あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Brave Heart-04



戦場に居たものたちは、生涯その光景を忘れないだろうと思った。
見たこともない種類の黒い竜のような生き物が空を舞っていた。
腕には桃色がかったブロンドの少女が抱きかかえられている。
何か考えがあるのでは、放っておくのは危険だ、
そう感じたアルビオンの竜騎士達は討ち落とさんと向かっていった。
その前に、一頭の風竜が進路をはばむように立ちはだかった。
手綱を握っているのは赤い衣装に身を包んだ女性。
その後ろには、包帯に身を包んだ長身の亜人が乗っている。
竜騎士達は、牽制のために呪文を唱え、魔法を放つ。
ゴウ、と音を立てて飛んでいった火球を見て、亜人はニヤリと笑った。
左手に握った大剣を、その火球を切り払うかのように動かす。
瞬間、火球は始めから存在しなかったかのように、消えてしまう。
「な、何だ、一体何が……!」
竜騎士達の間に動揺が走った。
慌てながらも、隊長格らしい騎士が叫ぶ。
「落ち着け! お前達はあの黒い方を狙え!」
「そうはさせるか!」
亜人は叫び、右に握った黒い槍のようなものを向けた。
それが、銃だと気づいた瞬間、放たれた光弾で、竜は羽を撃ち落とされる。
「何ッ……クソ! 竜を狙え!」
「できるもんならやってみな!」
歴戦の竜騎士もかくや、というほど流麗に、風竜を操り、
攻撃をひらりひらりと交わしていく。
竜があんなに鮮やかな動きをする生き物なのか、と目を疑った。
まるで、乗り手と一体化し、本来の能力が引き出されたかのような動きだった。
「ひゃはは! 楽しいなぁ、アルケニモン!
 まさかまた、お前と戦えるとは思わなかったぜ!」
「馬鹿言ってんじゃないよこんな時に!」
呆れたように声を張り上げるアルケニモンの姿を見ながら、
マミーモンは潤みかけた目をごしごしとこすった。
それから、彼女と再会した時のことを思い出す。
アルビオン軍五万を足止めし、ウェールズ皇太子とルイズを逃亡させる。
その任を買って出たのは、ついこの間だったような気もする。
愛する人を失う悲しみと悔しさを知っていた彼は、
アンリエッタのために、ウェールズを生かそうとしたのだ。
しかし、ガンダールヴの力があるとはいえ、五万は強大すぎた。
死にかけ、もう指一本さえ動けない、というところに現れたのは
ブラックウォーグレイモンを連れたフーケだった。
フーケは何のきまぐれか彼を助け、ウエストウッド村へと連れて帰った。
数日して目覚めた彼は、そこであの笛の音を聞いたのだ。
もう二度と、聞くことが出来ないと思っていた。
痛む体も気にならず、走り出して、見つけて、抱きしめて、殴られた。
アルビオンから抜け出す彼女達を護衛しながら、タルブ村へ向かった。
偶然、そこを訪れていたルイズに再会した時は鞭でぶたれた。
その時、誓ったのだ。何処に居ても必ず守りにくる、と。
そう、ルイズも、アルケニモンも、守り抜いてみせる。
力を貸してくれ、と光り続けるルーンを見つめた。
「ぼさっとしてんじゃないよ! 上からもう一騎!」
「おうっ!」
風の刃をデルフリンガーで吸い込み、オベリスクの照準を合わせ、放った。

「たった二騎で、我が方の竜騎士隊を全滅させただと……!」
ボーウッドはその報告を受けて唖然とした。
「竜騎士隊を預けたワルド子爵はどうした?」
「……二騎の内、化け物が乗っている方は子爵に預けた竜らしいとの
 伝令が入っております。……おそらく、討たれ奪われたものかと」
あの役立たずの伊達男め、と舌打ちする。
「だが、たかが二騎だ。この艦隊の砲をもって相手すれば、たわいもない」
ラ・ロシェールの港町に布陣したトリステイン軍の陣容を
眼下に睨みながら、砲撃の命を下した。
トリステイン軍も、二頭の竜も、この砲撃には敵うまい。
「やべえ! 撃ってきやがった! よけろぉ、アルケニモン!」
「今やってるよ!」
バラバラと撃ち出される散弾銃を避けるように、手綱をとる。
「ええい、忌々しいねえ! あんなもん出されちゃ、
 こっちに勝ち目がないじゃないか!」
キッ、と艦隊を睨んでアルケニモンが叫ぶ。
「マミーモン、あの嬢ちゃんは大丈夫なんだろうね!」
「……大丈夫だ」
散弾の合間を潜って艦隊に近づくブラックウォーグレイモンと、
その腕に抱えられたルイズを見つめながら、マミーモンは告げる。
「頼んだぞ……」
「きゃあああ!」
「叫ぶな、舌を噛むぞ!」
どうにかある程度まで艦隊に近づくため、無茶な動きをしている
ブラックウォーグレイモンの腕の中で、ルイズは叫んだ。
「それより、お前の切り札というのは、まだ発動できないのか!」
「え、えっと……うん、この辺りなら、大丈夫だと思う」
ルイズは大きく息を吸い込んで、気持ちを落ち着かせる。
「私が合図したら、一番デカいアレに突っ込んで」
そして、祈祷書に記されていた呪文を口にする。

―エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ―

ルイズの中を、リズムがめぐっていた。一種の懐かしさを感じるリズムだ。
呪文を詠唱するたび、古代のルーンを呟くたびに、
リズムは一層強くうねり、神経が研ぎ澄まされている。
辺りの雑音は一切耳に入らない。
いつも、ゼロと蔑まれ、両親や姉に叱られていた自分。
そんな自分の、これが本当の姿なんだろうか?

―オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド―

体の中に力が生まれ、さらに大きくうねっていく。

―ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ―

体の中の力が行き場を求めて暴れ出す。
知らない力の宿る心に、火が付いたように熱かった。
足でブラックウォーグレイモンに合図を送った。
レキシントン号に向けて、異形の竜が飛んだ。
しっかりと開いた目で、ルイズはタイミングをうかがう。
『虚無』
伝説の系統。どれだけの威力があるものかは、誰も知らない。
それは、伝説の彼方の存在だったのだから。

―ジェラ・イサ・ウンジュー・ハガル・ベオークン・イル……

長い詠唱の後、呪文が完成した。
その瞬間、ルイズは己の呪文の威力を理解した。
全てのものを巻き込む。
選択肢は二つ、殺すか、殺さぬか。
答えは決まっている。自分は『壊す』のではない、『守る』のだ。
宙の一点をめがけて、ルイズは杖を振り下ろした。
アンリエッタは、信じられない光景を目の当たりにしていた。
負ける可能性が高い戦闘のはずだった。
その状況は、二頭の竜の登場に際して、一気に形勢が変わった。
そうして、今まで散々自分達に砲撃を浴びせていた巨艦の上空に、
突如として巨大な光の珠が現れたのだ。
小型の太陽のように光を放つその珠は膨れ上がり……包んだ。
空を遊弋する艦隊を包み込んだ。
さらに膨れ上がり、視界すべてを覆い尽した。音は無い。
目が焼けるような錯覚に陥り、アンリエッタは目を閉じた。
そして、光が晴れた後には、艦隊は炎上していた。
まるで嘘のように、あれだけトリステイン軍を苦しめていた艦隊が、
がくりと艦首を落とし、地面に向かって墜落していく。
アンリエッタは、しばし呆然としていた。
彼女を筆頭として、誰も、今見た光景を信じられなかった。
「諸君! 見よ! 敵の艦隊は滅んだ! 伝説の竜騎士とその僕によって!」
「伝説の竜騎士?」
「さよう! トリステインが危機に陥ったときに現れるという、
 伝説の竜騎士とその忠実なる僕の竜人である!
 おのおの方! 始祖の祝福は我らにあり!」
すると、あちこちから歓声が漏れ、すぐに大きなうねりとなった。
「うおおおおおおおーッ! トリステイン万歳!」
アンリエッタは、そっとマザリーニに尋ねた。
「枢機卿……伝説の竜騎士と、竜人の話は……まことですか?」
マザリーニはいたずらっぽく笑った。
「真赤な嘘ですが……、実際に、類稀なる才を持った竜騎士と、
 竜に似た亜人はおるのです。利用せぬ手はありますまい」
「はぁ……」
「考えるのは後になさいませ。勝ちに行きましょう、殿下」
マザリーニの言葉に、はっとして、アンリエッタは頷いた。
そうして、水晶の杖をかかげて、叫ぶ。
「全軍突撃ッ! 王軍! 我に続けッ!!」

テファとシエスタは、森から出て、マチルダと並んでその光景を見ていた。
「……勝ったの? あれが、ルイズの力なの?」
「そう、みたいですね」
互いに手を握りながら、困惑している二人の横で
フーケは、よく知る歌を口ずさんだ。
――神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。
   左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる――
左手にデルフリンガーを握り、右手に槍にも見える銃を掴んだ
マミーモンの姿が浮かんでくる
――神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。
   あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空――
その笛の音で、どんな獣さえも従わせてしまう
アルケニモンの姿浮かんでくる。
「どうやら……伝説の再来ってことらしいね……」
「マチルダ姉さん……?」
震えるテファの頭を、クシャクシャと撫でる。
可愛い妹分のこれからは、もっと大変なことになりそうだ。
さて……この光景を、遠見の鏡で見ていたものが、二人居た。
一人はガリアの王都リュティス、ヴェルサルティル宮殿に居た。
王族の髪の色にちなみ、青いレンガで作られたグラン・トロワ。
その一角で、その男は青い髪を揺らしながらおかしげに笑っていた。
「ははは! あれが『虚無』! あれが我がきょうだいの力!」
ガリア王ジョゼフ、その人であった。
「ああ、素晴らしい! どうやら俺の『きょうだい』は、
 どいつもこいつも『天才』であるらしい!」
ギチギチギチ、と奇妙な音を聞いて、彼は振り向く。
「おお、そうか! 戦いのか、我が魔獣よ!
 もう少しだ、今少し、時を待て!
 分かっておる、お前が一番強いのだ、お前が、俺の使いまであるお前が!」
声の主は、不気味な化け物だった。
化け物は、雑多な種類の竜、巨大な甲虫、悪魔、竜の骨。
そんなものがない交ぜにされた不気味な姿だった。
その胸にはルーンが不気味に光り輝いていた。
それは、異世界で奇跡の力によって消滅させられた、忌まわしい存在。
『キメラモン』と呼ばれる、合成魔獣。
ソレを作り出したものは、選ばれた存在だった。
天才だった兄弟を失って、歪んでしまった哀れな少年だった。
奇しくも、その状況は、虚無に選ばれたジョゼフと
魔法の天才と呼ばれていた弟のシャルル。
二人の関係に、とてもよく似ていた。

そして、もう一人は、ロマリア連合皇国に居た。
「あの力さえあれば、私はあの場所へ行けるのですね?」
誰かに語りかけるように、その男は笑った。
金色の髪も、端整で美しい顔立ちも、しかし何処か不健康そうに見えた。
「そうなのですね、おお我が神よ! 案ずることはありません!
 あなたの願いは私の願い! 今に、手に入れてご覧にいれます!」
――期待しておるぞ、ヴィットーリオ――
彼の影が、そう言っておかしげに笑ったように見えた。
「行こう、行こう、あの世界へ」
狂ったように、彼の口は呪文を口ずさむ。
そうして、そこに現れた光の向こうに見える世界を、うっとりとして眺めた。
「ああ、いつか必ず、たどり着いてみせましょう」
その光が消えるのを見た後で、たたずまいを整える。
扉を開いて、目的の場所へと向かう。
そこには、何十人という子供達が集められていた。
「さあ、みなさん。ちゃんと勉強していましたか?」
優しげな、しかし狂った微笑を子供達に向ける。
「はい、偉大なる教皇聖下」
「きちんと勉強していました」
子供達の顔には、年相応の無邪気さが一切見受けられない。
その目は何も見えていないかのようによどんでいる。
そんな子供達を見て、教皇は満足そうな笑みを見せた。
子供達のうち何人かの頭部には、奇妙な形の花が咲いている。
それは、『暗黒の花』と呼ばれる存在である。
あと少し、と教皇の内に潜む闇はほくそ笑んだ。
その闇は、かつて子供達の夢と希望の力によって、
存在を保つことができず消滅したはずのものだった。
だが、消える寸前に、彼が唱えた『サモン・サーヴァント』によって
こちらの世界へと訪れ、彼の心に巣食うことによって、一命を取り留めていた。
――あちらの世界も、ここも、デジタルワールドも、
   完全なる闇の世界に統一し……、我が物としてくれる――
その影の額には、使い魔のルーンがおどろおどろしい光を放っていた。
影の名は、『ベリアルヴァンデモン』と言った。
艦隊が落ちたのを確認した後で、マミーモンとアルケニモンは
フーケたちのところへ降り立っていた。
「ルイズー!」
ブラックウォーグレイモンに抱えられ、
降りてきたルイズをマミーモンは抱きしめる。
ルイズはぼんやりとしながら、そのまま抱かれている。
体中を、気だるい疲労感が包んでいる。
しかし、それは心地よい疲れだった。何事かをやり遂げた後の……
満足感が伴う、疲労感だった。
「なあ、さっきのすっげえアレ、何だったんだ?」
「……伝説よ」
「伝説?」
「説明は後でさせて。疲れ……たわ」
そのまま目を閉じて、すやすやと寝息を立て始めたルイズを
横抱きに抱えると、マミーモンは愛しげな表情で見つめた。
彼女をかかえたまま、ぐるりと周りを見る。
何箇所かは焼けてしまっているが、十分復興できるレベルだろう。
村人達も、数人が軽い怪我をしたくらいで、死人は出ていない。
……アルケニモンも、テファもシエスタも無事だ。
マミーモンの心を、えもいわれぬ感情が埋め尽くす。
あの時、守ることが出来なかったものを、やっと守ることが出来た。
そんな安心感だった。
これからもまだ、戦いは続いていくのだろうという予感はした。
それでも、今だけは、この温もりを抱いて、
幸せに浸っていても、かまわないだろう。
そう思いながら、彼はとてもとても嬉しそうに、笑うのだった。


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