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ルイズの魔龍伝-06


6.ブルドンネ街

決闘から三日、ルイズの周囲は少しずつ変わっていった。
まず表立って馬鹿にする生徒が少なくなったのである。
メイジについて表す言葉に「メイジの実力を見るなら使い魔を見ろ」というのもあり
「ギーシュのゴーレムを圧倒的かつ一瞬で葬り去ったのはルイズの使い魔」
という衝撃的事実はあっという間に学院内を駆け巡っていた。
元々魔法以外の成績はトップクラスであり、家系もトリステインの中では相当に有名な部類に入るので
「あのルイズがとうとう」と感心する者もいたという。
「どうせ嘘に決まっている」「ルイズが凄いのではなく使い魔が凄い」
人づてに話を聞いた者や、ルイズを侮蔑目的でからかっている心無い者もいたものの
決闘の当事者であるギーシュとルイズ、更にこの決闘を見ていた彼女らのクラスメートも多く
何より使い魔の名前が「ゼロ」であったためルイズのクラスでは「ゼロ」とルイズを馬鹿にする者は一人もいなくなった。

「アンタが名前をゼロゼロ言うから私の二つ名が“ゼロ”のままじゃないのよーーーーーーー!!!!」

当人はこんな感じで相変わらずご立腹であったが。


「買い物に行くわよ」
その日の夜、ルイズから提案があった。
話によると明日は休日にあたる虚無の曜日なので街へ買い物に行くとの事らしい。
「それで、アンタの寝具と…剣ね、それを買うわ」
「…どういう風の吹き回しだ」
「あんたがボロっちぃマントで寝てるのがみっともないからよ!
使い魔の管理をするのも私の仕事!それに…私が受けた決闘で剣、壊しちゃったみたいだし…」
今までの待遇からするとあり得ない提案とちょっとしおらしくなった言動に疑心暗鬼になるゼロ。
この娘の事だ、何か物を買わせてまた雑務を押し付けるに違いないと彼は思ってしまった。

「物で釣っても俺は着替えの手伝いもしないし顔は洗わんからな」

使い魔が出来て色々と雑務をさせようというルイズの企みは事実失敗に終わっていた。
呼び出して2日目の朝は何とかなったものの、それ以降は着替えと洗顔に関しては
「そのぐらい自分でやれ」と断固として断られたのだ。(水は朝の鍛錬のついでに汲んでくれているようだが)
更に部屋の掃除と洗濯は率先してシエスタがやるようになってゼロをこき使う機会も無くなってしまった。
着替えと洗顔をやらないなら飯を抜こう、とは思い立ったがシエスタの話では
決闘で気を良くした厨房の人達がご飯を出してくれており、ゼロも
「俺の飯と、シエスタがルイズの世話をしている礼だ」
と薪割りや物の持ち運びなどの力仕事や使い魔への餌やり(使い魔達がゼロに妙に懐くかららしい)を
行っているので「言う事聞かないから飯を抜く」とはとても言い出せなかった。
しかし決闘で見事圧倒的な力の差を見せ勝利した使い魔、
褒美で何か買ってやろうという気持ちも無い訳ではなかった。
それがゼロの一言で見事に打ち砕かれた。
ゼロの鈍感な言葉にルイズの心に火が灯り、それは徐々に炎を形作る。

「あー…っそ! アンタ異世界から来たなら当然この世界のお金ってのは持って無いわよね?」
「そういえば…そうだな。元々流浪の身だから手持ちは殆ど無かったが…」
「いくら強くても騎士たるもの、剣を持ってないと駄目よねぇ…!」
「確かに…いや、向こう側にいた頃のように魔物を退治をして路銀を…」
「私がそんな事許可すると思う?それより何より、アンタの種族はこの世界でアンタだけ。
信用されるどころか下手すると魔物扱い、追う筈が追われる立場にねぇ…」
「くっ!」
この世界での路銀と、決闘で使い物にならなくなった剣の調達。
食事と寝床が保障された学院に数日いたおかげでそこまでゼロの考えが回っていなかった。
実を言えば雷龍剣には剣を使わない技もあるのだが、的確な指摘をされたゼロは
すっかりルイズのペースに呑まれてしまいぐうの音も出なかった。
「まぁ、別に物を買い与えて働けって訳じゃないのよ?
私は決闘ですっごい活躍したゼロになんか買ってあげようかなーって思っただけ。
でも、そう思ってたのにガンダムが「物で釣っても働かない」って勝手に決めつけちゃって…」
「ぬぬ…」
「あー傷ついたなー、ご主人様すっごい悲しいなー」
あからさまな演技なのは分かっているのだが、もはや言い返す言葉が見つからないゼロ。
彼女が「あの言葉」を要求しているのは何となく感じてはいるが自分の意地がそれを言わせまいとしていた。
「ガンダムがもうちょっと素直ならねぇ…」
「(迂闊に疑ってしまった俺にも非がある… 仕方が無い、背に腹はかえられん…)」

「疑り深くなって…すまなかったな、ルイズ」

「もっと分かりやすく簡潔に」
「何?」
「反省しているんでしょ?じゃあもっと分かりやすい言葉がいいわ」
ルイズの顔はとてもにんまりしていた。
しかしそれはクックベリーパイを前にした時のような無邪気なものではなく、
何か黒いものが奥底にあるような邪悪なにんまり顔。
その顔を前にゼロはその言葉を言わざるを得なかった。

「……ごめんなさい」
「よろしい、じゃあ明日はお買い物ね」

ルイズ、召喚して以来初めてゼロより優位に立った瞬間であった。


「…プフッ」
「何がおかしい」
明くる朝、魔法学院前の正門前。
馬に乗ったゼロを見てルイズは思わずちょっと吹き出していた。
ゼロの身長こそルイズよりも大きいとはいえ、ゼロの頭身は大体2.5~3頭身であり
馬に乗っているゼロの姿はルイズの目にはなんともユーモラスに映っていたのだから。
「何でもないわよ……ックク」
「昨夜か!?昨夜のアレか!?俺はもう謝ったぞ!」
「じゃあ私が先導するから付いてらっしゃいな」
「おい!」
昨夜のやり取りの事かと思ったゼロが話しかけても、どこ吹く風といったルイズは
ゼロをよそに楽しそうに馬を走らせていった。


ブルドンネ街、トリステイン王国で一番の大通りである。
休日で人がごった返すそこを窮屈そうに歩くルイズと、それに付いてくる
フードを目深にすっぽり被った何か…もといゼロ。
何があったかというと、街に近づくちょっと前に馬を止めたルイズから
「ゴーレムにしてはかなり例外な見た目だし喋るから目立つわよね…」
という懸念から来る提案で表向きは「自分で喋る珍しいゴーレム」という扱いで行動することになった。
無論ゼロも余計な騒ぎは好かなかったので
「ルイズにしては中々真っ当な考えだな」
と彼女に蹴りを入れられるような感想を返しつつ素直に承諾した。
街の入り口にある駅で馬を預けた時も最初は駅の者に珍しい目で見られたが
それだけだったので一安心で街へを繰り出せたのである。

「ん~と、確かこの路地を入って……四辻を抜ければ近くに武器屋だったかな…」
記憶を辿りながらルイズは人ごみを外れて街の裏路地へと入ってゆく。
建物の間に位置する日の差さない路地は昼間でも薄暗く、そこらに汚物やゴミが散らかっており
ゴロツキやならず者の溜まり場になっていた。
昼間はそこまでたむろしている訳でもなく、壁にもたれかかったり地べたに座ってる者が
ほんの少しいるぐらいでここを通るルイズとゼロを一瞥するとまた視線を元に戻していた。

「おいお嬢ちゃん」

が、もうすぐ四辻に出ようという所で道端に座っていた男に声をかけられてしまった。
そいつがすっくと立ち上がって前に立ちふさがると同時に、後ろからも男が三人ほど
こちらに向かって歩いてきておりちょうど挟まれた形になる。
「…ちょっとそこを通して欲しいんだけど」
「通して欲しいってかお嬢ちゃん!げひゃひゃひゃ!」
前にいる男の片方が卑下た笑いをし周りの男達もニヤニヤと笑いを浮かべる。
しかめっ面で対峙しているルイズをよそにゼロは男達の観察をする。
後ろから来た男達はちらつかせてはいないものの腰元に短剣をぶら下げていて
いつでも抜けるような態勢になっており、前の男はというと何も持っておらず
腰にも何かぶら下げている様子は無かった。
「(……後ろ三人はともかく前の奴は何も持っていないな、一体どういう事だ?)」
「ここは俺達の縄張りって奴でな、通る奴には通行料を頂いてるんだ」
「で、いくらたかろうってのよ」
「お嬢ちゃん可愛い見た目して言い方キツいねぇ、じゃあ金貨20枚って所だな」
ルイズが買い物に持ってきた金額は新金貨300枚。ルイズが200枚、ゼロが100枚持っており
出せない金額ではないもののカツアゲとあっては貴族のプライドが黙ってはいなかった。
「ゴロツキに出すものは何も無いわ、そこをどきなさい」
いつもの調子でルイズが言い放つとやはり男達は卑下た笑いを浮かべた。
「よぅし分かった、じゃあ払わない場合どうなるかご覧頂こうか」
前に立ちふさがる男が後ろのズボンをまさぐると短い棒――即ちワンドを取り出した。
「悪いが俺はこのブルドンネの裏通りじゃちょいと有名でね」
そう言った片方の男がワンドを壁に向け呪文を唱える。
小さな炎がワンドの先に発生しそれは膨れてあっという間に火球へと変貌してゆく。
ファイヤーボール、火球を発生させそれを放つ火系統の魔法である。
杖を向けた瞬間から身構えるルイズとゼロに余裕ありげに男が話す
「おっと今は当てないから大丈夫、い・ま・は」
そう言うと発生した火球が二個、三個と増えてゆく。
「兄貴を怒らせると痛い目に遭うぜぇ!」
「何せトライアングルだからな兄貴は!治療が追いつかねぇほど爛れちまうかもなァ!」
「悪いが後ろへ逃げようとしても、呪文を唱えようとしても、俺達がブスリ!といくぜぇ…」
後ろにいた男達が腰の短剣を抜いて構える。
「(ゼ、ゼロに何とかしてもらわないと…って剣使えないじゃない!
壊れたからって学園内に置いてきてたんだった!でも壊れてるからあの技は使えないんだし
持って来てもしょうがないって言うか…えーっとえーっと…)」
目があちこちに泳ぎどうしようもないルイズの様子に「カモれる」とふんだ男達がにじり寄ろうとしていたその瞬間であった。

「お待ちください!我々とて争いは好みません、金貨はお支払いしますので
袋から金貨を取り出すまでお待ちいただけないでしょうか!」

ゼロは確かにそう言い放った。
それを聞いて唖然とするルイズと、話がまとまったと思い返事をする男。
「従者さんは賢い事で!おい、お前らそこで止まっときな!何か怪しい素振りをしたら俺が始末する」
「ちょっと!何言っ…」
「お嬢様申し訳ございません!ここはひとつ彼らに!」
ゼロはそう言うとルイズの手を掴み引き寄せる。ファイヤーボールが周囲を照らしているものの
薄暗い場所なので鼻先まで近づかないと深くフードを被ったゼロの顔は見えない。
鼻先までゼロの顔が近くに来た時、小声でゼロが喋った。
「いいか、俺が合図をしたら後ろの三人の男の誰でもいい、手に持ってるナイフを錬金してみろ」
「いきなり何なのよ、そこまで正確に狙いつけてやった事無いし」
「これも経験だ、前のメイジは俺がやる」
「アンタ剣無いじゃない」
「心配するな、手はある」
「手だけあってもしょうがないじゃない!」
「そういう意味の手じゃない!」
「おい従者さんよぉ!いい加減早くしてもらえねぇかなぁ!何なら従者さんから先に焼いちまってもいいんだぜ!」
「申し訳ありません!早速お金を…」
「とにかくお前を信じてるからな」と言いルイズの前に立ち金貨の詰まった袋を前に掲げる。
ひゅぅ、と男が袋を確認しゼロ達に向けていた杖を下ろしたその時。
「今だ!」
ゼロの袋を持ってない空いた片手が男の方に向くのと、ルイズの杖が後ろの男達に向いたのはほぼ同時だった。

「錬金ッ!」
「雷電破(サンダーエレクトロン)!」

ゼロの手から稲妻が男に向かって迸る、それは杖を向きなおした男にとってあまりにも早すぎる攻撃であった。
火球を飛ばす間もなく稲妻が男の体を貫き、火球が虚しく掻き消えながら男が崩れ落ちる。
ルイズの錬金は狙いを外す事無く、見事真ん中の男のナイフに作用しいつもの失敗のようにナイフが爆発した。
「武器屋に走るぞ!」
「う、うん!」
ゼロの呼びかけにルイズが走り二人はその場を走り去ってゆく。
倒れた男の手に持っていた杖が走ってゆく二人に踏まれ、虚しく軽い音を立て割れた。

余談だが、そのほんの少し後に爆発音に気づいた通行人が様子を見に行った所、気絶している男と
何かに吹き飛ばされたかのように壁に打ち付けられて気絶した煤だらけの男三人が発見された。
男達は「貴族のガキとフードを被った従者にやられた」と証言しているものの
ここらへんで顔の知れたゴロツキであるのと証言のみで信用に乏しく、この件に関しては
「内輪もめの喧嘩」として処理されたそうだ。

閑話休題

ゼロとルイズは何とか武器屋の前まで辿り着いていた。
周囲を見回しているゼロに対し、恐らくはあまり運動をしていないであろうルイズは
すっかり息を荒くしており肩で息をしていた。
「…この様子だと奴らは全員気絶していると見て間違いないだろうな、上手くやったな」
「アンタ…さっき…かっ……雷を…ぜぇ…手から撃ってなかった…?」
「あれも雷龍剣の技だ。まぁかなり加減はしてあるが」
「なんなのよもう…なんでもありじゃない…」
「しかしこれぐらいで息が上がるとは鍛えが足りないな、少し運動しろ」
「う…うっさ…い!」

「店の前で何だいあんたら!買うなら買うでさっさと入りな、冷やかしならさっさと…」
「買うわ!買うわよ!」

いつの間にか武器屋の入り口に立っていた五十がらみの男が、パイプを片手にうっとおしそうに二人へ話しかけてきた。
しかし勢いよく買うわと答えながら振り向いたルイズの胸に紐タイ留めに描かれてある五芒星を見て

「これはこれは貴族様でございましたか!」

と、彼はころっと態度を変えつつ、もみ手しながら二人を店まで案内したのであった。

その頃、魔法学院内の学院長室――――――

「ミス・ロングビルや」
「はい、なんでしょうオールドオスマン」
「おっぱい揉みたい」 「今度は折りますよ」
いつものようにオスマンのセクハラな質問を書き物をしているロングビルが無慈悲な返答で返す。
「…ちょっと位ケチケチせんでもええのに、まーええわい。ミス・ロングビルや、この間宝物庫の目録を作りたいと言っておったの。
今用事があって宝物庫に入るところでな……行ってみるかえ?」
「えぇ、是非」
施錠の魔法がかかった引き出しを開錠し、大人の掌ほどの頑丈そうな鍵を一つ取り出したオスマンとロングビルは学院長室を後にした。
オスマンの後ろを歩くロングビルの顔が今までにない、歪んだ笑みを浮かべていたのには
前を歩いていたオスマンが気づくはずも無かった。

「ここが…宝物庫」
箱に収められているアイテムが大半であるが、様々な杖がかけられている一画があったり
また別の壁に目をやれば見た事も無い剣や鎧などが置かれておりそれらが一体となって
尋常ではない空気をかもし出していた。
「わしはちょっと探し物をするから、ロングビルは目録を頼むぞい」
「はい」
宝物庫の奥へと進むオスマンを見届けると、ロングビルは目録を記しつつ保管している箱や
飾られている鎧をやけに丁寧に眺めた。
「…飾ってあるのは大体かさばるような大きさで…箱は魔法で施錠…流石に今ここで…ってのは無理、ね」
「何か言ったかのー!」
「い、いえ、なんでもありませんわオールド・オスマン!」
「…お、あったあった」
オスマンの方から声が聞こえ、つい声に出してしまったとハッとするロングビル。
しばらく目録を作る作業に打ち込んでいるとオスマンがレビテーションの魔法で大きな箱を三つほど浮かせて持って来た。
「よいしょと、ふぃー…長らくしまっておると出すのにもひと苦労じゃわい」
「それは何ですか?」
「聞きたい?」
宝物庫の開けた場所に置かれた三つの箱を前に、オスマンの手がいやらしくわきわきと動く。
「一揉み100エキューはいただきましょうか」
「…しゅ、しゅみません」
にっこりとした顔でオスマンの襟を締め上げるロングビルにどうしようも出来ず、
素直にオスマンはこの箱について話す事にした。
「これは三つ合わせて「三獣の武具」とワシは呼んでおる。
それぞれ獅子と、梟と、竜をあしらった武具じゃから三つ纏めて“三獣”という訳じゃな」
「三獣の武具…思い出しました、宝物庫に納められている物の中でも指折りのものだと聞いております。
確か斧・杖・盾の三つでしたわね。しかしそのような代物を何故?」
「これを受け取るべき者が現われた、とでも言うておこうかの」
「受け取るべき…者…」
「これでいつでも武具は渡せる準備は整ったの、ではここから出るぞい」
「はい」
オスマンの後に続いて部屋を後にするロングビル。
閉じてゆく扉の向こう側にある三つの箱を見ている眼差しはいつもとは違う、獲物を定める狩人の眼差しであった。


――――――――――――三獣の武具、今度の獲物はこいつに決まりだねぇ





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