あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

スナイピング ゼロ-04


 勝負は数秒で決した。セラスは持ち前の反射神経や運動能力を駆使し、一撃も喰らうことなく全てのワルキューレを破壊した。
一体は振り払った右の脚で上半身を砕き、一体は振り上げた左の手で頭から真っ二つに切り裂き、一体は勢いづけた左の脚で
蹴り飛ばし、一体は右の手で頭を握り潰した。あっと言う間の出来事に、ギーシュはゴーレムに命令する暇すら無い。
いまやセラスとルイズがニコニコ顔で、ギーシュが顔面蒼白と言う状況で向き合っている。

「もう騎士は出さないんですね、と言う事はこれで終わりですか?」
「え? あ、まぁ・・・これ以上は出せないから、僕の負けだね」
 そう言って杖を落とし、両手を上げて降参を示した。平民がニコリと笑い、尖った二本の歯がギーシュの眼に写る。
「君・・・まさか吸kむぐぅ!?」
「そうですよ、ミスタ・グラモン。今の私は何も恐ろしくありません、だから黙っててくれないと・・・ね♪」
「ムグ、ムグ!」
 口元を右手で塞がれたまま、ギーシュは何度も首を縦に振った。セラスは手を離すと振り返り、主人に敬礼した。

「任務成功、ギーシュを倒しました」
「よくやったわ、騎士十字章ものよ。あとで・・・しょ、処女の血を奢ってあげるわ」
「気持ちだけ受け取らせていただきます」
「じゃあ帰りましょう、部屋で着替えるわ。ギーシュ、後でモンモランシーとケティって子に謝っときなさいよ!」

 振り向きざまに注意して、ルイズは使い魔と共に広場を去って行った。モンモランシーが駆け寄り、ギーシュに声をかける。
「ねぇギーシュ、あの女って何者なの!? 貴方のゴーレムを素手で壊すなんて、マトモじゃないわよ!!」
「悪いけど、愛しのモンモランシーでもそれは言えないよ。早い話が、禁則事項ってやつさ」
「はぁ?」

 金髪バカップルを眺めながら、キュルケはセラスの正体を考えていた。タバサは本から目を離し、顎に手を当てている。
「まるで化物ね、さっきの女。何者なのか、後でルイズに聞いてみようかしら・・・タバサ、どう思う?」
「奈落の底のような目・・・危険人物」
 そう言うと、タバサはキュルケを連れて学園へと戻って行った。



 『遠見の鏡』で一部始終を見送ると、オスマンとコルベールは顔を見合わせた。

「オールド・オスマン、あの少女が勝ちましたね・・・」
「そりゃ吸血鬼じゃからな、『ドット』メイジでは相手にならんじゃろ。先住魔法すら使っとらんし」
「それに、あの動きを見ましたか。ゴーレムを素手で殴り倒したり、素足で蹴り飛ばしたり。少なくとも、我々の知る吸血鬼は
 あんな事は出来ません。新種の吸血鬼だと言う事が分かった訳ですね、ガンダールヴかどうかは分かりませんでしたが」
「で、君の結論は?」
「彼女はガンダールヴで、ほぼ間違いないかと」
「そうか・・・・・・」
 腕を組み、座椅子に背を預ける。木が軋む音が、部屋に響く。

「オールド・オスマン、すぐにでも王室に報告して指示を仰いでください!」
「だが断る!」
「どうしてですか、これは世紀の大発見なんですよ!?」
「分からんかね、コルベール君」
 重々しく、オスマンは椅子から立ち上がる。白く長い髭が、大きく揺れる。

「もし彼女がガンダールヴだとして、王室に知られたらどうなると思う。宮廷で暇を持て余した連中がすぐにでも
 戦を引き起こし、彼女を前線に立たせるじゃろ。だからじゃ、この件は私が預かる。他言は無用じゃ、ミスタ・コルベール」
「・・・はい、かしこまりました」
 コルベールは頭を下げ、オスマンは窓の外を眺めた。広大な草原が、どこまでも広がっている。
「やれやれ、どうやら忙しくなりそうじゃなぁ・・・・・・」



朝の眩しい光を受け、ゆっくりと目蓋を開ける。そこには、石で造られた天井が見えた。

「あれ・・・?」
 顔だけを動かし、周りを見回す。ベットが並んでいる所から、医務室らしき場所だと分かった。
そこで、左手の違和感に気付く。手袋を剥がして見ると、奇妙な文字が浮かび上がっている。
右手で擦ってみたが、消すことが出来ない。
「・・・これは?」 
「あ、お目覚めになりましたか!」
 窓際に寄り添って広場の喧騒を聞いていたシエスタが、ベット脇に歩み寄る。

「・・・誰?」
「私はシエスタって言います。このトリステイン魔法学園で貴族の方々をお世話するために、ここで御奉仕してるんですよ」
「トリステイン?」
「はい、貴族の貴族による貴族のための学校です。ご存知ですか?」
 首を横に振った。相手が黙っているためか、シエスタは説明を続ける。

「召喚されたのは二年の生徒で、ミス・ヴァルエールと言う方なんです。後でお会いなさってください」
「ミス・ヴァリエール?」
「簡単に言えば、ご主人様の事ですよ」
「ご、ご主人様!?」

 ベットから起き出ようとして、目眩を起こしてしまう。床に倒れそうになったが、手を着いて何とか体勢を崩さずに済んだ。
シエスタが上半身を支え、ベットに座らせる。
「まだ動いては駄目です、貧血を起こされていますから。ミス・ヴァリエールを呼んで来ますので、待っててください」
 そう言ってドアへ向かおうとしたが、途中で足を止めて振り返った。上目遣いで両手を摩り、何か言いたげな顔をしている。

「・・・何?」
「あの・・・失礼でなければ、お名前を聞いてもよろしいですか?」
「名前・・・名前は・・・・・・」



「ありがとうセラス。貴女が来てくれなかったら、私は今ごろ医務室のベットで絶対安静だったわ」
「今回は間に合ったから良かったですけど、もう決闘なんかしないでくださいね」
「分かってる、今度からはセラスに戦ってもらうことにするから♪」

 医務室へと続く廊下を歩きながら、二人は話し続けていた。水場で顔を洗い、部屋で着替えてから、ずっとルイズは喋っている。
助けてくれたのが、よほど嬉しかったらしい。いまやルイズはセラスの事を、伝説のイーヴァルディの勇者と思っているのだ。
光り輝くルイズの瞳にセラスがタジタジしている内に、医務室が見えてきた。扉を開けようとして、先にシエスタが出て来た。

「セラスさん! 大丈夫でしたか怪我はありませんか殺されませんでしたか殺してませんか!!」
「ちょ、ちょっとシエスタさん落ち着いて。大丈夫ですよ、怪我とかは無いですから安心して」
 シエスタの言葉の弾幕に、又もタジタジなセラス。この吸血鬼、押し出しに弱いと見た。
「そうでしたか、ホッと一安心です」
「ちょっとアンタ、医務室に入れないんだけど」
ルイズの言葉に、シエスタは二人の進路を邪魔している事に気付いた。後ろに三歩ほど下がり、深々と頭を下げる。

「すいません、失礼しました。眠っていた方は、すでに目を覚まされております」
「起きたんですか! 良かった、キスしなきゃ目覚めないのかと思ってましたよ・・・」
「シンデレラじゃあるまいし・・・ほら、さっさと入りなさい」
セラスの背を押しながら、ルイズは部屋に入る。後ろから、シエスタが影のように着いて来た。ベットに座っている人物が三人に
目を向け、体が硬直したかのように固まった。

「あの、どうかされました?」
「・・・・・・・・・」
 セラスが声をかけてみたが、相手は黙って停止したままだ。そのまま数秒ほどすると、ベットの横の台に手を伸ばした。置かれて
いる眼鏡を掛け、再度セラスに目を向ける。すると、全身がガタガタと震えだした。



「あ」
「はい?」
「あ―――――――――――――!?」
「くそみそ?」
 ルイズがツッコミを入れるが、眼鏡は聞いていない。と言うか、聞こえていない。プルプルと震えながら、ピンと伸ばした
右手の人差し指をセラスに向けている。そして、大声で叫んだ。

「セ、セ、セラス・・・セラス・ヴィクトリア!」
「私のこと知ってるんですか!? もしかして警察の人? それともヘルシング機関の方とか?」
「ほざくな、ヘルシングのオモチャめ!! 王立国教騎士団の犬に成り下がった貴女に、吸血鬼としての『五月蝿い!』あが!?」
部屋の隅に飾られていた黒い犬の置物が、時速160kmで眼鏡の頭にHITした。投げつけた張本人のルイズは、得意気な表情で
右肩を回している。セラスとシエスタは、突然の事に驚いた。

「全く、ここは医務室なんだから静かにしなさいよ。大声ださなくても聞こえるんだから、落ち着いて話しなさい」
「その通りじゃ、話し合う時はお互い穏やかな心でなくてはならん!」
「良かった、目を覚まされたようですね」
 そう言って部屋に入ってきたのは、学園長のオスマンと教師コルベールだった。

「嫌な奴が来たわ!」
「本当だ、嫌な奴が来ましたね」
「嫌な奴が来ちゃったわ」
 貴族・使い魔・眼鏡の声が、見事に並んだ。因みに三人は本棚は作らない、シエスタは三人の暴言に驚いている。

「なんじゃ、いきなり」
「三人とも、悪口は本人の前で言ってはなりませんぞ。こう言う時は、影でコッソリ言うものです」
「・・・お主がワシをどう思うとるのか、よく分かった」
 シエスタが椅子を二つ持って来て、ベットの脇に置いた。ルイズ・オスマン・コルベールが座り、セラスとシエスタは
横に立つ。ベットと壁の隙間から出て来た眼鏡に、オスマンが話しかけた。



「あ~っと、まずは自己紹介しなくてはならんな。私はこの学園の長をしておる、オスマンと言う者じゃ」
「教師のコルベールです、よろしく。こちらの少女は君の主人であるミス・ヴァリエール、隣は使い魔のセラス君だ」
 紹介をされてが、眼鏡はピクリともしない。耳には入っているが、頭には入っていないようだ。ただじっと、セラスを
見ている。その視線に気付いたルイズが尋ねた。

「そう言えば貴女、セラスのこと知ってるみたいね。どういう関係なのか、教えなさいよ」
「あ、そうです! それを聞きたかったんですよ!! なんで私を知ってるのか教えてくれませんか」
「そ、それは・・・あの、えっと・・・・・・」
 二人の質問と三人の視線に、少女は自分を抱き締めるような格好で震えだした。そこへ、コルベールが質問を重ねる。
「その前に聞きたいのですが・・・名前は何とおっしゃいますか、お嬢さん」








「私は、猟師・・・リップバーン、ウィンクル・・・・・・」


その後、リップバーンは全てを語った。
セラスが属する組織と、敵対する組織に属していた事 海軍の空母を乗っ取った後、大型偵察機に乗ったアーカードに攻撃された事
部下を皆殺しにされ、自身も心臓にマスケット銃を突き刺され喰われた事 そして、気付いたら医務室のベットで眠っていた事
なぜか眼鏡や時計は元に戻っていて、貫かれた心臓も治っていた事

 そしてオスマンとコルベールが説明し、時にルイズやセラスが補足した。
地球などとは違う別世界である事 ハルケギニア大陸のトリステイン国である事 魔法が存在する世界で、学生の召喚によって
呼び出された事 一人の少女に使い魔として生きていかなくてはならない事 セラスはすでに使い魔として生活している事

「つまり、あんたも私の下僕だって事! 別の世界じゃ敵同士だったかもしれないけど、今日からセラスと一緒に雑用しなさいよ」
「い、一緒って・・・そ、そんな事いきなり言われても・・・」
 ベットの上で体育座りのような格好をして、リップは更に震え続けている。原因は、目の前でセラスに上から目線されてるからだ。
どうやら空母での戦いが元で、見下ろされる事がトラウマになっているらしい。因みにセラスは相手をビビらせる気など無いし、
睨み殺すような眼もしていない。ただ単に、リップを見ているだけだ。

「突然の事に混乱するのも、無理は無いわい。まぁ、何日か生活すれば慣れるじゃろうて」
「今日からは、ミス・ヴァリエールの部屋で寝起きして下さい。何か有りましたら、彼女に聞くように」
「ほら、分かったらさっさと靴を履く! あと時計と、マスケット銃だっけそれ? それ持って着いて来なさい」
学園長や教師の助言を尻目に、ルイズはリップの腕を掴んで急がせる。それを眺めていると、シエスタが話しかけてきた。

「大丈夫ですかセラスさん、初対面とはいえ敵だった人と生活って」
「ん~まぁ何とかしてみますよ、見た所そんな害は無い人みたいですし」
「そうですか・・・でも、気をつけてくださいね。あの人、銃を持ってますから」
「そうですよね、気をつけることにします」
「セラス、部屋に帰るから来なさい!」



ルイズはリップを引きずって、扉の前まで移動していた。セラスとシエスタが後ろを、その後ろをオスマンとコルベール
が続いて部屋を出る。途中で教員と別れ、四人はルイズの部屋に辿り着いた。中に入り、ルイズが振り向く。

「私は午後の授業があるから、教室に戻るわ。シエスタ、その子に色々と教えといてね」
 そう言うと、ルイズはさっさと部屋から出て行ってしまった。残ったのは、リップを見つめるセラス シエスタを見つめるリップ
セラスを見つめるシエスタ の三人。三角関係みたいな状況で最初に口を開いたのは、シエスタだった。

「え~と・・・それじゃあリップバーンさん、これから雑用を教えますけど・・・良いですか?」


その日、シエスタのリップバーンに対する教育は全く進まなかった。教えようとしたら部屋の隅に座り込み、ブツブツと物言う
欝モードに入ってしまったからだ。そのため、急遽シエスタによる慰めタイムが始まったのだが・・・

「ほら、しっかりしてくださいリップバーンさん。セラスさんなんか、立派に使い魔として頑張ってるじゃないですか」
「頑張りたくなんか無いわぁ・・・帰してよ、私を元の世界に帰してよぉ・・・・・・」
「それは無理なんですよ。マスターが言うにはですね、使い魔を元の世界に戻す呪文は存在しないらしいですから」
「そんな・・・」

グスグスと泣きながら、リップはセラスを見上げた。マスケット銃と時計を抱き締めて涙を拭う姿を見て、セラスの心にチクリと
痛みが走る。でも、自分にはどうしようも無い。戻れない以上、この世界で上手くやっていくしか無いのだ。 
「残念ですけど、帰郷は諦めてください。どんなに願っても、元の世界に帰る事は出来ないんです」
「そうですよリップさん、諦めも肝心です。それにトリステインも結構良い所ですよ、住めば都って言いますし」
シエスタが慰めの言葉をかけるが、余計に落ち込ませてしまった。そして何時の間にか、名が省略されて『リップ』になっている。


「・・・シエスタさん。すいませんけど、ちょっと席を外してもらえませんか」
「あ、はい。分かりました」
 シエスタが廊下に出ると、セラスはリップの前に立つ。相手が怖がるのも気にせず、セラスはリップの足元に腰を下ろした。
そして左手で頭を、右手で顎を掴むと、無理やり口を開かせた。ギザギザとした歯が、セラスの視界に入る。

「・・・やっぱり、リップさんも吸血鬼ですか」
「にゃ、にゃひをいきにゃり!?」
「いや、ちょっと気になったんで確認をと」
 すぐに手を離すと、セラスは立ち上がった。溜息をつくと、一つ注意をする。

「いいですかリップさん、この世界で吸血鬼は恐れられる存在なんです。周りに知られたら、面倒な事になります。ですから、
吸血鬼だと言う事は絶対にバレないようにしてください。もちろん、私が吸血鬼だってことも。もし言ったら、その時は」
 立ったまま、セラスは右手をリップの頭に当てる。少し力を入れ、後頭部を壁に押し当てた。

「頭を紅葉卸しますから、注意してください・・・リップバーン・ウィンクル中尉」
「は・・・はい、了解しました・・・・・・セラス・ヴィクトリア婦警・・・」

 マスケット銃を強く握り締め、リップな何度となく頭を縦に振る。目の前に立つ者は、事前に目を通した資料とは全く違う
別人と化した吸血鬼。今の自分では、絶対に勝てない相手。ミレニアムも部下も存在しない、後ろ盾を失った魔弾の射手。
その立場を言い表すならば『俎板の上の鯉』『蛇に睨まれた蛙』が、まさにピッタリであった。




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