あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Brave Heart-01


『アルビオン軍がトリステイン軍に宣戦布告した』
『敵の竜騎兵によりタルブ村が焼かれている』
ルイズとその使い魔は、たった今自分達が盗み聞きした事実に愕然とした。
使い魔である彼は、主であるルイズの制止も聞かず走り出した。
タルブには、シエスタがいる。彼が守りたいものがいる。
そう思うと動かずには居られなかった。

「アレに乗ればタルブまですぐに……って、しまったぁ!
 ガソリンが無いんだっけ! そうだ、コルベール先生に!」
広場へ向かっていた足を止めると、コルベールの研究室へと方向転換する
「ん……どうしたのかね、こんな朝早くに」
「コルベール先生! ガソリンは出来てますか!」
寝ぼけ眼のコルベールへ向けて彼はまくし立てる。
「すまない。まだ、君がいった分量はできていないんだ」
「今はあるだけでいい! それを運んでくれ、今すぐ!」
ガソリンを運んでもらう。
コルベールは未だ事情を知らぬようだったが、面倒だったので説明しなかった。
「こんな朝早くから飛ぶのかね? せめて私の目が覚めてから……」
「それじゃあ間に合わないんだよ!!」
竜の羽衣――異世界においてゼロ戦と呼ばれた飛行機械――に
ガソリンを流し込むと操縦席へ座る。
手を触れれば、どう動かせば飛ぶのかが流れ込んでくる。
左手に光るルーンの力に感謝する。
「相棒、タルブへ行くのかい?」
魔剣デルフリンガーが彼に問いかける。
「ああ、あそこにはシエスタがいる。俺の守りたい奴がいる!」
カチカチと古びた機械を弄り、飛ばす準備をしながら彼は焦っていた。
間に合わなかったら、どうしようか、と。
彼は、一度消滅したはずの存在だった。
虹色の蝶に導かれて、彼が知るどの異世界とも違うこの世界へやってきた。
この世界で、彼はもう一度、守るべきものを手に入れられたのだ。
間に合わなかった、体が動かなかった、あの時のように、
守るべきものを失ってしまったらどうしよう。
焦れば焦るほど、最悪の情景が脳裏に浮かぶ。
「何やってんのよ!」
「げ、る、ルイズ?」
いつの間にかゼロ戦に乗り込んでいた主の姿に、彼は驚いて声を上げた。
「タルブの村へ行く気なのね?」
「決まってるだろ! あそこには、アイツがいるんだ!」
「戦争なのよ! 死ぬかもしれないのよ!」
「うるせえ、知ってる!」
意地を張るようにして機械を動かしていく。
「こんなガラクタで何ができるのよ! あんた、伝説の使い魔なんて言われて、
 何でもかんでも守れると思ってんじゃないでしょうね!」
ルイズの言葉にしばし黙っていた彼だが、やがて告げる。
「全部を守ろうなんて、思わねえ。俺は、ただ、俺が守りたいものを、守る」
何処か愛しげに、ゼロ戦を撫でながら言葉を続ける。
「コイツと俺は、似てる。『守る』ために、『壊す』ために、生み出された。
 守りたいものがある限り、俺は戦わなくちゃならねえんだ」
「でも、艦隊になんて勝てるわけないわ! 死ぬかもしれないのよ!」
涙ながらに、激しく首を横に振るルイズ。
桃色がかったブロンドが揺れる。
「……守りたいものがいない世界なら、生きてたって仕方ない」
それはかつて、彼が死を覚悟して強大な闇に挑んだ時の言葉。
操縦桿を握る手に力を込める。
準備は出来た。後は飛び立つだけだ。
「先生! 前から風を送ってくれ!」
その言葉が届いたらしく、ビュウと強い風が吹いた。
伝説のガンダールヴの力が導くままに、ゼロ戦は彼を乗せて舞い上がる。

「あはは、悪ぃ。降ろすの忘れちまったぁ」
彼が、ポリポリと頭を掻きながら笑う
「こ、こ、この馬鹿犬ーーーーッ!」
ルイズが、手に持った始祖の祈祷書でばしばしと彼の頭を叩く。
ああもう始祖ブリミル、私達をお守りくださいなどと祈りながら、
アンリエッタからもらった水のルビーをその指にはめた。
――コイツはかっこよく決めるかと思ったら急にボケるんだから――
出会った当初からそうだった、と彼との出会いを追想する

召喚魔法を唱えた時、彼女は爆煙の中に虹色に光る何かを見た。
だから、きっと何か凄いものが召喚されたに違いないと喜んだ。
それゆえ、煙が晴れそこに彼の姿を見つけた時、彼女は始祖ブリミルを恨んだ。
彼はうつぶせに倒れており、ぱっと見は平民にしか見えなかった。
青いコートと帽子に身を包んだ平民。
『ゼロ』の自分にはそれが相応しいのか、と泣きたくなった。
だが契約のために近づき、ゆすり起こした彼が彼女を見た時、
ひっ、と悲鳴を上げて数歩後ずさった。
彼の顔は、とても人間とは思えなかった。
暗い灰色の肌をした顔についた一つきりの金色の目。
それを、ぎょろり、と動かしてルイズを見つめた。
「お前、誰だぁ?」
何処か間延びした声が、牙の並んだ大きな口から発せられる。
亜人だ、とルイズは思った。
瞬間、先程の恐怖は消え、一気に喜びが溢れてきた。
自分はゼロじゃないんだ! 亜人を呼べたんだ!
あまりの嬉しさに笑顔になったまま彼に向けた問うた。
「あんた人間じゃないわよね!」
何処か哀しそうに頷いた彼にも気づかず、迷わず契約した。

「お前を、守っていいんだな?」
使い魔の仕事を説明した後で、彼はそう呟いた。
守るものが出来たことが、嬉しそうだった。
その時のルイズには、彼がそんな言い方をした理由は分からなかった。
亜人を召喚できたことで有頂天になっていたからだろう。
彼は、掃除とか洗濯とかの雑用がやけに得意で、
その内に使用人達と親しくなり、給仕なんかもするようになっていた。
ある日、彼は食堂での給仕の途中で香水を拾った。
それをきっかけとしてギーシュと決闘した時、
ルイズは初めて、彼の本性を見たのだ。
体全体を覆う包帯、竜のような鋭い爪をした手足。
右腕には巨大な杖のようなもの――銃だと彼は後に教えてくれた――を持っていた。
『化け物』、ルイズはそんな彼の姿を見てそう思った。
左手から繰り出した包帯は蛇のようにうごめき、ワルキューレに絡みついた。
動きを封じられたワルキューレ達は、
彼の銃から撃ち出された光弾で、跡形も残らず消滅させられた。
「んー、なあんか調子がいいなあ」
いつものようにヘラヘラと笑いながら、おびえるギーシュに近づき首を締め上げる。
ルイズが止めに入らねば、間違いなくギーシュは死んでいただろう。
普段はぼけーっとしているクセに戦いになれば凶暴になる。
その使い魔の本性をルイズは恐れた。
だが、同時にこんなに強い使い魔が、彼女を守ってくれるのが頼もしく思えた。

そう、いつだって彼女を守ってくれたのだ。
学院から『破壊神のタマゴ』を盗んだフーケを討伐に行った時も。
アンリエッタ姫の密命を受けてアルビオンへ向かった際に、
元婚約者のワルドから手ひどい裏切りを受けた時も。
彼はいつだって、彼女を守ってくれた。
アルビオンでは、迫る五万の軍隊からルイズと、
亡命を決めたウェールズ皇太子を守るためにたった一人残った。
その際に色々あって、彼と自分は今、タルブ村へ向かっている。
彼を救ってくれた少女を 彼が守りたいと願う彼女を守るために。
今まで、彼がルイズを守ってくれた。
今度は、ルイズが彼の守りたいものを守る番だ。
「乗りかかった船よ! 全力で飛ばしなさい!!
 アルビオン軍なんか、吹き飛ばしてやるわ!」
ぽうっと手の中の始祖の祈祷書が光ったことにも気づかず、ルイズは叫ぶ。
「行くわよ、マミーモン!」
「了解、ご主人様ッ!」
異世界の空を、ゼロ戦は使い魔と主を乗せ、風のように飛ぶ。



新着情報

取得中です。