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ソーサリー・ゼロ第三部-17

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三一三

 シエスタの家に駆けつけた君は、キュルケの≪使い魔≫である火狐が狂ったように吼えたけっているのを眼にする。
 鋭敏な嗅覚をもつこの獣は、怪物どもの放つ匂いをいち早く嗅ぎつけているのだ。
 君にもかすかにその匂いが感じとれる――火山と墓場と下水道が一ヶ所に集まったような、吐き気をもよおすひどい悪臭だ!
 息せき切ってシエスタの家の居間に駆け込んだ君は、全員外に出ろと絶叫する。
 その場に居た人々――シエスタ、彼女の母親、七人の弟や妹たちのうちの三人、そして寝ぼけまなこでこちらを見やるルイズとキュルケ――は
一瞬あっけにとられるが、君のただならぬ様子に感じるところがあったのだろう、質問するより先に指示に従い動き出し、家のほかの場所に居る家族を呼び集める。
「ねえ、ちょっと!」
 シエスタの家族たちと一緒に玄関をくぐりぬけたところで、ルイズが尋ねる。
「なにがあったのよ? なんだか村じゅうが騒がしいみたいだけど、火事? それともオーク鬼の群れでも攻めてきたの?」
 君は、そのどちらよりも悪い事態だと告げ、草原を這いずり村に押しよせる、胸が悪くなるようなのたうつ形のない塊を指し示す。
 それは村の広場から目にしたときよりもさらに大きく膨れ上がっており、その先端は村はずれの畑に達するところだ。
 悪夢のような光景を前に、ルイズたちは呆然と立ち尽くす。
 ルイズは喉の奥から絞り出すような声で
「な……なによ、あれ。生き物、なの……?」と呟く。
「ど、どこから湧いてきたのよ!? とにかく、ここから離れなきゃ!」
 他の者たちよりもいくらか早く立ち直ったキュルケの言葉に君はうなずき、避難の手順を説明する――もっとも、タバサと彼女の
≪使い魔≫に頼り切ることになるのだが。
 まずはシエスタの家族をシルフィードに乗せて、迫りくる怪物から充分に距離をとったところで降ろし、再び舞い戻らせる。
 風竜の背中はそれほど広いわけではなく一度に運べるのは大人ならば五、六人が限界だが、これを繰り返せば、他の村人たちも
ある程度は救えるはずだ。
 君、ルイズ、キュルケの三人が竜に乗るのは最後だ――魔法使いであるキュルケや君は、いざとなれば術を使って空中に逃れることができるからだ。
 説明を終えると同時に家の前にシルフィードが舞い降りたので、君はさっそくシエスタの家族が竜の背によじ登るのに手を貸す。
 シエスタの両親と彼女の弟や妹たち、あわせて八人(ジュリアンという名の少年だけは他家の畑仕事の手伝いに行っているそうだが、もはや探しに行く暇もない)と
騎手を務めるタバサが乗ったところで、シルフィードの背中は立錐の余地もなくなる。
「先に行って! わたしはミス・ヴァリエールたちと一緒に残るから!」
 竜に乗るのをあきらめたシエスタは、家族たちにそう告げて身を引く。
「し、しかしシエスタ……」
「お姉ちゃん!」
 彼女の家族が上げた悲痛な声は、巨大な翼のはばたきの音にかき消される。
「タバサ、シルフィード! 頼んだわよ!」
「ミス・タバサ、家族を、村のみんなをお願いします!」
 キュルケとシエスタの叫びにわずかにうなずき返すと、タバサはきっと前を見据える。
 シルフィードは背中に乗った人々を落とさぬよう巧みにつりあいを保ちながら浮き上がると、村の東にある小高い丘を目指して飛び去る。

 君、ルイズ、キュルケ、シエスタの四人と火狐のフォイアは、シエスタの生家の屋根に上っている。
 あの泥沼のような怪物の正体は判然とせぬが、生きた洪水のようなものだとすれば高い場所に逃げたほうが安全かもしれぬ、
と君が主張したためだ。
 怪物はその巨体ゆえにゆっくりと動いているように見えるが、実際のところは人間が小走りするほどの速さで這いずり、押しよせてくる。
 他の村人たちのように森へと走っても、すぐに追いつかれ、呑み込まれてしまうおそれがあるのだ。七〇へ。


七〇

「ああ、ブリュヌベリーの生えていた茂みが消えています! これでもう、あの薬は二度と……」
 シエスタが震える指で指し示したほうに目をやった君は、怪物が通り過ぎたあとには雑草一本たりとも残っておらず、ただ消し炭のように黒く変色し、
ぬらぬらとした粘液にまみれた土が残されているだけなのを見出す。
 『あれは水も、土も、風も、おひさまの光も、みんな汚して腐らせちゃう』というシルフィードの言葉を思い出し、身震いする。
 怪物がタルブを去っても、もはやこの地の畑にまともな作物が実ることはないだろう。
 君はかつて、同じように汚染された土地を目にしたことを思い出す。
 二百年以上昔の大戦のおり、≪混沌≫に侵されたために自然の法則そのものが狂ってしまった、カーカバードのバク地方だ。
 かの地では獣も草木も奇形と化し、昼と夜の巡る間隔さえ異常なものとなり果てているのだ!
 それでは、あの生きた泥沼のような怪物は、すべてを汚して腐らせる邪悪な≪混沌≫の存在なのだろうか?
「ねえ」
 青ざめた顔をしたルイズが、傍らに立つ君に尋ねる。
「あれはなんなの? どこからやって来たの?」と。
 君は、あれは草原に飛来したアルビオンの軍艦が運んできた一種の兵器らしい、と答える。
 おそらく、大きな壷かなにかの容器に密閉された状態でアルビオン本土から運ばれてきたのだ。
 船から地面に投げ落とされ、容器が割れて解放されると同時に、周囲の草木を取り込み自らの一部となし、どんどん巨大になっていったのだろう。
 伝説的な≪混沌≫の生き物を召喚して使役するほどの強大な妖術の使い手など、≪タイタン≫にも片手で数えるほどしかおらぬはずだが、
ハルケギニアの人間のはずであるクロムウェルが、それを成し遂げたというのだろうか?
 カーカバードで君に全滅させられたはずの七大蛇を召喚してよみがえらせ、今度は名もなき≪混沌≫の怪物を操る――君は、伝説の≪虚無≫の系統の
使い手と噂されるクロムウェルの底知れぬ力に恐怖を覚える。
「あれがアルビオンの兵器だとすると、本来の目標はきっとラ・ロシェールね。タルブはあれを大きくするための……餌場」
 キュルケが恐怖と怒りの入り混じった声でうめく。
「それに、今のラ・ロシェールは諸国連合艦隊の根拠地だから船と竜騎兵でいっぱいのはず。近づきすぎると危険だから、少し手前のタルブで
降ろすことにしたのね。あたしたちにとっては、最悪の巡り合わせになったけど」
 君たちが見守るうちにも、ねばつく不定形の生き物は村の中に殺到する。
 無人となった家の扉から流れ込み、反対側の窓を破ってこぼれ落ちる。
 欅(けやき)の並木や小屋を次々となぎ倒し、呑み込んでいく。
「村が……わたしのふるさとが、消えてしまう……」 
 正視に堪えぬとばかりに両手で顔を覆ったシエスタはその場にうずくまり、小さく嗚咽を漏らす。
 彼女になぐさめの言葉をかけようとした君だが、この世のものとは思えぬ凄まじい悲鳴が耳に飛びこんできたために、ぎょっとする。
 甲高く長く響くその声は、想像を絶する恐怖と、筆舌に尽くしがたい苦痛を味わわされているであろうものだ。
 ルイズは耳をふさいでうずくまり、震える声で
「まさか、誰か、誰かが、その……犠牲に?」と尋ねてきたので、
君は返事に窮する。
「い、いえ、あれはきっと、牛の鳴き声です」
 代わって答えたのはシエスタだ。
 手の甲で涙をぬぐいながら
「どこかの畜舎が襲われただけです」と言う。
「まだ、今のところは誰も死んでいないみたいです。でも……」
 たしかに、それはよく聞いてみれば牛の鳴き声だが、君は暗澹たる気分になる。
 村人たちをのがすべくタバサとシルフィードが奮闘しているといえ、村人の数は多く、怪物の進撃は速い。
 君たちが人間の悲鳴を耳にするのも、時間の問題だろう。
 そして、次に喰らい尽くされ、≪混沌≫に侵されるのは、タルブよりはるかに大きいラ・ロシェールの街だ。
 今のラ・ロシェールにはアルビオン遠征の準備ために、多くの人間が集まっているはずだ――はたして何百人が餌食となるのか、見当もつかない!
 不定形の怪物は今や、君たちの居るシエスタの生家の周辺まで押し寄せてきている。
 屋根の上からそれを見下ろす君たちは、のたうち這いずるおぞましい姿に慄然とし、周囲に撒き散らされる硫黄と腐肉の悪臭に吐き気をこらえる。
「も、もう、黙って見ているだけなんて耐えられない!」
 そう叫んで、ルイズが杖を構える。
「ここはシエスタのふるさと、姫殿下と皇后陛下が治める栄(は)えあるトリステインの国土よ! 誇り高きトリステイン貴族として、こんな、
こんなわけのわかんない化け物なんかに……これ以上好きにさせたりしないんだから! わたしの魔法で、思い知らせてやるわ!」
 呪文を唱えようとしたルイズだが、その腕を掴んで制止する者がいる――キュルケだ。
「なによ、放しなさいよキュルケ! ゲルマニア人のあんたには、この悔しさが解んないんでしょうけど……」
 そう言ってじたばたと暴れるルイズだが、
「落ち着きなさいよ、ルイズ。洞窟での失敗を繰り返すつもり?」と言われておとなしくなる。
「な、なによ。あんなに大きな化け物が相手なら、外すことなんてありえないわ」
「そうね。あれだけ大きいんだから、あなたの失敗魔法でほんの一部を吹き飛ばしたところで、焼け石に水。なんの意味もないわ」
 憮然として反論するルイズを、キュルケがたしなめる。
「そんなことでこのまま素通りしそうなあれの注意を惹いて、あたしたち全員を危険にさらすつもり?」
「でも、でも……わたし、悔しくって……。力のない平民たちの楯となるのが貴族の務めなのに、なにもできないでいるなんて……」
 ルイズは肩を震わせ、拳を握り締め、眼下で這い回る怪物の醜い姿を、穴が開かんばかりに睨みつける。
「ミス・ヴァリエール……」
 シエスタが心配そうに声をかける。
「あ、あの、どうかお気に病まないでください。これはきっと、どうしようもない事なんです。あんな恐ろしい怪物が相手じゃあ、
どんなに強い貴族のかたが居たところで、どうにもなりませんもの。もう、どうしようも、ないんです……」
 そこまで言ったところでシエスタは言葉を途切れさせ、うつむく。
「悔しいのはあたしも同じよ、ルイズ」
 キュルケが苛立たしげな口調で言う。
「息を潜めて見ていることしかできないなんて屈辱だけど、相手が悪すぎるわ。あれを全部焼き払おうと思ったら、あたしがあと百人は居なきゃ」と。
 なにもできずに歯がゆい思いをしているのは、君も同様だ。
 じっと動かずに立ちつくしているが、気がつくと歯を喰いしばっている――奥歯が砕けんばかりの力をこめて!
 怪物を撃退できぬまでも、なにかルイズたちのためにできることはないだろうか?
 君は、なにか役に立つものはないかと背嚢を探るか(二五七へ)、よけいなことはせぬと決めてこのまま様子を見るか(六四へ)、それとも術を使うか?

 SAP・四九五へ
 ROK・三九一へ
 BED・四四五へ
 TEL・四七六へ
 DOP・四二二へ


四七六

 体力点一を失う。
 布製の縁なし帽は持っているか?
 なければ術は使えぬので、ほかの手段を考える必要がある。
 七〇へ戻って選びなおせ。

 縁なし帽を持っているなら頭にかぶって、生きた泥沼のような怪物に集中せよ。
 ≪混沌≫の生き物の思考が伝わってきだすが、脳のない怪物が相手のことゆえ、なんの意味もなさない。
 君が感じ取れたのは、永久に満たされることのない飢え、光や暖かさに対する渇望と憎しみといった、原始的でどす黒い感情だけだ!
 君は強烈な嫌悪感に目まいを覚え、吐き気をこらえる(体力点一と強運点一を失う)。六四へ。


六四

 夕陽に照らされているにもかかわらず奇怪な色彩に輝く(≪混沌≫は光すらねじ曲げ、狂わせるのだ!)怪物は、シエスタの生家の壁に衝突する。
 その振動は屋根に立つ君たちのところまで伝わるが、すぐに静かになる。
「だ、大丈夫ですよね……? 家が崩れたり、しませんよね?」
 シエスタが不安げな表情で君に尋ねる。
 君はうなずくと、遠くに見える、おぞましい奔流に押し潰されることもなく原型をたもっている何軒かの農家を指さし、きっとこの家も大丈夫だ、と言う。
 キュルケはややひきつった笑みを浮かべ、
「頑丈な家を建ててくれた、シエスタのご先祖様に感謝しなきゃ」と冗談を言う。
 ルイズもなにか言おうと口を開くが、ごろごろという音を耳にして周囲を見回す。
 前後左右とも、悪臭を放つ怪物がずるずると這い回るだけで、なにもない。
 ごろごろという音は続く。
 その音は足元――家の中から響いている!
 足がすべってよろめき、そこで初めてなにが起きているかに気づく。
 よろめいたのは君が不器用だったからではない。
 屋根が揺れ動いているのだ! 
 君はすばやくキュルケのほうを一瞥する。
「頑丈だけど、柱はちょっと古くなってたみたいね」
 キュルケは自らの≪使い魔≫である火狐を抱きかかえ、シエスタに
「そろそろ潮時よ。あたしの背中につかまって」と言う。
「で、でも、先祖代々住んできた家を……」
「また建てなおせばいいじゃない。あなたの命は家なんかよりもずっと大切なのよ! 早く!」
「は、はい! それではし、失礼して!」
 一喝され、シエスタは慌ててキュルケの背中に飛びつく。
「絶対に手を放さないでね」
「はい! ミス・ヴァリエールと使い魔さんも急いで!」」
 ≪飛翔≫の術を使って宙に浮かんだキュルケと、その背中にしがみつくシエスタの声が頭上から降ってくる。
 それに応じて術を使おうとした瞬間、足元が大きく揺れ、君とルイズはふたたびよろめく。
 君はどうにか持ちこたえるが、ルイズは前のめりに転んでしまい、小さく悲鳴を上げる。
 それと同時に、彼女が肩から提げていた鞄の中に入っていた、いくつかの品々が飛び出す。
 錫の杯、手鏡、洞窟の地図、そして、一冊の古びた書物。
 あれはまさか……。
「祈祷書が!」
 ルイズは絶叫して手を伸ばすが、届かない。
 非情にも≪始祖の祈祷書≫は、傾いた屋根の上を滑り落ちていく。
 その落ちる先は、不気味にのたうつ怪物の上だ。
 このままでは、アンリエッタ姫から預かった国宝は≪混沌≫の渦に呑みこまれてしまう。
 どうすべきか、すぐに決めねば。
 勇気を奮って≪始祖の祈祷書≫に飛びつくか(二へ)、それとも骨董のために危険を冒すような真似はせず、ルイズを助け起こすか(一七六へ)?
 望むなら術を使ってもよい。

 DOM・四二七へ
 GOB・三五三へ
 FIX・四五〇へ
 NIP・四〇八へ
 FOF・三八八へ


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