何処かの次元の何処かの宇宙。
そこで二体の巨人、デモンベインとリベル・レギスが血闘を繰り広げていた。
滅びを撒きながらの闘いは、果たしてリベル・レギスの勝利に終わった。
そこで二体の巨人、デモンベインとリベル・レギスが血闘を繰り広げていた。
滅びを撒きながらの闘いは、果たしてリベル・レギスの勝利に終わった。
コックピットを抉られ、瀕死の重症を負ったデモンベインの術者、大十字九郎。
「……く、九郎」
彼の名を呼ぶのは魔導書にしてパートナーたる少女、アル・アジフ。
彼女もまた重傷を負い、その構成を維持できなくなっていた。
身体から魔導書のページが滲み出ている。
彼女もまた重傷を負い、その構成を維持できなくなっていた。
身体から魔導書のページが滲み出ている。
「アル……くそっ……!」
白い輝きが宇宙を照らす。
モニターの向こうで、リベル・レギスが左手を白く輝かせていた。
絶対零度の極々々々低温の手刀、ハイパーボリア・ゼロドライブ。
滅びの白い輝きが迫ってくる。
もはやどうにもならない。
九郎とアルの魂が絶望感で塗り潰されていく。
モニターの向こうで、リベル・レギスが左手を白く輝かせていた。
絶対零度の極々々々低温の手刀、ハイパーボリア・ゼロドライブ。
滅びの白い輝きが迫ってくる。
もはやどうにもならない。
九郎とアルの魂が絶望感で塗り潰されていく。
そのため、二人は気がつかなかった。
眼が焼け付くほどの輝きの中、現れた鏡の存在に。
それはいかなる奇跡なのか。
この日、無貌の邪神が生み出した無限螺旋の宇宙から、魔を断つ剣は消え去った。
この日、無貌の邪神が生み出した無限螺旋の宇宙から、魔を断つ剣は消え去った。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、通称ゼロのルイズは叫んだ。
この召喚を成功させる。そして、自分を馬鹿にしていた連中を見返すのだ、という思いを込めて。
この召喚を成功させる。そして、自分を馬鹿にしていた連中を見返すのだ、という思いを込めて。
その瞬間、上空に巨大な魔法陣が出現した。
半分、揶揄を込めて見ていたギャラリーが、様子を見守っていた教師が、そして当のルイズが驚愕した。
通常、「サモン・サーヴァント」でここまで大規模な現象が起きることはない。
さらに彼らを驚かせたのは、そこから現れたマントのような翼を広げた巨人。
その圧倒的な存在に、ただただ放心していた中、一足早く正気に戻ったルイズは心の中でガッツポーズをした。
通常、「サモン・サーヴァント」でここまで大規模な現象が起きることはない。
さらに彼らを驚かせたのは、そこから現れたマントのような翼を広げた巨人。
その圧倒的な存在に、ただただ放心していた中、一足早く正気に戻ったルイズは心の中でガッツポーズをした。
(やった……こんな凄いゴーレムを召喚できるメイジなんて他にいるはずが無いわ! 私はやったのよ!)
だが、そのルイズの喜びは一瞬で消え去った。
眩い光と共に、巨人が一瞬で消滅したのだ。
巨大な魔法陣も消え、まるで何事も無かったかのような静寂が訪れた。
何が起こったのか理解できず放心状態のルイズ。
巨大な魔法陣も消え、まるで何事も無かったかのような静寂が訪れた。
何が起こったのか理解できず放心状態のルイズ。
――と。
上空を見上げていた生徒達の背後で爆発が起こった。
慌てて振り向く一同。
上空を見上げていた生徒達の背後で爆発が起こった。
慌てて振り向く一同。
同時に――
「わきゃっ!」
上空から落ちてきた何かに押しつぶされたルイズ。
それは少女の姿をしていたが、ぶつかった衝撃でバラバラの本のページになった。
それは少女の姿をしていたが、ぶつかった衝撃でバラバラの本のページになった。
それは、ルイズと同化するようにその身体に溶けていく。
最初にルイズの様子に気付いたのはキュルケだった。
もっとも、ぶつかった瞬間を見ていない彼女の目には、ただ爆発に驚いて転んだようにしか見えなかった。
もっとも、ぶつかった瞬間を見ていない彼女の目には、ただ爆発に驚いて転んだようにしか見えなかった。
「ちょっとちょっと、何をやっているのよ、ルイズ」
「う、うるさいわね! 何かが頭にぶつかったのよ!」
「う、うるさいわね! 何かが頭にぶつかったのよ!」
はいはいと笑いながら手を差し伸べる。
その手を払って自分で起き上がるルイズ。
その様子を見て苦笑するキュルケ。
その手を払って自分で起き上がるルイズ。
その様子を見て苦笑するキュルケ。
「ところで、あの人間、貴方が召喚したんじゃないの?」
え? と驚いて顔を向ける。
そこには、逆さまに倒れて目を回している見知らぬ男の姿があった。
そこには、逆さまに倒れて目を回している見知らぬ男の姿があった。
「……へ?」
フラフラとした足取りで男に近づくルイズ。
傍で男の様子を観ていた教師のコルベールは、ふむ、と呟くとルイズに振り向いた。
傍で男の様子を観ていた教師のコルベールは、ふむ、と呟くとルイズに振り向いた。
「どうやら彼が召喚された使い魔のようですな」
「……えっ!? じ、じゃあ、さっきのゴーレムは!?」
「皆目見当がつきませんが、ひょっとしたら彼と何か関わりがあるのかもしれませんな」
「……えっ!? じ、じゃあ、さっきのゴーレムは!?」
「皆目見当がつきませんが、ひょっとしたら彼と何か関わりがあるのかもしれませんな」
未だに目を回している男に顔を向けるコルベール。
ルイズもまじまじと顔を見る。
ルイズもまじまじと顔を見る。
(じ、冗談じゃないわよ! こんな、情けない顔をした平民を召喚したですって!? これじゃあ、またゼロのルイズって
馬鹿にされるじゃない! こんな! こんな――)
馬鹿にされるじゃない! こんな! こんな――)
ジッと見つめながら心の中で罵倒を繰り返すルイズだったが、見つめている内に、ふと理由の判らない心の
痛みに襲われた。
思わず俯く。
痛みに襲われた。
思わず俯く。
その瞳から涙が零れ落ちた。
(何……これ?)
訳が分からない痛み。
そして、こうすれば痛みが消えると云わんばかりに男に顔近づける。
契約の呪文を唱える。
契約の呪文を唱える。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン、この者に祝福を与
え、我の使い魔と為せ」
え、我の使い魔と為せ」
そして唇が触れ合う。
瞬間、
瞬間、
「ぐあぁぁっ!」
男がのた打ち回る。
左腕が放電している。魔力の放電だ。
異常に気付いたコルベールが、ルイズを下がらせる。
左腕が放電している。魔力の放電だ。
異常に気付いたコルベールが、ルイズを下がらせる。
男の左手の甲に紋章が浮き出て、前腕部分にルーンが刻まれる。
しばらくしてルーンが刻まれ終えると魔力の放電も消え、男も落ち着きを取り戻した。
しばらくしてルーンが刻まれ終えると魔力の放電も消え、男も落ち着きを取り戻した。
「ふむ、珍しい形のルーンだな。甲に刻まれている紋様も初めて見る。さっそく調べなければならないな」
男は気絶したままだが、呼吸は安定している。
まるで冬眠をしているかのように静かに眠っている。
一方、ルイズの胸の痛みも消えていた。
訳が分からないが、とりあえず「コントラクト・サーヴァント」に成功したことは確かなようだ。
まるで冬眠をしているかのように静かに眠っている。
一方、ルイズの胸の痛みも消えていた。
訳が分からないが、とりあえず「コントラクト・サーヴァント」に成功したことは確かなようだ。
「では、皆さん、教室に戻りますぞ」
巨大ゴーレムのショックがまだ消えていないのか、いつもなら騒がしい生徒達も大人しく「フライ」の魔法で飛んでいく。
コルベールは途中で止まり、
コルベールは途中で止まり、
「ミス・ヴァリエール。後で人を寄越します。しばらく新しい使い間の傍にいてやりなさい」
ルイズは答えなかったが、沈黙を肯定と見たコルベールはそのまま飛び去った。
残されたルイズは、ジッと使い魔を見つめていた。
残されたルイズは、ジッと使い魔を見つめていた。
その晩、学院を巨大な魔力が覆った。
魔力が消滅した後、謎のゴーレムのことを覚えている者は誰もいなかった……
魔力が消滅した後、謎のゴーレムのことを覚えている者は誰もいなかった……