あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのロリカード-13


 トリステイン王宮の中庭は奇妙な緊張感が漂っていた。
それは王宮上空に於ける飛行禁止令を無視し、中庭に降り立った二人の少女が原因である。
桃色の髪の少女は、マントを羽織っていることからも貴族であることは一目瞭然であった。しかし少々顔色が悪いようである。
黒色の髪の少女は、特に貴族には見えなかった。だが飛行している姿を視認していたので、恐らく貴族なのだろうと踏む。
平民には飛行の魔法は使えない。杖を持っていないのは少し気にはなったものの、没落貴族の娘かなにかだろうと魔法衛士隊員達は思っていた。

 若い少女二人組のメイジ、それも黒髪の方に桃色髪は抱っこされていた。
不審人物であることは間違いないのだが、所詮は少女。警戒心は薄れるというものであった。
「貴様らは飛行禁止令を知らんのか?名を名乗られい」
兵士の一人が放った言葉に、ルイズは気合を入れて毅然とした態度を取る。

「わたしはラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズです。無作法だったのは謝罪致します。
 アンリエッタ姫殿下にお取次ぎをお願いします。尚、密命ですので内容はお伝えできません」

 すると隊長らしき壮年の男が数歩進み出て、ルイズ達にしか聞こえない声で呟く。
「ラ・ヴァリエール?なるほど・・・・・・確かに目元がカリーヌ様にそっくりだ」
マンティコア隊隊長ド・ゼッサールは、先代のマンティ・コア隊長カリーヌ・デジレを思い出す。
公にはされていないが、現隊長であるド・ゼッサールは先代隊長のその後を知る数少ない者であった。
目の前の少女が嘘をついているとは思わなかった。
飛行禁止令を無視して王宮に突如現れ、さらに公爵家を騙るなど許されることではない。
その真摯な双眸からも虚偽は感じられなかった。

「しかし・・・・・・用件も聞かずに取り次ぐわけにはいかぬ」
「ならば我々がきたことを姫殿下に伝えてくれるだけでよい、それだけで向こうはわかってくれるだろうからの」
ド・ゼッサールは怪訝な顔をする、爺口調でやたら高圧的な少女に。

「随分偉そうにしてくれるな」
「こういう性分での、許すがよい」
ひどく面倒臭そうに、半ばあしらう様に言うアーカードの言葉で一層険悪な雰囲気が漂う。

「ちょっと、余計な悶着は起こさないでよ」
ルイズがアーカードを窘める。
「眠いままワルドと戦って、そのまま日中主を抱えて飛んできて非常に疲れている。気を回す余裕はあまりないな」
「そうね、だからここから先は私に任せて。アーカードは何もしなくていいわ」
アーカードは納得したようにコクコクと頷いた。しかしド・ゼッサールはアーカードの言葉に眉を顰めていた。


「今の言葉は聞き逃せんな。ワルドと戦っただと?それはグリフォン隊隊長であるワルド子爵のことか?」
ド・ゼッサールの目が鋭くなる。
トリステインの近衛である魔法衛士隊と戦うということは、友好的な相手ではないということは明白である。
「いや・・・・・・あの!!それには理由があるんです」
ワルド子爵は今所用で出ている、そして否定をするどころか"理由"と言った。つまり肯定の意。
ド・ゼッサール隊長は他の隊員に目だけで合図を送る、よく訓練された隊員達はすぐに行動に移す。
マンティコア隊員らは杖を構え、取り囲み、臨戦態勢をとった。

「大人しくするならそれでよし、抵抗するならば容赦はしない」
例えラ・ヴァリエール家縁の者であろうとも、不審人物とこのまま話す道理はないと判断する。
「っ・・・・・・!?ちょっと待ってください!」
「今の貴殿らに発言権はない、然るべき措置を取った後に聞こう」
いきなりマンティコア隊が、一斉に杖を突きつけてきたことにルイズは困惑する。
ルイズはその後も必死に説明しようとするも、肝心なことは密命である為に言えない。
結局要領を得ない説明で納得させることが出来る筈もなく、マンティコア隊はいよいよ以て強制捕縛を仄めかす。


 黙して様子を見ていたアーカードが、「はぁ~っ」と大きく溜息を吐いた。
下を向いていて表情は見えないが、あからさまにうんざりしているのがわかる。
その大きな溜息に、ルイズも隊員らもアーカードに視線が集中した。アーカードは顔を下に向けたまま口を開く。
「ルイズ、構わん。行こう」
「は?それはさすがに・・・・・・」
顔を上げると同時にアーカードは殺気を周囲に叩きつける。
ルイズはその対象からはずされているものの、一瞬で冷や汗が流れるのがわかる。
一方で、アーカードは動けない隊員たちを尻目に悠然と歩いていく。

 気圧され、思考力が低下したマンティコア隊員の一人の目に奇妙なものがとびこんだ。
極限まで威力を抑えた小指による『デコピン』。
それは、まるで予め決めてあったかのような正確さで男の顎を射抜き、僅かそれだけのことで男の意識は脳の外へハジき出された。

 二人目、おこなったことは軽く跳躍して頭を掴み揺らす。
たったそれだけのことである。しかしその無造作な行為が男へもたらした事態は甚大であった。
男の頭蓋骨内部では脳が内壁へ繰り返し叩き付けられ、まるでボクサーが強烈なショットを喰らうのと同じ様相を呈し、またしても意識は脳の外へと――――――。

 進行方向を遮るも動けなかった二人の隊員を瞬時に倒したその光景、少女の放つ尋常ならざる戦力を示すオーラ。
マンティコアを駆る魔法衛士隊隊員、彼らは当然その道のプロであったが気付くのが少々遅かった。
それが自分達を遥かに上回るということを。その戦力差は刃物や幻獣程度でカバーできるような生易しいものではない。
たとえ大砲などの兵器を用いても埋まるものか・・・・・・否、想像もつかぬ戦力差。

 アーカードは邪魔だった二人の隊員を倒すとまたテクテクと歩いていく、しょうがなくルイズもそれに続いた。
ルール破りなのは百も承知であるが、埒が明かないのもまた事実。
それにきっと姫さまは、今も心休まらない想いをしているに違いない。
ウェールズさまの死を告げるのは非常に心苦しいが、それでもお伝えせねばならない。

 そう・・・・・・宣告せねばならないのだ、非情な現実を・・・・・・親愛なるアンリエッタに。




「姫さま!」 
周囲を威圧しつつ王宮内を少し歩くと、すぐにアンリエッタが見つかった。
「ルイズ!?」
アンリエッタとルイズはそれぞれ駆け出し、ひしと抱きしめ合う。
「本当によかった、無事でなによりです。既に王党派崩壊の報せを受けていたので、とても心配していたのです」
「姫さま・・・・・・」
ルイズは目を潤ませる。安心感と・・・・・・そして伝えねばならないことに。
「ウェールズさまはやはり・・・・・・?」
姿が見えないのだからわざわざ聞かなくとも決まっている。王党派の崩壊と共にウェールズは――――――。
既に覚悟はしていた。しかし心のどこかで亡命してくれるのではと願っていた淡い想い。
ルイズは一瞬言葉に詰まるも必死に絞り出す。
「はい・・・・・・」
「そうですか・・・・・・とりあえずわたくしの部屋へ行きましょう。詳しい話はそこで――――――」

「殿下!!」
「マザリーニ枢機卿・・・・・・?なにをそんなに急いでいるのですか?」
アンリエッタは振り返り、走って来た人物の名を呼ぶ。
「殿下!なにやら不審な賊が侵入したそうです、すぐに避難を!」
「なんと、それは本当ですか?」
マザリーニ枢機卿は肩で息をし、アンリエッタに退避を促す。アンリエッタは信じられないといった表情をしていた。
王宮は今かなりの厳戒態勢が敷かれていると聞いている、魔法衛士隊も警邏している筈であった。
それらを潜り抜け侵入するほどの賊がいるのか、そもそもそのような状態にも拘わらずわざわざ侵入してくる賊の目的とは一体なにか。


 ルイズはゆっくりと振り返りアーカードを見つめる、しれっとした表情で腕を組んでいた。
恐らく賊と勘違いされているのは、十中八九自分達だろう。
いきなり王宮内に降り立ち、マンティコア隊隊員二人を気絶させ無理やり通ってきたのだから。
「あの・・・・・・姫さま、実は――――――」
その時ようやくマザリーニの視界にルイズとアーカードが捉えられる、それに気付いたアンリエッタはすぐ口を開いた。
「彼女達はわたしの客人です、賊などではありませんわ」
「いや、我々だ」
「は?」
アンリエッタとマザリーニの声がハモる、まずいと思ったルイズはすぐさまフォローに入る。
「その・・・・・・姫様への取次ぎをお願いしたんですが――――――」
「いきなり我々を尋問すると言い出してな、少々手荒であったが強引に通らせてもらった」
ルイズがなるべく語弊がないように、かつオブラートに包んで弁解をしようとするも、横から容赦なくアーカードが説明する。
「もっ、申し訳ありません!!姫さまに早くお伝えせねばと気が逸っていて・・・・・・その・・・・・・」

 アンリエッタは手をあげてルイズの言葉を制し、マザリーニに向き直る。
「枢機卿、なにやら行き違いが発生しているようです。そちらのほう、お願いできますか?」
マザリーニは大きく息を吐く。賊の正体が判明した安心感か、ただの溜息か判断はつかないものの顔は穏やかであった。
「・・・・・・そうですな、賊は"少女二人"と聞いております。すぐに誤解を解いておきましょう」
「よろしく願いします」
ルイズは深々と頭を下げる、アーカードもそれを見て軽く会釈だけをする。

「それでは、行きましょうか」




 ルイズは手紙をアンリエッタに渡し、事の経緯を順を追って説明する。
アンリエッタは一言一句聞き逃さぬよう神妙に聞き、そして絶句した。
「そんな・・・・・・」
自分が使者に選んだワルドの裏切り。ウェールズを直接死に至らせてしまったことは己の責任ではないか。

「生憎と、裏切り者のワルドは逃がしてしまった。次に相見えることがあれば必ず殺してやる」
笑うという行為は本来攻撃的なものであり、獣が牙をむく行為が原点であるという。
吸血鬼の、その鋭い牙を剥き出しにしたアーカードの笑いは・・・・・・まさに獣のそれであった。
「姫さま・・・・・・」
俯いたまま声を押し殺し泣き、歯噛みして自責の念を抱いているアンリエッタを見てルイズは涙を流す。
ルイズは自然とアンリエッタへと近付きその肩を抱いていた。

 泣いている二人を特に感慨もなく見つめていたアーカードは口を開く。
「さて・・・・・・ではウェールズと会わせてやろうかの」
ルイズとアンリエッタが揃ってアーカードを方を向く、当然言っている意味がわからない。
既にアルビオンでワルドに殺されたウェールズと会わせる?一体どういうことなのか。

 二人が疑問符を浮かべている中、アーカードは淡々と作業に入る。
アーカードのパーソナルで以てまとめあげている、自身の中に無数に存在する有象無象の命。
その極々一部、特定のたった一人だけを開放する。
アーカードの影が、アーカードよりも大きいシルエットを浮かべ質量を持つ。

「アンリエッタ・・・・・・」
黒い影からしかと姿を保ってウェールズは、生前と変わらぬ笑みを浮かべその名を呼んだ。
「あ・・・・・・」
二人は言葉を失う、ルイズは夢でも見ているのかと思った。ウェールズの死は自分自身で確認したのだから。
アンリエッタは幻想の中にいると錯覚する。死んだと言われていたウェールズが今自身の目の前にいるのだから。


「どういうこと・・・・・・?」
ルイズは目前の光景をアーカードに問い質す、アーカードは静かに話し始めた。
「血とは魂の通貨、命の貨幣。命の取引の媒介物に過ぎん。血を吸う事は命の全存在を自らのものとする事だ」
ルイズははっとする。アーカードがウェールズの亡骸ごと血を吸った意味を・・・・・・。

「血液を通貨とした魂の、命の同化。他者との命の共合、生命の融合、精神の統合。吸血鬼の本質」
説明をしているアーカードの言葉がアンリエッタの耳に入る。
『吸血鬼の本質』、しかし今はそれよりも目の前の事態を認識するので手一杯であった。

 召喚した夜にある程度は聞かされていたものの、意味がわからなかった。
しかしルイズはやっと、目の前の出来事とあわせてアーカードという吸血鬼を理解する。
アーカードは相手の血を吸うことで、その者を自身の中に取り込めるのだ。
単なる食事として吸血するのではない。吸血という行為で他者と融合する。
そしてそれを開放することも出来る。こうやって死者と話すことも可能なのである。

 生と死の境界など知ったことではないという、とんでもない能力。
摂理に反逆する・・・・・・化物と言う他ない、アーカードのいた世界の吸血鬼の恐ろしさ。


「僕の自我は・・・・・・意識は、もうすぐ融けて消えてしまうだろう。
 でもその前にアンリエッタ、君に会ってまた話が出来ることを僕は幸せに思う」

 アンリエッタは立ち上がり駆け出すと、ウェールズの胸へと顔をうずめた。
「本物・・・・・・!本物のウェールズさまなのですね?」
「ああ」
アンリエッタは顔をあげウェールズの瞳を見つめた。しかし生気は感じられなかった。
「生きて・・・・・・いらっしゃらないのですか?」
「確かに僕は殺された、しかし彼女のおかげでこうして君と話し、伝えることができる」
ウェールズが向けた視線の先をアンリエッタも追う。
そこにはルイズの使い魔アーカードが暢気に欠伸をしていた。

「ウェールズさま、私が・・・・・・私が!!ワルド子爵、を・・・・・・」
そこまででウェールズはアンリエッタの言いたいことに気付く。
「気にしなくていい、アンリエッタ。どちらにせよ僕は・・・・・・ニューカッスルで戦い、死ぬつもりだった」
依然として悲しげな表情を浮かべているアンリエッタをウェールズは見つめる。

「アンリエッタ、これを・・・・・・」
そう言ってウェールズは取り出した風のルビーを、アンリエッタの指へと嵌めた。
「これは・・・・・・」
「僕の形見として、君に受け取って欲しい。そして・・・・・・僕の分まで強く生きて欲しい」
アンリエッタは目を瞑り涙を流した。呪文を呟くと、指輪がぴたりとアンリエッタの指におさまる。
「・・・・・・わかりました。出来うることなら・・・・・・あの思い出の、ラグドリアンの湖畔の・・・・・・誓約の水精霊の前で誓いたかった」
アンリエッタは大きく息を吸い、その言葉を紡いだ。

「私はあなたを愛しております、ウェールズさま」
「うん、僕も・・・・・・愛していたよ」
"愛していた"、それは既に死んでいるゆえのウェールズの言葉。
しかしアンリエッタはその言葉を・・・・・・胸に、心に、深く刻み込む。
「私は・・・・・・その言葉を永久に抱き、貴方の分まで強く生きようと思います、ウェールズさま」
「ありがとう、アンリエッタ」

 最後に一度だけ唇をかわし、二人は笑いあった。
悲しくても・・・・・・それでも互いに、笑顔で別れを告げた。
そしてウェールズは影となり、アーカードへ吸い込まれる。
アンリエッタは一度だけ大きく深呼吸をし、自分自身の心に決着をつけた。
自分の愛したウェールズの分まで強く生きる。トリステインの王女として。国を、国民を守る王族として。


「アーカードさん、ありがとう」
アンリエッタは心からのお礼を言った。アーカードは真剣な表情でアンリエッタの姿を見つめる。
「いい眼だ、場合によっては腑抜けるかとも思ったんだが・・・・・・杞憂だったようだな」
「ちょっとアーカード!姫さまに対して――――――」
「構いません、ルイズ。私はあなた達に感謝しても、到底し足りません」

 そう言うとアンリエッタは机に向かい歩いていく。引き出しから何かを取り出すとそれをルイズへと渡した。
「始祖の祈祷書です。ルイズ・フランソワーズ、あなたを私の結婚式の巫女に指名します」
「え?」
「無事手紙は手元に戻りました、同盟も滞りなく締結されるでしょう。近々私とゲルマニア皇帝の結婚式も執り行われる筈です。
 その時にあなたに巫女として詔をお願いしたいと思います、その日まで肌身離さず持っていてください」

「そんな・・・・・・」

(気丈だな・・・・・・だが上に立つ者、そうでなくてはいかん)
アーカードはその様子を見ていて静かに笑う。
つい先程ウェールズを愛していると言った。だがその想いを胸にしまい、覚悟をもってアンリエッタは振る舞っている。

 ルイズには愛する者を失った気持ちを、想いを慮ることはできない。
しかしアンリエッタの決意を、自分の無下な言葉で汚すのは躊躇われた。
「ルイズ、引き受けてくださいますか?」
「謹んで・・・・・・承ります」
ルイズは膝をつき頭を垂れる。アンリエッタは微笑んでルイズの手を取る。
「ありがとう、ルイズ。それと・・・・・・この水のルビーはあなたが持っていて」
「えっ?しかし・・・・・・」
「忠誠には報いるところがなければなりません、それに私にはこれがありますから」
そう言って風のルビーを近付ける、風と水は虹色の輝きをつくった。
その輝きを見るのは二度目である。だが以前よりも、心なしかより一層強く光り輝いている気がした。
「・・・・・・ありがとうございます」


 アンリエッタはアーカードへと目を向けた、アーカードもそれに気付き目が合う。
「私は別に何もいらんぞ、腹も充分に満たされているしな」
「・・・・・・吸血鬼」
アンリエッタは呟く、アーカードの言っていた言葉を思い返していた。
「ん?あぁ、私は吸血鬼だ」
「その・・・・・・姫さま、騙していて申し訳ありません」

 ルイズが謝罪するもアンリエッタは首を軽く左右に振る。
「いいえ、自分の使い魔は吸血鬼ですとは言えないでしょう。・・・・・・これからもルイズをよろしくお願いしますね」
「んむ」
「それと・・・・・・もし何かあった時は私も頼りにしてもよろしいですか?」
「構わんぞ、可能な範囲で良ければな」
「ありがとう、アーカードさんも・・・・・・もし困ったことがあればなんなりと私をお頼りください」




 ルイズとアーカードは、一頭の馬に二人で乗って学院へと向かっていた。
ルイズが前で手綱を握り、諸々で疲れたアーカードは後ろに乗って休んでいた。
「愛・・・・・・か」
「なんだ、藪から棒に」
ルイズは考えていたことを自然と口に出していたことに、恥ずかしくなり俯く。

「いや、その・・・・・・姫さまは一体どんな気持ちだったんだろう。私・・・・・・昔はワルドを憧れの王子様のように見てた。
 だから裏切られたのは凄いショックで・・・・・・。でも姫さまはウェールズさまを今も愛していて・・・・・・。
 アーカードのおかげで最後に話せたとはいえ・・・・・・きっと言葉にはできないくらい悲しかったと思う。
 それなのにもう国のことを考えていて、愛してもいない人と結婚することまで・・・・・・」

「あぁ、立派だな。だから支えてやるといい。彼女にとっても主にとっても大切な友なのだろう?」
「うん・・・・・・」
煮え切らない頷きをし、ルイズはまた考え始める。

「ふむ、我が主は・・・・・・ルイズは誰かを愛したことはないか」
「そりゃ・・・・・・ないわよ、ワルドだって違うし。・・・・・・アーカードはあるの?」
「無論ある」
「そう」とルイズは呟く。
そりゃあ何百年と生きてる吸血鬼だもの、それくらいはあるだろう。
キュルケとかとも、そういう話をしてるみたいだし・・・・・・。

「人を愛するって、愛されるってどんな感じなのかな」
「そうさな、私は二人の妻と一人の愛した女性がいたが・・・・・・」
「へっ?っ・・・・・・妻!?」
ルイズは困惑する。
(えっ?ぇえ!?なんで?だって女同士でしょ?結婚?妻?しかも二度も?さらに他に愛した女性がいた?アーカードってそっちの趣味?)

「特にその一人というのが略奪愛でなあ・・・・・・それもまぁ色々あって――――――」
アーカードはヘルシング教授らに打ち倒された時のことを思い出す。
100年前にミナ・ハーカーを奪い、そして戦った時のことを・・・・・・。


 と、俯いたままブツブツと言ってるルイズに気付く。
「ふむ・・・・・・ルイズ、私の伴侶になってみるか?」
「なっ!?ばっばっばば・・・・・・バカじゃないの!!?」
馬の手綱を握ったまま振り向いたルイズをアーカードは見つめてニヤニヤと笑う。
気恥ずかしくなりルイズは顔を前に戻す。

「・・・・・・まっ、言葉で説明してもわからんさ」
ルイズは黙りこくる、何かを考えているようだった。
「ん、そうだ。一つだけ簡単にわかる方法があった」
思わぬ言葉にルイズは再度アーカードの方を向く。
「ほんと?なに、どうやって?」
「知りたいか?」
「うん、そりゃあ・・・・・・」

 ルイズはなんの気なしに答える、それが重大な選択だったとも気付かずに。
「そうか」
そう言うとアーカードはルイズの鼻をつまむ。
咄嗟に呼吸する為に口が開いた瞬間に小瓶から紫色の液体を流し込まれた。
反射的にルイズはその液体を飲んでしまう。
それを確認するとアーカードは小瓶を手の中で握り潰し、粉になったものを地面へと撒いて捨てた。
「ッ・・・・・・!?ケホッ、なっ何を飲ませたの!?」
と、そこで気付く。先程かすかに見えた小瓶、僅かながら見覚えがあった。記憶を探る、そしてピンときた。


「惚れ薬だ、まあ試作品で効果は短いそうだが」
そうだ、モンモランシーから貰ったと言って、アーカードが部屋で眺めていたポーションだ。
「ほ・・・・・・惚れ・・・・・・?」
惚れ薬?禁制品ではないか。モンモランシーは一体なんでそんなものを作ったのか、しかもよりによってアーカードに渡すなんて。
あれこれ考えるも、惚れ薬の効果は思ったよりも早かった。顔は紅潮し、体がどんどん火照ってくるのがわかる。
感情が一色に染まっていく、目の前の使い魔がなんだか愛おしく感じられる。
やばいまずいと、早鐘を撞くように胸が高鳴っていく。
「外で・・・・・・というのも乙だが、学院に戻ってからにしよう」
「はひっ・・・・・・?」

 アーカードはサディスティックな紅い瞳で、笑いながらルイズを見る。
「なぁに、記憶は残るらしいから安心するといい。擬似的にではあるが、たった一晩で愛すること・・・・・・愛されることの一端が垣間見れるだろう」
「い・・・・・・いやぁあ~~~~~っっ!!!」

 ルイズは失いつつある理性を振り絞り、最後に叫び声をあげた。



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