あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

鋼の使い魔-16


 アンリエッタが訪れた夜が明けて、早朝。
朝の澄んだ空気の中に旅支度をしたルイズとギュスターヴが、厩番に駅逓乗り換えが効く馬をもらい、学院正門前で馬具を着けていた。
ルイズは普段の制服だが、スカートの下にブラウンのスパッツを着け乗馬用のブーツを履いている。踵に生えた角のような棒拍が朝露に濡れている。
一方ギュスターヴは普段のデルフと短剣に、以前武器屋でデルフにおまけとしてつけさせたナイフ6本を革紐で連ねて体に巻きつけるように着けている。
馬具の具合を確かめながらルイズは言った。
「いい?ギュスターヴ。私達はアンリエッタ殿下からある任務を賜ったわ。その為にまず、国を出てアルビオンに行くのよ」
 しんとする朝の空気にルイズの声が響く。そこには使命感に燃える瞳があった。
「なんで俺まで付いていかなきゃならんかな」
 他方、秘密主義的に振舞う一応の主人に対し、手の内を知っているギュスターヴは少し冷めた気分で抵抗してみる。
「何言ってるのよ!あんたは私の使い魔でしょ!ご主人様が出かけるなら付いていくのが基本でしょうが!」
 指を伸ばしギュスターヴに突きつけるルイズ。彼女の頭が今は任務の事で頭が一杯なのだ、というのがわかる。
 ギュスターヴは小さくため息をつく。
「…で、まずは何処まで行くんだ?」
「ここから大体北西に400リーグくらいにあるラ・ロシェールという町に行くわ。そこからアルビオンへの定期船が出ているの」
「しかし馬では次の『スヴェルの日』までに町に着けるか微妙だな」
「誰だ?!」
 不意に聞こえてきたのはこの場の二人以外の、若い男の声だ。
 警戒しデルフに手をかけるギュスターヴだが、声の主は上空から屈強なグリフィンに乗って降りてきた。馬が慄くなか、グリフィンは行儀よく地面に着地する。
「いや、驚かせてしまって失礼。僕は君達を護衛する為にアンリエッタ殿下に依頼された、魔法衛士大隊のワルドだ。よろしく」

 ワルドと名乗った男はグリフィンの背から颯爽と降りると、呆然としていたルイズに近寄り、その腕ですっと胸に抱き上げた。
「久しぶりだ、僕の小さなルイズ!」
「わっワルド様?!」
 突然の抱擁にルイズは顔を真っ赤にして固まった。
「陛下のご依頼に感謝しなければならないな。婚約者と再会できる機会を与えてくれたのだから」
「そ、そんな…昔の話ですわ」
 目を伏せ気味に答えるルイズにワルドは大仰に答えた。
「そんなことを言ってくれるなよルイズ!暫く会えなかったが、僕は君の事を片時も忘れた事はなかった」
 あまりに熱っぽい言葉にルイズはますます頬を染めてしまう。
 ワルドはそんなルイズをそっと地面におろし、二人のやり取りをぼんやりと見ていたギュスターヴに話しかけてきた。
「君がルイズの使い魔だそうだね。いつもルイズを守ってくれて礼を言うよ」
「……ああ…なんてことはない」
 気さくに話しかけてきたワルドに、ギュスターヴは巧く受け答えしきれない。
ワルドはそんなギュスターヴを無視してルイズに聞かせる。
「殿下から預かりものがある。任務を進めるために必要なものだそうだ。もっているといい」
 ワルドは懐を探って何かを手に取ると、ルイズの両手を取って握らせた。それはうっすらと桜色をした便箋に、古めかしい様式で装飾された
薄蒼の石の填められた指輪だった。便箋の方には、赤い蝋に王女の紋章の印で封がされている。
「では、時間も惜しいので出発しよう。使い魔君は早馬を飛ばしたまえ。僕が上空で先行するから見失わないように」
 言うとワルドはやおらルイズを抱き上げてグリフィンに乗せると、手綱を引いてグリフィンを空へと導いた。
あまりの手際に声も上げなかったルイズだが、立ち呆けているギュスターヴに急いで声をかける。
「あ、あ、ギュスターヴ!遅れないようについてきなさいよ~!」
 ギュスターヴの耳にルイズの声が空へと遠くなっていく。
 つむじ風のように引っ掻き回していったワルドに唖然とするしかないギュスターヴの腰で、デルフがかちゃかちゃ言い出した。
「なんだかすっげーなあの男。おまけにお嬢ちゃんの婚約者だとさ」
「……まぁ、貴族の娘ならそんなのもあるだろうさ。…さて、見えなくなる前に出発するぞ」
 馬が余ってしまうのだが、仕方が無いと一頭を門に繋いだまま、ギュスターヴは急いで馬を走らせ、上空のグリフィンの進行方向へ進んでいくのだった。
『ラ・ロシェールへ向けて…』



ギュスターヴ、ルイズ、そして現れたワルドら三人がトリステイン魔法学院を出発したほぼ同時刻。当座の目的地であるラ・ロシェールの町の一角に店を構える酒場
『金の酒樽亭』。20年前に店を構えて以来、立地条件から常連客の多くは傭兵や盗賊あがりなどのアウトローばかりで喧嘩も絶えないが、酒の質と量が
顧客の範囲を決めている節もある、そんな店である。
 その日も朝から、いや、前日の晩からどんちゃん騒ぎをしながら酒をかっくらっている一団が店に陣取り、強い酒やら肴やらを食い散らかしながら
荒くれた男立ちが管を巻いている。
そんな店に、ふと見慣れない客が入ってきたな、と酒場の主人は出入り口からこちらに向かってくるものを認めた。
ローブを身に着けて、フードで陰になり顔は窺えないが、その両足には中々の装飾がされたブーツがきっちりと履かれている。
 謎の客はカウンターの椅子に座ると、主人の前にとす、と小気味よい音を立てる皮袋を置いた。
主人がその袋の口をあけてみると、中には新金貨がぎっしりと詰まっている。
「お客さん、そんなに出されても困りますよ」
 金回りのいい客は一見商売として旨みがあるが、荒くれ者を扱ってきた主人は一方で、なにやら危うい背景があるのではないかな、という勘繰りを持った。

客はカウンターに肘をついて答えた。その声は、女性。
「宿代も入ってるんだよ。部屋は空いてるかい?」
 それも路地裏で立ちんぼしているようなうらぶれた女ではない。凛としたものが混じった、美女といえる類の声だ。
 主人がその女と宿代の周りで交渉していると、角で酒を飲んでいた傭兵くずれの一団が女を囲むように集まってきた。
「お姉さん、ひとりでこんな店にはいっちゃ、いけねぇなぁ」
「危ない連中が多いからなぁ。怖かったら守ってやるぜぇ、ベッドの中までな、ギャハハハハ!」
 酒臭い息を吐きながら、一団の一人が悪戯のようにフードを引っ張ると、その下から女の顔が覗く。
鼻筋の通った小顔、裏の世界を見てきた人間が持つ鋭い目をしている。髪は特徴的な、鮮やかな緑色。
女を知る者は彼女を『土くれのフーケ』と言う。

酒で調子づいている傭兵達は、それぞれに奇声を上げ口笛を吹いてフーケを見た。
「こいつぁべっぴんだ。見ろよこの綺麗な肌をよ」
 品性の疑わしい声で一人がフーケの顎筋に手を伸ばすが、フーケは蝿を払うように手を振る。
「気安く触るんじゃないよ、蛆虫」
 鬱陶しげに席を立つと、羊を追い込む獣のように男達がフーケを取り囲もうと動く。
やがて一人が手を伸ばしながらフーケに迫る。
「へっへっへ、怖がらなくても悪いようにはげへぇっ!」

 フーケの肩に手を置こうとした男は、次の瞬間に何かに弾き飛ばされるように吹っ飛んでテーブルに頭から突っ込んだ。テーブルの上の瓶やグラスが床で砕ける。

 驚いて一団が振り向くと、すっと長いフーケの足が、ちょうど吹っ飛んだ男の顎の高さまでピンと伸びていた。
フーケの足が男を蹴り飛ばしたのだった。

数拍して事態を把握した男達は、酒で濁りきった声でフーケに叫ぶ。
「このアマ!」
 同時に男達はフーケを捕まえるべく手を伸ばすが、フーケの足はしなる鞭のように男達を強かに蹴り飛ばした。
「ぐへぇ!」
「ごはっ!」
「あぎぃ!」



酒場はあっという間に竜巻が出入りしたかの如き惨状を呈した。窓に首を突っ込んで伸びている者、椅子とテーブルの山に埋もれている者、ある者は
店の柱に叩きつけられてえびぞりで気絶している。酒場の主人は喧嘩程度はいつものことさ、という風情でのんきにグラスを磨いていた。
まだ息のある一人にフーケが近づいていくと、男は子供のようにブルブルと震えて慄いた。
「ま、まってくれぇ!俺達はもうなにもしねぇよぉ!」
「そんなに怖がることは無いだろう?私はあんた達を雇おうと思っただけさ」
 冷ややかに笑うフーケの顔を怪訝な表情で男は見た。
「や、雇う?」
「そうさ。金なら、ホラ」
 フーケはテーブルの一つに、カウンターで主人に渡したように金貨の入った袋を置く。
「一人新金貨で100ずつ渡しとくよ。その代わり後で私の命令に従ってもらうからね」



 金の酒樽亭を後にしたフーケは、そのまま町の路地に入る。路地を進むと脱獄の時に姿を現した、仮面の男が待っていた。
「……お前さんの言った人数は集めたよ。これからどうするんだい?」


 フーケは脱獄後、このラ・ロシェールまでつれてこられてから、脚の『準備』をしつつ、アルビオンからやってきた傭兵たちから情報を集めるように指示されていた。
しかし前日になって、今日は「傭兵たちを金で集めろ」と指示を受けたのだった。
 仮面の男は地図を渡して話す。
「この印の付いたところに傭兵の半分を待機させて、そこを通った者を襲わせろ」
「残りの半分は?」
「保険だ。暫く伏せておけ」
「ふぅん…まぁいいさ。少なくとも、この『脚』の礼分は働いてやるよ」
 カツカツと地面を踏み鳴らしてフーケは答えた。


ルイズ、ギュスターヴ、ワルドの一行は一路ラ・ロシェールへの道をひた走っていた。
 「走る」といってもそれは馬に乗っているギュスターヴだけの話で、ワルドとルイズは悠々と空を飛ぶグリフィンの背である。
駅逓で馬を変えるたびに疲労の度合いを濃くしていくギュスターヴであるが、懸命に先行するグリフィンを追いかけていた。
 ルイズはグリフィンの上から眼下を走る馬上のギュスターヴを心配した。
「ねぇワルド。あんまり急ぐとばててしまうわよ」
「僕とグリフィンなら大丈夫さ。これくらいの距離はなんでもない」
「そうじゃなくて、下でついてきてるギュスターヴのことよ」
「付いてこれないならおいていけばいいさ」
「彼は私の使い魔よ。放っておく事はできないわ」
 そんなルイズの言葉を聞いて、どこか悲しげな目でワルドは見た。
「どうやら、あの使い魔君に心奪われたらしいね」
「そ、そんなわけじゃないわ!」
「本当かい?まだ僕のことを婚約者として見ていてくれているかい?」
「それは、その…あの頃はまだ、小さかったし…」
「僕は君のご実家の、ラ・ヴァリエールに見劣りしないものが欲しかった…」
 ふと、ワルドの視線がどこか遠くを見ている。
「父も母も亡くなってしまってから、軍に入って出世して、君のご実家にも指差されず会いにいけるくらいになりたかった。
お陰で今は、近衛軍の精鋭の綱とりを任されている」
「出世したのね、ワルド。…でも、私はあの頃と同じ、魔法の使えないゼロのルイズよ」
 そう答えたルイズを、ワルドは優しげに頭を撫でた。
「君は暫く会えなかったから、気分が落ち着かないだけさ。この旅はいい機会だ。ゆっくり、昔の気分を思い出すといいよ」
 爽やかに笑いかけるワルドだが、ルイズはどこかそれを手離しで喜べない。
 再び眼下、懸命についてくるギュスターヴを見るのだった。



馬上で汗を流しながら、ギュスターヴは懸命に馬を操って大地を進んでいた。かろうじて街道らしき道筋を通っている事は判ったし、場所場所で立て札の類を見たり、
上空のグリフィンの向いている方角を確認して進む。
黙々と手綱を引いていたギュスターヴに、デルフが話しかけてくる。
「相棒、大丈夫かい?」
「まだ馬に慣れきってないからな。後が怖いな」
 鍛錬を重ねたとはいえ、齢49の身体である。酷使すれば若者のようには行かない時もある。
「お嬢ちゃんとワルドって奴、上で何話してんだろーな」
 上空のグリフィンをギュスターヴは見た。否、グリフィンにまたがる二人を、ルイズに寄り添うようにするワルドを、その眼で見た。
「さぁな。ただ」
「ただ?」
 グリフィンを確認してから、ギュスターヴは手綱を繰って街道を走る。その表情は、苦虫を噛み潰したような渋みを含んで。
「あの若造、何か隠しているような気がするな」



場所場所の駅逓で馬を乗り換えること、3度。時間も迫って夕暮れが近い。それだのに四方は川もなく、むしろ丘陵を登っている事にギュスターヴは疑問を抱いた。
「なんでこんな山間にはいるんだ?船に乗るんだろう…?」
 船に乗るなら港に行くものだ。しかし山に入っていって港に出るというのはギュスターヴには理解できない。薄暮の空に影を射し始めたグリフィンを見て、ほのかに
嘆息する。
「付き添わせるならもう少し詳しい指示を出してくれよ。ルイズ…」
 山間の道を辿って行くギュスターヴ。起伏が激しく、木々も茂る中を進んでいると、どこからか複数の松明がギュスターヴの乗る馬の前に投げ込まれた。
「何だっ?!」


 火は生草の上でちろちろと燃えるのみだった。しかし次の瞬間、ギュスターヴの馬目掛けて無数の矢が打ち込まれてきた。
 その内に尻に一本の矢が刺さり馬が暴れて立ち上がろうとするのを強引に押しとどめたギュスターヴは急いで手近な木の陰に寄って下馬し、
手綱を木に結んで身を隠した。
「夜盗か…?」
 と、上空を見ると木の陰に暗い空を飛ぶグリフィンが、先ほどよりもずっと小さく見えた。
「あの二人、気付いてないのか…?」
 そうしている間も松明の火を頼りにした謎の弓撃はギュスターヴを囲むように飛び、馬の肌を掠めると錯乱した鳴き声を上げている。
デルフを抜いてギュスターヴは夜盗と思わしき集団に対峙すべく動き出した。
「相棒、嬢ちゃん達に置いてかれちまったぜ?どうするのよ」
「今更引き返すわけも無い。ここを突破して追いかけるぞ」
 これ以上馬が傷つくのを避ける為にあえて影から飛ぶと、矢もギュスターヴを追うように飛んでくる。木や岩の陰に隠れながら自らを射掛ける者がどこに
潜んでいるのかをギュスターヴは探していた。矢の飛んでくる間隔を覚えながら移動すると、薄暗い林の中に弓を番えてこちらを見ている集団を認めた。
「あそこだな…」
 確認するとデルフを地面に刺し、帯巻きにしているナイフを一本、『左手』に握った。
(ガンダールヴというのが身体能力を高めるのならば…)
 呼吸を整え、体から闘争心を引き出す。そして静かに眼を瞑った。

 この時ギュスターヴは単にそうするだけではなく、聞こえる音に神経を注いだ。ガンダールヴが武器を握って心を震わす時、体から引き出す力は
筋力だけではないということにギュスターヴは気付いていた。肌に触れる風、聞こえる音、匂い、眼に入る光すらも平時よりも肉体は敏感に捉える事ができるのだった。
そしてギュスターヴの聴覚にははっきりと聞こえたのだ。弓に張られた弦が空気を切る音、飛翔する矢羽の欠けが風を裂く音、木の幹に鏃が刺さるわずかな音も
聞き漏らさなかった。
 活目し、身を乗り出したギュスターヴ。音に聞こえた場所を注視した。薄暮の空、目が捉える光が少ない時間において、ギュスターヴの眼には陽光の下と大差なく、
鮮明に夜盗の弓構える姿を写していた。
「そこだっ!」
 ナイフを握る左手のルーンが光る。ギュスターヴは引き出された身体能力を駆使してナイフを投げた。
 手を離れたナイフは空を回転しながら飛び、寸分の狂い無く夜盗の喉にその刃を滑り込ませた。ナイフが突き刺さった一人の夜盗が、喉を抑えるように呻いて倒れる。
 ギュスターヴはすぐまた身を影に隠した。
「やるじゃねーか相棒」
 地面に刺さったままのデルフが話す。
「ああ。でもナイフも無限にあるわけじゃない。これだけで切り抜けられるかな…」
 反撃を受けると思わなかったのだろう夜盗は矢掛けるのを止めたが、多勢を貨って再び矢を打ち込んでくる。今度は脂を含ませた火矢を混じらせて飛ばし、
辺りの草木に突き刺さるとそこから徐々に燃え始める。
「ちょ、まじやべーぜ相棒!辺りが燃え始めてるぜ」
「しかし今飛び出せば矢に当たるだけだ…くそ!」
 夜盗は一心不乱に矢掛けてくる。仲間がやられてあせっているのかもしれない。
 ギュスターヴの周りを火矢の炎が広がって炙り始めようとしていた。



 と、その時。『真上』からギュスターヴの周囲に降り注ぐ『氷の槍』。燃えかけていた草木で溶けると火を消していった。
 同時に、物陰から矢掛けていたはずの夜盗から悲鳴が上がる。
「りゅ、竜だぁ!」
「メイジが乗ってるぞ!」
「火の玉がとんでくるぅ!」
 悲鳴を上げながら夜盗の声が散って遠くなっていく。ギュスターヴが見上げると、学院の生活で見慣れた竜に、顔なじみの少女が二人乗っていた。
「ハァイ?ミスタ」
「キュルケ!タバサ!」


矢を受けて傷ついた馬はシルフィードが咥え、ギュスターヴはシルフィードの背中を借りてラ・ロシェールを目指すこととなった。
どうしてここへ、と問うギュスターヴに対して、
「ミスタとルイズが気になっちゃって、ね?」
 ふられたタバサは頷く。背中には、あの飾ったようなレイピアが背負われている。
「それも持ってきたのか」
「何かに使えるかもと思って。それに出先でも修行ができるでしょ?」
 大人用のレイピアを背負うと、タバサに舞台をひしめく人形のような、ある種の滑稽さを作っている。

「それにしても、使い魔を置いていくなんてルイズも薄情ね」
「いや、ルイズは気付いていなかった。夜盗が襲ったのは地上を移動していた俺だけだった」
「そのワルドっていう人、本当に護衛なのかしら?」
 キュルケは見知らぬワルドの姿を想像しようとした。
「さてな。王女から預かり物を持ってきたところや、先日の王女がやってきた時に護衛をやってきたあたりから、それなりに腕の立つ、
それで高官や王女に覚えがある軍人なのだろうとは思う」
 シルフィードの翼が風を切る中、三人は答え無き考えの中に泳ぐ。
「……ひとまず、ラ・ロシェールという町まで行ってルイズと合流しよう。話はそれからだ」
「そうね。飛ばして頂戴、タバサ」
 頷いて、タバサはシルフィードの首を叩く。
 一鳴きしたシルフィードは、薄暗くなりつつある空を飛んでゆくのだった。


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