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プレデター・ハルケギニア-19


「あちゃあ、曇ってきたわねえ」

キュルケが空を仰ぎながら呟く。
先程から黒い雲が空を覆いつくし始め、今にも降り出しそうだ。

「はあ、そろそろ帰ろうかと思ってた所だってのに」

ギーシュが宿屋の壁に寄りかかりながら言う。

「私だってもう帰りたいわよ。いい男はぜーんぜん通らないし」

キュルケも肩をすくめて言う。その隣ではタバサが黙々と本を読みふけっている。

「あなただって退屈でしょう、タバサ?」

キュルケの言葉には応えずにタバサはページをめくる。
この少女にとっては本さえあればどこでも変わらないのかもしれない。

「降り出す前に中に入りましょう」

キュルケがもう一度肩をすくめて宿の中に入ろうとした時、ギーシュが小さく声を上げた。

「どうしたのよ」
「いや……あれ何だろ?」

キュルケがギーシュの目線の先に目をやると何やらこちらに飛んでくる物体が見える。
そして近づいて来るにつれてその姿がはっきりと見えてきた。

「あれは、竜籠だ!」

竜籠とは大きな揺り篭のような物の四隅を竜に持ち上げさせ移動する物だ。
竜籠はキュルケたちの宿を通り越すと広場のほうへと飛んで行った。

「見に行ってみようぜ!いい退屈しのぎだ!」

ギーシュが少し嬉しそうに走り出す。相当退屈を強いられていたのだろう。

「あ、ちょっとギーシュ!……ふう、しょーがない。私たちも行きますか」



竜籠は予想通り広場へと着陸していた。
周りには自然と人だかりが出来ている。

「一体なんだろうな?」
「さあ、どうせどこかの貴族じゃないの?」

ギーシュとは対象的にキュルケがつまらなそうに呟いたその時、竜籠から二つの人影が降り立った。
その瞬間、ギーシュもキュルケも驚嘆の表情を浮かべた。二人の人物は彼等が良く知る人物だったのだ。

「コルベール先生!?それに、オールド・オスマン!?」

ギーシュとキュルケが声を上げる。その声に気づいたか、竜籠から降り立った二人は二人のほうを向いた。

「なんじゃ君ら。帰ってこんと思ったらこんなとこで油売とったのか?」

オスマンがキュルケたちに近づくと開口一番にそう言った。

「いや……っていうか何で学院長とコルベール先生が?」

ギーシュが呆気にとられたかのように言う。

「それは私もお聞かせ願いたいですな。ろくに説明もせず連れ出して」

オスマンの傍らのコルベールが少し不機嫌そうな口調で言う。

「はは、まあそう怒るなミスタ。とりあえず何か喰おう。腹減っちまったわい」




オスマンとコルベールがラ・ロシェールに降り立った頃、ルイズ、そしてテファニアと村の子供たちも貨物船の一室に集まっていた。
あの亜人の武器を置いてある部屋だ。

「お姉ちゃん……」
「大丈夫よ。きっと大丈夫だから……」

不安そうな子供たちの頭をテファニアが優しく撫でる。相変わらず帽子は被ったままだ。
子供たちをなだめながらもその顔もまた、不安げな表情を浮かべている。

「一体どうやってドアを開けたんだ……あいつも魔法を使えるってのか!」

隊員の一人が声を荒だげる。ドアは壊されていたのではない。魔法による鍵が解除されていたのだ。

「武器は殆どここにある。あいつが持ってるのは鉤爪ぐらい……袋のネズミよ。逆に捕まえてやるわ」

エレオノールが一同に言い放つ。その時、

「そうかねえ。駄目なんじゃねえの?」

どこからか声がした。低い男の声だ。

「……何ですって?」

エレオノールが睨み付けるような目で周りの隊員を見る。

「い、いや違いますよ。自分たちは何も……」

隊員たちは必死に否定にかかる。その時

「姉さま、そ、それ……」

ルイズが指である物を指差す。

「いけね、喋っちまった。まあいいか」

ルイズが指差した物、それは机に置いてある錆びれた大剣だった。
見ると鎬の部分をカタカタと鳴らしながら喋っている。

「これは……インテリジェンスソード?」

エレオノールが剣を見下ろしながら言う。
インテリジェンスソードとは魔法で命を吹き込まれた剣であり人語を解し話すこともできる。

「ああ、その通りよ。何か文句あっか?」
「文句は無いわ。でも聞かせて欲しいわね。あいつのことについて」




「武器屋で拾われた?」
「ああ、まあ運命の出会いってやつだな。へへッ」

剣はブルドンネの寂れた武器屋で亜人に拾われた事を話した。
そしてその後、アルビオンに赴いたことも。

「凄えぜありゃあ。姿は消すし変な火の玉は撃つわで軍隊一つ皆殺しにしちまった」

その剣の言葉にルイズは俯いた。やはりあのアルビオンの王軍は亜人の前に全滅したのだ。

「あの、教えてくれない?」
「ん?何をだ?」
「ウェールズ様とワルド……いや、私と一緒にいた人たちはどうなったの?」

ルイズは神妙な表情で剣に問いかけた。

「一緒にいたぁ?……ああ、お前あん時の娘っこか。あの金髪の兄ちゃんとヒゲ野朗のことか?
金髪の兄ちゃんは死んだぜ。ヒゲには逃げられたがな」

「死んだっていうのはつまり……」
「心臓を一突きだからな。ありゃあ苦しかっただろうぜ」

ルイズは再び俯いてしまった。ワルドは生きている。それはとても喜ぶべきことなのだ。
しかしルイズの表情は浮かなかった。

(殺してしまったのね……あいつが……私の召還した……姫さまの思い人を……)

この時、ルイズは大きな勘違いをしていることに気づいていない。
真実はある意味、今ルイズの頭で考えられている事よりも残酷だろう。


「ウェールズってアルビオン皇太子の?そう言えばまだ聞いてなかったけど、あなた一体何をしてたの?」
「……私とワルドが姫さまからの密命でウェールズ様への使者として送られたんです。
使者としての目的も果たしたけど、突然あいつが……私、怖くて逃げ出してしまった……」

「それであなたあの時、血まみれの格好で森に……」

テファニアがルイズのほうを見ながら言う。




「どうでもいいけどよ、今度は俺からも聞かせろ」
「何かしら?」
「お前ら一体何がしたいんだ?何で相棒を殺さなかった?」

剣の言葉とともにルイズは姉の顔を見上げた。ルイズ自身も同様の疑問を持っていたからだ。

「……インテリジェンスソードなんかに話す必要はないわね」

エレオノールは一瞬言葉を詰まらせたがすぐにそう言い放った。

「ヘッ、そうかよ。まあ大体想像はつくけどな」

その言葉にエレオノールは剣を黙って睨みつけるように見下ろした。

数秒、部屋に沈黙が流れたが再び剣が話し始めた。

「しっかし、あそこで『虚無』とはな。想像つかなかったぜ」
「『虚無』?一体何のことよ」

エレオノールは怪訝な表情を浮かべる。

「その胸のやたらでけえ娘っこのあれだよ。あれがなけりゃあお前ら確実に殺されてたぜ」

剣の言葉とともに一同がテファニアの方を向く。いきなり大勢の視線を向けられテファニアは身を縮こませた。

「あの時のテファの調べが……『虚無』?」

ルイズはあの時のことを思いだす。テファニアが琴の調べとともに口ずさんだ歌。
そしてテファニアが杖を振り下ろした瞬間に亜人の動きが止まったのだ。結果自分たちは助かることが出来た。
あれが伝説の失われし系統、『虚無』だと言うのか。

エレオノールがテファニアの前へと立つ。

「どういうこと?」
「え?あ、あの……」
「答えなさい、あの時のあなたの琴、あれが『虚無』だって言うの!?」

掴みかかるような勢いでエレオノールがテファへと詰め寄る。

「やめて姉さま!」

慌ててルイズが間に割って入る。エレオノールの剣幕に子供たちは今にも泣き出しそうだ。

「そ、その、『虚無』とか何のことか分からないけど、あれをやると誰でも今、自分が何をしてるか忘れてしまうの。
子供のころ急に使えるようになって……」

震えるような声で話しながらテファニアは遠くを見るような目をした。何か哀しげな眼差しだ。

「何だ、何かもわからずに使ってたのかよ」
「どうだっていいわ」

エレオノールがテファニアの目を見つめる。

「協力してもらうわよ。あいつをもう一度捕まえるために」
「姉さま、そんな!?テファは何の関係も……」

その時、ルイズの言葉を遮るようにテファニアがルイズに肩に手を置いた。

「いいのルイズ……私に出来ることなら協力します。でも約束して。終わったら私たちをあの村に帰してくれるって……」
「……いいわ。約束しましょう」


そう言うと二人は手を出し握り合った。



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