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ソーサリー・ゼロ第三部-16

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一九四

 部屋を出た君はルイズたちに、中で見たものについて語る。
「ゲートをくぐってこの洞窟に来た人間は、シエスタのひいおじいさんだけじゃなかったってわけね」
 キュルケが興味深そうに言う。
 君は相槌を打つ――厳密に言えば来たのは人間ではなく、ドワーフたちなのだが。
 先刻出遭ったミノタウロス(ハルケギニアのミノタウロスはもっと大柄で、異常なほどの頑強さを誇る生き物だという)や扉に化けていたやつしも、
同じように≪門≫をくぐり抜けて迷い込んだに違いない。
 君はルイズたちの前で羊皮紙を広げ、≪タイタン≫へと通じる≪門≫の位置を指し示す。
「これがさっきの分かれ道だとすると、今わたしたちが居るのはここよね……」
 ルイズが、羊皮紙に乱雑に描かれた道筋と自作の地図を見比べる。
「この通路をまっすぐ行ってまず右へ、次も右へ、今度は左へ行ってまっすぐ……。距離も正確に記されてるとしたら、それほど歩くことにはならないわ」と言う。
「でも、キュルケ……足は大丈夫?」
「平気よ。ダーリンもルイズも、あたしのことは気にしないで。目的のものが目と鼻の先にあるって聞いたら、痛みなんか忘れちゃったわ」
 そう言ってキュルケは笑顔を見せるが、次の瞬間、はっとした表情を浮かべて素早くタバサのほうを振り向く。 
「タバサ? あのね、痛みが我慢できなくなったら素直に言うから、また杖で突いたりしないでよ?」
 タバサは、無言でわずかにうなずく。
 そんなふたりのやりとりを見ていた君とルイズは顔を見合わせ、くすりと笑う。

 君たちはドワーフたちの遺した地図にしたがって≪門≫を目指すことにする。九一へ。


九一

 羊皮紙に記された道筋のとおりに先へと進むにつれ、周囲が明るくなってくる。
 光の源は炎や太陽ではなく、壁や天井にまばらに生えている奇妙な苔だ。
 ニューカッスルの地下船着場を照らしていたものに似ているが、この苔の放つ光はあれほど強いものではない。
 弱々しくも不気味な、青白い燐光だ。
 最初の角を曲がったところで、タバサが足を止めぽつりと呟く。
「開口部はすぐ近く」と。

 さらに進むうちに発光性の苔は増え、通路はカンテラが不要なほどの明るさになる。
「フォイアが風の吹き抜ける音を捉えたわ」
 キュルケが小声で言い、傍らを歩む火狐の頭をなでる。
「ダーリンの故郷へのゲートと、洞窟の出口は同じ場所にあるのかしら? もしそうだとしたら、手間が省けるわね。もう一度ここに来るときは、
シルフィードで直接ゲートのそばに乗りつけることができるってわけだし」
 なぜ火狐が聞いた音がわかるのかと尋ねようとした君は、≪使い魔≫とその主人は感覚を共有することができるという話を思い出し、口をつぐむ。
 キュルケの≪使い魔≫である、スナタの森の火狐は鼻も耳も非常に鋭いのだ――そうでなくては、あの危険な森では生きてゆけぬのだから。

 苔の燐光に照らされたまっすぐ続く通路を数百ヤード進んだ君たちは、広々とした空間に足を踏み入れる。
 君は足を止め、周囲を見回す。
 羊皮紙に記されたことが真実ならば、ここにアランシアへと通じる『輝ける門』があるはずだ。
 そこは直径五十ヤードほどの半球状の広間であり、丸天井にあいた二つの穴から陽の光と風が流れ込んでいる。
 穴の直径は三フィート近くあり、空を飛ぶ魔法が使える者なら、たやすくくぐり抜けて外に出ることができるだろう。
 広間の中心には石造りの円形の祭壇のようなものが設けられているが、ほかに興味を惹くようなものといえば、周囲の壁に施された
凝った彫刻――大半はひび割れ、崩れ落ち、苔が生えているが――くらいしかない。
 君たち以外に生き物の姿はなく、丸天井の二つの穴を風がびゅうびゅうと吹き抜ける音のほかは、なにも聞こえない。
「ここが終点? なにもないじゃないの」
 羊皮紙を覗き込みながら、ルイズが不満げな声で言う。
「でも、出口は見つかったじゃない。あそこまで≪フライ≫で上がってから、タバサにシルフィードを呼んでもらえればすぐに村に帰れるわ」
 キュルケはそう言って、天井の穴を指さす。
 君は祭壇に近づいてみるか(一三八へ)、壁の彫刻を調べるか(二九五へ)、それとも秘密の通路を探してみるか(一〇三へ)?
 術を使ってもよい。

 FAR・四五九へ
 MOG・三三一へ
 SUS・四八四へ
 TEL・三九六へ
 BAM・三四七へ


四五九

 体力点一を失う。
 水晶玉は持っているか?
 なければこの術は使えないので、九一へ戻って選びなおせ。

 持っているなら、水晶玉を背嚢から取り出し、術をかけよ。
 玉の中に乳白色の雲がもくもくとたちこめるかに見え、雲が晴れるとそこには、広々とした草原が映し出される。
 夕暮れの頃合らしく、風に揺れる草は夕陽を受けて茜色に輝いており、なんとも絵になる光景だ。
 見ていると空にいくつかの黒い点が浮かび、徐々に意味のある形をとりだす。
 それは高い帆柱に大きな帆を張った、空飛ぶ船の群れだ。
 君たちがアルビオンへの往復に使った貨物船よりも大きく立派に見えるので、軍艦かもしれない。
 船から、丸みを帯びたなにかが投げ出される――人の背丈ほどもある大きな壷か瓶(かめ)のようだが、遠すぎるため確証はもてない。
 そこまで見たところで、水晶玉の中の光景は消え失せてしまう。
 どういうことなのかはわからぬが、一つだけ確かなことがある――君が見たものは、この場ではほとんど役に立たぬということだ!
 次はどうする? 
 円形の祭壇を調べるか(一三八へ)、壁の彫刻を見てみるか(二九五へ)、床や壁に秘密の通路はないかと探してみるか(一〇三へ)?


一三八

 君は慎重に祭壇へと近づく。
 それは石を巧みに組み合わせて作られたものであり、高さニフィート、直径十フィート足らずの、円形の舞台を思わせる形をしている。
 そうとう古いものらしく、あちらこちらがひび割れ、崩れている。
 ≪門≫が現れるとすれば、この祭壇の上こそがふさわしい場所に思えるが、君が恐る恐る乗ってみてもなにも起きはしない。
 どこかに≪門≫を開く仕掛けが隠されているのではないかと、祭壇の周囲を調べてみるが、無駄に終わる。
 次に壁の彫刻を調べてみるか(二九五へ)、部屋のどこかに秘密の通路は隠されておらぬかと調べてみるか(一〇三へ)、それともこの洞窟を出ることにするか(五三へ)?


二九五

 人物、武器、獣、竜、山、太陽、二つの月……さまざまなものが浅浮き彫りで表現された壁の彫刻を眺める君だが、それらが示す主題はつかめずにいる。
 なんらかの寓話の一節を表しているのかもしれぬが、ハルケギニアの神話や伝承にうとい君には推察することさえかなわない。
 それは隣に立つルイズも同様らしく、君が意見を求めても
「見たことのない様式ね。すごく古いってことしかわからないわ」という答えが返ってくるだけだ。
 いつのまにかそばに来ていたタバサにも尋ねてみるが、彼女は黙ってかぶりを振る。
 一行の誰にも解読できぬ彫刻に構うだけ、時間の無駄のようだ。
 今度は祭壇を調べてもよいし(一三八へ)、隠し通路を探してみてもよい(一〇三へ)。
 あきらめて洞窟の外に出ることにするなら、五三へ。


一〇三

 床に秘密の落とし戸はないか、壁に隙間はないかと探し回る君だが、目当てのものは見つからない。
 キュルケとタバサに頼んで床や壁に≪魔力探知≫の術をかけてもらうが、ふたりともなんの反応も見出せない。
 次は円形の祭壇を調べるか(一三八へ)、壁の彫刻を見てみるか(二九五へ)、調査を打ち切って洞窟を出ることにするか(五三へ)?


五三

 探索の終了を告げる君の言葉を耳にして、ルイズは驚きの表情を浮かべて抗議する。
「で、でも、この広間にゲートがあるのは確かなんでしょ? もっと調べてみましょうよ。きっとなにかが見つかるはずだわ」
「ルイズの言うとおりよ。あたしの怪我を気遣ってくれているのなら、心配いらないわ。その気持ちは嬉しいけどね」
 キュルケも同調するが、君はこれ以上ここに居ても時間の無駄だと言う。
 長い年月のあいだに、≪門≫を生み出す謎めいた力が消えうせてしまったのか、それとも、なんらかの条件がそろわぬ限り≪門≫が現れることはないのか。
 どちらにせよ、この場でできることはやり尽くしてしまったのだから、もはや村に戻るしかないのだ、と。

 君の言い分にルイズたちは不承不承ながらも納得し、天井にあいた穴から洞窟の外に出ることに決める。
 まずタバサが≪飛翔≫の術を用いてふわりと浮き上がり、穴をくぐり抜ける。
 すぐに甲高い口笛が響く――タバサが風竜のシルフィードを呼び寄せている音だ。
 シルフィードの待っているであろう場所からここまでは、ずいぶん遠く離れているはずだが、本当に飛んでくるのだろうか?
 君の発した疑問にキュルケが答える。
「風竜は眼も耳もいいから大丈夫よ。それに、主人と使い魔の絆は磐石。どんなに離れていたって互いに引き寄せられて、必ず相手を見つけるようになっているわ。
そうでしょ、フォイア?」と言って、
傍らの火狐の頭をなでる。
 君はキュルケの言葉を頭の中で反芻(はんすう)する。
 もしもルイズと離れ離れになっても、神秘的な力に導かれて彼女を探し出すことができるのだろうか?
 そうするうちにキュルケが火狐を抱えて宙に浮き、タバサの後を追う。
「あなたたちはどうするの?」
 頭上の穴からキュルケの声が降ってくる。
「≪フライ≫が使えないのなら、あたしが運んであげるけど」
 君はキュルケの好意に甘えてもよいし(五九へ)、術を使ってもよい。

 DUD・三七〇へ
 DEK・四四〇へ
 FOL・三三四へ
 ZEN・四八八へ
 BIG・三四五へ


四八八

 体力点一を失う。
 宝石細工のメダルは持っているか?
 なければこの術は効かない――五九へ。

 持っているなら、首にかけて術を使え。
 ルイズを天井の穴まで運ぶべく抱え上げようとするが、彼女は君の手を逃れるようにじりじりとあとずさる。
 頬を赤く染め小さく唸っている様子から見るに、どうやら君に触れられることを恥ずかしがっているようだ。
 君が肩をすくめ、触れられるのが嫌ならキュルケに運んでもらうよう頼もうかと言うと、
「い、嫌ってわけじゃないわよ。ただ、ちょっと覚悟を決める時間がいるだけよ」という答えが返ってくる。
 君は、≪土塊のフーケ≫の一件では自分に背負われたこともあるのだから、覚悟もなにもないだろうとルイズに言う。
「ち、違うもん。おんぶとだっこじゃ、全然違うもん……」
 このままでは埒が明かぬと考えた君は、強引な手段をとることに決める。
 有無を言わせずルイズの背と脚に素早く腕を回して抱え上げ、そのまま浮き上がり天井の穴へと向かう。
「ば、ばか、ちょっと、そんな……」
 君の腕の中でもがくルイズだが、高さが増すにつれておとなしくなる。
「もう、もっとこう……やりかたってものが……」
 ぶつぶつと呟くルイズをなだめすかしながら、君はタバサとキュルケの待つ洞窟の外へと上昇する。

 穴を通り抜けた君たちが立っているのは、岩だらけのごつごつした台地の上だ。
 周囲は急な斜面と絶壁になっており、空を飛べぬ生き物ではまずたどり着けぬであろう場所だ。
 君は、再び陽の光とさわやかな風を浴びることができてほっとする。
 地下をさまよっているあいだ、君が思った以上に時は経っていたらしく、陽の高さからして日没まではあと数時間といったところだ。
 ルイズを地面に下ろして待つうち、西の空から大きな生き物が飛来してくる。
 タバサの≪使い魔≫シルフィードが君たちを迎えに来たのだ。四へ。



 君たちを乗せた風竜は、村の広場へと軽やかに舞い降りる。
君たちが東の洞窟の探索に出かけたことは村じゅうに知れわたっていたようで、竜の姿を認めた村人たちは口々に
「ご無事だ、四人ともお揃いだぞ!」
「さすが貴族様だ、オーク鬼の巣に踏み込んで五体満足だなんて」などと叫ぶ。
 真っ先に駆け寄って来たのはシエスタだ。
「みなさんご無事だったんですね! よかった……」
 見れば、彼女の眼にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「朝からずっと、幸運をお祈りしていたんです。あの洞窟はとても危険な場所だと聞いていましたから……。使い魔さんもミス・ヴァリエールも、
みんな生きて帰ってきてくれて嬉しいです!」

 君たち四人はシエスタの家に招かれ、そこで埃を払い落として身だしなみを整え、いくぶん早い夕食をとる。
 長い時間にわたる探索で疲れきった体に滋養がゆきわたったため、体力点に三を加えてよい。
 君はシエスタとその家族に、洞窟のなかで見たものについて語ることにする。
 自分たちの祖父・曾祖父であるササキが必死の思いで通り抜けた洞窟に関する話を聞かされ、彼らは夢中になる。
 君は一時間ちかくに渡り、シエスタの一家を虜にする。
 みな、怪物との遭遇には戦慄し、ドワーフたちの運命には悲しむ。
 結局、目的である≪門≫を見つけることはかなわなかったと言って話をしめくくると、彼らは自分のことのようにがっかりし、君に対して同情を示す。
「あの洞窟にゲートがあったこと自体は、間違いないんですね――ひいおじいちゃんの通り抜けたゲートが?」
 シエスタの問いに、君はうなずく。
 ≪門≫が完全に消えうせてしまったのか、それとも、なにかの拍子に再び現れるのかはわからぬが、いずれ日をあらためて洞窟を調べなおさねばならぬと君は考える。

 君が話しているあいだに陽は翳(かげ)り、窓から射し込む光が部屋を茜色に染める。
 貴族の少女たちは慣れぬ冒険の疲れが出たようで、ルイズはテーブルに突っ伏してすやすやと寝息を立て、キュルケはうつらうつらと舟を漕ぐ。
 タバサは話の途中で静かに席を立ち、どこかへ行ってしまったようだ。
 君はこれからどうする?
 こんな場所で寝ては風邪を引くぞと、ルイズとキュルケを揺り起こすか(九四へ)、タバサの姿を探してみるか(一六へ)、少し村をぶらついてみるか(一二二へ)?


一六

 村人の何人かにタバサの姿を見なかったかと尋ねてみたところ、村はずれの林に向かったとの答えが返ってくる。
 おそらくシルフィードの様子を見に行ったのだろうと考えた君は、自身もそちらへと向かうことにする。

 君の予想は的中し、とある木陰の下にタバサとシルフィード――体格も性格もまったく異なった主従の姿を認める。
 タバサは、地に伏せたシルフィードの巨躯を背もたれがわりに使い、夕闇迫る刻限にもかかわらず、いつものように本を読んでいる。
 近づいてくる君の足音に気づいた風竜は首をもたげて、きゅい、と嬉しそうな鳴き声を上げる。
 タバサは本から顔を上げると、君のほうを向く。
 君はタバサに、洞窟の探索を手伝ってくれたことの礼を述べ、いつでも都合のよいときに病気の家族のもとへ連れて行ってくれ、と言う。
 ブリム苺の汁を使った術が効くかどうかはわからぬが、できるだけのことはやってみる、と。
「明後日に。ミス・ヴァリエールにはわたしからお願いする」
 タバサはそう言って、手にした本にふたたび視線を落とす。
 代わって君の話し相手を買って出たのはシルフィードだ。
「きゅい! あの洞窟でどんな冒険してきたのか、シルフィにも教えてほしいのね! お姉さまったら、なにがあったのかぜんぜん教えてくれないのね!」
 その姿に似合わぬ若い女の声でまくしたてる。
「ずっと待ちぼうけでさびしかったのね、とっても不安だったのね……きゅい?」
 声が途切れ、竜の眼が丸くなる。
「お船……火竜……あと、変なやつらが一緒なのね? 翼人に似てるけど、毛むくじゃら」
 そう言って、君の背後の空をじっと見つめる。
 振り返った君は眼を凝らすが、夕空に浮かぶいくつかの小さな点がかろうじて見えるだけだ。
 その点は、ずっと遠くの茜色に輝く草原の上を漂っている。
 鷹のように遠目がきく風竜と、ただの人間にすぎぬ君とでは、見えるものがまったく違うのだろう。
 ≪使い魔≫の困惑になにかを察したらしきタバサは本を閉じ、眼をつぶって精神を集中する。
「……『サラトガ』号……『ヨークタウン』号……『ラングレー』号……」
 彼女はシルフィードと視界を共有しているらしく、舷側に書かれた船名を読み上げているのだ。
「アルビオンの戦列艦が五隻。周りに護衛の竜騎兵と……翼人? 違う……」
 感情を表さぬ彼女には珍しく、口調が戸惑いぎみのものになる。
 『翼人』がいかなる姿かは知らぬが、その名からして、ザンズヌ連峰に巣くう鳥人どものような空の怪物なのだろうか?
「あんなやつら、シルフィも初めて見たのね! あっ、甲板からなにか落としてるのね! あいつら、ごみ捨てに来たのね?」
「そんなわけはない」
 君はタバサたち主従のやりとりから、空の上でなにが起きているのかを想像するしかない。
 ハルケギニアのすべての国を敵に回し、追い詰められているはずのアルビオン艦隊が、タルブの村までなにをしに来たのだろう?
 先手を打って、軍港であるラ・ロシェールを攻撃するため飛んで来たにしては、あまりに数が少ない。
 タバサも君と同様に艦隊の目的がつかめぬらしく、困惑ぎみの表情――であろうもの――を浮かべる。二三〇へ。


二三〇

「きゅい!? だめね、だめなのね、お姉さま!」
 シルフィードが唐突に悲鳴じみた絶叫を上げる。
 雷に打たれたかのように全身を震わせ、大きな眼を何度もしばたかせる。
「あれはだめ! あれに近づいちゃだめ! あれは水も、土も、風も、おひさまの光も、みんな汚して腐らせちゃう! この世界をみんな腐らせちゃうのね!」
「あなたは、あれのことを知っているの?」
 取り乱すシルフィードの首に手をやって落ち着かせながらタバサが問いかけるが、その声はわずかに震えている。
 常に冷静沈着なタバサが、ごくわずかとはいえ恐怖をあらわにするとは、彼女たちの視界にはいったいなにが映っているのだろう?
「知らないのね、聞いたこともないのね。でも、シルフィにはわかるのね。あれはありえないもの、この世界にいちゃだめなものなのね! 
精霊の悲鳴がここまで聞こえてくるのね。あれは、草も、虫も、人間も、みんな食べちゃう。お姉さまたちをみんな食べちゃう! きゅ、きゅい!」
 シルフィードは恐怖の声を上げながら翼を拡げ、しきりにはばたかせる。
 主人であるタバサがそばに居なければ、すぐにも空へ逃げ出していることだろう。
 やがて、君は艦隊の下の草原に奇妙なものを見出す。
 それは、泥沼のように見える――草原に突如現れた広大な湿地だ。
 しかし、その泥沼は夕陽に照らされているにもかかわらず茜色に染まることはなく、眼が嫌悪を覚え、胸に吐気がこみ上げる、不気味な配色を保っている。
 さらに驚くべきことに、その泥沼は少しずつ大きくなり、ゆっくりとタルブの村に近づいてきているのだ!
 あれは泥沼などではない。
 あのような泥沼など、ハルケギニアにも≪タイタン≫にも存在するはずがない――伝説の中を除いて。
 君は、急を報せるべく村に駆け戻ろうとするが、タバサに袖を掴まれ引き止められる。
「乗って」
 彼女の意図を察した君が背にまたがると同時にシルフィードは翼をはばたかせ、ふわりと浮き上がる。

 風竜は矢のような勢いで空を駆け、村の広場に君とタバサを降ろす。
 君は周囲の村人たちに向かって、化け物が近づいてきているので村から避難しろ、と大声で叫ぶ。
 村人たちは微妙な表情で顔を見合わせる。
 貴族の従者らしき男が竜に乗って、幽霊にでも追われているように広場に飛び込んできたと思ったら、村から逃げろと言い出したのだ!
 わけがわからずにまごついた顔を見せていた村人たちだったが、ひとりの農夫が草原のほうを指さし、震える声で言う。
「な……なんだありゃあ? こっちに来るぞ!」と。
 村人たちは農夫の指し示したものを見て、あんぐりと口を開けて凍りつく。
 視界いっぱいに広がった不定形の怪物が、草木をなぎ倒し、包み込み、喰らい尽くしながら、村へと押し寄せてきているのだ!
 君は、早く村の皆に伝えろと叫ぶ。
 君の声で恐怖の呪縛から解き放たれた村人たちは、大変だと絶叫しながら四方八方に散らばる。
 君自身もタバサと並んでシエスタの家へと走りながら、ルイズたちと合流したのちどう行動するべきかを考える。
 事情を説明する時間も惜しいので、到着と同時に指示を出さねばならないのだ。
 村人たちの大半は、村の南に広がる森へと逃げ込むようだが、人間の軍隊ならいざ知らず、おぞましい腐敗の奔流と化した
あの怪物の眼(あるとすればだが)から逃れられるのだろうか? 
 村から離れず、屋根に上るか、地下室に隠れたほうが安全かもしれない。
 南の森へ駆け込むか(一一一へ)、シエスタの家の屋根に上るか(三一三へ)、それとも地下倉を探してそこへ逃げ込むか(一七五へ)?


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