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ゼロHiME~嬌嫣の使い魔~ 第十五話


 次の日はフネが出航するまでの休息ということで、自由に過ごすことになった。
 タバサと静留は部屋で読み書きの学習、ルイズとワルドは街の観光(デート)に出かけ、それをキュルケが面白がって尾行、ギーシュは使い魔とのスキンシップに勤しんだりと、それぞれ有意義(?)に過した。

 そして、その夜――。
 静留は出発前の夜だというのに一階の酒場で騒いでいるキュルケ達から離れ、部屋のベランダから夜の街をながめていた。
 別に騒ぐのが苦手という訳ではないが、ルイズの婚約者であるワルドと同じ場所にいたくなかった。
 一見、ルイズに愛情を持っているように振舞ってはいるが、どこかルイズを値踏みをしている節があり、静留はワルドへの疑念を強めつつあった。と、同時にワルドと仲睦まじくしているルイズを見ると、苛々する自分に気づいた。

 (ひょっとして……うち、妬いてるんやろか?)

 そんな今まで思ってもいなかった可能性を考えて、静留は思わず苦笑する。
 確かにルイズのことは嫌いではないが、それが愛情かどうかと問われると自信がない。正直、どちらかと言うとルイズに対しては恋愛対象というよりは保護すべき対象――目が離せない手のかかる可愛い妹のような感覚が強い。

(娘に悪い虫がついた父親の気分いうか、小姑根性みたいなもんかもしらんね……相手がまともそうならこんな気分にはならんやろけど)

 静留はやや強引にそう結論づけると、それ以上深く考えることをやめて夜空を見上げた。
 普段は赤い月と白い月が輝く夜空には、赤い月を覆い隠した白い月だけが青白く輝いている。

 「……やっぱりお月さんは白いのが一つに限りますな、ルイズ様」

 ベランダの手すりにもたれるように振り返ると、静留は部屋に入ってきたルイズに声をかける。

 「それって元の世界と同じだから?」
 「それもあるんやけど……なんや赤いお月さんは好きになれませんのや」
 「そう……」

 そう言うとルイズはしばらく押し黙った。やがて決心したように顔を上げて宣言した。

 「シズル、私、ワルドと結婚するわ――」

 (おやおや予想通りの言葉が出てきましたな……あの色男に旨い事乗せられてしもうたんやね、ルイズ様)

 静留は以外に早くワルドが仕掛けてきたことに内心舌打ちしながら、平静さを装ってルイズに尋ねる。

 「へえ、そらまた急な話ですな……ワルド様にプロポーズでもされましたん?」
 「ええ、昨日の晩にいわれたの。シズルも賛成……してくれるわよね?」

 やはりワルドとり折り合いが悪そうなのが気になるのか、ルイズは上目遣いで様子を伺うよう静留に尋ねる。

 「そやねえ……ルイズ様には悪いんやけど、うちはあまり賛成できまへんな」
 「……なんでよ」

 静留の反対を受け、ルイズはムッっとした表情で尋ねる。

 「大体、ルイズ様は手紙のやり取りぐらいでワルド様とは随分と長う間会うてないんですやろ。そやのに会ったその日に申し込こまれたプロポーズを二つ返事ですぐ受けてしまうんは、ちょっと急ぎすぎとちがいます? それに結婚となったら学院を辞めんといけまへんえ。自力で魔法を使えるようになるんは諦めはったんどすか?」
 「それは大丈夫よ。ワルドは形だけの式を挙げるだけで、一緒に暮らすのは学院を卒業してからでも良いって言ってくれたし……シズル、やっぱりワルドのこと信用できない?」

 ルイズの問いに静留はふぅと溜め息をついた後、真顔になって答える。

 「確かにワルド様のルイズ様への愛情は本物かもしらん。せやけど、あのお人の目はルイズ様やなくて、ルイズ様を通して別の何かを見てはる……ルイズ様も本当は気がついてるはんと違います?」
 「そ、それは……」

 その静留の指摘をルイズは違うと言い返すことが出来なかった。何故なら静留の指摘通りだったからだ。
 二人の間に重苦しい沈黙が流れた、その時――。
 ふいに月の光が大きな影にさえぎられたかと思うと、からかう様な口調の若い女の声がベランダの向うから聞こえてきた。

 「へえ、随分と深刻そうじゃないか。良かったら私が相談に乗ってやろうか?」
 「せっかくやけど遠慮しときますわ、土くれのフーケはん」

 静留は後ろを振り返ると、声の主――ゴーレムの肩に乗った土くれのフーケに向かって声をかける。

 「土くれのフーケ! あなた、なんでこんなところに!」
 「やれやれ、お久しぶりだってのに、随分なご挨拶じゃないか」

  声を荒げるルイズに向かって、フーケはニヤリと笑って答える。

 「わざわざ、お礼参りどすか。故郷に帰っておとなしゅうしてはればいいのに」
 「生憎、色々浮世のしがらみって奴があってね。悪いがあんたらをアルビオンに行かす訳にはいかないんだよ」
 「しがらみどすか……誰ぞの為と違いますん?」

 見透かすような静留の言葉にフーケは顔色を変えると、吐き捨てるように言い放つ。

 「はん、それがなんだっていうんだい! はっきりしてんのは私があんたらの邪魔をするってことだけさ。とは言え、一度は見逃してもらった恩もある。そうさね、私はあんたらが燻り出されるまで、外で待たしてもらうとしようか」

 そのフーケの言葉が終わると同時に、一階の方から怒号と悲鳴と共に、何かを打ち壊す音や魔法の炸裂音が聞こえてきた。

 「……! ルイズ様、皆と合流しますえ!」

 静留は部屋に戻り、左手でデルフを掴み、右手でルイズの腕を掴むと、ルイズの返事を待たずそのまま部屋から飛び出し、一階へと駆け下りた。

 降りた先の一階は修羅場だった。いきなり現れた傭兵の一隊が、酒場で飲んでいたワルドたちを襲ったらしい。
 宿屋の客たちも総出で魔法で応戦しているが、かなりの数の傭兵が襲撃に加わっているらしく、手に負えないようだ。
 ワルドたちは階段近くの一角でテーブルを盾にして傭兵達に応戦していた。傭兵達はメイジとの戦いに慣れているようで、すぐに魔法の射程を見極めると、射程外から矢を射掛けてきた。
 地の利は闇にまぎれた傭兵達の方にあり、屋内で応戦するには分が悪い。魔法を唱えようと立ち上がると、矢が雨のように飛んでくる。


「そいつは参ったね」

 ようやく合流した静留達がフーケの存在を伝えると、ワルドは顔をしかめて玄関の向こうに見えるゴーレムの足を睨む。

 「不味いわね、あいつらこっちの精神力が切れるまで魔法を使わせてから店に押し込んでくるつもりよ。そしたらどうするの?」
 「そうなったら、僕のワルキューレで蹴散らしてみせるさ!」
 「手垂れの傭兵相手では無理……」

 ちょっと青ざめながら虚勢を張るギーシュの言葉を、タバサが首を振って否定した。

 「僕はグラモン元帥の息子だぞ、卑しき傭兵ごときに遅れは取らない」

 タバサの言葉に憤慨したギーシュは立ち上がって魔法を唱えようとした。それを横にいたワルドが肩を掴んで押し止め、皆に声をかける。

 「いいか諸君。このような任務は、半数が目的地にたどりつければ成功とされる」

 その言葉を聞いてタバサは広げていた本を閉じてワルドの方を向くと、自分とギーシュとキュルケを杖で指して「囮」、ワルドとルイズと静留を指して「桟橋へ」と呟いた。
 ワルドはそれに大きくうなずくと、ルイズと静留に向かって声をかける。

 「聞いての通りだ、裏口に回るぞ」
 「え、どういうこと?」

 その言葉が理解できずに混乱したルイズがワルドに尋ねる

 「つまり、彼女達が敵を引きつける囮になってもらい、その隙に僕らは桟橋に向かうということだ」
 「えっ、で、でも、そんな……」

 ルイズは言葉に詰まって、キュルケたちを見た。

 「ま、仕方ないわね。元々あんたが受けた任務なんだから、あんた達が行くしかないのよ。そのかわり、これで貸し2つよ」
 「静留さんと離れるのは口惜しいが、貴女を無事に送り出せるなら本望だ。しかし、ご安心を。このギーシュ、必ずやアルビオンで貴女と再会してみせましょう」

 キュルケが魅力的な赤髪をかきあげ、ギーシュがキザったらしいポーズを取って不敵な笑みを浮かべる。

 「行って」
 「……わかったわ。その代わり、死んだりしたら絶対許さないんだから」

 そう言ってルイズはキュルケ達に頭を下げると、静留とワルドと共に厨房にある勝手口に向かった。


 ワルドたちが勝手口にたどりつくと、酒場の方から派手な音が聞こえてきた。

 「始まったようだな……」

 ワルドはぴたりとドアに身を寄せ、向こうの様子を探る。

 「外の塩梅はどうどすか?」
 「幸い、誰もいないようだ」

 そう言ってワルドがドアを開け、三人は夜のラ・ロシェールの街へと跳び出た。

 「急ごう、桟橋はこっちだ」

 ルイズを真ん中にしてワルドが先頭に、静留がしんがりになって桟橋へと向かう。月が照らす中、三人の影法師が道の上に遠く、低く伸びた。



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