あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

最強なる使い魔

やあ、全ての女性の味方、ギーシュ・ド・グラモンだ。
さっそくですまないんだがね、
……誰か助けてください!
え? 何を言ってるのかって?
ではこれまで経緯を説明しよう。

それは昼食の時間の事。
ボクはいつものように友達との雑談を楽しんでいた。

「なあギーシュ、お前は今誰とつき合ってるんだ?」
「つき合う? 僕にはそのような特定の女性はいない。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」

決まった……
この最高のセリフを決めたときはまさに最高の気分だったよ。
だが、そこに彼女が現れた。

「すみません、この香水はあなたの物ですね」

振り返るとそこにいたのは、今までに出会った事のないほどの美人だった。
青い服と帽子に身を包み、いつも分厚い本を抱えている、銀髪金眼の絶世の美女。
先日、サモン・サーヴァントでルイズが召喚した使い魔だ。
その容姿は女神に例えても差し支えない。
近くで見るとその美しさがなお際立っている。

「失礼しました。先ほどあなたがこの香水を落とすが見えたもので。
すぐに言おうと思ったのですが、私の主が中々放してくださらなくて今まで渡すタイミングを逃してしまいました」

……はっ!
つい見とれてしまった。
うむ、この状況はまずい。
もしもこの香水の事をケティにでも知られてしまったら……!

「これは僕のビンじゃない。君は何を言っているんだね?」

頼む、察してくれ。
これはボクのでは……

「いえ、確かにあなたのポケットから落ちるのを見ました。こう見えても私、視力には自身がございますので、見間違える事はありません」

だが、その願いは相手に届く事はなかった。

「おい、これ、モンモランシーの香水じゃないか? この色は間違いないよ。
 という事はギーシュ、君は今モンモランシーとつき合ってるのか!」

マリコルヌ、キミも黙っててくれ!
ここで誤魔化さなければボクは……!
と、考えているうちに後ろから声をかけられた。

「ギーシュ様……やはりミス・モンモランシーと……」

あああああああああ!
よりによって一番聞かれてはいけない相手に!

「け、ケティ違うんだ。彼等が勝手に誤解しているだけで、僕は――」

その続きはワインを頭からかぶせられた事で遮られた。
……冷たい。

「その香水が何よりの証拠です! さよなら!」

泣きながら彼女は走り去っていった。
うう、どうしてこんな事に……
だが、神様はボクには悲観に暮れる暇さえくれなかった。

「ギーシュ、やっぱりあの一年に手を出してたのね!」

ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
モンモランシーまで!!!

「誤解だモンモランシー! 彼女とはただラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで――」

今度のボクの言葉を遮ったのは強烈な張り手だった。
ワインで濡れた髪から飛沫が飛び、ボクの体は宙を舞い、そして転がり落ちた。

「嘘つき!」

そういって彼女はケティと同様に走り去っていった。
ああ、今までに築き上げてきたモンモランシーとの絆が……
はっ!? み、見られている!
周囲の視線が痛い。
とりあえず格好だけは付けておかねば!

「ふっ、彼女達は薔薇の存在する意味を理解していないようだ」

例えどんなに惨めだろうとも、ここで取り乱したらグラモン家の名が廃る。

「あの……私は何かまずい事をしてしまったのでしょうか?」

そうだ、キミさえ少し気を利かしてくれればこんな事には!

「当然だ。ボクはさっき――」
「いえ! あなたは何も悪くありません!」

ってマリコルヌ!?
キミは一体何を……!?

「全部コイツが悪いんです! この色ボケ男が浮気したのが原因ですから、あなたのような美人が悪いわけがないじゃないですか!」

まっ、まさか……
惚れたのか!?
マリコルヌ、キミという男は……!
普段から女の子に縁がなくきっかけすら作れないからといって、なにもここでアプローチしなくてもいいだろ!

「“浮気”……というと、人々の純粋な思いを踏みにじり、辱め、時には殺害されても止むを得ないとされているあの恐ろしき大罪」

ちょっと待て。
殺されても止むを得ないって……

「なるほど。あなたの“浮気”が原因で先ほどのようなことが起こったのですね。確かに、それならば原因は私にはございませんね。
むしろ、その程度の被害で済んだのはとても幸運な事ではないのでしょうか?」

こ……この女……!

「ふん、どうやらキミは貴族に対する礼儀というものを知らないようだな」
「はい。私はここに召喚されてまだ間もないものでして、こちらの世界での常識、礼儀作法などに関する知識は全くございません」

こいつ……涼しい笑顔でいけしゃあしゃあと……!!

「いいだろう、ボクがその礼儀作法というものをキミに叩き込んであげよう。決闘だ!」





やってしまったあああああああああああああああああああああああああああああ!!!
ボクは何て事を!
ついカっとなってしまったとはいえ、女性相手に決闘だなんて!!
グラモン一族始まって以来の大恥だ!!!
ならば今すぐ止めるか?
……いや。
一度自分から申し出た決闘を再び自分で無かった事になんてしたら、それこそ恥の上塗りだ。
クソ!
約束の決闘の時間まであと僅か。
ボクは……ボクはどうしたら……!?
……落ち着くんだ、クールになれギーシュ・ド・グラモン。
ようは相手を傷つける事無く穏便に済ませる事が出来ればいいんだ。
そうだ、相手は平民。
ワルキューレで適当にあしらえば、こちらから手を出す事無くそのうちに負けを認めるだろう。
そうなれば……

『参りました……やはり私如きではあなた様には敵いません』
『いや、この勝負はボクの負けだ』
『え? なぜ……?』
『先ほどはあんなことを言ってしまったが、やはり悪いのはボクだ。勝負というのは常に正しい方が勝者と決まっている。
それに、キミのような美しい女性を傷つけるなんて、ボクに出来るわけがないじゃないか』
『ギーシュさま……(ポッ)』

ふっふっふっふっふっふ。
マリコルヌ、どうやら彼女を狙っているようだが、キミでは彼女の美しさには不釣合いだ。
彼女のハートはこのボクが頂いていくよ!



「諸君、決闘だ!」

ボクの高らかな合図がヴェストリ広場に響き渡った。
ギャラリーの声援がそれに木魂するように返ってくる。
そんな中に、彼女は臆する事なくやってきた。
先ほどからの美しい笑顔を崩さず、緊張している様子もない。
腋に抱えた本もそのままだ。
どうしてここまで余裕なのだろう?
相手は仮にもメイジたるボクだぞ?
そこで決闘を申し込んだ時の彼女の回答を思い出す。

「“決闘”ですか? その手の類でしたら私も多少の心得がございます。いいでしょう。
その“決闘”、お受けいたします」

あの時はハッタリだと思っていたが、
なるほど、あの余裕を見るとあながちそういうわけではないみたいだ。
人は見かけによらないらしい。
だが所詮は平民。
メイジに敵うはずがない。

「ボクの二つ名は『青銅』、青銅のギーシュだ。従って青銅のゴーレム『ワルキューレ』がキミの相手だ」

ボクの錬金で薔薇から落ちた花びらをワルキューレへと変化させていく。
よし、相変わらず惚れ惚れする出来だ。
だがボクのワルキューレが平民などに遅れを取る事などあってはならない。
念には念を。
ボクはさらに錬金でワルキューレをもう一体作り出し、それを守りの為に自分のすぐ近くに置いた。

「なるほど。そのワルキューレとやらが、あなたの身代わりということですね」

「その通り。ボクはメイジだ。だから当然魔法を使わせてもらう。
が、それではあまりにも不公平だ。そこでだ、ボクはキミに一切手を出さない。だがキミはどんな風に攻めてきてもいい。
 武器に何を使っても構わないし、どんな策を練ろうとも卑怯だとは言わないよ」

ふふ、これでいい。
あとはワルキューレを破壊されないように気をつけながら立ち回ればいいんだ。
万が一、一体目を切り抜けてもこのもう一体がボクを守ってくれる。
うん、失敗する要素はない。
完璧な作戦だ。
が、彼女はなぜか不思議そうな表情をして首を傾げている。
彼女に有利な条件なはずなのに。

「あの……それは私が先攻ということなのでよろしいのでしょうか?」
「ん? 当然じゃないか。何を言っているんだ」
「そうですか。私、普段このような場合は相手に先攻をお譲りいたしますものでして、些か戸惑ってしまいました」

ふ……普段?
このような場合?
もしかして彼女はボクが思っている以上に戦い慣れているのだろうか?
いや、例えそうであってもボクにはこのワルキューレがある。
一対一の決闘で平民がメイジの魔法を打ち破る事などあるはずがない!

「ふん、お喋りはもうこの辺でいいだろう。いい加減そろそろ始めようじゃないか!」
「それもそうですね。では……参ります!」

彼女の瞳が真剣さを帯びる。
そう熱くならなくてもいいのに。
最終的な勝敗ならキミの勝ちということになるんだ。
そしてボクの胸へと飛び込んで来たまえ!
が、ボクに飛び込んできたのは思いもよらぬ光景であった。



「ドロー、ペルソナカード」

今まで聞いた事のない言葉と共に彼女が抱えている本の中からカードを取り出し、それを前方に掲げると、

「……は?」

赤銅色の肌と、炎の剣をその手に握った人型の怪物が現れた。
そしてその怪物から放たれた巨大な炎がワルキューレを飲み込み、ワルキューレは欠片も残さず燃え尽きてしまった。
……あれ?
ワルキューレは青銅のゴーレムだ。
炎の攻撃を受けたら砕けるかドロドロに溶けてしまうはずなのだが、それが跡形もなく消えてしまったという事は……
なるほど、気化してしまったという事か。
―――っておい!
ちょっと待て!!
あれだけの青銅を一瞬で気化させる炎なんて聞いた事がないぞ!?
何だ!? あいつはただの平民じゃなかったのか!?
その彼女はというと、未だ消えぬ炎の先で、決闘が始まる前と同じように笑っていた。
さっきまでと同じ笑顔なのに、今の彼女の姿はさらに美しく、そして恐ろしく映った。

「先ほども申しましたが私、このように幾らか荒事の心得もございます。どうかご遠慮なさらず、殺す気でおいで下さいませ」

その言葉でボクは我に帰った。
あまりの急な展開に放心してしまったようだ。
あの怪物も消えている。
クソッ! こんなはずじゃなかったのに……しかも殺す気で来いだと?
まるでボクを見下しているみたいじゃないか!
だが、彼女の力は今見たばかりだ。
実力で彼女がボクを上回っているのは一目瞭然。
つまり彼女の言う殺す気で来いというのは、本気で来なきゃボクがああなるという事では……

「わっ、ワルキューレエエエエエェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!」

ボクはさらに五体のワルキューレを作り出し、二体をさらに守りに付かせ、残りの三体に武器を持たせて突っ込ませた。

「デッキオープン」

先ほどと同じような意味不明な言葉が発せられ、再びあのカードが掲げられる。
今度は雪だるまに帽子を被せたようなふざけたモンスターだ。
そいつがくるりと一回転すると、一瞬で三対のワルキューレは氷漬けにされて、そのまま氷ごと粉々になってしまった。



「どうして……こんなことに……」

彼女が降参して、ボクが非を認めて、それでハッピーエンドになるはずだった。
なのに、何故!?
どうしてボクが平民如きに!
……そうか。
ボクは最初から彼女をただの平民だと侮っていた。
しかし、どうだ?
実際はボクなんて及びもしないほどの力の持ち主じゃないか。
ただの平民という前程そのものが間違いだったんだ。
だがもう油断はしない。
残る僕のワルキューレは守りに残しておいた三体のみ。
単調に攻めるだけじゃ彼女には勝てない。
ならば攻め方を変えるまで!

「行け、ワルキューレ!」

ボクは一体のワルキューレを走らせる。
そして彼女が再びあのカードを取り出した。

「ペルソナ」

次に現れたのは、神話の軍神の如き雄々しき姿だった。
それが手に持った槍で天を突くと、鼓膜を突き破るような轟音が鳴り響いた。
これは……雷?
落雷を起こしたていうのかい!?
どこまで非常識なんだコイツは!
ボクのワルキューレはその直撃を受けて塵となってしまい、土煙の一部となった。
だが、これはチャンスだ!
この土煙がお互いの姿を隠してくれている。
ボクは迷わずもう一体を彼女に突進させた。
先ほどまでの戦いでわかったが、彼女があの怪物たちを召喚して、その次の召喚の間にはタイムラグがある。
その間を狙えばいけると思った。
さっきは落雷の音にビックリしてタイミングを逃したが、この土煙の中なら次のを召喚される前にたどり着けるはずだ。
そして思った通り、土煙が晴れた時にはワルキューレは彼女の目の前にまで迫っていた。
よし、後は一撃を加えるだけだ!
と思ってたんだがね。
彼女の能力はボクの考えのさらに斜め上を行っていたよ。
と言っても、別に特別な事をしたわけじゃない。
ただ単に、

「えい」

という可愛らしい掛け声と共に手に持った本でワルキューレを叩いただけだ。
そう、ただ本で叩いただけでワルキューレを砕き割ってしまったんだ。
何なんですか一体!?
その細腕のどこにそんなメチャクチャなパワーがあるんですか!?
それ以前にその本は何で出来てるんですか!?



……とまぁ、そんなこんなでボクのワルキューレが残り一体になるまでに追い詰められてしまったわけなんだ。
ホント、誰でもいいからこの女神の顔をした魔王にどうやったら対抗できるのか教えてください。
いや、本気で。

「そろそろお止めになってはいかがでしょうか?」

え?
なんだって……

「あなたと戦ってわかりました。あなたの力はまだ私に『答え』を下さるレベルには達しておりません。
 降参した方があなたの身の為かと思いますが」

……よくわからないが、つまりはボクでは彼女には敵わないから降参しろという事なのだろうか?
それなら願ってもない。
事実、ボクの体はその意見に大いに賛同し、すぐにでも手に持った薔薇を離そうとしていた。
が、ボクの心はそれを許さなかった。
震える体を、今にも離してしまいそうな手を気力で押さえ込み。さらに強く握らせた。
確かに、今のボクでは勝てないかもしれない。
決闘に勝敗が付くのは当然の事だ。
ここで降参しても誰もボクを卑下したりはしないだろう。
そのくらいにボクと彼女との差は圧倒的だった。
だが、ボクにはまだワルキューレが一体残っている!
どうせなら降参して負けるより、最後の奇跡を信じて全てを出し切るべきではないか。
ボクにだって誇りがある!
この体に流れるグラモンの血が、そしてずっと教えられ続けてきたグラモン家の家訓が、ボクの背を押すように滾り、鳴り響いた。

「まだだ……まだ決着はついていない! ワルキューレ!!」

錬金で槍を作り出し、それをワルキューレに持たせて再度の突進を試みる。
もはや小細工もなにもない、ただの『突撃』だ。
だが、ボクの精神力の全てを込めた最後の一撃でもあるんだ。
その速度は今までのとは比べ物にならない。
これならあるいは!

「わかりました。私も一度決闘を申し受けた身。
 最後までお付き合いいたします」

もう何を出してきても驚かないよ。
グリフォンでもドラゴンでも何でもこい!
が、出てきたのはボクの予想に反して、白い鎧に身を包んだ戦士の姿だった。
その戦士が出てきた途端、大気が震えたかのような感覚が走った。
それはスクウェアを遥かに凌ぐ風の力。
土系統であるボクにもハッキリと感じ取れるほどにそれは巨大だった。
だがもう迷ってはいられない。
この巨大な風の力が発動する前にワルキューレを届かせる!

「行けええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

ワルキューレの槍を突き出し最後の一撃を試みた。
次の瞬間、大気が爆発した。
そうとしか思えないほどのとてつもない風が巻き起こったのだ。
その余波を受けてボクは地面を転がるようにして体を打ちつけてしまった。
立ち上がる事も顔を上げる事も出来ない。
こんな風は今まで見たことがない。
恐らくこの力は兄達や、さらには父をも上回るだろう。
随分と恐ろしい相手に決闘を申し込んだものだと、ボクは今更ながらに自分の無謀さに思わず笑ってしまった。

やがて風は収まり、ボクはゆっくりと立ち上がった。
周りのギャラリーも何人か同じ様に倒れている。
その中にはマリコルヌもいた。
大方彼女の姿を間近で見ようと前に出すぎていたんだろう。
そういえば決闘に集中しすぎてギャラリーのことなどすっかり失念してしまっていたな。
とはいえ今のボクにはもう決闘に対する集中力も、次のワルキューレを作り出す精神力も残っていない。
先ほど最後の突撃を繰り出したワルキューレも今では残骸となって広場に散らばっている。
ボクの負けだな。
ボクのワルキューレの槍は彼女には届かなかった。
結局、彼女の完全勝利になってしまったか。
ほら、彼女は相変わらず美しい姿で顔に赤い線が一筋……
え?
赤い線?
そんなものは先ほどまで彼女の頬にはなかった。
ではアレは、まさか血!?
そんな!
ボクのワルキューレは彼女には届かなかったはずだ!
と、彼女の背後にワルキューレの残骸の一部を見つけた。
それは槍の先端部だった。
そうか!
最後にワルキューレを突撃させたとき、ボクは槍を突き出させていた。
それがあの巨大な風の爆発が起きた時に砕けた槍の先端が風に乗って彼女の元まで届いたんだ!

「や……やったあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

手も足も出ないと思った。
殺されるかもしれないとも思った。
それほどの強敵だった。
ボクが出来たのは、まさに奇跡的としか言いようがない偶然によって与えたかすり傷のみ。
だが、それだけなのにすごく嬉しい!
本当に偶然だけど、それでも最後まで諦めずに粘って与えた一撃だ。
勝負には負けてしまったが、ボクにとってはこの上なく貴重な体験だった。
彼女にはお礼を言わなければいけないな。
その後はちゃんとケティとモンモランシーに謝ろう。
これが本当のハッピーエンドだな。

「ふっ、ボクの負け――」

と、言おうと彼女の方に向かったが、どうも様子がおかしい。
頬の傷に触れて呆然としている。
やはり顔はまずかったか……
確かに決闘とはいえ、女性の顔を傷つけてしまったのはボクとしても流儀に反する事だ。
まずはこっちから先に謝らなきゃな。
そして謝ろうとした時、彼女の表情に変化が起こった。
それは怒りでも悲しみでもない。
それは、喜び。

「まさか私を傷つける事が出来るなんて……先ほどの無礼をお詫びいたします」

無礼?
ああ、さっき答えがどうのとか言ってたあれか。

「いやそれは偶然だよ。ボクの実力じゃない」
「いえ、偶然であっても私に傷を与えたというだけでも十分です。私は力を管理するもの。
 故に力で私を上回る者に出会った時私は答えを得られる……。私を傷つける事が出来たあなたなら、私に答えを下さるかもしれない……。
あなたとの決闘の機会を与えていただき、ありがとうございます」

あれ?
それってまさか、まだ続けるって事?
ちょっと!
ボクはもう精神力も残ってないんだってば!
こんな状態でまだ続けるなんて――!

「本来でしたら対複数戦やある程度戦闘が長引いた時のみにしか使用しないのですが、あなたには先ほどの無礼のお詫びも兼ねて、ここからは本気でいかせていただきます」

なっ!
あれでまだ本気じゃなかったっての!?
そんな、まさか今度こそ本当にドラゴンとかそういうのとか出す気か!?

「では、参ります!」

ちょっと待って!
だからボクの負けだって!
そう言う間もなく彼女は新たなカードを取り出す。
そしてそのカードから出てきたのは、

「……え?」

彼女の体より遥かに小さな、羽根の生えた女性の姿。
そう、それはまるで妖精だった。
確かに今までと違って彼女に似合った美しい姿だが、これが彼女の本気?
今までで一番弱そうだぞ。
はっ、そうか!
彼女の力も無限ではないという事か。
今までの凄まじい攻撃の数々で力を使い果たして、今ではこれが限界に違いない。
これなら魔法の力がなくとも、素手でも何とかなるかもしれない。
そう、もしかしたら……勝てる!
ボクは一直線に走り出した。

「この勝負貰ったあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」













                   「メギドラオンでございます」













「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!……ぁぁぁ…………あ……あれ?」

ここは……ボクの部屋……だよな?
そしてここはボクのベッド。
で、ボクは寝巻き姿。
ええと、ボクは最後のワルキューレが破壊されて、
その後に妖精みたいなのが出てきて、
勝てそうだと思って突進して、
光に包まれて……
な……なんだか体が震えてきた……
ここから先は考えないようにしよう。
少し心を落ち着かせて、カレンダーの日にちを確認すると、

「今日は使い魔召喚の……」

そうだ、今日はサモン・サーヴァントの儀式の日だ。
となるとさっきまでのは……
夢?

「ふ、ふふふ……あ~~ははははははははははははははははは!」

生きてて良かった~~~~~~~!!





ふう、サモン・サーヴァントの儀式も無事成功だ。
土系統のボクに相応しいグランモールだ。
ああ、なんてキュートなんだ。
よし、ヴェルダンデと名づけよう。
と、後方で何度目かの爆発音が響き渡った。
ルイズだ。
ゼロのあだ名の通り、サモン・サーヴァントでも失敗ばかりか。
だけどボクは少しほっとしている。
別にルイズの失敗を喜んでいるわけではない。
……いや、まさか今朝の夢が現実になるとは思っていないが、やっぱりあんな夢を見た後だと怖いじゃないか。
ん? どうやら次が最後のチャンスみたいだな。

「宇宙の果ての何処かにいる私の僕よ。この世で最も神聖で、強く、美しい、最強の使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」

さっきよりもさらに大きな爆発が起こった。
これは大失敗なのか?
それとも大成功なのか?
そして少しずつ煙が晴れて、そこに何らかのシルエットが浮かび上がった。
まさか……まさかな。
周囲はルイズが成功した事に驚愕の叫び声を上げているが、ボクはもう気が気ではない。
この際何でもいい、たとえ平民の男だったとしてもルイズをバカにしたりはしません。
もう浮気もしません。
だから、だから彼女だけは――

「あの、ここはどこなのでしょう?」

あの声は……
特徴的な、透き通るような声。
夢の中で何度も聞いたあの……
そして煙が完全に晴れて、その姿がハッキリと映し出された。
ああ、確かにこの世で最も神聖で、強く、美しい、最強の使い魔だ。
あ……目の前が真っ白に……



「あんた、誰?」
「エリザベスでございます。お見知りおきを」




       前略
       お父様

       ついこの間知った事なのですが、
       浮気というのは死にも値する恐ろしい大罪なのですね。
       身をもって実感しました。
       今後は浮気などしないように心がけることにします。
       とりあえず、香水のビンを落とさないように気をつけることから始めようかと思います。

                                                   草々





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