺たちがゴーレムに気付き、中庭に飛び出したことまでは事実どおり。
2)宿直教員がサボっている様子に憂慮して、おマチことロングビルが代わりに夜回りをしていた
最中にゴーレムによる襲撃を目撃。
3)そこで、遠方から駆け寄ってくる俺たちに気付いたロングビルが、生徒に害があってはならな
いと一人で賊に挑み、結果、手を射抜かれる負傷。なお、賊が彼女の手を傷つけるために用いた手
段は不明(ひょっとしたらマジックアイテム?)
4)ロングビルが賊に傷つけられるのを見たこの俺キッドが、とりあえず手近に転がっている石を
探し、何とか見つけて賊目掛けて投擲。見事に賊の体に命中し、ゴーレムは崩れる。
5)賊に負傷させられたロングビルを救出することを優先したため、その隙に賊は「フライ」の魔
法を使ったかマジックアイテムを使ったか、とにかく飛んで逃げられた。

というものだ。

「そんなにうまくいくかしらねぇ~キッド、確かにあんたの武人としての戦術的才能は買いたいけ
ど…」

「きっとうまくいくと思うぜ相棒。だってよぉ、この事件の詳細を目撃できている奴は、少なくと
も『伝説の剣』であることを誇るこの俺様が感知している限りじゃ、ここに居る5人だけみたいだ。
当直の教師すら出て来やがらねぇ」

「だってさ、というわけで、朝一番に学院長にみんなで報告に行こう!誰がなんて言おうと、それ
で全てうまくいくさ、きっと…」


こうして、俺はこのハルケギニアの地で、新たな仲間を得て、新たなる『J9チーム』を結成した。
下のJ9の仲間のことを忘れてはいないが、かけがえのない、おそらくは生死すら共に出来るであ
ろうと見込める仲間と、新天地で出会えたと今は思いたい。


なお事件の後始末がどうなったかの後日談は。

結局、学院の方では俺たちが口裏合わせした内容が公式のものと認められることになった。もっと
も、ゴーレムが出てきたあの場に実際に居たのは結局俺たちだけだったのだから、そこでの出来事
の詳細が他の人間が目撃するところとはならなかったから無理からぬことでもある。たとえ目撃し
ていたにしろ、外に出ずに室内から窓を通して見ていただけでは、双月の下とはいえ人間の細かい
動きやその発言までは分かろうはずもない。
石を30メイル(メートル)近い高さにいた賊に当てたという話も、ギーシュ戦での俺の石投げの
腕前が、元いた国では俺が軍人として相当な地位にあったらしいという噂話と共に既に学院中の語
り草となっていたこともあって、比較的すんなりと受け入れられた。

賊は逃がしたものの、宝物庫は守ったということで、3人の女生徒は賞金や叙勲こそなかったもの
の、『生徒の鑑』とされ学院長名による表彰状を授与されることになった。3人とも、実際に賊を
退けたのはこの俺キッドで、自分達は何もなす術が無く立ち尽くしていただけだったから(事実そ
うなのだが)、と辞退しようとしたが学院長曰く、結果よりも何よりも学院の危機を見過ごさずに
現場へ赴いたその勇気と決断力と行動こそが重要なのだ、とのことで結局受けることになった。
俺から言わせれば、賊の侵入を許し、あまつさえ学院の中でゴーレムを暴れさせるという緊急事態
に当夜の宿直を含めた教員達が何らの対処も出来なかったという「大不祥事」から衆目をそらす為
に、危機を救った「英雄」が必要だったが故の表彰だろ、とツッコミを入れたくなるところだ。

ミス・ロングビルことフーケことマチルダは、生徒を救おうとして負傷したことになっていたため、
職員の誇りだとして学院長自ら賞金とやはり表彰状を授与しようと言ったが、『自分は学院職員と
して当然の責務を果たしただけであり、一切表彰などには及ばない。むしろ眼前で賊をみすみず逃
がしてしまった責任があるので、それらの栄誉を受ける資格はない』と主張して結局全ての表彰の
類を辞退し通した。その代わり、水系魔法での速やかな治療と午前中だけの半休を与えられた(も
っともそのせいで、午後に右手首も治癒して出勤してから処理しなければならなかった仕事の量が
いつもの倍以上だった、と後でぼやいてたっけ)。

宝物庫自体は、外壁に少々ひびが入ったものの内部構造や保管物には特に異常はなく、修繕の上あ
らためて強力な固定化魔法をかけられることになった。これが作業を担当するメイジの人選から、
固定化の手順からそれらの経費見積もりやら日程決めやらが、関係各方面とも綿密な折衝を要する
相当面倒な仕事であり、それを事務方としてほぼ一手に引き受ける羽目になったのが、そのひびを
入れた当人自身だったというのは大いなる皮肉だ。後に曰く

「後始末がこんなに面倒と知ってたら、ひび一つ入れるんじゃなかったよ。おかげであの壁の構造
やかけられた固定化魔法の種類と強度は全部分かったけど、あたし個人としては縁起でもないから
もう二度と手を出す気にはなれないね。あの壁にかけられていた最大の魔法は、『あたしへの呪い』
だったんじゃないのかい?」

と。もっとも、

「今に、俺たちHJ9の仲間とめぐり合えるきっかけになった『幸運の魔法』と思える日が来るさ」

と返したが。

なお、俺は一応ルイズの『使い魔』ということになっていたから、直接には一切の表彰の対象には
ならなかったが、そのかわり新たに

  • 学院保管の「魔法を要しない」武器を閲覧し、必要に応じて担当教員や場合によっては学院長の
許可を得て使用できる許可と、
  • 「トリステイン魔法学院特別警備員」として、他の学院常駐警備員(衛兵)のような交代で定期
的巡回や門番に当たる任は免除されながらも、彼らと同等の権限-即ち、不審者を見かけたら誰何
(すいか)し、必要に応じて警備員詰所へ連行して尋問する権限-

を与えられることになった。後日、正式に辞令と特別警備員であることを示す腕章を与えるので、
改めて学院長室へ来てくれとのこと。それらの手続きでまたマチルダの仕事が増えるなぁ…

だが、後日談で俺個人として最も重要と思えた事柄は、その特別警備員任命の時にあった。俺に辞
令と、明るい黄地に鮮やかな赤いハルケギニア文字で「トリステイン魔法学院特別警備員」と書か
れた腕章を授与した後、相変わらず秘書をしていたロングビルことマチルダを人払いした学院長は、
コルベールを横にしたまま、俺とその主ルイズに対して曰く、

「おぬしのその印(ルーン)と力、ありとあらゆる『武器』を使いこなす能力があるという伝説の
使い魔『ガンダールヴ』のものじゃよ。お主がグラモンの末っ子との戦いでも、今回の学院に進入
したゴーレム使いの賊との戦いでも、単なる石といえど、それを『武器』として利用しようといて
いたが故にガンダールヴの能力が発現したのではないか、とわしは思っておる。じゃが、おぬしも
その主であるミス・ヴァリエールもよく聞いて欲しい。王国政府の上層部には、昨今アルビオンで
同王室を脅かしているレコン・キスタ軍への警戒感から、王党派軍に加担しての同国内戦への介入
を主張する重臣も多いらしい。そんな時に、宮廷に『伝説のガンダールヴ発見』などという報告が
上がったらどうなる?対レコン・キスタ主戦派の好戦的な連中の駒として利用されるのがオチでは
ないかとわしは危惧する。極めて危機的な内外政治状況であるがゆえに、わしはそうした騒乱から
生徒達を守りたい。よって、このルーンの意味とガンダールヴの件はくれぐれも内密にせよ。これ
は君たちだけではなく、トリステイン王国の命運も左右しかねない重要事と心得て欲しい」

この時、俺は主ルイズやその仲間達と共に、今後この世界での大きな時代の渦に巻き込まれていく
予感をひしひしと感じた。この地で新たに結成した『HJ9』の前途にも多くの試練が立ちふさが
る気がする。

だからって、負けないぜ!俺はJ9そしてHJ9のブラスターキッドさまだ!どんな状況でも心の
中では絶望なんて言葉とは無縁のつもりさ。イェ~イ!


腕は試しと 抜き撃てば
月夜に浮かぶ 白美人
前世の因縁 割り切りて
新たに集う 始末人
ゼロの旋風 HJ9
お呼びとあらば 即参上!(ナレーション:柴田勝秀)


次回予告
集いし精鋭 初仕事
色情貴族の 魔の手から
可憐なメイド 救えよと
そびえる土の 大巨人

ゼロの旋風 HJ9
お呼びとあらば 即参上!(ナレーション:柴田勝秀)


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