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絶望の街の魔王、降臨 - 02



 眼が覚めると、知らない場所だった。
「……く、ここは……」
 妙に豪華な部屋。薄暗い。少なくとも、組織に助けられた訳じゃないらしい。ベッドに寝かされ……
「……無い」
 装備の全てが無かった。バックパックもサイドパックもタクティカルベストも。ベルトに通していたポーチも、ベルトごと無くなっていた。
「最悪ね。ラクーンシティより酷いかも」
 一人、呟く。
 記憶はしっかり残っている。桃色の髪の子供──確か『ヴァリエール』だった──に何かされて、左手に異変が起きて……
 そこから先の記憶が無い。
 こうしてベッドで寝こけていたから、意識を失っていたのだろう。化物の巣から帰ってくる途中でこれだ。かなり疲労も溜まっていたのだろう。
 デルタフォースを修了していても、所詮対人戦闘のプロを育てる課程だ。規格外の化物を相手にするストレス。それに耐え続けるのは容易な事ではない。ダメージ、肉体的疲労、精神的疲労、全てが相当なものだ。
 毎回の任務は、カルロスに貰った『全武器無限化アイテム』があったからこそ成功したと言えよう。理論や構造等はどうでもいい。要は鞄の空きが増え、リロードの隙や弾切れの危機が無くなれば、ブラックボックスであっても構わない。細かい事に構わないと生き残れないが、必要で無い事に構わないのも生き残る為の秘訣だ。
 さて、ここがどこだとかはどうでもいい。あの状態で倒れ、拘束せずに寝かせているのならば、身の危険は無いだろう。監視や人の気配は……いや、あった。
 『ヴァリエール』が、ジルの寝ていたベッドに寄り添って眠っていた。少しばかり身構えるが、その無防備な姿に、肩の力を抜く。
 これはもう警戒する必要は無いと、完全に警戒を解く。途端に、疲労が重くのし掛かってきた。意識を失うまではいかないものの、全身が脱力し、重くなる感覚が襲ってくる。
 そこでジルは気付いた。自分の傷が手当てされている事に。
 今回はゾンビこそ少なかったが、BOWやイレギュラーモンスターの数が酷く多かった。いつもなら腕や肩に集中する傷も、全身にほぼ均等に散っていた。
 行く先々にあるグリーンハーブやレッドハーブ、アンブレラ社の唯一とも言えるまともな製品だった救急スプレーで応急処置を行い、どうにか傷は塞がっている状態だった。
 帰ったら暫く遊び歩こうと、そんな事を考えていたが、これでは初めから無理だ。暫く療養で缶詰だっただろう。
「悪い子じゃ、なさそうね……」
 意識を手放す前に、一言、呟き。
 そして、有り得ない物を見た。



 朝。ルイズが起きると、医務室のベッドの上にいた。
「え……どこ……」
 いつもとは違う天井。そこはルイズの部屋ではなかった。
「ここよ」
 女はルイズの隣に座っていた。ルイズに勘違いの返答を寄越し、言葉を続ける。
「手当て、してくれたんでしょ?どんな魔法を使ったのか知らないけど、殆んど傷は無いし疲れも取れたから、いつまでもベッドを占有してるのは悪いと思って」
「貴女、誰なの?」
 未だ寝惚けているルイズは、自分が喚び出した使い魔の事を忘れていた。
「まずは自分から名乗るべきじゃないの?」
 再び勘違いが起こる。ルイズは『何者か』を訊きたかったのだが。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
「そう、いい名前ね。私はジル。ジル・バレンタイン」
 寝惚けていて、いつもの理不尽なまでの気丈な態度が取れないルイズ。大人しく名乗っていた。
「起きなさい。遅くまで私を看ていたんだろうけど、もう昼よ」
「何よ……」
 ルイズは上半身を起こし、頭を振る。まだ眠かったが、昼まで寝る訳にはいかない。
もう既に午前の授業はサボってしまったが、まだ午後がある。
「ここは……?」
「知らないわ」
 だんだん頭が冴えてくる。
 そう、ここは医務室で、この美女──ジルは昨日私が喚び出した使い魔だ。そして今日は臨時休講だ。何でも昨日の爆発が学院の建物に傷をつけたらしい。幾つか窓が割れていたので、教師総出で何処かに変な傷が無いか調べているのだ。
「……頭が痛いわ」
「だとしたら、寝不足か寝過ぎね」
「そうじゃなくて!」
 使い魔に平民が喚ばれた事。その平民がよく判らない物をゴチャゴチャと身に付けていた事。更に深い傷だらけで倒れ、医務室付のメイジに『過労』と診断された事。傷は魔法を使っても全治一ヶ月で、数日は動けない筈だった事。
 それらの疑問を捲し立てた後、ジルが冷静に答える。
「使い魔召喚……やっぱり貴女の仕業だったのね」
「そうよ。本来なら竜とかサラマンダーとかが喚ばれる筈だったのに、何で平民が、しかもこんな……」
 ジルの胸に視線をやる。そして溜息を吐く。
「取り敢えず、貴女の勝手な都合で喚び出された訳ね」
「貴族に向かって、何よその言い方!無礼よ!」
「私を勝手に喚び出すのは無礼でなくて?」
「平民のくせに……」
 ジルの言葉に、切り返す言葉が見つからず唸るルイズ。
 ルイズの唸りは無視して、ジルは続ける。
「傷の手当ては感謝するわ。組織なら確かに全治一ヶ月はいってたわ」
「だから、どうしてそんなに回復が早いのよ!?全治一ヶ月よ、一ヶ月!」
「私は頑丈なの。これくらいで動けなかったら、敵に喰い殺されちゃうわ」
「敵って……何よ?あの傷も敵にやられたの?」
「そうよ。流石に回復薬が無いと死んでたわ」
 タイラント亜種と交戦した時、緊急回避が間に合わず背中を抉られたり、物陰や天井からの奇襲で傷を負ったり。
 ルイズは治療されるジルを見て、猛獣に襲われたのかと推測した。歯形らしき傷や、太い爪痕の様な抉られた痕、どうやってついたのか判らない傷。それが全身にあったからだ。
「一体どんな猛獣よ……」
「知らないなら、知らないままの方がいいわ。あれは悪夢以外の何物でもない」
 その異様な迫力に、ルイズはそれ以上の追及を躊躇った。
「後、私の持ってた物は武器よ。この世界じゃ、馴染みの無い物でしょうけど」
「……この世界?」
 ジルの言葉の中の妙な単語を、ルイズは聞き逃さなかった。
「ええ、この世界。私の世界には、月は一つしか無かったわ。365日、一秒たりとも二つに分裂したりしないわ」
「そんな馬鹿な話、誰が信じるのよ?」
 その言葉に、ジルは不敵に笑う。
「知らないわ。取り敢えず、私を元の場所に返して貰わないと。私にはまだやるべき事が残ってるの」
「無理よ」
 ジルの要求は、一蹴された。
「何故?」
「そんな魔法、無いのよ。使い魔は普通、主か使い魔が死ぬまで解放されないから」




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