あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

第6話 双月夜の大決闘!!


 第六話
 双月夜の大決闘!!

 大蛍超獣ホタルンガ
 宇宙同化獣ガディバ 登場!


 ウルトラマンAの心の中で、合体により肉体を共有した才人とルイズが向かい合っていた。
 エースの精神世界の中では、それぞれ擬似的な肉体が形成されて、普段と変わらずに会話することができる。
 このなかでは、それぞれの感情がむきだしで相手に伝わる。心を読まれるということではないが、心の起伏が相手に伝わるということはごまかしが利かないということになる。
(……)
(……サ、サイト)
 ルイズは内心おびえていた。散々無謀だと止められておきながらも戦いを挑んだあげく、無様に捕まってしまい、果てには自分どころか使い魔も道連れにするところだったことを怒鳴られると思った。
 いつもならば主人と使い魔の関係を持ち出して、すべて才人に押し付けるルイズだが、今回は全面的に自分に非があり、
しかもサイトが自分のために命を張ってくれたおかげで助かったために、理不尽に責める理由の一つも彼女には無く、もしそれをやればそれは自身の卑小さをさらけ出すだけだった。
 だが彼は短く、後で話があると言い、呆然とするルイズに。
(無事でよかったな)
 それだけ言うと、意識をルイズから超獣に向けた。
 ルイズは少し呆然としていたが、やがてサイトからおだやかな感情が流れてきたのを感じてほっとした。
 エースは、ふたりの若者をじっと見守るだけで、何も言いはしなかった。


 双月の夜空の下に、ウルトラマンAと超獣ホタルンガが向かい合っている。
 雄雄しく構えて超獣を見据えるエースと、発光体を傷つけられて怒りに燃えるホタルンガ、均衡は一瞬にして破られた。
「イヤーッ!!」
 ウルトラマンAとホタルンガが正面からがっぷりと組み合った。
 ホタルンガも巨体でエースを受け止めるが、そうはさせじとひざ蹴り、ボディブローを叩き込む。
「いけーっ!! やっちまえエース!!」
 上空のシルフィードの上からキュルケがやんやとエールを送ってくる。
「デャアッ!!」
 エースはそれに答えてホタルンガの首筋をつかむと、そのまま背負い投げの要領で投げ飛ばした。
「す、すごい、なんという強さだ……」
 森の端に退避したコルベールは、あの何万トンもあろうかという超獣をやすやすと投げ飛ばしたエースのパワーに改めて驚いていた。
 彼にとってエースの戦いを見るのはこれで2度目になるが、それでもエースの力はすさまじいの一言であった。
 起き上がってきたホタルンガは溶解霧をエースに向かって吹き付けるが、寸前でエースは高くジャンプしてそれをかわした。
「デヤッ!!」
 垂直降下してきたエースに頭を踏みつけられてホタルンガはよろめいた。
 エースはその隙を逃さずに、再びホタルンガの首筋をつかんで反対方向へ投げ飛ばした。
(よし、このまま畳み掛けるんだ)
 エースが優勢なのを見て取って才人が言うと、エースもそれに答えて両手を前に突き出し、光線の構えを取った。
『ブルーレーザー!!』
 指先からの青色の速射光線が連続してホタルンガの頭部に叩き込まれて爆発を起こす。
(よし、効いている!)
 ホタルンガは頭部を焼け焦げさせてもがいている。どうやら今の一撃で溶解霧の発射口もつぶせたらしい。
 だが、まだ致命傷にはなっていない。エースはホタルンガの上空めがけてジャンプした。
「トオーッ!!」
 急降下キックがホタルンガの背中に命中、顔面から地面に叩きつけられてはさしもの超獣もすぐには起き上がれない。
 しかし、エースのほうも倒れているホタルンガにはうかつに近寄れなかった。
 なぜなら、倒れながらもホタルンガは尾の付け根にある蛍の発光体をエースに向けて威嚇している。あそこからはショック光線を出すことができる上に
尻尾の先端はハサミになっていて敵を挟み込むことができる。
 ホタルンガは普通とは逆に後ろ向きでいた方が強いという珍しい超獣なのだ。
 だが、だからといって無理に近づく必要はない。
「ヌウンッ!!」
 エースの両の手のひらにエネルギーが集まって丸く赤い玉になっていく。そしてエースはその凝縮されたエネルギー球を、押し出すように投げつけた。
『エネルギー光球!!』
 投げつけられた光球はホタルンガの背中に命中して爆発を起こした。
 ホタルンガは背中の殻を破られてもがき苦しんでいる。
「よっしゃあ、なんだ楽勝じゃない、超獣なんていったって案外たいしたことないわね」
「……超獣が弱いんじゃない……エースがとても強いからそう錯覚するだけ、あの超獣もベロクロンと大差なく強い……もしあれが街で暴れたら、またたくさんの犠牲者が出る」
「だったらここで倒しちゃえばそれでいいじゃん。いけーっ!! そこだーっ!!」
 確かにキュルケにそう錯覚させるほど、今エースはホタルンガを圧倒していた。
 過去にはTACの援護を受けてようやく倒した強敵だが、今のエースは数々の戦いを経て、あのときよりもはるかに強い。
「学院長、これはいけますぞ。このままいけば……学院長?」
 エースの戦いを興奮しながら見守っていたコルベールは、オスマンが心ここにあらずというような表情をしているのに気がついた。
 彼がいくら声をかけても答えずに、ただただエースと超獣の戦いを見つめている。
「……同じじゃ……あのときと……」
 オスマンは胸の奥からやってくる熱いものをこらえながら、懐の奥にしまった小さな鍵を握り続けていた。

「テェーイ!!」
 エースの上手投げによってホタルンガは森の中へと叩き落された。
(よっしゃ!! もうホタルンガはフラフラだ、とどめだエース!!)
 才人の言うとおり、ホタルンガは立ち上がったもののフラフラとよろけて、もはやエースに向かってくるような力は残されていないようだった。
(よし!! メタリウム!!)
 エースは上半身を大きくひねり、必殺光線のポーズをとる。
 ホタルンガはエースのかまえを見ても、反撃も回避の行動も起こせない。
「いっけーっ!!」
 上空のキュルケのボルテージも最高潮を迎える。
 そして、エースが振りかぶりながら、今まさに腕をL字に組もうとしたとき。

「そううまくはさせぬよ」

 突如おどろおどろしい声が深夜の森に響いた。
 それとともに、エースの体を衝撃が貫き、メタリウム光線の姿勢が崩された。
「ヌッ、グオッッ!!」
 エースは全身を貫く不気味な感触を必死でこらえる。
(なっ、なに? この気持ちの悪い波動は!?)
(ルイズ、大丈夫か!? エース、これはなんなんだ!?)
 感覚をエースと共用しているふたりも初めて味わう、まるで腐肉で全身をなでられているような感触に動転していた。
(……マイナスエネルギーの波動だ。しかもこの強力さ……来るぞ、奴が!!)
 エースが言い終わるのと同時にホタルンガの頭上の空間がひび割れ、鏡を割ったかのように異次元への裂け目が現れた。
 そしてそこから、まるで葬儀屋のように全身黒尽くめの男がひとり、ホタルンガの頭の上に降り立った。
「フッフッフッ……」
 男はエースを細目で見ながら、口の中だけで笑っていた。
 だが、やがて目深にかぶっていた帽子をあげると、乾いて紫色をしたまるで血の通っているようには見えない唇を開いた。
「久しぶりだな、ウルトラマンA」
「……ヤプール!!」
 その瞬間、上空のキュルケとタバサ、地上のオスマンとコルベールだけでなく、エースと共にいるルイズと才人にも驚愕が走った。

「あれが、ヤプールか!?」

 エースとヤプール以外のその場にいた全員が同じことを思ったに違いない。
 彼らの目の前にいるのは、まるで闇が凝縮したような漆黒をあしらった老人、しかしそれは内にさらなる暗黒を備えたヤプールの仮の姿。
「懐かしいなウルトラマンA、こうして貴様と話をするのも何十年ぶりになるか。まさかこんな世界に来てまで貴様と戦うことになろうとは、思いも寄らなかったよ」
「貴様が現れるたびに、我らはどこへでも駆けつける。どこの世界であろうと、侵略は許さん!!」
 憎憎しげな視線を向けるヤプールにエースは断固として言い放った。
 見守るオスマンたちも、初めて聞く異世界の者の会話を固唾を呑んで見守っている。
「ふっふっふっ……怨念を晴らすまでは何度でも蘇る。我らは暗黒より生まれて全てを暗黒に染める者、全宇宙が恐怖と絶望に染まるまで我らに滅びはない」
「だが、我らがいる限り貴様に勝利の日は永遠に訪れはしない。いくら超獣を生み出そうと、全て倒してみせる」
「それはどうかな?」
 ヤプールはあざけるように言うと、顔をぐにゃりと歪めた。おそらくは笑ったのだろうが、顔のしわと目じりがねじくれてぞっとするような醜悪さが現れていた。
「確かに、貴様の力は強い。しかしこの世界には光の国もなければ貴様の仲間のウルトラ兄弟もいない。人間どもなどは地球と比べても脆弱極まりない。ゴミクズ以下だ」
 その言葉を聞いてルイズやキュルケは怒りをあらわにした。
 彼女達が貴族であるということ以前に、自分達をゴミ以下と言われて怒らない者などいない。
「あ、あいつ……私たちをゴミ以下だと言ったわね……くっ、タバサ離しなさいよ!!」
「無駄……挑んでも殺されるだけ……」
 怒りにとらわれていたキュルケと違い、冷静な目でヤプールを見ていたタバサは確信していた。あの老人の姿は本来の力の万分の一も現してはいない。
 もし本当に弱いのならばエースが用心深く構えを保ったまま動かないはずはない。
(あ、あいつ……わたしたちをなんだと思ってるのよ!!)
(そういう奴なんだよ、人間どころか自分以外の全ての生命をゴミとしか思っちゃいないんだ)
 激昂するルイズを押さえながらも、才人は始めて間近で見るヤプールの邪悪な存在感に震えがくるのを感じていた。
「人間をなめるなよヤプール。人間の力はお前が思っているほど弱くはない、いつか貴様をおびやかすほど強くなる日が必ず来る」
「はたしてそうかな?」
「なんだと」
「貴様も気づいているのだろう。この世界は地球に匹敵するどころか、はるかに上回るほどのマイナスエネルギーに満ちている。偶然見つけた世界だが、私はこの世界を観察して確信した。
力がある者が無い者を見下し、蔑み、力無き者はある者をうらやみ、その怒りと憎悪をさらに弱き者へと向ける。さらに世には争いが絶えず、だまし、裏切り、欲望のままに血をすする。
そんな邪悪な心が我らにとってはこの上ない糧となる。ここは我らヤプールにとってはこの上なく住みやすい地獄なのだよ」
 たまらなくうれしそうに語るヤプール、しかしその笑い声には一片の陽気さもない。
「あいつは……本物の悪魔だ」
 ぎりりと歯軋りしながらコルベールはヤプールを睨み付けた。
 だが、ヤプールは笑いながらもはっきりと聞こえる冷たい声でエースに問いかけた。
「ウルトラマンA、こんな醜く歪みきった世界を貴様が守る価値などあるのか?」
「ある! 確かにこの世界は貴様の言うとおりに人間の邪悪な心で満ちている。しかし、人を思いやる優しい心を持った人々も大勢いる。そんな美しい心を持った人がひとりでもいる限り、私はこの世界を守り抜く!」
「どうかな、私が手を加えなくともこの世界を覆う闇は広がり続けている。放っておいても死滅していく愚か者どもなど、いっそ私が皆殺しにしたほうが未来のためではないか?」
「違う!! 人の心には誰しも闇が巣くっているが、人はその闇と戦うことで自らの光を強めてきた。地球の人々も何度もあやまちを犯しながらも一歩ずつ前に進んできたんだ。人々は愚かなのではない、まだ未熟なだけなのだ」
 毅然とエースはヤプールの言葉を否定した。
 ヤプールは、さも当然だなというふうに笑っていたが、やがて笑うのをやめた。
「だが、現実はこの世界の人間の心には大きな闇がある。この女のようにな」
「……貴様!?」
 ヤプールが無造作に右腕を高くかかげると、そこにはいつの間にかひとりの人間がつるし上げられていた。

「あれは、フーケ!?」
 その姿は、見守っていたキュルケやオスマンたちの目にもはっきりと確認できていた。
 そう、エースに救い出されたはずのフーケが今ヤプールに首筋をつかまれて晒されていたのだ。
 これではエースは手を出せない。

「この女の心には、深く暗い闇があったよ。悲しみ、憎しみ、絶望、暗黒の淵へと進む底なし沼がな。その憎悪のベクトルを少し強めてやったら期待通りに働いてくれたよ。
ホタルンガは人間の肉が好物なのだが、この女が手引きしてくれたおかげで労せずにたくましい超獣へと育てることができた」
 過去にも多くの人間の心の隙を甘い言葉で誘惑したり、ときには欲望や悲しみを利用して洗脳したりしてきたヤプールにとって、フーケは絶好の人材だったに違いない。
「だが、この程度では貴様に勝つには不足だったようだ。まったく忌々しいやつよ、しかしこれならどうかな?」
 ヤプールがそう言うと、フーケを掴んでいた腕が紫色に光り、それと同時にフーケの体が黒い霧のようなものに覆われていく。
「フフフ……」
「ヤプール、貴様何を!?」
「ただ超獣をぶつければ勝てると思い続けるほど私の頭は悪くはないぞ。ホタルンガが敵わなかったときのために、準備は整えてあるのさ」
 黒い霧はフーケの体から噴出している。それは彼女にとってとてつもない苦痛を伴うらしく、目を覚まされたフーケは言葉にならない苦悶の声をあげた。
「ぐあぁぁっ、あああぁぁっ!!」
「やめろ!! ヤプール!!」
「もう遅い。現れろ、ガディバ!!」
 黒い霧はヤプールの手のひらの上でしだいに蛇の形をとっていく。
 これこそ、宇宙同化獣ガディバ、他の生物に寄生してその能力を限界まで引き出させるとともに、同化した生物の情報を取り込んで奪い取る能力を持った宇宙生物だ。
 ただ、フーケは所詮は人間だ。ならば、ガディバは一体なにを取り込んだというのか。
「くくく、人間の心の闇が生むマイナスエネルギーは、自然に怪獣を生み出すことができるほど強力であることは貴様も知っていよう。単なる悪人ではつまらんが、複雑に捻じ曲がった心は強いマイナスエネルギーを生む」
 人間の心が生むマイナスエネルギーはヤプールのエネルギー源となるだけでなく、単独でもクレッセントやホーなど凶悪な怪獣を生むことができる。
それを直接人間から奪い取れば、確かに強力な力となるだろうが、それはすなわち心を奪い取られるということになる。
「貴様!」
「ふ、どうせ闇に染まった心は二度と這い上がれない。これはこの女が自ら招いた結果さ」
 ヤプールは残酷な笑みを浮かべると、愉快そうにエースをあざ笑った。
 ガディバはほぼ完全な蛇の姿になり、フーケの顔にももうほとんど生気がない。
 だが。
「ぁぁぁ……たすけ……て……テファ……」
 そのとき、ガディバの闇の噴出が収まり、まとわりついていた闇がフーケの体から離れた。
「ぬ!? ほう、この女まだ心の中にしがみつく光があったか……まあいい。これだけ吸い取れれば充分。そら、返してやろう」
 ヤプールはまるでボロ雑巾のようにフーケを空に放り出した。
「危ない!!」
 ホタルンガの頭頂部から地面までは50メイルを超える。意識を失ったフーケは重力のままにまっ逆さまに落ちていく。
 そのとき、タバサがシルフィードを急降下させ、地面とフーケの間に割り込ませた。間一髪。
 ヤプールはすでにフーケに興味を失ったのか一瞥もしない。タバサはそのままシルフィードをオスマンたちの元に着陸させた。
「大丈夫、息はあります」
 シルフィードの背からフーケを降ろしたコルベールは彼女の脈を取り、安堵したように言った。
 どんな悪人でも、目の前で死なれて気持ちのいいものでない。それに、怪盗はともかくあの惨劇はヤプールが引き起こさせたものでフーケは被害者でもある。
「あんたも酔狂ね、自分を殺そうとしたやつを迷わず助けようとするなんて」
「……誰でも、悲劇から闇に落ちる可能性を持っている。彼女は苦しんでいた……本当の悪人なら、苦しまない」
「本当に悪い奴じゃないってか。だけど相当な悪人ではあったみたいだけどね。その悪の心、どうするつもりなんだ?」
 キュルケとタバサは対峙するエースとヤプールを再び見上げた。

「ゆけガディバ、ホタルンガと同化し、その血肉となれ!!」
 ヤプールが叫ぶと同時に、解き放たれたガディバはホタルンガの中へと吸い込まれていった。
 するとどうだ。一瞬ホタルンガの体が黒く染まったかと思うと、エースにつけられた全身の傷がみるみる塞がっていく。
 それだけではない、目つきが赤く凶悪になり、うなり声も荒く凶暴になっていた。
「くくく、かつてUキラーザウルスがマイナスエネルギーを吸収して進化したように、マイナスエネルギーをたっぷり吸収した超獣を、はたして貴様ひとりで倒せるかな。フハハハ」
「待て! ヤプール!」
「ハハハ……」
 ヤプールはマントをひるがえし、笑い声とともに異次元の穴へと消えていった。
 そして、残ったホタルンガは猛然とエースに向けて突っ込んでくる。
「ヌッ!! ヌォォ!!」
 エースはホタルンガの突進を正面から受け止めた。だが、先程まで止められた突撃を止めきれない。
「グォォッ」
 ついに耐え切れずに、森の中にまで吹き飛ばされてしまった。
 ガディバと同化したことにより明らかに先程よりパワーアップしている。
(危ない、溶解霧が来るぞ!!)
 とっさにエースは横へ飛びのいた。そこへ溶解霧が吹き付けられて森が消滅していく。
 このままでは、危ない。
「テヤァッ!!」
 受身にまわっては危ないと判断したエースは攻撃に転じた。ホタルンガの胴体にパンチ、チョップが次々に決まる。
 だが、強化された外骨格はエースの打撃攻撃さえ通用しなくなっていた。
 無造作に振り下ろされたホタルンガの右腕がエースの脇腹を打つと、エースはたまらずになぎ倒されてしまった。
「グッ、グォォッ!!」
 脇腹を押さえてうずくまるエースを、ホタルンガは凶暴さをむき出しにして右で左でと殴りつけ続けた。
 とどめにと、思い切り蹴りつけられるとエースはゴロゴロと転がって、森の隅までいってようやく止まった。
 だがホタルンガはそれでもおさまらずに、また向かってくる。
(避けて!! 危ない!!)
 しかしまだ立ち直れていないエースはかわす余力がない。とっさに右腕を前に突き出すと牽制の光線を放った。
『ダイヤ光線!!』
 連続発射されたひし形の光弾がホタルンガの頭で爆発を起こす。
 過去に超獣ブラックピジョンを葬ったことのある光線は確かにホタルンガを捉えたが、わずかにひるませただけで、ホタルンガはそのまま突っ込んできた。
「グワァァッ!!」
 跳ね飛ばされ、体の上で何度も足踏みされ、エースはもだえ苦しむ。
 そしてついにエースのカラータイマーが赤い点滅を始めた。
「クッ、デャァッ!!」
 エースはなんとか渾身の力を振り絞って脱出に成功した。
 そして、間髪いれずに反撃に出ようとするが、ホタルンガはくるりと後ろを向くと、発光体からフラッシュのようなショック光線をエースに浴びせた。
 倒れこむエース、ホタルンガはさらに二股に分かれた尻尾の先をエースの首にかけて、締め付けながら投げ飛ばした。
(エース!!)
「エース!!」
 心の中からのルイズたちの声と、地上からのキュルケたちの声がエースに届く。
 その声に応えて、ひざをつきながらもなんとかエースは起き上がるが、もはや満身創痍なのは誰の目から見ても明らかだ。
(エース、しっかりしてくれ!)
(わかっている。だが、マイナスエネルギーを得た超獣の力、ここまでとは)
 エースのカラータイマーの点滅は益々早くなっていく、戦いが長引きすぎてエースのエネルギーは残りわずかしかない。光線技も、使えてあと1、2回が限度。
 対してホタルンガはあれだけ暴れておきながらまったく衰えるきざしを見せない。
(このままじゃだめだ、なにか、なにか手はないか?)
 才人はなにかエースの手助けになることはできないかと、周りを見渡しながら必死で考えた。
 すると、エースの視界の端に、地面に突き刺さっている何かが見えた。
(あれは、デルフリンガーか? そうだ、エース!!)
(なに!? ……わかった、やってみよう)
 才人から何かを聞かされたエースはホタルンガの突進を飛びのいて避けると、地面に刺さっていたデルフリンガーを摘み上げた。
「んで!? お、おい、一体何するんだ!? 俺なんかであれは切れねーぞ!!」
 当然デルフは思いっきりうろたえた。
 なにしろ身長40メートルのエースからしてみれば、大剣のデルフも縫い針以下の大きさしかない。これでは武器にもなににもなりはしない。
 だが、エースはデルフをつまんだまま右へ左へと大きく振り回した。するとどうだ、エースが一度振るたびに1.5メイル程度だったデルフリンガーが、3メイル、6メイル、12メイルとどんどん大きくなっていく。
 やがて、5回も振ったときにはデルフリンガーは全長50メイルに届こうとするほどの、エースが持つにふさわしいサイズの巨大な剣へと変貌していた。
 これこそ『物質巨大化能力』、エースの持つ数々の超能力のうちのひとつだ。
「えっ、え……い、あ、ええーっ!!」
 巨大化したデルフのつばがカタカタと鳴るが、まったく言葉になっていない。いつもの「おでれーた」すら出てこないところを見ると、よほどパニックになっているらしい。
まあ当然だろう、巨大化するなど彼の人生の中でもこれが初めてだろうから。
(驚いた。まさかこんなことまでできるなんて……)
(やった、うまくいったぜ。昔、超獣ザイゴンのときに旗を巨大化させたんだからもしかしてと思ったんだ。どうだ、エース?)
(不思議な感じだ、まるで内から力が湧いてくるような。アングロスのときと同じく体が軽くなっていく。これは、君の力なのか?)
 エースが問いかけると、才人は精神体の左手が輝いているのをかざした。そこからオーラが溢れてエースへと流れ込んでいく。
(これは、体を共有したことにより能力も共有できるようになったということか。君はいったい?)
(俺にもわからねえ。ただなんでか武器を持つと力が湧いてくるんだ。それより、ホタルンガが来るぜ!)
 凶暴化したホタルンガはエースが武器を持ったというのにまったく意に介さずに突進してくる。
「デヤッ!!」
 エースはデルフリンガーを正眼に構えると、突進してくるホタルンガを迎え撃った。すれ違いざまに剣線一閃!! ホタルンガの右腕が吹き飛んだ。
(やった、すげえぞデルフ!!)
「おでれーた……」
 ようやくとデルフが言葉をしゃべった。とはいえ、いつもどおりの「おでれーた」だが、それには一生分のびっくりを使い果たしてしまったような感慨が詰め込まれていた。
(ようし、このままとどめだ!!)
「イヤァ!!」
 エースはデルフリンガーを大きく振りかぶってホタルンガに斬りかかる。
 だが、ホタルンガは振り返らずに発光体をエースに向けて、またショック光線を放った。
「グワッ!!」
 ショックを受けてエースはよろめいたが、なんとか倒れずに踏みとどまった。
 ホタルンガは後ろを向いたまま尻尾と発光体でエースを威嚇し続けている。
(だめだ、あの発光攻撃をなんとかしなくてはホタルンガに近寄ることができない)
(そんな、もう時間もないってのに!)
 エースの活動時間の限界は、刻一刻と迫りつつあった。

 その様子をずっと見守っていたコルベールたちも苦々しげに見つめていた。
「エース! くっ、あれでは近づけんのだ!」
「そんな、せっかく逆転できたと思ったのに。あんちきしょー!!」
 コルベールもキュルケもエースが攻めあぐねているのに気づいていた。援護をしたくても通常時のホタルンガにすら攻撃が通用しなかったのに、強化された今のホタルンガには効くとは思えない。
「……点滅がどんどん早くなっていってる。もうエースはもたない……」
 エースの胸の球、カラータイマーの点滅を見てタバサが言った。もちろん彼女たちにはカラータイマーの意味は知らないが、赤い点滅が危険を示しているのだということはなんとなく察せられていた。
「エース、くそっ、ヤプールめ!」
 ウルトラマンAの危機をどうすることもできずにコルベールは杖を握り締めたまま歯軋りしながら戦いを見守っていた。
 だがそのとき、それまで沈黙を守っていたオスマンがおもむろに口を開いた。
「諸君、エースを援護するぞ、力を貸してくれ」
「学院長? しかし我々の魔法程度ではいくら当たったとしても」
「これを使う」
「それは、破壊の光?」
 オスマンの手の内には、フーケから取り返した破壊の光のケースとその鍵があった。
 確かオスマンはワイバーンを一撃で倒すと言っていた。急いで鍵を開けて、ケースを開けるとオスマンはそこに収められていたものを取り出した。
「それは、銃ですか?」
「ああ、もちろんただの銃ではないがの」
 それは大型の複雑な外見をしたいかつい拳銃であった。
 さらに、その銃はハルケギニアで一般的なフリントロック式ではなく、木やただの金属ではない奇妙な材質でできていた。
「しかし、これでも超獣にはほとんど効くまい、だから、あそこを狙う」
 オスマンはホタルンガのある部分を片手に持った杖で指した。
「あれは、ミス・ヴァリエールがつけた傷?」
 それはルイズがホタルンガの体内から脱出する際につけた発光体の傷であった。
 ほかの傷はほぼ全部塞がっているのに、なぜかそこだけは傷ついたまま残っていた。おそらくフーケの力が加わったために、フーケのエネルギーでは再生できなかったのだろう。
「よいか、チャンスは一度じゃ。全員でいっせいに攻撃を撃ち込め」
 オスマンが銃を構えると、残る3人も杖を構えた。
 そして、ホタルンガがひときわ大きく尻尾をあげたその瞬間。
「いまじゃ、撃て!!」
 コルベールとキュルケが同時に火炎を放ち、わずかにタイミングをずらして放たれたタバサの風がそれを巻き込んで増幅しながら突き進む。
(……もう一度、力を貸してくれ)
 最後に、オスマンは銃のトリガーを引き絞った。
 すると、銃口から一瞬の閃光とともに、一筋の光線、ビームがほとばしり、すべての攻撃が一つとなってホタルンガの発光体に吸い込まれていく。
 大爆発、傷口から入り込んだエネルギーは体内で凝縮されてその威力を倍増させた。炎がホタルンガの臀部を包み、炎が晴れたときには発光体は割れた電球のように粉々に砕け散っていた。
「エース!! いまだ!!」

 皆の声援を受けて、デルフリンガーを振りかざしてエースが走る。
「デャァァァァッ!!」
 これが本当に最後の力だ、エースの横一線の斬撃がすれ違いざまにホタルンガを襲う。
 一瞬の沈黙。
 エースがふらりと揺れてひざを突き、手から取り落とされたデルフリンガーが元の大きさに戻っていく。
 ホタルンガはゆっくりと振り返って、一歩、二歩とエースに歩み寄る。
 しかし、三歩目を踏み出したとき、突然ホタルンガの首がゴロリと転げ落ちた。
「やった!!」
 誰からともなく歓声があがる。
 そしてエースは立ち上がると、大きく体を右にひねり、残った胴体に向けて腕をL字に組んだ。
『メタリウム光線!!』
 虹色の必殺光線が炸裂、ホタルンガの胴体は木っ端微塵に吹き飛んだ。
(やった、やったんだ!!)
 ついに勝ったのだ。ヤプールのたくらみを粉砕して超獣を倒した。
 エースは空に輝く双月を見上げると、その虚空を目指して夜空へと雄雄しく飛び立った。
「ショワッチ!!」


 夜空に静寂が戻った。
「おーい、みんな!!」
「あっ、ルイズ、それにダーリン」
 4人のもとにルイズと才人が駆けてくる。
 ふたりの無事な姿を見てキュルケは明るい笑顔を見せた。
「おお、君たちも無事でしたか、心配しましたぞ。怪我とかはしていませんか?」
「わたしは無事ですわ。こいつは……」
「なーに、かすり傷だよ。つばでもつけときゃすぐ治るって」
「そうそう、男がちょっとやそっとの傷でわめくもんじゃねえやな。ただし素人が見た目で傷を判断しちゃいけねえぜ」
 コルベールの質問にふたりは元気に答えた。実は才人の傷は軽いものではなかったのだが、こういうときやせ我慢をしなければならないのが男の意地であり、
デルフもそれを分かっているから才人をフォローしつつ体を気遣っていた。
「いけません。すぐに学院に戻って手当てしなくては、ひどい傷じゃないですか」
 実際ホタルンガに何度も向かっていったのだから、普通なら死んでいておかしくなかったはずだ。コルベールは馬を呼ぶとなかば強引に才人をまたがらせた。貧相な見た目に反してすごい力だった。
「さあ、長居は無用です。早く帰りましょう」
「ちょっと待ってください。彼女はどうします?」
 キュルケの言うほうには、まだ気を失ったままのフーケが倒れていた。
「放って置くわけにもいかないですからとりあえず連れて帰りましょう。私の馬に乗せてください」
「ええ、ですがミスタ、そのあとはどうします。ヤプールに操られていたとはいえ、それ以前からフーケは盗賊として名をはせていた奴です。このまま置いておくわけにも」
 そう言われてコルベールはうーんと考え込んでしまった。
「普通なら、衛士隊に引き渡すところですが……」
「……盗賊は死罪と相場が決まってる。しかも拷問付きで……」
 タバサがぽつりと言った言葉に才人はぎょっとして言った。
「おいおい、いくらなんでも殺すことはないだろ!」
「でも、罪は罪……」
「だからといって殺すなんてあんまりだ、そんなことになるなら俺は断固反対するね」
「私も、せっかく助かった命をむざむざ捨てさせたくはありませんが」
 とはいえフーケが盗賊であることに変わりは無い。このまま学院においておくわけにいかないのも事実であった。
 と、そのときルイズが。
「運んで、そして手当てしてあげてください。フーケは、あの超獣のなかに閉じ込められたときに助けてくれました。彼女の事情は分かりませんが、恩を受けた以上相応の礼をもって返すのが貴族の本分だと思います」
「うむ、わかりました。とにかく、学院に帰りましょう。彼女をどうするか決めるのは話をしてみてからでも遅くはないはずです。行きましょうか、学院長……学院長?」
「……また、君に、ウルトラマンに助けてもらったよ」
 オスマンはその手のなかに光る『破壊の光』を見つめながら懐かしそうにつぶやいていた。

 続く




新着情報

取得中です。