あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

割れぬなら……-13


月下斬舞

敵は7万、こちらは1人。
それを戦争だと言い張れる者がいるだろうか。

ルイズは死ぬつもりだった。
味方を逃がすために、1人でも多く生き延びさせるために、ルイズは7万の敵にありったけの魔法を浴びせて死ぬつもりだった。
……しかし、ルイズはそれを果たせなかった。

幾重にも幾重にも連なる敵兵達を掻き分け、突き抜け、白馬に乗った一人の武人が飛び込んできたのだ!

「チョウウンッ!?」

……趙雲子龍、ルイズが呼び出した虚無の使い魔。
ルイズは趙雲に撤退を命じていた。
しかしこの男は命を破り、ルイズを救いに敵中を突破してきたのだ。

「遅くなりました」

敵兵が茫然としている中で、趙雲はゆっくりとルイズの前に進み、鋭い殺気と共に敵を睨みつける。

「ルイズ様。
 この趙雲の後ろは、いかなる敵も手を出せぬ処」

返り血で真紅に染まった槍を振り上げ、さらに敵を威嚇する。

ルイズには、趙雲の意図がすぐにわかった。
自分が敵を食い止めている間に逃げろという事だ。

ああ……いつだって私は護られてばかりだ。
いつだってチョウウンは私を護り続けてくれた。
どんなに辛く当っても、どんなに窮地に立たされても。

チョウウンを殺しちゃいけない……絶対に!!

「チョウウンッ!!」

武人は答えない、全身全霊の力を前に……ルイズが居ない方向に向けている。

「私の命は護られて生き存えるものじゃないわ!
 チョウウン、撤退なさい!」

武人は動かない。
微動たりしない。
ルイズは敵の乗っていた馬を奪い、一足先に撤退を始める。
それを見た敵兵達は、逃がすものかと駆けだした。



まだまだ童と決めつけておりましたが……

「御意!」

趙雲が敵に背を見せた。
同時に振るった槍は、一度に7人の男を葬った。

「チョウウン! 雌雄を決するのはまだまだ先よ!」

「仰る通り、だが敵はあなたが推し量るほどに甘くはございません」

趙雲の言葉に呼応したかのように、無数の敵が退路に殺到していた。

「よろしいですか。
 目を閉じ、身を深く沈め、力と呼吸を馬と合わせることに専心なさいませ」

趙雲が2頭分の手綱を握る。
そして一気に体を深く深く沈める。
趙雲の体は馬の胴体よりも低くなり、手綱が引きちぎれんばかりに引っ張られる。

疾走する2頭の馬は、ありえない角度で曲がった。

退路を塞いでいた者達が驚愕するも、曲がった先にも敵兵が押し寄せている。

同胞の仇を相手に沈着苛烈なこの用兵。
これがミョズニトニルンというものか!
しかし……

凄まじい勢いで詰められる包囲。
殺到する無数の兵士。

趙雲が2頭の馬に乗った。
跨っているのではなく、乗っている。

「曲乗りに惑わされるな! 挟みあげい!」

敵の指揮官らしき男……ミョズニトニルンが叫ぶ。
さらに勢いを増す敵兵。

趙雲が跳ぶ。
落馬をした訳ではない、逃げるのを諦めた訳でもない・
鞍からのびる綱一本を頼りに、全身を馬から投げ出したのだ。


しかし、主君の命をあずかっているこの地と
我が身命の置き場となったこの天の狭間は……趙雲の武がまさに勇躍する処ぞ!!



……窓から日の光が差し込み、小鳥が木の上でさえずっていた。
肌に触れる感触は、少しばかり湿った布団。
心なしかかび臭い。
そして相変わらず自分を包む石畳、鉄格子。
ルイズは慌てて飛び起きる。

「え? 牢獄? なんで!?」

もう一度周りを良く見てみる……何度見ても牢獄にしか見えない。

「ま、まさか……戦闘中にここまでテレポートしてしまったの!?」

ルイズは愕然とした……自分のあまりにもアホらしい考えに。
もし本当にテレポートしたとしても、趙雲と合流するまでに負った傷が一瞬で消えるなんて不自然だ。
それによく思い出してみると、ルイズが召喚したのは趙雲ではなく、曹操の筈だ。
第一、テレポーテーションなんて非現実的すぎる。
つまり……

「……夢?」

ルイズは疲れていた。
とにかく、使い魔召喚の儀式からレコン・キスタと正面衝突するまでの、全部を夢で見たのだ。
何度も襲いかかる辛い出来事に、チョウウンに護られながら、私自身もボロボロになって戦った。
「何度やめようか、逃げようかと思ったことか……
 だけど、その度にチョウウンは傷つき、血反吐を吐きながら私に仕えてくれた。
 しかもウェールズ殿下の事が好きだとばかり思っていた姫様が、実はチョウウンが好きだと打ち明けてきて、
 チョウウンは3日間苦しみぬいたあげくに……
 妻なくとも武士の勤めは行えます。拙者は武士として名分の立たぬことのほうを恐れますと。
 何も言わずにただうつむいていた姫様と、たった1人で月を眺めていたチョウウン……
 抱きしめてあげたかった。
 小指と小指を絡ませて、腕の中へ引き寄せてあげたかった。
 こんな駄目な主は放っておいて、チョウウンはチョウウンとして生きてほしかった。
 せめて誰かの役に立って死のうと、敵軍の足止めに志願したら、そんな処にまでチョウウンは助けに来て……
 それが、それが……それが全部夢ぇっ!!?
 現実ではあんなへっぽこ謀反疑惑が使い魔で、あんなにカッコ良くて綺麗で強い使い魔が夢?
 ええい!! 文字通り夢を見せやがってコンチクショウッ!!!」

怒りにまかせて空のボトルを蹴り飛ばす。
ボトルは壁に激突して砕けた。

「ソウソウの馬鹿……こんな時くらい、助けにきなさいよ……」



「ぷっ」

人の声がした。
おおよそ24時間一度も聞けなかった人の声がした。
振り返ると、鉄格子の外に人が居た。

キュルケとワルドとコルベールと曹操。

「いつから居たの?」

「『テレポートしてしまったの?』の辺りから」

皆を代表してキュルケが答えた。
ルイズは死んだように硬直した。
キュルケがニコニコと……訂正、ニヤニヤしている。
ワルドは必死に笑いをこらえている。
コルベールは誰とも視線を合わせないようにしている。
曹操の表情はややわかりにくいが、彼も笑いをこらえている。
その状態のまま何秒かが過ぎる。
しかし、その危うい均衡はすぐに崩れ去ってしまった。

「もう……無理……」

その言葉を最後に、キュルケが爆発した、決壊した、吹いた。
わかりやすい言い方をするのなら、笑い出したという事だ。
ほぼ同時にワルドも曹操も止めていた息を盛大に噴き出した。
コルベールはオロオロしている。

……ルイズがキレた。

しかし、今の彼女には杖が無い。
鉄格子から1メイルも離れれば、もうルイズの手は届かない。

「チョウウンの100分の1でも良いから私に優しくしなさいよおおおぉぉぉぉーーー!!!」

その悲痛な叫びは、3人分の笑い声によってかき消された。


その頃……降臨祭の日にガリア大使としてトリステインに来訪してきた男が、グラン・トロワにてジョゼフ一世と謁見していた。
いや、謁見と言うには少しばかり語弊が生じるかもしれない。

まず、その部屋には2人の他に人間は存在しない事。
2人は机を挟んで交互に盤面上の駒を動かし……はやい話、チェスをしているのである。

「殿。ラドクリアン湖の増水の件、私も参りましょう」

男が黒い駒を動かし、ポーンを殺す。

「何故だ?」

ジョゼフが純白のナイトを自陣近くまで後退させる。

「先日、トリステインにてガンダールヴを見て参りました」

漆黒のポーンがクイーンへと昇進した。

「続けろ」

白のキングとルークの位置が入れ替わる。

「かの国に放った密偵からの報告によりますと、ガンダールヴは例の小娘に執心の様子だとか」

黒のビショップがナイトを殺す。

「ほう……しばらく目を離した間に、ずいぶんと育ったものだな」

白のルークが先のビショップを殺す。

「生かしておけば、後々ガンダールヴを釣り上げる餌となりましょう」

ルークが抜けた穴に、黒のクイーンが切り込む。

「あえて行動を共にするのは、餌と魚から針を隠すためか」

白のキングが退く。

「この賈言羽にお任せください」

黒のナイトが退路を断ち、白のキングが囲まれた。
どう動いても、4手後にキングは殺される事だろう。

「……よかろう、好きにするが良い、我が使い魔よ」



「……では、我らがご主君の厄介払いを祝して」



 「乾杯」



ワルドの音頭に合わせ、皆が杯を合わせる。
先日の上奏の後、曹操は『シュヴァリエ』の称号を与えられ、ゲルマニアとの国境近くに小さいものの領地を与えられた。

……昇進の名を借りた厄介払いである。

リッシュモンは死罪、彼の息がかかった者達もなんらかの処分を受けた。
処分を免れた他の宮廷貴族達が、曹操に糾弾されるのを恐れて、中央から遠ざけようとしたのだ。
曹操はこれを承諾。
明日にでも与えられた領地に向かう予定である。

その日、王都トリスタニアにある酒場にて、曹操の出世……もとい、厄介払いを祝う宴会が催された。
参加メンバーは曹操、ルイズ、キュルケ、タバサ、ワルド、コルベール、副官、そしてアニエス。

では、そんな彼等の心温まる宴会風景を見てみよう。



曹操とタバサの場合。

とてつもなく苦いサラダの栄養学について、延々と語りあっていました。
以上。



ワルド、コルベール、アニエスの場合。

「本当になんと言ってお詫びをすれば良いのやら……」

アニエスは酒を飲み、ひたすら暗くなっていた。
曲がりなりにもダングルテールの同胞達の無念を晴らしてくれた曹操は大恩人であり、
知らなかったとはいえ、その大恩人を射殺しようとした自分は鬼畜にも劣るらしい。
さっきから、そんな話題が何度も何度も何度も何度も繰り返されていた。

ちなみに、曹操はその件について全く気にしていない。
アニエスが恩返しを申し出ても「好きにするといい」としか答えない。
降臨祭の日から数日、アニエスは一度も恩返しらしい事をしていないため、自責の念が捨て去れないのだ。
もっとも、一度や二度の功績で清算しきれるほど、アニエスの感謝感激の念は薄くはないのだが。

「はっはっはっはっは、はははははははははは!」

逆にワルドは極めて明るい。
ここまで楽しい思いをするのは、彼の人生で初めての事かもしれない。

「いやぁ~、それにしても我らがご主君の啖呵は実に見事!
 リッシュモンの慌てふためく顔は実に痛快!
 トリステインは大激震!
 まさに天下の謀反人の所業だぁ!」

そんな爆弾発言を、大笑いをしながら言ってのける。

「何をいわれます! ソウソウ殿は国を憂う気骨の士。まさに真の大忠臣!」

アニエスが発言の撤回を求め、ワルドに食って掛かる。

「いやいや、アニエス君は若いし、ご主君と出会ってから日も浅い。
 ご主君の本質は謀反人、奸雄と言い換えても良い」

「いいえ! ソウソウ殿は憂国の士。これからのトリステインに無くてはならない国家の柱石となりましょう」

「はっはっはっは、乱世の奸雄だ!」

「治世の能臣です!」

「まあまあ、まあまあ……」

殴り合いになる前に、コルベールが仲裁する。
この男、さっきから一杯も飲めていない。



ルイズ、キュルケ、副官の場合。

「乱世の奸雄!」

「治世の能臣!」

幾度となく勃発する曹操論を、ぼんやりとルイズは眺めていた。

ルイズを牢獄に閉じ込めたのはワルドで、それを指示したのは曹操だった。
曰く「念のために」だそうだ。
ルイズは曹操から信用されていなかった。
そう考えても怒りは湧かず、むしろ悲しかった。

悪いのは私だ……と、ルイズは思う。
考えてみたら、私はソウソウに何もしていない。
むしろ、顔を合わせる度に叱るか、怒るか、止めようとしていた。
ソウソウを遠ざけていたのは、私の行動だった。
だったら……

「なぁ~に暗い顔してるのよ、ル・イ・ズ!」

がばぁ、という擬音と共に、キュルケが抱きついてくる。
酒の匂いはしない。
しかたなくルイズは考えを止め、ちょっとした質問をキュルケにしてみた。

「ねぇキュルケ、そういえば貴方はどうしてソウソウを探していたの?」

「え? ああ、報告よ」

「報告?」

「ええ、ここに私とダーリンの愛の結晶が……ぽっ」

そう言うとキュルケは顔を赤らめ、そっとお腹をさすった。

いくらルイズでも、妊婦は攻撃できなかった。
怒りの矛先は、とりあえず副官に向かった。

……合掌。



キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー、寿退学。
翌年、第一子『曹昴』誕生。



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