あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

笑顔が好きだから-03


「しいねちゃん!いっけー!」

 しいねちゃんの頭の上でリーヤが叫ぶ。

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーー!」

 しいねちゃんも、おなかの底から声を絞り出す。
 二人の叫び声に呼応するように、しいねちゃんの操る箒はそのスピードを上げていく。
 飛び始めたときは気持ちのいい風が、顔を、髪を撫でていたのに、今は、まるでスクエアクラスの風メイジが撃ち放ったエア・ハンマーの魔法に真正面から突っ込んだみたいな強烈な風が、わたしにぶつかってくる。
 一瞬でも気を抜いたらわたしは箒から吹き飛ばされちゃうんだろう。このスピードで箒から落ちたら即死は間違いない。もしかしたら人間だったなんて分からないくらい滅茶苦茶に身体が壊れちゃうかもしれない。
 息が苦しい。空気の密度が高すぎてまともに息が出来ない。おなかの底が凄く熱い。体中の空気を全部吐き出して冷たい空気が吸いたい。

 怖い!苦しい!身体が熱い!

 なのに、なんでこんなに楽しいんだろう。
 どきどきする、わくわくする。
 しいねちゃんやリーヤみたいに叫びたい!

 遠くの地平線の上の白い雲が青い空を猛スピードで駆けていく。
 地上の景色は黒い影になって、あっという間に後ろに飛んでいく。
 学園の南、つい七日前に使い魔召喚の儀式を行った草原、全てが始まった草原もあっというまに消えていく。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」

 その日、わたしは今まで生きてきた中で一番真剣に呪文を唱えていた。
 何故なら、使い魔の召喚と契約に失敗すればわたしは落第してしまうから。
 そして、落第なんて、あのお母様が許してくれるはずもなく、魔法学院を自主的に退学、ヴァリエール領に連れ戻され、魔法の使えない出来損ないの貴族として、半分幽閉されたのと同じ状態で一歩も領地から出してもらえず……領地どころか屋敷の自分の部屋から一歩も外へ出してもらえず一生を過ごすことになる……なんてことをその時は考えていたから。(今になって考えれば、せいぜい領地に連れ戻された後は、魔法がちゃんと使えて領地の経営に明るい独身の若い貴族を一族から見繕ってお見合い、婿養子に迎えて、ちょっと窮屈な、でも、貴族の三女としたらまぁ普通の生活が待っていたってところなんだろうけど)

 とにかく、わたしは落第もしたくなければ退学になんかなりたくなかった。
 何故なら、わたしには目標があったから。
 今はまだ、どんな魔法を使おうとして呪文を唱えても爆発しか起きない落ち零れだけれど、いつか立派な水メイジになってカトレア姉さまの病気を治すんだ、カトレアお姉様みたいに病気で苦しんでいるヴァリエール領の人たちをみんな治してあげるんだっていう目標があったから、こんなところで立ち止まるわけにはいかなかった。
 正直に言えばそれだけじゃなくて、わたしのことを散々馬鹿にしている連中を見返してやりたいっていう気持ちもあった。
 特に先祖代々からの宿敵ツェルプストーにだけは絶対に負けたくない。
 今のわたしはコモン・スペルも使えない落ち零れで、ツェルプストーはトライアングルの火メイジ。既に今の時点で完膚なきまでに負けてるんだけど、だからこそ、使い魔の召喚だけは負けたくなかった。
 だから、わたしはサモンサーバントの呪文を唱えまくった。
 外野やコルベール先生がなんか言ってるような気がしたけど、無視して、とにかく呪文を唱えた。
 けれど、その結果はやっぱり爆発だった。
 その原因は今なら分かる。
 サモン・サーバントの魔法は、わたしにぴったりな相応しい使い魔を召喚する魔法なんだから。
 神聖で美しく強力な使い魔が欲しい。お母様のマンティコアに負けない使い魔が欲しい。ツェルプストーのサラマンダーに負けない使い魔が欲しい。
 そんなことを考えながら呪文を唱えたって成功するわけないんだから。
 でもあの時のわたしにはそんなことに気が付く余裕なんかなかったから、わたしはとにかく呪文を唱え続けた。
 サラマンダーに負けない使い魔なんて贅沢をいうのは止めた。動物でも、トカゲでも、魚でも何でも良かった。
 今考えると、ものすごい失礼な話だけど、大ッ嫌いなカエルでもこの際良かった。
 そして突き付けられる最後通牒。

「今日はこれまでにしなさい。続きは明日でいいでしょう?」というコルベール先生の言葉。
 そして、その時、わたしは、生まれて初めて魔法を成功させた。っていうか、初めて本当の意味で魔法を使ったんだ。
 わたしは呪文を唱える。わたしにぴったりで相応しい使い魔に呼びかけるために。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、"使い魔"を召喚せよ!」

 結果はやっぱり爆発だった。
 同級生達が何か言ってるような気がするけど、でも、そんなことはどうでもよかった。
 何故なら、わたしはあの時、確かな手応えを感じていたのだから。
 ほら。爆煙の向こう側に気配がある。煙の向こうからこちらに向かってくる声が聞こえる!

「うわぁぁぁぁ~~~~~!」
「きゃぁぁぁぁぁ~~~~~!!」
「なんなのだぁぁぁぁぁ~~~~~~~!」

 子供の悲鳴みたいだけど、きっとそれは気のせいだと思った。
 さっきまでの気持ちなんかころっと忘れて、わたしは自分に言い聞かせる。
 このわたし、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが呼び出す使い魔なんだから、それは神聖で美しく強力な使い魔に違いないんだから!と。

 まぁ、でも、結局わたしが召喚したのは3人の子供だった。
 だけど、わたしがそのことを知るのは少し後の事になる。
 何故なら、爆煙の向こうから飛び出してきた何かに突き飛ばされて、わたしは気絶してしまったから。
 気絶する前にわたしが聞いたのは、妙にテンションの高い女の子の声。

「出でよ!エアバッグ!」という、謎の言葉だった。


 戦いの女神(ワルキューレ)が、禍々しい何かと戦っていた。
 ワルキューレっていってもグラモンが青銅で作るゴーレムの出来損ないじゃない。いや、グラモンが作るワルキューレも彫像としたらなかなかいい線いってるとは思うけど。
 長い金色の髪を振り乱して縦横無尽に駆け、飛び回りながら、地獄の闇を人の形にしたような何か……大魔王と戦う、赤いマントを纏った本物の戦いの女神!
 戦いの女神と大魔王との力の差は圧倒的だった。
 戦いの女神が真っ赤に燃える炎の矢を何十本と撃ち込んでも、不死鳥の炎を纏った剣を幾度と無く振るっても、その攻撃は全て闇に飲み込まれて届かない。
 逆に、大魔王が剣を振るうたびに、戦いの女神は傷ついていく。
 だけど、戦いの女神は挫けない。
 矢が尽き、剣が折れても、戦いの女神は諦めない。
 何故なら、戦いの女神には共に戦う8人の聖戦士……仲間がいたからだ。
 年齢も性別も職業も、種族すらばらばらだけれど、戦いの女神と仲間達は共に笑い、共に泣き、時にケンカをしながら、共にここまで歩いてきた。
 その仲間がいる限り、戦いの女神は挫けない。諦めない。
 諦めない限り、矢も剣も、不死鳥の炎の中から何度でも蘇る。
 永遠に続くかに見えた戦いも、いつしか終わりの時を迎える。
 強力で無限の力を持っているかに見えた大魔王は、所詮は一人だったから。
 どんなに強い力を持っていても、力を合わせて戦う戦いの女神と8人の聖戦士達には絶対に勝てないんだから。

 羨ましいな。
 わたしは思った。
 誰がなのか、何がなのか、分からないけれど。
 羨ましい。

 自分自身の最後の力と仲間達の最後の力を不死鳥の剣に込め、戦いの女神は最後の魔法を放つ。

「ウイングクリス!バーニングスラッシュ!」

 不死鳥の剣から炎の鳥が大魔王に向かって飛んで行き、大魔王の闇の衣を切り裂いた。
 溢れ出す光。
 大魔王……原始の闇が光の中に溶けていく…………はずだった。
 はずだったんだけど、何故かそうならなかった。じゃぁ、どうなったのかというと。

 突然空の彼方から現れた、アナグマみたいな動物が世界を食べ始めた。
 その動物は、体は熊だった。鼻は象で、目は犀。尾は牛、脚は虎だった。きっと始祖ブリミルに虚無の魔法をお与えになった創造神が動物を創造した際に、余った半端物をつかって生み出した動物なんだろう。
 例えて言うなら丸い天井に描かれた世界を描いた絵を、その動物が屋根ごと食べ始める。そんな感じ。
 光に溶けていく大魔王。仲間達と喜びを分かち合う戦いの女神。闇が払われ、明るい太陽の光を浴びてきらきらと輝きだす大地。
 そんな全てを、謎の生き物が食べている。

 ああ、これはバクだ。わたしは妙に納得していた。図書館にあった異国の幻獣図鑑に載っていた、夢を食べるという動物。こいつは、さっきの女の子の声の「出でよ!エア“バッグ”」という“魔法”が微妙にずれて発動した結果現れた幻獣なんだ。

 バクは、そんなわたしの感想なんかお構いなしに、世界を食べ続ける。
 そして。
 バクが全てを食べ終わる。
 全てを食べ尽くしたバクは、赤い炎に包まれた乗り物に乗って走り出し、雷に打たれて消えてしまった。

「“バッグ”・トゥー・ザ・フーチャー!」

 と、謎の言葉を残して。
 ああ、もう何がなんだか……

「うぎゅうううう、お、重い……ぐっぐるぢぃぃぃぃ。」

 カトレア姉さまの部屋で動物達に圧し掛かられたときのような重さを感じて、わたしは意識を取り戻した。
 どれくらい気を失ってたんだろう。なんだかずいぶん長い夢を見てた気がしたんだけど。う~ん。

「はっ!?」

 そして気づく。儀式は!?召喚はどうなったの!?わたしが呼び出したのは何!?
 わたしはガバッと跳ね起きた。

「うわっ!」「きゃぁっ!」「うわぁぁぁ!」

 同時に、可愛らしい悲鳴が三つ聞こえてきて、わたしの身体は急に軽くなる。

「あの……ええと……?」

 きょろきょろと周囲を見回すと、わたしの傍らには、何か魂が抜けてしまったような顔をしたコルベール先生
が座り込んでいた。
 さらに辺りを見てみると、普段はしょうも無いことを言ってわたしをイラつかせる同級生達も、何かポカンとした顔をして遠くを見ながら突っ立っていた。
 もちろん、わたしも相当間抜けな顔をしていたに違いない。

「ううぅ、痛たた」「なんなの、いったい。」「酷い目にあったのだ」

 あの時、あそこで間抜けな顔をしていなかったのは、わたしから2メイルくらい離れたところにいた3人の子供、しいねちゃん、チャチャリーヤだけだったはずだ。




新着情報

取得中です。