あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの旋風-02



いきなり呼ばれ 出でたるは
竜も飛び交う 珍世界
魔法学院 使い魔も
住めば都と 洒落込むか(ナレーション:柴田秀勝)


どうやら俺は相当認識が甘かったようだ。平穏な日々は束の間の幻想だったらしい。その理由は…

「キッド、明日の『虚無の曜日』は買い物にトリスタニアまで出かけるわよ。あんたの服や武器も
揃えなくっちゃねっ」

とりあえず今の俺の生殺与奪の権を握る「ルイズお嬢様」から、例のギーシュとの決闘騒ぎから数
日としない内に、干してたたんだ彼女の衣類を洋服箪笥にしまっている最中に突然言われた。なん
でも、公爵家の娘たるルイズの使い魔としては、その格好はあまりに「みすぼらしい」こと、また
元いた世界で俺に軍人としての経歴があったり、その後の稼業でも戦闘要員として活躍したことを、
一応手短かにではあるが話したことが理由らしい。

まぁ確かに、簡易宇宙服も兼ねる俺の黒いJ9スーツは、ルイズに召喚されて以降、少なくとも俺
自身の手では洗ったことがない。いくら汚れに強く、簡単には着用者の体臭が染み込まない仕様に
なっている22世紀の服とはいえ、ルイズから召喚される直前、バーナード星系へのフライバイを試
みていた頃から数えても、かれこれ3週間は洗濯をしていないのは問題だった(なんせ、ヌビアと
の最終決戦で、それどころじゃなかったもんなぁ…)。
俺が着てきたJ9スーツは、その稼業の特殊性もあって、ドク・エドモン謹製で簡易耐レーザー・
ブラスター仕様がなされ、かつ下着だけ取り替えれば、数週間は匂わない特殊触媒コーティングが
なされていたが、こちらの世界で毎日俺に洗濯をさせているルイズからすれば洗っていない不潔な
服に見えたのだろう。
まぁ、22世紀の太陽系の科学技術を知らない人間としては当然の反応だろうと思う。

また、俺がルイズの名誉を賭けてあのギーシュと決闘し、見事に短時間で圧勝した事実は今や魔法
学院中に知れ渡り、それゆえ主であるルイズの評価もゼロ→急騰ぎみらしく、そのため彼女の俺に
対する機嫌はすこぶる良い。余談だが、貴族に勝った平民ということで、学院の料理長のマルトー
も、俺が厨房にまかない食を頂きに行く度に『我らの剣』と俺のことを呼んで歓迎してくれている。

「あんたには、ヴァリエール公爵家御用達の仕立屋でちゃんとした服を特注してあげるからね!大
丈夫!そのくらいのお金なら仕送りされてるから。あと、腰に下げてるその変な銃だけじゃ心細そ
うだから、立派な剣も用意しないとね。ご主人様であるこのわたしを守ってもらうためにもねっ!」

まあ、可能な限り突起物が少なく、動きやすく、かつ頑丈で破れにくい繊維で作られた服であれば
俺は文句はない…っていつもの服とあまり変わらないってツッコミは無用だ。それに、ブラスター
のエネルギーが限られている以上、他に使用可能な武器の調達は急務だと感じていたところだった
し(この前の決闘のようにいつも石にばかり頼るわけにもいくまい)、第一、戦士としての俺の本
能からも、この世界の武器事情全般についての知識・情報が欲しと思っていたところだ。

それにしても、この前の決闘でギーシュに投げるべく石を握ったときに感じたあの『正体不明の感
覚と能力』は一体何だろう?あの後、一人になった時に誰も見ていないことを確認して、久しぶり
に愛用のブラスターを点検しようと手に取ったときにも一応似たような感覚と左手のルーンの反応
はあったが、身が軽くなったり五感が鋭くなる度合いは、この前よりずっと小さかった。
ルイズ曰く、使い魔が主と契約をすると、それまでになかった新たな能力を獲得するらしい。とす
れば、その能力とは、あの時の石とブラスターとの共通点である『武器』に反応する力ということ
だろうか?
そう考えた理由は、その後何度もそこらに落ちた石を拾って握ってみても、それだけでは同じ感覚
は再現できなかったこと、従って握る対象を『武器』として使用する目的で認識した時に初めて発
動する力なのではないか、という仮説に行き着く。ただ、単にブラスターを点検・整備する時のよ
うに、それを「使用」する目的でない場合はたとえ『武器』を握っていても、あの能力の発動の度
合いは弱くなるということかもしれない。
いずれにせよ、『武器』を使用する戦闘時になればはっきりするだろうが、なるべくそうした状況
は御免こうむる。俺とて無用な争いは避けたい。特にまだ不慣れなこの異世界なら、尚更だ。


翌早朝、ルイズに連れられて馬でこのトリステイン王国の首都トリスタニアに向かった。最初は戸
惑ったが、乗馬は初めてではなかったので、しばらくしてそれなりに勘を取り戻した。
…そういえば、牛馬をたくさん飼育していたオルトラ牧場は今頃どうなっているだろうか?亡き主
人親子の仇討ち後、使用人達の自主管理に任されたが太陽系大混乱の後だけに気がかりだ。

かれこれ3時間ほど揺られた後、城門側の駅亭に馬を預けて、トリスタニア市街に入った。一見、
華やかで活気あふれている様子だが、少し脇の通りに目をやると、みすぼらしい身なりをした人々
が、貴族とそのお供である俺たちを物欲しげに見る視線を感じる。ルイズに聞くと、トリスタニア
でも貧民層による犯罪率は高いという

どうやら俺は、魔法学院という貴族子女が集う「楽園」の中しか知らなかったようだ。学院を一歩
出て、「平民」と称されるこの世界の圧倒的多数の人々を見れば、ウエストJ区も顔負けの貧富の
格差と治安の悪さが存在する。
…そういえば、俺の相棒だったボウィも、地球の孤児院出身だったっけ。あいつもいつも陽気に振
舞ってはいたが、幼少時は貧困と絶望の底にいたことを後から知らされて、そこから這い上がる苦
労はどれほどだったろう、と想像したもんだ。

この世界には、魔法を使えるメイジという貴族階級と、使えない平民という厳然たる身分差別があ
るが、それとは別の意味で、政治・経済・軍事の支配階層と裏の犯罪組織との癒着のような腐敗と
いった問題も俺たちの世界のようにあるのだろうか…おそらくあるんだろうな。だとしたら、俺た
ちJ9のような「晴らせぬ恨みを晴らす裏の始末屋」もいるのだろうか?

などと考えていているうちに、ヴァリエール家御用達の仕立屋に到着した。俺は今着ているJ9ス
ーツとほぼ同じデザインの服を3着と、この世界でも通り相場らしい執事その他使用人が着るタキ
シード風の黒衣2着を注文した。普段着をあえてよく似たデザインにしてもらったのは、J9の連
中がもし同じこの世界に流されていたなら、遠くからでも一目で俺と認識しやすくなることを期待
したからだ。黒くて地味すぎる、今と同じようなデザインなら折角わざわざ仕立てに来た意味がな
い、使い魔にいい服を着せたい主人であるわたしの立場も考えて、と言われたが、ご主人の護衛の
ためにも動きやすさを最優先する必要性があるということで納得してもらった。その代わり、学院
内ではなるべく「タキシード」の方を着ることで妥協する。

仕立ての出来上がり予定日を確認し、代金を先払いして次に武器屋へ向かう。


最初、胡散臭げな目で俺たちを迎えた店の主人だったが、ルイズが貴族の上客だと分かると、掌を
返したように機嫌をとり始めた。いろいろ詮索されると面倒なので、一応俺は、貴族のお嬢様の護
衛兼世話係として彼女の父親が新たに雇ったばかりの異国者の元傭兵ゆえに、トリステインの事柄
は武器の流通状況を含めまだ不案内なのだ、とルイズは店主にあらかじめ説明する。

「いや~さようで、お嬢様のところもでげしたか。いやね、昨今は物騒でげして、宮廷貴族の皆様
の間でも用心棒や私兵を新たに雇ったり、下僕に武器を持たせるのが流行っておりやしてね~。と
りあえず、これなんかいかがでげしょ?」

…この商売げたっぷりの愛想、パンチョ=ポンチョに似てるな。とりあえず、店主が持ってきた細
身の剣を握る。…どうも俺の心はこいつには動かない。ルーンの反応も、『あの感触』も微弱だ。
他にも幾つもの長剣や槍の類を物色したが、どれもいまいちだ。さすがにレーザーサーベルやレー
ザーナイフがあることは期待していなかったが、22世紀地球のレベルの実体ナイフを見慣れた俺か
らは、材質・焼入れ・研ぎ方いずれも物足りない。派手な装飾や宝石をあつらえたような外見だけ
は豪華なものはいくらもあったが…

「おう、そこの若けぇの!おめぇさん、なかなか剣を見る目がありそうじゃねぇか。この店の主だ
った長物を軒並み手に取っても外見に惑わされねぇとはな。どうだい!この俺様にしねぇかい?」

「誰だ…って、剣がしゃべったぁ!?」

「それって、インテリジェンスソード?」

「へい、そうでげすが…あっ、こいつはデルフリンガーっていいましてねぇ、やたら口は悪いわお
客様にケンカは売るわ迷惑ばっかりかける奴でげして、あっしも困ってるんでげさぁ…」

「ほぅ、面白そうだな。どれ、ちょっくら見てみましょっか?」

俺がそのデルフリンガーという剣を手に取った時、これまでの剣や槍とは違ったルーンの反応と
『あの感覚』があった!

「こいつはおでれーた!おめぇさん『使い手』か!?道理でどこか懐かしい雰囲気がしたんだ!」

「ルイズのお嬢、俺はこいつにする。俺が思うに、こいつは相当使えそうな奴ですぜ」

「まぁ、戦慣れたあんたが言うんだからそうさせてもらうわ。ご主人、これおいくら?」

「へいへい、こいつなら百エキューでげす」

「よろしくな相棒!」

「こちらこそ、イェ~イ!」

これでデルフリンガー(以下、略称デルフ)を買うことは決まった。しかし、長剣は広い場所でな
ら強力な武器だが、路地や廊下・室内といった狭い空間での使用には不向きだし、隠し持つことも
出来ない。それに第一、日常生活で果物の皮をむいたり、羽根ペンの先を削ったり、様々な家具や
器具を加工したり、髭を剃ったりするために使うには不便すぎる。
というわけで、日常用といざという時には手裏剣としても使えるタイプの細身の短いナイフも少し
ばかり購入することにした。こちらも店主にいくつか並べてもらい、俺自身が手にとって選りすぐ
ったものを(デルフの論評も聞きながら)4つばかり革バンド付きの鞘と共に購入した。

代金支払いを終え、相変わらず愛想がいい店主と少しばかり雑談することにした。ルイズには、ト
リステインの武器事情を含めた情報収集をしたい、ということで少々時間をもらった。
その結果、いくつか気になる話があった。

「いえね、先程申し上げましたように昨今物騒な原因の一つに『土くれのフーケ』って怪盗のこと
がありやしてね、なんでも貴族のお宝ばかり狙って盗んでるって噂でげすよ。相当腕の立つ土系メ
イジだそうで、30メイルはあるでっかいゴーレムも作れる錬金の達人だそうでげす」

「あと、これはまだ今のところフーケの件ほど大きな話題にはなってないでげすが、アルビオンで
貴族達が王家に反乱を起こして、かなり王党派軍が押されてるって噂でげす。なんでも貴族連合は
『レコン・キスタ』とか名乗って、今エルフに占拠されてる東方の『始祖ブリミル降臨の聖地』を
奪還することを旗印にしてるとか。このまま王党派が負けることになったら、次はレコン・キスタ
軍はこのトリステインを攻め落とそうと狙うのでは、との懸念が広がり始めておりやして、それも
あって一部の貴族の方々は用心のために傭兵を徴募したり平民傭兵用の銃を纏め買いする動きが最
近出始めているでげす。まぁ、おかげであっしら武器商人は儲けさせて頂いてるでげすが…」

『土くれのフーケ』に『レコン・キスタ』か。フーケの方は店主の話を聞く限りでは、平民達の物
は一切狙わず、貴族の財産のみを盗むという。そのため、貴族階級を良く思わない平民達の内では
英雄視する者は結構いるらしい。ただし年齢・性別・国籍はおろかその人相も一切不明…
…少なくとも今のところは、俺たちJ9の主敵「善人を泣かす奴」というわけではなさそうだ。ま
ぁ、俺は今のところ『貴族』の使い魔なのだから、主のためにも用心に越したことはないだろう。

アルビオンといえば、ハルケギニア大陸上空を回遊する浮遊大陸だとルイズから教わった。どうい
う原理かはルイズ自身もよく知らないらしいが。
…それにしても宗教的熱狂が大勢力となり、既存の体制を転覆させようとしているとは、まるでカ
ーメン=カーメン率いるヌビアの連中のようだ。奴らの場合、最後の方ではコネクションの構成員
という「ヤクザ」というよりは、大アトゥーム神やカーメンに対する崇拝の念から死を恐れずに戦
いを挑んでくる「狂信者」の様相を呈していた。このハルケギニア世界でも始祖ブリミルへの熱心
な信仰がヌビアのような巨大勢力化し、世界の不安定化要因となるのだろうか?つい最近まで死闘
を繰り広げた相手との類似性から、俺は個人的に『レコン・キスタ』のことが気になった。

ルイズも店主が語る噂話に熱心に聞き入っていたが、昼飯時も近いので武器屋を出ることにする。
っと扉を開けたところでいきなり2人の人間と鉢合わせというか、ぶつかった!
お互い尻餅をついたまま相手を見れば、キュルケとタバサの2人だ。話を聞くとどうやら、外出し
た俺たちの後を、タバサの風竜シルフィードに乗って追ってきて、そのままトリスタニアで尾行し
ていたらしい。
ルイズとキュルケはしばらくにらみ合って罵り合っていた。まぁ、出会って日が浅い俺が言うのも
なんだが、見たところ2人は表面上はともかく、実際には内心ではお互い憎からず思っている様子
が見てとれる。お互い意地を張って素直になれないだけなのだ。心の中で苦笑しつつ、

「まぁまぁ、お嬢様もキュルケの姐さんも、あここは一つ、このキッドさまの顔を立てて、一緒に
手打ちの昼食会で楽しんでは頂けねぇでしょうか、イェ~イ!」

と俺が大仰な仕草と台詞で『仲裁』したところ、2人とも意外にあっさり同意した。タバサも異議
はない。もっとも昼食へ行く道すがら、キュルケがやたらと

「ねぇダ~リン」

と俺に絡んできたのは少々閉口したが…

貴族も常連という近くのレストランのオープンテラスで俺たちは昼食にした。食事中、俺がいた世
界についてキュルケから質問されたので、一応ご主人であるルイズの許可を得てかいつまんで話す
ことにした。もっともルイズ自身も聞きたそうだったし、タバサも前菜の「はしばみ草のサラダ」
を黙々と口にしつつも、その目に強い関心の色を浮かべているのが見て取れた。俺としても、現段
階ではこの世界の住人達にはまだ自分の「手の内」を多く見せたくないとの思いもあったが、J9
の仲間達を、そして元の世界に帰る方法を探すための情報収集という観点からも、「最低限」の情
報開示は信頼できそうな人間に対しては行うべきだ、と判断した。

ルイズに既に話したこととも重複はしたが、一応、俺が太陽系という多くの星々からなる世界から
来たこと、生まれたのはこのハルケギニア世界に似たところのある地球と言う星であること、俺た
ちの時代には、星と星の間を飛ぶことが可能になり、人々はあちこちの星に植民していること、俺
はそこで最初は軍人となったが、軍上層部が数多くの『裏組織』に侵食されて腐敗している現実を
数多く見せられて嫌気が差し、たまたまそうした裏組織の連中と戦うことを目的とする秘密チーム
の新設に勧誘されたことをきっかけに脱走したこと、そのチームはいずれも凄腕の「その道のプロ」
から成り、その名『J9』は太陽系中の裏組織を震え上がらせる活躍をしたこと、などを手短に、
そしてなるべく彼女らに分かりやすい比喩や表現で説明した。ただし、敵味方の個々の武器の性能
や俺や仲間達の能力については可能な限り言及を避けるか意図的に曖昧にして…

「ふ~ん、元正規軍の特殊部隊の隊長さんねぇ。道理で魔法も使わずにギーシュをあんなにあっさ
り片付けちゃたわけよね」

「…相当な手だれ。最小限の動きでワルキューレを避け、相手自身の動きを利用して投擲。動作に
全く無駄がなかった…」

「お褒め頂いて恐縮です。お嬢様がた」

またもや大仰な態度でお辞儀をして返す。俺もすっかりこのメンバーに馴染んだようだ。

「けど、前にも聞いたけど、なんであんた達が故郷の太陽系を『ABAYO』しようとしたその瞬間に
あんただけがわたしに召喚されちゃったのかしら?」

好物のクックベリーパイをフォークの先で切り取りながらルイズが尋ねた。いつの間にか食後のお
茶の時間になるまで話し込んでいた。

「…うぅぅん、それについては俺もいろいろ考えたんだけど、今のところは理由は不明だな」

確かに、俺たちは救った太陽系を捨てて、遠い宇宙の彼方の新たな天地を目指そうとした。そのこ
とと俺が異世界へ召喚されたこととの間に何か関係があるのか否かは、こちらに来てからずっと考
え続けてはいるが、決定的な答はいまだ見出せていない…

他にも質問が出そうになったが、そろそろ日も傾きだした。学院の夕食までの時間を計算すると、
もうじきトリスタニアを出発しなければ間に合わない。

「俺たちは馬なので、そろそろ学院へ戻らないとまずいっすね。どうですお嬢、お嬢のお許しさえ
あれば、この続きは学院へ戻って夕食後に、お嬢の部屋で話すってのは?それもみんなが寝静まる
消灯後に」

ルイズは俺とキュルケの顔を交互に見て、

「仕方ないわね…いいわ。ただし勘違いしないでよ!わっ、わたしだってキッドのお話の続きが聞
きたいだけなんだから!ツェルプトーが一緒、っていうのが気に入らないけど…」

「あ~ら、あたしだったらダーリンの昔話だったら、一昼夜かかっても聞き惚れちゃうわぁ。あん
たって見た目も度量も小さいんじゃないの?ヴァリエール」

「なんですってぇ!?」

「まぁまぁ落ち着いて、お二方。じゃあ話は決まり!それでは皆々さま、今宵の団居(まどい)を
お楽しみに~、イェ~イ!」


…と、夕食後に俺様の元の世界での面白おかしい体験談でその日は暮れるはずだったが、そうは問
屋が卸さなかった。

シルフィードで先に戻っていたキュルケとタバサに続き、少々馬を飛ばした俺たちが魔法学院に戻
って無事夕食を終え、本来の消灯時間直後、他の生徒達が寝静まった頃にルイズの部屋に一同が集
合したまでは良かった。

俺が昼間の話の続きを始めて間もなく、外からドォンドォンという腹に響く重低音が聞こえ始めた。
何事かと外を見やれば、学院本塔の、俺が教えられた知識が正しければ宝物庫がある辺りを狙って、
高さ30メートル前後もあるバケモノがパンチを繰り出しているではないか!

「あれって、昼間に武器屋から聞いた『土くれのフーケ』じゃないの!?よりによって噂を聞いた
今日の今日に、あんな大きなゴーレムを作って、魔法学院の宝物庫を襲いに来るなんて!!」

「断定は出来ないが、可能性としてはあり得るな。だがここからでは暗くて遠すぎて詳細が分から
ん!」

「あたしたちも行きましょ!これを見てみぬ振りをしたら、ツェルプトー家の名が泣くわ」

「…迅速な状況確認を要する…」

「わたしも行くわ!ツェルプトーなんかに負けるもんですか!」

「お嬢!危険すぎる!相手は相当な術者なんだろ?無謀だ」

「バカ言わないで!わたしはこれでも貴族よ!ノブレス・オブリージュ、支配階級にある者として
の義務と責任は自覚してるつもりよっ!!キッド、あんたもついてきなさい!」

結局、俺たちは全員が部屋を飛び出した。ただし俺は、急いでデルフを背負ってから。なお、右腰
にはいつものブラスターを、左右の手首と左肩には計3丁の購入したばかりの小型ナイフを既に装
着していた。


中庭に到着した俺たちの視界に入ったものは、双月の下に映えるゴーレムの巨体と、目深にフード
を被って肩上に乗るその主の姿だった。平穏無事と思っていた日々の連続が、途切れたことを俺は
実感した…


街に繰り出し 得たものは
巷の噂と 理解者か
楽しき団居 夢みれば
そこに悪夢の 大巨人
ゼロの旋風 ブラスターキッド
お呼びとあらば 即参上!(ナレーション:柴田秀勝)


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