あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

未来の大魔女候補2人-02a

 ルイズは暗闇の中に立っていた。
 右を向いても左を向いても闇、闇、闇。紛う事無き暗闇である。
 闇は深く、一寸先どころか自分の手すらも見ることが出来ない。
 しかし、ルイズは恐怖を感じてはいない。それどころか、これから起こる事にワクワクして仕方がないくらいだ。
 それもその筈、今から自分の全てを賭けた舞台なのだから。

『瞬間を感じる。もう昨日までの私じゃない! この新しい道は、望むところまで続いている……』

 ルイズは今までに無い充足感を感じていた。瞳には暗闇など一瞬で掻き消してしまう程の強い意志の輝きが灯り、四肢には怪力乱神もかくやと力が漲り、髪の一本一本までにも恒星の如き魔力が迸る。
 暗闇で見えないがルイズは、白のオペラドレスと肘まである白の手袋に身を包み、髪は自然に流している。そして、各部に華美に成らない程度の装飾品。
 既に準備は万端だ。
 不意に暗闇が薄れた。薄っすらとだが、周囲の様子が分かる。
 ルイズの目の前には、眼が並んでいた。無数の2対の瞳が、闇の中に浮かんでいる。
 眼は、ルイズの立つ位置より低い所から徐々に上に昇っていき、見渡すとほぼ180度の範囲で囲われている。
 どうやら、すり鉢型のホールの舞台に立っているようであった。
 眩い光がルイズを照らす。一瞬眼が眩むが、眼を細めて入ってくる光を調節する。
 眼が光に慣れぬうちに、軽快で何処か気の抜けた音楽が流れてくる。

『もう少し待ってくれても良いのに…… 後で文句を言わなくちゃ』

 一人ごちるが、顔には出さずに前奏に合わせて体全体でリズムを取る。
 やがて前奏が終わり、ルイズは陽気に歌いながら舞台の端から端まで移動する。そうする事で、観客全体に自分をアピールするのだ。
 歌の内容は、前人未到で空前絶後の偉業を、手探りながらも成し遂げた自分自身を大袈裟に歌ったもの。
 やがて曲も終わりに近づき、サビに差し掛かるとルイズは回転を始める。クルクル、クルクルと回転し、その勢いは衰えることを知らない。

『嗚呼…… 世界が回る。みんな回っている。回転は素晴らしい。回転が全てを支配している。
 馬車の車輪は回転する事で前に進み、自然の生態系も円環を成して巡っている。そして、星の動きですら回転が支配している。
 私は永劫回転する車輪の、永劫静止する中心点になって森羅万象を見通す。もう少しで、もう少しで宇宙の真理が見える……
 嗚呼…… 大きな星が、点いたり消えたりしている…… 大きい…… 彗星かしら……?
 いえ、違うわ。彗星はバアーッと動くもの……』

 やがて回転は螺旋へと変化し、宇宙へと上っていく。ルイズの意識は銀河の海を渡り、星屑の煌めく庭を駆け抜ける。光の粒子を追い抜き、視界が輝く白に染まる。
 両手が真理の扉に掛かろうとした時、音楽が鳴り止み万雷の拍手が奔る。その拍子に回転は勢いを失ってしまう。
 真理に至れなかった事を残念に思うが、鳴り響く拍手は悪くない。拍手が鳴り続ける中、ルイズの傍に人影が現れた。

「お見事だったわね、ルイズ」
「姫殿下!」

 現れたのは、ルイズの幼馴染でありトリステイン王国の王女、アンリエッタであった。
 アンリエッタの格好は、公の場の為の豪奢なドレスではなく、この舞台の主役であるルイズを引き立たせつつ地味にならない物である。
 2人は、柔らかに微笑み合って抱擁を交わす。

「姫殿下! お越し下さり、真に有難う御座います。 このルイズ、感激の極みで御座います」
「ああ! ルイズ! ルイズ・フランソワーズ! そんな堅苦しい真似はやめて頂戴!
 あなたとわたくしはお友達でしょう! 昔のように、アンと呼んで頂戴!」
(中略)
「でも、貴女は遠い人になってしまったわねルイズ。まさか貴女が××だったなんて……」

 アンリエッタが誉めそやすが、肝心な部分が聞こえない。
 詳しく聞こうと身を乗り出すが、また新たに人影が現れてその行為は中断させられた。人影の数は5つ。

「おめでとうルイズ。貴女には負けたわ」
「すごい」
「貴女は自慢の生徒ですぞ」
「君のようなメイジが我が学院から出るとは、ワシも鼻が高いのう」
「ルイズ。改めて君に結婚を申し込みたい」

 キュルケは素直に負けを認め、タバサは素直に褒める。コルベールとオスマンは学院の誇りだと持ち上げ、婚約者のワルドからはプロポーズを受ける。
 夢にまで見た光景が目の前で展開され、先程の疑問は吹っ飛んでいった。
 再び現れる人影。


「おめでとう、ちびルイズ」
「おめでとう、ルイズ。我が身の事のように誇らしいわ」
「貴女はヴァリエール家の誇りです。良くやりましたねルイズ」
「小さなルイズ…… 本当に大きくなったね。 父は、父は……  おろろ~んっ!」
「姉さま! 母さま! 父さま、泣かないで下さいまし」

 祝福するのは、ルイズの家族。
 姉(怖いほう)は素っ気無く、姉(優しいほう)は温かい言葉で、何時もは厳しい母ですら優しい。父は、感極まって盛大に涙と鼻水を流しながら泣いている。 
 その言葉を聴いて、ルイズの目頭に熱いものが宿る。堪えようとしても、堪えきれない熱い塊を零さないように顔を手で覆って上へとそむける。涙とは、嬉しい時にも流れるものだとルイズは初めて知った。

「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」

 多くの人達が、ルイズを祝福し、拍手を送る。
 過分な幸福に包まれながら、ルイズは一つの事を確信する。

「私は…… 此処に居てもいいのね!」

「おめでとう」
「おめでとうゲコ」
「おめでとうゲコゲコ」
「おめでとうゲコゲコゲコ」
「おめでとうゲコゲコゲコゲコ」
「おめでとうゲコゲコゲコゲコゲコ」

 ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ。
 ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ。

 何時しか祝福の声は聞こえなくなり、辺りが再び闇に没する。拍手の変わりに聞こえてくるのは、カエルの求愛音のような音。
 闇の中には、小さなオレンジ色の点が3つ浮かび、それは徐々に大きくなってきている。やがて、その点が金貨程度の大きさになった時に、その3つの点を有するモノの輪郭が浮かび上がった。
 滑らかな曲線を描く体。その体の割には小さく、本来の役割を果たす事が出来ないであろう飛膜の翼。吸盤のせいで、大きく膨らんだ指先を持つ四肢。
 大きく割れた口の上には、先程のオレンジ色の3つの点。人間のそれとは違う3つの瞳である。それらの特徴を持った巨大蛙が、暗闇の奥から飛び出してきた。
 ルイズの足は、何かにガッチリと掴まれて動かす事は出来ない。そしてそれは、顔も同じであった。顔を背けることも、逃げ出す事も出来ないルイズが出来る事は唯一つ。それは即ち、叫ぶ事しかない。

「いぃぃ――――やぁ――あぁ――――っ!!」





未来の大魔女候補2人 ~Judy & Louise~

第2話 前編『ルイズとカエルの関係』




 軽快なノックが部屋に響く。ここは、トリステイン魔法学院の本塔の最上階にある学院長室。
 その音を聞いた学院長秘書ロングビルは、学院長を使って椅子を破壊する作業を止めて、素早く自分の席に戻る。
 学院長であるオスマンは、立ち上がって総白髪の長髪長髭を正してから、威厳のある声で訪問者に問いかける。

「誰かね?」
「コルベールです、オールド・オスマン」
「うむ、入りたまえ」
「失礼致します」

 コルベールは一礼をしてから入室し、ぐるりと中の様子を眺める。
 学院長室は、格調高い調度品で整えられており、部屋の奥にはセコイアのテーブルが置かれ、その斜向かいにあるテーブルでは、ロングビルが仕事をしている。
 奥にある机の上には30サントほどの水煙管が置かれており、その傍らにある紙袋からは、糖蜜で固められた煙草の葉がチラリと見えた。
 オスマンは、何故か机の前に置かれた椅子に片手を掛けて、胸を張りながら威厳に溢れた雰囲気を醸している。
 ロングビルは涼やかな顔をしているが、その内心、そんな様子をメガネの奥から覗いて笑いをかみ殺していた。

「用件は何かね?」
「使い魔召喚の儀式ですが、全ての生徒が召喚の儀式を終えた事を報告します」
「ほう…… ほぼ予定通りの時刻じゃの。すると、ヴァリエールの末娘も召喚出来たのじゃな?」
「はい。全ての生徒が使い魔を召喚し、無事契約を終えました」

 その報告を聞いて、オスマンは胸を撫で下ろす。最近では、成績が悪いと学院に文句を言ってくる馬鹿親が増えているので、その要因が減るのに越した事はない。

「報告はそれだけかね?」
「いいえ。1つ問題が起きました」
「何じゃと?」

 生い茂った眉毛を吊り上げてオスマンは驚きを表す。
 コルベールは頷いてから、問題の報告を始める。

「はい、結論から述べるとミス・ヴァリエールが女の子を召喚しました。
 そしてその女の子は、メイジだと推測されます」
「何じゃとーっ! 君、さっき全員が契約を済ましたといったね? 
 まさか、その女の子と契約させたんじゃ有るまいなっ!?」

 突然の大声に、書き物の仕事をしていたロングビルが驚き、ビクリと顔を上げる。
 コルベールは落ち着いたもので、いきり立つオスマンをやんわりと宥めて話を続ける。

「ドウドウ。早合点してはいけません。
 ミス・ヴァリエールはその子とは契約をしていません。そして、彼女は既に使い魔との契約は済ませております」
「つまり…… 彼女は使い魔を召喚した。そして、そのついでに女の子も召喚してしまった。と、言う事じゃな?」
「Exactly(その通りでございます)」
「だったら、初めからそう言ったら良いじゃろうに…… 人が悪いのぉ、お主。この、このぉ」
「気色悪い声出さないで下さい。オールド・オビワン」
「オスマンじゃよ…… ミスタ・コンターギオ」

「「……………………っ!」」

 コルベールとオスマンは無言で睨み合う。2人の間の空間に火花が散るのが、ロングビルには幻ではなく見えた。
 永遠に続くかと思われた睨み合いだが、大人気無いと思ったのか2人同時に相好を崩す。些か引きつった笑顔ではあったが。
 冷戦に突入しなかった事に、ロングビルはホッと胸を撫で下ろした。この2人の睨み合いは、一般人には心臓に悪い。

「それで、その女の子は何処に?」
「はい、召喚した時には気絶しておりましたので、医務室へと運びました」
「そうか…… なら、目を覚ましたならヴァリエールの末娘と共に此処へ連れてきてくれい。
 夕刻までに目覚めなんだら、明日の朝に事情を聞こう」
「分かりました。その様に致します。
 それでは、私は様子を見てきましょう」
「うむ、そうしてくれい」

 女の子から事情を聞くための軽い打ち合わせをして、コルベールは一礼して部屋から去っていった。
 コルベールが退室し、再び2人に戻った学院長室でオスマンはため息をつく。平和とは、長くは続かないものだと鼻毛を千切りながら憂鬱に感じる。
 千切った鼻毛を息で吹き飛ばすのを、ロングビルに白い目で見られているのに気が付きもせず独り言を呟く。

「ふぅ~ 妙な事になったもんじゃのう。
 しかし、使い魔召喚で人間を召喚するとは如何なっとんのじゃ?」
「元の場所に送り届ければ、問題ないのでは?」
「まっ、そうなんじゃがのぅ。それでも責任逃れは出来まいて」

 オスマンは椅子を机に戻して、だらしなく腰掛ける。机に肘を突いて、水煙管に手を伸ばすがその手は宙を切った。
 水煙管は空中をふよふよと漂って、ロングビルの机に着陸する。
 オスマンの眼には、杖を振るうロングビルの姿が映る。どうやら、レビテーションの魔法で水煙管を取り上げたようだ。

「まったく、一服くらい良いじゃろうが」
「もう一日の喫煙量は既に超えていますよ。あなたの健康管理も仕事ですので悪しからず」
「まったくお堅いのう」

 文句を言うオスマンだが、顔中の皺をクシャクシャにして微笑む。
 この老人は、美人の秘書が構ってくれる、それだけで嬉しいのだ。
 そこら辺はロングビルも承知しているのだが、気が付くとついつい乗せられてしまっている。それはオスマンの憎めない性格故か、人望の厚さから来るものか。
 どちらにせよ忌々しい事だ。後ろで纏めている緑髪を掻き揚げながら、ロングビルはつくづくそう感じる。

「所で、ミス・ロングビル」
「? 何でしょう?」
「白の下着も良いんじゃが、君には黒の下着が似合うと思うんじゃ。
 もし良かったら、今度プレゼントしても……」

 セクハラ発言は、空気を切り裂く鋭い音で中断される。背後の壁にはペーパーナイフが突き刺さり、細かく振動していた。



「いやぁ――――――っ!」

 コルベールが学院長室に赴いているのと同時刻に、白い部屋に絶叫が木霊する。場所は学院の医務室。
 部屋に居るのは、絶叫する少女と耳を両手で塞いでいる少女、そして絶叫する少女の隣のベッドに寝ている女の子の3人。中年の養護教諭は席を外している。

「五月蝿いわよっ、ヴァリエール!」
「あぉがっ!?」

 絶叫する少女、つまりルイズの頭部に、良い角度でチョップが振り下ろされる。
 ルイズの視界には星が飛び散り、光が明滅する。キョロキョロと辺りを見回すと、白いカーテンと赤毛の少女の姿が眼に映った。
 赤毛の少女、つまりキュルケは腰に手を構えて、ルイズを呆れた様子で眺めている。

「うぅ…… 何故かチョップを食らったみたいに頭が痛いんだけど、何か知らない?」
「さぁ? 気のせいじゃない? 何か変な夢でも見たの?」
「夢? 見たかも…… 所で此処、何処?」
「此処は医務室よ。貴女、気絶して此処に運び込まれたのよ」
「……医務室?

 ………………っ!

 そっ、そうだ、儀式は? 早く召喚しないとっ!」

 ルイズはベッドのシーツを跳ね除けて、飛び起きる。
 だが、急に起き上がったせいで平衡感覚が乱れて眩暈が起き、足を縺れさせてスッ転んでしまう。
 キュルケは呆れ顔を更に深くして、溜息をつく。

「落ち着きなさい。貴女、使い魔の召喚は成功したでしょう? 覚えてないの?」
「使い魔? 成功?」

 その言葉に暫し呆然とするが、ルイズの脳裏にオレンジ色の3つの瞳を持つ巨大蛙の姿がフラッシュバックする。

「ひ、ひぃぃ―――――っ!! いやぁ―――っ!」

 思い出した恐怖に、ルイズは恥も外聞も無くキュルケの腰に抱きついて泣き散らす。
 抱きつかれたキュルケは振り払おうと試みるが、ルイズの腕は万力の如くビクリとも動かない。

「ちょっ、ちょっと落ち着きなさい、ヴァリエール!」
「やあぁぁ、つぶらなひとみのあくまがくるよぉ。はなしちゃいやぁ……
 こあいのぉ…… たすけて、ちいねえさまぁ……」

 ルイズの双眸は、キュルケの姿を通じて姉の姿を見ている。
 恐怖ゆえに、幻の姉に助けを求めるルイズは、更に腕に力を込めて涙で滲んだ瞳で縋りつく。

「うっ……」

 潤んだ瞳で見上げられたキュルケは、自分でも良く分からない感情が湧き上がってくるのを感じた。
 しかし、何とかその感情を押さえつけて、ルイズを泣き止ませようと努力する。
 縋ってくるルイズを柔らかく抱き返して、出来るだけ優しい声で慰める。

「ねえルイズ、泣き止んで頂戴。貴女がそんな有様じゃ張り合いが無いわ。
 貴女はツンと澄まして、からかうとムキになって噛み付いて来る位が丁度良いのよ。
 恐いのは此処には居ないから、泣き止んで頂戴。ねっ?」
「こあいのここにはいない?」
「そう、此処には居ないから安心して。何も恐いのはないから」
「うん、うん」
「そう、良い子ね」
「…………」
「ルイズ、そろそろ離して頂戴」
「…………」

 何とか泣きやんだルイズに話しかけるが、返事が無い。キュルケは怪訝に思い、再度呼びかける。

「ルイズ?」
「すぴー……」

 恐怖に駆られて泣き喚いていたルイズは、泣き疲れたのか眠ってしまっていた。
 先程押さえつけた嗜虐心が、ムクムクと首をもたげてくるのがキュルケには分かった。その感情に任せて行動を開始する。
 眠っているルイズの腕からは、既に万力の如き力は失われ、簡単に外す事が出来た。
 柔らかな両頬に指を掛けて左右に思いっきり抓り上げる。スベスベプリプリした頬は良く伸びて、いったい何処まで引っ張れるのか挑戦したくなる程だ。

「ひたい(痛い)……」
「おはよう、ヴァリエール」
「ほはひょう(おはよう)……」

 寝ぼけ眼で素直に返事を返すルイズであったが、すぐさま自分が何をされているのかに気が付き、熱湯に入れられた蛸よりも早く顔が朱に染まる。

「ひたいひゃなひっ(痛いじゃない)!」
「うふふふふふっ……」

 ルイズは怒りを露にして怒鳴るが、キュルケは聞く耳持たず微妙な力加減で頬を引っ張り続ける。
 キュルケはただ微笑むだけで、ルイズの言葉には一切耳を貸さない。

「いひゅまへひっはってふのふぉっ(何時まで引っ張ってんのよっ)!」
「んっん~? 何を言っているのか、分からないわねぇ。言葉はちゃんと発音しないと伝わらないのよ?
 うふふふふふふふふふふっ……」

 ルイズは必死になって腕を振り回すが、18サント差もある体格差のお陰で、なかなか振りほどく事が出来ない。
 真っ赤に成りながらジタバタするルイズに視線を落として、キュルケは今までに無い征服感に酔っていた。
 ゾクゾクと背筋に電気が走り、快感のシグナルが発信される。そして、その快楽を増幅させる為の思考に脳が支配されていく。

『嗚呼…… あんなに必死になって、ルイズったらカワイイわぁ……
 引っ張るだけじゃ物足りないわね。このままこねくり回したら、一体どんな反応が返ってくるかしら?
 甚振るだけ甚振った後に優しく慰めたら……
 うふっ、うふふふふふっ…………』

 加速する思考は次第に肥大化していき、周りの状況が隅に追いやられていく。
 状況が好転しない事に苛立つルイズは、強引に体当たりをしてキュルケを振り払おうと試みる。

「こにょうっ(このうっ)!」
「あふぅんっ」

 思考、もとい妄想に耽るキュルケは、成す術なくその体当たりを受けてベッドに押し倒されてしまう。強引な手段だったが、ルイズは目論見通りに指が外れた事にほくそ笑む。
 結果、医務室の硬いベッド、キュルケ、ルイズの順で積み重なり、キュルケに抱きつく格好になったルイズは、その肢体の持つ柔らかさと熱を体全体で感じ、蟲惑的な香水の匂いに鼻腔がくすぐられる。
 なんとなく気恥ずかしくなり、キュルケの上から退こうとした瞬間、空気が動いた。
 ガチャリとドアノブが回る音が部屋に響き、ドアが開け放たれる。
 闖入者は2人。頭が半ば禿げ上がった中年教師と、自分の身長ほどもある杖を持った小柄な蒼髪の少女の2人。
 4人が部屋の状況を理解した時、部屋から音が消え去った。

 後半へ続く



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