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ルイズの魔龍伝-03


3.使い魔ゼロの学園生活

目を覚ましたゼロが目にしたのは朝焼けが窓に差し込んでいる見知らぬ部屋だった。
ベッドで静かに寝息を立てている少女を目にし自分の今の状況を改めて認識する。
「(そうだったな、俺はこの娘に召喚されてここへ…)」
「んにゅ…クック…ベリーパイ…おいしいわぁ…もっと持ってきなさいよ…ガンダム…」
「…全く良い気なもんだな、このお嬢様は」
それに合わせるかのように寝る前に交わした会話が蘇って来た。
“下着の洗濯”、あまり乗り気しない頼みではあったがやらなかったらそれはそれで騒がれるに違いない。
どうせ子供の着るものだし早い内に済ませて朝の鍛錬でもしようと思い立ったゼロは
剣を片手に、もう片手に下着を掴んでルイズの部屋をそっと後にした。
「…洗濯する場所なんて聞いてないぞ」
が、学園内でルイズに教えてもらった場所を転々としながらゼロは早々に迷っていた。


トリスティン魔法学院で働くメイドの朝は早い。
日も昇らぬ内に起床し、掃除洗濯から貴族達の朝食の準備の支度までまるで戦争のように
総勢でバタバタとこなす。そんな朝の争いの少し前、水を汲みに空の桶を持って走る少女が一人。
ここに仕えるメイドの一人、シエスタである。
「お水を汲んで…洗い物をまとめて…」
「すまないがちょっといいか?」
「あ、はい…ぃいっ!?」
今日の仕事の口にしながら水汲み場まで駆けていたシエスタが振り向くと
標準サイズに比べてはやけに小さいゴーレム(の、ような何か)が立っていた。
人の形を模しているのは何となく分かるが2~2.5頭身と相当に縮められていて
まるで子供が遊ぶ組み立て式の人形のような、そんなイメージがした。
「衣服の洗い場を探しているのだが……」
「洗い物ですね、もしよければ私にお任せくださいませんか?
 この後洗濯物をまとめて洗うので、使い魔さんのご主人のお名前さえ言ってくだされば後で
 私がお部屋までお届けしますわ。」


知らない洗い場まで行って女性の下着を洗うという未知の領域の仕事を任されたゼロにとって
これは渡りに船であった。
「すまないが…その…これを」
「はい!承りましたわ!」
ゼロが恥ずかしそうにしながらシエスタへ手にした下着を渡し、笑顔で受け取るシエスタ。
が、このメイドの話し振りから一つの疑問が浮き上がる。

「(洗濯・掃除・その他雑用というのは普通使い魔が行うものでは…ないよな、うん)」

昨晩一緒に食事をした使い魔達が思い出されるが、どう考えても火を吹くドラゴンだの
浮いてる目玉だの一般庶務に使うには手に余るどころか部屋が壊れそうな面子ばかりだ。
「ルイズ…俺は召使いか何かなのか…」
「あの…ひょっとしてミス・ヴァリエールの使い魔さんですか?」
「あぁ、そうだが?」
「昨日の事なのに“ヴァリエールの小さなゴーレム”ともう噂になって私達も聞き及んでますわ」
「…へ?」
「皆は笑ってますけど、とても奥ゆかしいのですね。私ちょっと驚きました」
「え、ちょっ」
「それでは私は仕事に戻りますので失礼しますねゴーレムさん」
笑顔のシエスタはそう言うと足早にまた走り去っていった。

「俺…ゴーレムじゃないのに…トホホ…」

朝から何かに負けたような気分に打ちひしがれたゼロであった。

「…フゥッ、ハッ!」
噴水の近くで黙々と剣を振るい朝の鍛錬に打ち込むゼロ。
手にしている剣はかつて彼が手にしていた剣ではない、旅の途中で手に入れた普通の剣である。
彼の相棒は全てを終わらせた後戦友に預けた。
傷つき、全ての力を失った相棒をこれ以上手にする事も、使う事もない。
何より亡き父が残した唯一の形見であったからだ。

ゼロがルイズの部屋に戻るとルイズがふくれっ面でベッドに腰掛けていた。
「あぁ、おはようルイズ。ちょっと剣の鍛錬に」
「使い魔なら起こしなさいよぶぁかーーーーーーーーーー!!」
朝の挨拶は怒号から始まった。
「まったくいつもの調子で起きちゃったじゃないのよ!そこのクローゼットの一番下から下着!」
「え?」
「私に一式着せるのも使い魔の仕事!早くしなさいよ!」
とりあえず下着を出してルイズに渡し、ネグリジェを脱ごうとしているルイズに気づいて
慌て後ろを向きつつ制服を取る。
「服!」
そのままルイズの方へ腕だけ伸ばし制服を渡そうとするが
「着せて」
の一言で遮られた。
朝起こさなかった事とルイズの機嫌の悪さがあり仕方なくルイズに制服を着せてゆくゼロ。
「普通、使い魔に服を着させるもんじゃないんじゃないのか?」
「いいもんアンタ喋れて手足が使える使い魔だし」
「……次からは自分でやれ」
着替えが終わった後は手早く自分の鎧を着けて、共に部屋を後にした。
「あらぁ~、おはようゼロのル・イ・ズ」
「…おはようキュルケ」
部屋を出た二人の目の前に一人の女性が立っていた、長身に燃えるような赤い色の長髪、褐色の肌。
ルイズと同じ制服を着ているが上のボタンはしめられずそこから豊満な胸の谷間が見える。
「で、それが話題の“ヴァリエールの小さなゴーレム”ってわけね~ふぅ~ん」
キュルケがゼロをじろじろと見る。
「何ていう名前なの?」
「俺はゼr」
「こいつはガンダムっていうのよ!うん!ガンダム!」
ぜロが名前を言いかけた所でルイズが割り込んで名前をガンダムだという事にしてくる。
異様なまでに「ゼロ」と呼ばれたくないその態度がゼロとしては少々気にかかっていた。
「ガンダムねぇ…変わった名前だしおもちゃみたい」
「なっ!」
「なんですってぇこのおっぱいオバケ!」
驚くゼロと憤慨するルイズをよそに自信満々な態度で
「私の使い魔見てみるぅ?フレイム~」
と呼ぶとのそっ、とキュルケの後ろから赤い大トカゲが出てきた。
それは昨夜ゼロに肉をあげようとしたあのトカゲ。
きゅるきゅると鳴きながら近寄ってきたフレイムの頭をゼロが撫でる。
「お前か、よしよし」
「…何でガンダムがキュルケの使い魔の事を知ってんのよ」
「昨日飯を食べていたらこいつが肉をくれようとした」
「あらぁ~ご主人様と違って使い魔同士仲良くやってるようじゃな~い?」
キュルケがさも勝ち誇ったような顔でルイズに満面の笑みを見せる。
「…食堂に行くわよ!」
「あ、あぁ」
声を荒げながら足早に去るルイズを追ってゼロも後を追いかけて行った。
「うちのフレイムがそこまで懐くなんてあのゴーレム、何なのかしら…」
 しかも今飯って…ゴーレムってご飯食べないわよね?」
「きゅる…きゅるきゅる」

「全くヴァリエール家の使い魔がツェルプストー家の使い魔から
 情けをかけられるなんて恥よ!罰として朝食は抜き!」
「理不尽すぎるぞ!」
「いい事?我がヴァリエール家と憎きツェルプストー家の因縁はそれは長きに渡るものよ!」
と、食堂まで歩きながらその因縁とやらを話すルイズ。
耳が痛くなる思いをしながら食堂まで歩いたが、入り口前でルイズがご機嫌斜めに
「さっきも言ったけど朝食抜きだからアンタはここまで」
と言い放った。
「…やはり召喚された時に学院から出た方が良かったな」
空腹が身に染みるのを我慢しつつ、食堂入り口に突っ立っているゼロであった。

授業の時間になり、ゼロは教室の後ろの壁にもたれかかって様子を見ていた。
何人かの生徒がこちらを見ているのが少しうっとおしかったが生徒の方を一睨みすると
そそくさと席に向き直る。
「(…俺を何だと思ってるんだ)」
ゼロの横にはフレイムが寝ていた他に、教室に入れるぐらいの中型の使い魔が暇そうにしていた。
窓の外を見ると教室に入りきらない大きな竜(ルイズに聞く所によると風竜というらしい)が
佇んでおり、教室の様子を横目で伺っている。
「…確かにこの使い魔の中では俺は目立つ、か」
生徒がこちらを伺うのは“ゼロのルイズが召喚した変な使い魔”というのが
もっぱらの理由であったのにはゼロは気づいていなかった。

「皆さん、おはようございます」
教室に入ってきた中年のふくよかな女性、シュヴルーズの声が響く。
「春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に
様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」
後ろに陣取った使い魔を次々と眺めるシュヴルーズの目がゼロに留まった。
「おや、珍しい使い魔ですねミス・ヴァリエール」
ルイズ以外の生徒から一斉に笑い声が上がる。
「出来損ないのゴーレムじゃ仕方がねーよなー!」
「うるさいわね風邪っぴき!」
「俺は風邪っぴきじゃなくて“風上”だ!ろくに召喚できないゼロの癖に!」
「ミス・シュヴルーズ!このうるさい風邪っぴきに注意して下さい!」
「喧嘩両成敗です」
シュヴルーズが杖を振るうと、ルイズ、そしてルイズと口論していた微笑みデブな男の子、マリコルヌの
口に赤土が一瞬でふさがった。
「罰としてこの状態で授業を受けてもらいます」
赤土を剥がす二人をよそにシュヴルーズの授業が始まった。

授業内容は年度最初の授業、という事でごく初歩的なこの世界における
属性の概要から始まっていた。
「『土』系統の魔法は……この魔法がなければ重要な金属も……皆さんの生活に密接に関係……」
「(生産・加工・建設・農業…魔法が産業の根幹まで関わってるとはな…
 なるほど、魔法が使える貴族がここまで権力を持つのも無理は無い)」
「(そういえばルイズが魔法を使っているのを見た事が無いな…)」
シュヴルーズの講義を聴きながらゼロはルイズの事を思い返していた。
魔法が使えるのが貴族、あのプライドの高い性格からして誇示の為に多少は使ってもよさそうなのだが
彼女は最初の召喚以外魔法を使っていないのだ。
「(…ま、これぐらいなら聞いても怒られないかな)」
ゼロは近くにいたルイズにこっそりと近寄って疑問をぶつけてみる事にした。
「ルイズ」
「何よ授業中に」
「俺を召喚してから魔法を使ってないよな、何か魔法を使わない理由でもあるのか?」
「アンタには関係ないわよ!」
「ミス・ヴァリエール!使い魔との交流は結構ですがそういった事は後でお願いします」
「すっ、すみませんミス・シュヴルーズ!」
ゼロの質問に思わず語気を荒げたルイズにシュヴルーズの注意が入った。

「では、次に土系統の基礎的な魔法、“錬金”に話を移しましょう」
授業の内容が“錬金”に移る。石を金属に変えるといった魔法でシュヴルーズが実演として
石を真鍮に変えてみせた。
「では…さっきおしゃべりをしていたミス・ヴァリエール、貴女に実際に錬金をしてもらいます」
その言葉を発した途端、教室の空気が一瞬止まった。
「ミス・シュヴルーズ!ルイズに錬金を行わせるのは止めておいた方が良いかと思われます!」
一番最初に口を開いたのはキュルケだった。いつもの軽口ではない、真剣味を帯びた一言。
「そうですミス・シュヴルーズ!ルイズに魔法を扱わせてはなりません!」
「彼女では荷が重過ぎます!」
「ルイズが錬金だなんて絶対無理ですムリムリムリムリかたつむりです!」
等と、次から次へとルイズの錬金に対する警告が周りの生徒から飛び出す。
「ミス・ヴァリエールは大変努力をなされてると聞きました、誰にだって得手不得手がありますから
多少の不出来など気にしなくて結構です。さぁ、やってごらんなさい」
席を立ったルイズが教壇の前に立ち、目の前に置かれた石ころに対して杖を構える。
ここは見守っておきたいゼロだったがその過程までに全ての生徒が椅子の下に隠れたり
席を立って後ろの方の机に退避している様子がかなり気になっていた。
「(…何でここまで大げさな反応なんだ?)」
先ほどの生徒の反応ぶりから今までの馬鹿にしたそぶりは感じられない、確実に“何か”あると
読んだゼロは教室の一番後ろ、入り口近くまで移動してルイズを見据える。
「(杞憂であれば…)」

「ではミス・ヴァリエール、この石を錬金で金属に変えてごらんなさい」
ルイズが呪文を唱えて構えた杖を振り下ろしたその瞬間、まばゆい閃光と轟音と共に石が爆ぜた。
爆発は教室全体に及び入り口からは黒煙がもうもうと立ち上がっていた。
「敵か!?」
ゼロは咄嗟にその場に屈んだのと、ルイズから離れていたためさほど被害は無かった。
爆発の衝撃で暴れる他の使い魔達をよそに、ゼロが立ち上がりながら背中の剣に手をかける。
が、目の前の光景は爆発によって所々崩れた教室と、隠れてジッと動かない生徒達
そして黒板の前に倒れて伸びているシュヴルーズと
教壇の前で傲岸不遜といった感じで腕を組むルイズの姿だけだけであった。
「ちょ~っと、失敗したみたいね」
いつもの調子で言い放つルイズ。

「ふざけるな!どこがちょっとだゼロのルイズ!」
「貴女が魔法を使うといつもこうではありませんの!?」
「今まで成功した試しが無いじゃないか確率ゼロのルイズ!」
「俺の使い魔がアッー!」
隠れていた他の生徒達が猛然とルイズに抗議していた。
「(…“ゼロ”、か)」
ゼロはルイズがゼロと呼ばれている理由と、自分をゼロと呼ばない理由をようやっと理解していた。

「…」
「…」
ボロボロになった教室でゼロとルイズが黙々と片づけをしていた。
シュヴルーズが再起不能になったため授業は中止、魔法を使ったルイズがその責を負い
罰として魔法を使わないでゼロと片づけをしていたのである。もっとも、魔法を使えばこうなので
必然的に自力でどうにかするしかないのは自明の理なのだが。
ゼロは破片や使い物にならない椅子や机を外へ運び出しては新品のものと取替え
ルイズは無事だった道具を雑巾で拭いていた。
「主人の問題は使い魔の問題」とゼロも巻き込まれた訳ではあるが
ゼロはあまり抗議する気にはなれなかった。無言ではあるが彼女の顔からは悔しさが見て取れたからである。
「ルイズ、この机は何処に置けば…」
「なんで…」
「え?」
「なんで何も言わないのよ…」
ルイズが机を拭きながら唐突に聞いてきた。今まで無言だっただけに少しドキリとするゼロ。
「その…だな…」
「分かったでしょ?私がゼロって呼ぶのも呼ばれるのも嫌な理由」
ボロボロの衣服も相まってかルイズの放つ言葉が痛々しく聞こえる。

「…俺は気にしてはいない、俺をガンダムと呼びたいならそう呼べばいい」
「嘘よ…どうせ心の中では見下してるんでしょ?魔法も使えない、貴族の出来損ないだって」
「ならもっと研鑽を重ねればいい、笑う奴は放っておけ」
「そうやって来たけど…でも…魔法だけは駄目だった…一杯勉強しても、知識を目一杯覚えても…
魔法は応えてくれなかったわ!いつも爆発して、失敗して、ゼロって…」
机を拭く手は止まっておりルイズは体を震わせていた。話している内につい感情的になり
胸の内を、今までの自分を目の前の使い魔に吐露していた。
「ルイズ」
「放っておいてよ!使い魔をやめたいならさっさとここから出てけばいいじゃない!
どうせゼロよ!私には何もないのよ!」
こういった癇癪には慣れておらず、どうにもルイズを扱い損ねているゼロであった。


「俺の剣の流派は雷龍剣(サンダーソード)っていう流派なんだ」
「いきなり何よ」
「雷龍剣ってのは一子相伝、つまり継承する人が一人だけだ。」
「…効率悪いのね」
「まぁ、な。そして継承者には技と共に専用の剣も受け継がれる。
それでその継承者を決める戦いってのがあって俺はもう一人の継承者候補と戦ったんだ。
だが俺はそいつに負けてた。なのに最終的に継承者になったのは負けてた俺だったんだよ」
「何でよ」
「相手が言うには“あの剣がお前を選んだ”からなんだそうな、それで相手が辞退した。」
「剣が人を選ぶって…インテリジェンスソードじゃあるまいし」
「さてね」
「で、今の話が何なのよ」
「えーっとだな、うん、今は魔法が使えないからといって決して劣っている訳じゃあない。
実は凄い力秘めているのかもしれないからな、うん」
「で?」
「でだな…その…剣が人を選ぶように使い魔だって人を選ぶと思うんだ。
別に嫌味じゃない、俺がお前に呼ばれたのも何か因果があっての事だろうと俺は考える。
だからだな…あー…せっかく召喚したんだ、俺を信じろ。話ぐらいなら聞いてやるから…」
「もしかして私の事を…慰めるつもりで?」
「あ、あぁ…」
「…ったく、全然慰めになってないじゃないのよ」
たどたどしく話すゼロの姿を見て完全に飽きれきったルイズ。
その姿を見てゼロはとりあえず一安心していた。
「今のはちょっとからかっただけよ、アンタの姿が馬鹿らしくてもう演技する気にもなれないわ」
「ま、そのくらい元気なら涙ぐらいは拭いておくんだな」
「おっ、女はねぇ!嘘泣きが得意なの!だからこれも嘘泣き!」
そう言ってブラウスの袖で顔をぐしぐしと拭いた後、ルイズはいつもの調子に戻っていた。
「あとはやっておくから、ルイズは部屋に戻って着替えたらどうだ?
流石にその格好は俺の目から見てもよろしくない」
「言われなくても着替えるわよ!もう!」
色んなところがボロボロになった服に気づいたルイズは机を拭いた後さっさと教室を出て行った。

「ただのじゃじゃ馬娘かと思えば……やれやれ、複雑だな」
そう呟きながら一人机を運ぶゼロ。とても似つかないものではあったが
かつて雷龍剣と共にがむしゃらに父の仇を追っていた自分の姿をルイズに重ねていた。


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