あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

絶望の街の魔王、降臨 - 03



 ルイズは、図書館に入り浸っていた。ジルを元の場所に──異世界とかの話は信じてないが──戻す手段を探す為に。
 誇りでできている様なルイズが、使い魔の為に奔走しているのは、数日前の、召喚した次の日の会話と行動による。

「貴方を殺せば、私は元の世界に戻れるの?」

 使い魔か主が死ねば、契約は解除される。それから弾き出される疑問を、ただ口にしただけだ。
 『死ねば』ではなく『殺せば』である。流石にジルも子供を殺しはしないが、ルイズはその言葉に怯えてしまった。ジルは、人を殺した事がある。直感で、それを悟ったのだ。
 無論、即答でそれを否定した。
「契約が解除されるだけで、使い魔は残るわ」
 その答えに、暫く考え込む。
「貴女は、私、いいえ、平民が使い魔である事に不満なのよね?」
 召喚された時、コルベールに抗議していた姿を思い出す。
「え、ええ」
「そして、私がいなくなればどうなるの」
「多分、契約は解除されるわ」
「その場合、使い魔は?」
「また召喚する事になるわ。使い魔が死んだ場合の話だけど」
 ジルが微笑みを浮かべる。
「利害は一致したわね」
「え?」
「貴女は普通の使い魔が欲しい。私がいなくなれば、私が元の世界に戻れば、また別の使い魔を召喚できる」
「成程ね」
「貴女は私を元の世界に戻す方法を探す。対価として、私は貴女の使い魔をしてあげる。どう?なかなかの条件じゃない?」
「乗っ……らないわよ!何で私が平民の指図なんか……!」
 文句を言おうとして、封じられる。ジルに睨まれたからだ。生物として逆らってはいけない何か、それを感じさせる瞳だった。
「感覚の共有や、秘薬の材料集めはできないけど、護衛に関してはかなり使えるわよ」
 ジルはルイズが起きる前、見舞いに来たコルベールから大雑把な話を聞いて、使い魔の役目を知っていた。
「そ、そう。判ったわ。貴女を元に戻す方法を探してあげるわ。感謝しなさいよ」
「そう、それでいいのよ、ルイズ」
「御主人様と呼びなさいよ」
「嫌よ。私にそんな趣味は無いわ」
 軽くあしらわれる。
「くううううう……」



 それから、ジルは大人しく雑用をして、ルイズは図書館に入り浸る様になった。
 その次の日の授業。
 ルイズとジルが教室に入ると、ざわついた教室が一瞬、静かになる。ジルが美人だから、それだけではない。ズタボロの状態で召喚され、その疲労と傷は一ヶ月はマトモに動けない、そんな話を噂で聞いていた(一部の生徒はコルベールに訊いて裏を取った)のに、もうピンピンとしてルイズについて歩いている。本当に人間か、と疑いたくなるのも無理は無い。普通、サモン・サーヴァントで人間は喚ばれないのだから。
 そんな視線など知ったこっちゃないと言わんばかりに、堂々と歩を進め、席に座るルイズ。その隣に、普通に座るジル。
 その堂々とした姿に畏怖を覚え、誰も追及する事はできなかった。
 微妙な緊張の中、ひそひそ話で静かにざわつく教室に、やがてふくよかな中年女性の教師が入ってきた。今度こそ、全員沈黙する。
 一度、教室を見渡して、
「使い魔召喚は、皆さん成功ですわね。このシュヴルーズ、春の新学期に様々な使い魔を見るのが楽しみなのですよ」
 更に、今度はルイズを見て、
「ミス・ヴァリエールはまた変わった、使い魔を……召喚しましたね」
 何かに気圧される、そんな気分を感じながらも、シュヴルーズは言葉を最後まで言い切った。
 ルイズの使い魔にから、言い表せない何かを感じたのだ。ルイズなら威圧感、コルベールなら殺意と表現するだろうが、本人は『余計な事を言うな』と言いたいだけである。
 この数日でルイズが蔑まれている事を知ったジルは、空気を読まないシュヴルーズに生徒達を調子づかす発言をさせたくなかったのだ。一応、使い魔として契約したのだ、義務を果たそうとした。
「ゼロのルイズ!召喚できなかったからってそこら辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」
 案の定、一人の生徒が騒ぎだす。
「なっ……」
 反論しようとしたが、ジルに止められた。
「ああいった馬鹿は、無視するに限るわ。相手にすると調子に乗るから」
 そうは言うが、その生徒とシュヴルーズにそれぞれ『黙れ、殺すぞ』『早く駆逐しろ』とオーラを送る。
 シュヴルーズ以上に空気の読めない生徒は更に囃し立て、シュヴルーズはそれを諫める。
「侮辱はおやめなさい」
「しかし先生、これは真実です。実際にゼロのルイズは魔法がぼっ」
 生徒達は何が起きたか、一瞬判らなかった。
 先程の少年を見ると、口から赤土を掻き出していた。
「貴方はそのまま授業を受けなさい」
 残酷にも、口に赤土が大量に残っている状態で授業を受ける羽目になった。
「ね、正解でしょう?」
 と、悪戯が成功した少女の様な笑みを浮かべるジル。
 それからは、授業は順調に進んだ。一年の時の復習の様な授業で、ルイズは退屈そうに聞いていたが、意外にも、ジルが真剣な顔で授業を聞いていた。
 やがて手本を見せ、生徒に実践をさせようと教室を見渡して、ある一人の生徒に白羽の矢が立った。
「ミス・ヴァリエール、この小石を望む金属に変えなさい」
 教室を独特の緊張感が包んだ。
「ミス・シュヴルーズ!危険です!」
 声の元はジルの斜め後ろ、紅い髪と褐色の肌の美人だった。キュルケだ。
「何故です、ミス・ツェルプストー?」
「先生は知らないからそんな事が言えるんです。あの威力は……」
 召喚の時の、あの威力を思い出す。大砲などメではない。上手く使えば対艦戦闘すら可能なのだ。
 しかしシュヴルーズはそれを聞き入れず、ルイズは頭から湯気を出しながら教卓に向かっていった。非常に怒っているのだ。
 ジルがキュルケを止めなかったのは、その声が本気だったからだ。
「すううぅぅぅぅ……はあああぁぁぁぁぁァァ……」
 深呼吸をして頭を冷やす。気を落ち着かせ、集中する。そして詠唱。
「錬金!」
 閃光、破片、爆風、爆炎、そして爆音。
 ジルは爆心にいたルイズの死を確信した。
 それ程の爆発だった。
 しかし彼女は生きていた。元いた場所に平然と立っていた。酷いのはシュヴルーズだ。壁際まで吹き飛ばされ、小さな破片が刺さっている。いつもより甚大な被害に、教室がパニックに陥る。
「シュヴルーズ先生が死んだ!」
「メディーック!」
「ふざけてないで水!回復!」
「モンモン!」
「誰がモンモンよ!」
 誰も助ける気は無い様で、一つ嘆息したジルは、シュヴルーズに近寄る。軍も警察も経験している彼女は、かなりの救急技術を持っている。バイオハザードでかなりレベルアップせざるを得なかったので、外傷に関しては相当なものだ。いざとなれば、魔法より魔法らしい『回復薬』を使えばいい。
 傷は軽い。頭を強打した痕跡は無い。純粋に衝撃波で頭を揺さぶられたのだろう。念のため救急スプレーをかける。火傷や傷が瞬時に消え、破片が落ちる。いったいどんな薬なのだ
ろうか?
「誰か、運ぶの手伝いなさい」
 いつの間にか静かになった教室で、ジルの声はよく通った。
「へ、平民の分際で……」
 バシュ。言葉にするとそんな音がした。傲慢な反論をした生徒の額に、筒が刺さっていた。
「ふ、ふりぇぃ……」
 数秒の硬直の後、パタリと倒れる。ホルスタに麻酔銃を戻し、教室を見渡す。
 『反論は許さない』と、その行為は如実に語っていた。しかし、名乗り出る者はいない。
「仕方ないわね……ルイズ。医療設備のある場所まで案内して」
 気絶したシュヴルーズを軽々と担ぎ上げ、ルイズに先導させる。
 残された生徒達は、その役立たずぶりにより、駆けつけたコルベールに教室の片付けを命ぜられる事になった。



 その日の昼食時に、トラブルがあった。
 色ボケと名高いギーシュがヘマをしでかし、そのとばっちりを受けたジルが決闘をする羽目になったのだ。
 事の一端を担うメイドは顔を青くして逃げ、ルイズはジルに謝る様に言うが、当の本人は知った事じゃないと言わん限りのスルーっぷりを発揮し、決戦の場ヴェストリの広場に向かう。
 そこでルイズは今までの常識が如何に儚いかを知った。



 その騒ぎの数刻前、ちまちまと書類の処理をするオールド・オスマンの学院長室に、騒がしくコルベールが入ってきた。
「なんじゃコル君。ノックぐらいしたらどうじゃ」
「コルベールです。すみません、これを」
 分厚い書籍を二冊と、数枚の紙を差し出す。
「ミス・ヴァリエールの使い魔に現れたルーンですが、とんでもない事が判りましたぞ!」
 鼻息荒くまくしたてるコルベールに、迷惑そうな顔をしながら、仕方ないと言わんばかりに訊く。
「何が判ったんじゃ、コルネオ君」
「コ・ル・ベ・ェ・ル。彼女はガンダールヴです」
 本の一つを手に取り、付箋の場所を探り、そのページを開く。本の題名は『始祖の使い魔達』。
「真か!?」
「それしか考えられません。ルーンの形は完全に一致します」
 紙に描かれたスケッチと、本の図は、どう見ても一致した。
「やれやれ、また厄介事の種ができたわい」
「残念ですが、まだ厄介な話はあります。これを」
 もう一冊の本を広げる。
「『霞の中より現れし使い魔、この世の者に非ず。其の者、伝説を纏い、伝説を破り、伝説となる。
其の者、不死に非ず。しかし剣も魔法も効かず。異界の理を以て、世を変える。
全ての歴史は、其の者と、禿頭の男と共に始まる。其の者、理と知恵を男に授ける。
世は変わる。しかし争いは無くならず』」
「なんじゃそれは」
「始祖の言葉でありますぞ」
 題名は『始祖の予言書』。これも幾つか付箋が挟んでであった。
「私は、これがあの使い魔の様に思えて仕方無いのです」
「考え過ぎじゃろうて」
「そうだといいのですが……後、これを」
「何じゃ?」
 紙の束を渡される。それらには、絵が描かれていた。
「彼女の持ち物です。全て合わせるとかなりの重さですが……それは置いておいて……これとこれとこれを」
 束から幾つか紙を選り出す。
「現物を見た方がいいですぞ。あれを造る技術は、このハルケギニアのどこにもありません。中には素材すら判らぬ物も。この世の者とは思えんのです」
 全て、ジルの装備のスケッチであった。ジルが気絶している間に調べ上げたが、全く判らなかった。
「ふむぅ……」
 暫く考える素振りをして、
「コルサコフ君。これは他言してはならん」
「コルベールです。何故です?」
「暇を持て余している貴族に知れたらどうなる?また戦争じゃ。それに伝説の真相は大抵がロクでもない内容じゃ」
「そうですか……」
「じゃが、調査は続けておいてくれ。備えあれば憂い無し、じゃ」
「判りました」
 結論がでたところで、外が騒がしくなる。
「何じゃ?」
 オスマンの秘書、ミス・ロングビルが駆け込んできた。
「決闘です。ミスタ・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔が決闘を。生徒が制圧不可能なので、教師が眠りの鐘の使用許可を求めています」
「何と、まあ……」
「どうしますか?」
「アホか。ガキの喧嘩に秘宝を使う馬鹿がどこにいる」
 コルベールの言葉にそう返す。しかし、
「オールド・オスマン。ミス・ヴァリエールの使い魔ですぞ」
 と反論される。
「そ、そうじゃった。許可する。ただし、どちらかが負傷するまで使うな。そう伝えてくれ、ミス・ロングビル」
「判りました」
 有能な秘書は、すぐに学院長室から出ていった。
「さて、高見の見物といくかね、コルホーズ君」
「私は集団農場ですか。そうしますか」
 オスマンが杖を振ると、鏡が現れた。鏡面には、決闘の場ヴェストリの広場が俯瞰視点で映っていた。




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